日本の改革

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緊急事態宣言の全国への発令は支持、補正予算組み替えはスピード次第

緊急事態宣言を全国に広げたことには、感染症対策上の効果からも、法律上の制度趣旨からも、賛成できます。一方、補正予算組み替えは、一定の合理性はあるものの、変更内容が大規模過ぎる点がネックで、給付までの期間を短く出来るかが問題です。

もともと全国的な制度でもよかった緊急事態宣言

安倍総理は昨日4月16日、緊急事態宣言の対象を全国に広げました。

なぜ全国なのか、なぜ今なのか、については、政治的な理由が大きいようです。

同日に公明党の主張で補正予算案の組み替えという前例のない決定をしていたので、それを正当化する体裁を作るためだ、と言われています。朝日から引用します。

 政権幹部はこの政策変更について、「宣言を全国に拡大するから一律10万円になった」と説明したが、額面通り受け取る与党議員は少ない。自民幹部の一人は「公明党に言われたからやりますっていうわけにはいかない」と語り、緊急事態宣言の拡大を一律10万円給付への政策変更の「口実」にしたとみる。別の党幹部も「宣言の対象は広くした方が良い。その方が補正を組み替える理由になる」と漏らした。党ベテラン議員は「10万円の給付金にする理由として緊急事態宣言を政治利用している」と言った。

出所:朝日新聞2020年4月17日

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政府は昨夜、急きょ、新型コロナ対策本部の開催を決定、しかも、専門家による諮問委員会を先に開催するはずが、わざわざ対策本部を先に開くよう変更しました。もちろん法的な手続きは踏んだことにはしていますが、対策本部の決定を諮問委員会に文字通り先行させました。

感染がまだ深刻でない都道府県については、専門家が挙げてきた判断基準(①累計感染者数、②倍化時間③、感染経路不明者の割合)を無視した形になりかねません。またしても専門家無視になってきたのは問題です。新潟、愛媛、熊本等の知事は戸惑っていますし、緊急事態措置への協力も十分得られない可能性があります。

経済への影響はもちろん深刻で、ただでさえ打撃を受けている各地の地域経済に更に下押し圧力がかかります。最初の緊急事態宣言を、経済への悪影響を理由に、あれだけ遅らせたのは一体何だったのか、という批判もあり得るところです。

このように、動機は不純ですし、専門家無視への逆戻りも、経済への悪影響も、確かに大きな問題です。

それでも私は、宣言の対象を全国に広げた今回の判断を、結論としては支持します。感染症対策として一定の合理性がありますし、もともとの制度趣旨から言って、緊急事態宣言は、本来は全国的な制度であるべきだと考えるからです。

政府は、宣言の対象を全国に広げた理由として、対象地域とそうでない地域間の人の移動を止めたい、特に、ゴールデンウィークに、首都圏等から、非対象地域に大規模な移動が起きる可能性があるので、その対策が必要だ、と言っています。これは、感染拡大の防止のためには合理的な理由です。

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対象地域の知事は、地域外に移動することの自粛要請が出来るから意味が乏しいのでは、と書いていますが、知事が出来るのはあくまで自粛要請で、強制力を伴ったロックダウンはできません。

ゴールデンウィークの移動が心配だと言うなら、最初から全国を対象にすべきだった、という批判はあり得るところで、それはもっともです。ただ、緊急事態宣言後に、対象地域以外での感染者数が増加が続いているのは確かで、タイミングが遅れたとしても、大型連休に備えて、今のうちに全国的な移動を最小化したいという意図は理解できます。

そもそも、緊急事態宣言制度の定められた新型インフル特措法の立法直後で法律公布前、有識者会議の議論で、都道府県単位の指定ではなく、全国を対象にすべきだという主張もされていました。

2012年10月16日の第3回新型インフルエンザ等対策有識者会議で、押谷仁教授が、風評被害が起きないようにするためにも、宣言の対象は全国にするべきだ、と主張しています。これに対し、厚労省が、経済社会への影響を示唆して、都道府県単位にするべきと答えて、結局そのままになっています。もう法律が出来た後なので、有識者会議でひっくり返すわけにもいかなかったのでしょう。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/yusikisyakaigi/dai3/gijiroku3.pdf

