日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

FRBが企業や自治体へ直接の資金供給:企業への休業要請への協力金等のために、日銀も使うべき

日本には、接触8割減に向けた企業の資金繰り支援や休業要請への協力金支出が必要です。が、財政政策はなぜか出来が悪く遅すぎるので、より機動的な政策として、FRBやECBにならって、日銀による企業・自治体への資金供給も行うべきです。

出来の悪い給付金制度ばかり出してくる政府

政府の新型コロナ対応の財政政策で、政府に大きな失点がありました。

家計向けの30万円の「生活支援臨時給付金」、総務省は昨日4月10日、支給対象の基準を変更しました。例えば単身世帯では、月収が10万円以下に、もしくは半減して20万円以下に減少すれば(非課税水準と見なして)支給、としました。これまでの基準は複雑で、地域によって対象に違いが出る恐れもり、支給まで時間もかかり過ぎるから、ということです。

30万円の臨時給付金、基準全国一律に…総務省がコールセンター設置 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

世帯向けの給付金の制度設計がおかしいことは、誰もが気付いて批判していました。

従来は、世帯主の2~6月のいずれかの月収が、減収により年間に換算すると住民税の非課税水準になるか、半減して年間に換算すると住民税の非課税水準の2倍以下のどちらか、という分かりにくい基準でした。「半減」の判断が難しすぎて、給付まで時間がかかり過ぎます。総務省は今回、「非課税」の水準は市町村ごとに異なる等、不公平感が高まる、という、これまた今さらの理由を挙げて、全然違う金額ベースの基準にしました。

4兆円もの予算を用意した給付金制度の支給要件について、これほど全く異なる基準にいきなり変えた前例は恐らくありません。そもそも最初の制度設計が複雑すぎて、実務的に実施するのが無理だと批判されていたのに、政府は強行して、案の定、撤回せざるを得なくなりました。

企業への給付金も、以前のブログで書いた通り、収入が半減という要件を掲げているので、判断は難しいですし、自粛に応じて工夫して乗り切ったところはもらえず、自粛に応じずに漫然と店を開けて収入半減になればもらえる、という不公平もあります。

緊急事態宣言を発令:安倍総理の記者会見は満点。今後、東京の病床を10万に増やし、給付金の欠陥を是正し、東京都への不当な介入をやめるべき - 日本の改革

もう、コロナ危機は、マクロ経済全体への危機なのだから、もっと分かりやすい線引き(個人なら児童手当支給対象か否か等、企業なら企業規模等)で、出来るだけ迅速な支給につなげるべきです。

これは、感染症対策のためにも必要です。人同士の接触を8割減らす必要があるのに、未だに、通勤は十分に減っていません。休業を強く求めたときの企業への支援策が不十分すぎるからです。緊急事態宣言に基づく休業要請でも、東京都主導でようやく、企業には協力金支払いが必要という認識が定着し、神奈川県等に広がりつつあります。

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国もとうとう、1兆円の臨時地方交付金について、都道府県による休業要請を受けた事企業への協力金としての活用を容認する方針を決めたそうです。神奈川県もこの方式を検討しているようです。

新型コロナ 「休業支援」に交付金 政府、活用を容認へ - 毎日新聞

臨時地方交付金による協力金支払いが定着すればよいのですが、自治体によって対応は分かれます。財政支援について、またこれから新たに制度を作って、というだけで、かなりの時間がかかります。交付金の使い道について、国がまたつまらない制限を一律にかけてこないとも限りません。

この地方交付金の利用以外では、政府は財源不足を理由に、休業要請を行う企業への「補償」や「協力金」の支払いを拒み続けています。これが日本経済の落ち込みをひどくしているうえ、感染症対策も遅らせています。

日本は、FRBやECBにならって、もっと日銀融資を活用すべき

そこで考えるべきは、金融政策での迅速な資金供給も活用することです。

財政政策での給付は、従来の経済危機時には考えられないような、出来の悪い制度が出てきています。誰が悪いという責任追及もいずれは必要でしょうが、とにかく財政政策だけに期待するのは危ない状況です。何より、企業に直ちに当座の資金が届くようにするため、身近な金融機関を通じた融資がすぐ得られるようにすべきです。

また、自治体にも、臨時地方交付金に大きく上乗せする財源を用意して、休業要請の協力金から医療体制整備まで、各自治体が財政を心配せずにただちに対応できるようにすべきです。

既に日銀は、前回3月16日の金融政策決定会合で、新たに「企業金融支援特別オペ」の導入を決めました。これは、銀行融資を増やして、「企業金融の円滑確保に万全を期す」目的で、金利ゼロでの資金供給を銀行に対して行う特別オペで、8兆円もの枠を設定しています。本ブログでも、これは、ECBの長期資金供給オペ(TLTRO)と同様の制度であり、企業の資金繰り融資の増加に役立つとして、高く評価しました。

アメリカが1%も金利を下げたのに、日銀の「利下げなし」はダメ、「企業金融支援特別オペの導入」は予想外の良い方向。 - 日本の改革

ECB利下げ見送りで、欧州株価も崩壊、日経平均暴落:金融政策は市場の底抜け防止には必要。日銀は利下げとECB方式のマイナス金利貸付(TLTRO)を。 - 日本の改革

このように、日銀は、企業への資金繰り融資を増やすための新制度を既に導入しており、いつでも活用できる状態です。

具体的には、ECBの長期資金供給オペ(TLTRO、targeted longer-term refinancing operations)同様、民間銀行が企業に、人件費や家賃等の資金繰り融資を行う場合に(「貸し出し条件付き(targeted)」で)、日本銀行がその民間銀行に、マイナス金利での貸付を行う、という方法をとるべきです。

アングル:ECB貸出支援策再開へ、TLTROの仕組みと課題 - ロイター

このオペを日銀が行うと、地方銀行信金・信組等は、地域の中小零細企業に資金繰り融資をすれば、日銀から補助金のように(マイナス金利での)キャッシュがもらえて、企業は、一番身近な金融機関から、すぐに必要資金の借り入れが出来ます。この際、日銀が、企業への融資について、返済期間等を相当緩くすることを条件として、実質的には給付金に近い形にすればよいでしょう。

黒田総裁も、全国で景気判断を引き下げた支店長会議の際、「必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と言っています。もう、政府の財政政策があてにならい今が、そのときであり、とりあず直ちに、マイナス金利による「企業金融支援特別オペ」に踏み切るべきです。

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更に、今後導入すべき制度としては、日本銀行による一般企業と自治体への直接的な資金供給です。

これは、FRBが導入している制度です。

従業員1万人以下の一般企業に、民間銀行を通じて6000億ドルを融資する制度が新設され、民間銀が一度は融資しますが、その95%分をFRBがその後、