 今回は、首都圏が指定対象になったためか、風評被害はあまり目立ちませんが、これが四国や九州の一つの県だけが対象になったりしたら、農産物の販売や人の移動も含めて、東日本大震災時の福島県と同様の、ひどい風評被害が発生したでしょう。2009年の新型インフルのときには、大阪と神戸についてさえ風評被害が生じたので、押谷教授もそれを心配して、全国を対象にすべきだと、2012年には言っています。

何より、新型インフル特措法での、国と地方の役割分担ということを考えれば、立法論として、宣言の対象は国全体としておいた方が良いでしょう。

緊急事態宣言の要件の一つには、「全国的」かつ急速な蔓延による国民生活等への甚大な影響が生じる恐れがあるとき、とあります。にも関わらず、対象地域を都道府県単位で区切っています。これは矛盾のように見えます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026qek-att/2r98520000026qjk.pdf#search=%27%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E7%89%B9%E6%8E%AA%E6%B3%95+%E7%B7%8A%E6%80%A5%E4%BA%8B%E6%85%8B%E5%AE%A3%E8%A8%80+%E8%A6%81%E4%BB%B6%27

現に前回の指定では、国と対象地域の知事の間での対立が顕在化しました。都知事は宣言を求めたのに国が渋ったり、宣言後も政府と知事の役割分担で争いとなったりしました。今回、感染者の少ない県の知事と国との対立も考えられます。もともと、全国的な感染防止のためには、全国を対象とした宣言という制度の方が良いはずです。

このため、立法論としては、緊急事態宣言は全国を対象にすべきですし、現行法の運用としても、緊急事態宣言の要件の書きぶりにならって、全国を指定するというやり方は、一定の合理性があります。

 諮問委員会の専門家の中にも、それ以外の専門家にも、今回の指定に賛成する意見はあります(上記朝日の記事参照)。以前同様に事後承諾になってしまいましたが、今回、科学的な理由付けはある程度出来るように見えます。感染者の少ない地域での、経済への悪影響や知事の協力については、出来るだけ知事の裁量を認める形にして、経済的な悪影響については、国が対策費を上積みすることでクリアすべきです。 

以上のように、緊急事態宣言の全国への拡大は、色々と難点はあるもののクリアすることは可能で、感染防止と制度趣旨から言って、賛成できるものです。

補正予算案の組み替えは給付を早められるか

問題は、補正予算案の組み替えです。安倍総理は昨日、公明党の強い主張に押されて、補正予算案の組み替えを決定、自民党に再検討を指示しました。

www.nikkei.com

予算案の組み替えなんて、野党が国会でのパフォーマンスでやるだけで、現実にはまず絶対に起きませんし、例外的に組み替えがされるのは、よほど明らかな数字上の間違いがあった場合に微修正をするくらいです。

それが今回、いったんは渋々ながら賛成した与党の公明党が、閣議後の国会提出直前に、いきなり絶対に予算を組み替えろと総理大臣にねじ込んで、しかもそれが実現したというのですから、永田町・霞が関の常識的には、驚天動地の出来事です。

が、驚天動地なのはあくまで国会議員や役人にとっての話で、国民にとっては、迅速で効果的な経済対策につながるなら、どんな変更をしても構わないことです。今回の予算組み替えの是非は、対策の中身とスピード、特にスピードによって評価されるべきです。

中身については、所得制限ありの世帯単位で30万円給付の制度自体がなくなり、所得制限なしの個人単位で一律10万円給付に変わります。

私は、中所得層までは含む所得制限付きで既存制度を利用するのがベストだと考えていますので、所得制限の撤廃には反対です。ただ、今後、事後的に確定申告で調整するというなら、事実上は所得制限があるということですし、一律給付は迅速な給付にはなるでしょうから、今回の変更について、中身は一応賛成できます。

ただ、補正予算案を組み替えて、しかも30万円の給付制度を完全にやめて新しい制度にするわけですし、緊急事態宣言を全国に広げることに伴う予算案への変更もあるらしいので、組み替え作業と審議に時間がかかってしまいます。

一律給付をするにしても、政府が目指すような来月くらいの給付など本当に可能かも分かりません。評判の最悪だった30万円給付よりは早く出来るにしても、実際の給付がたとえば7月以降ということだと、国民はやはり遅過ぎると感じるでしょう。時間が経てば経つほど、10万円では足りないとう声が強くなりそうです。

結局、今回の予算組み替えは、何よりも給付がどれくらい早く出来るか、というスピードによって評価が決まります。国民がそれなりに早く給付してくれたと感じるかどうかが、安倍政権への支持率にも響くでしょう。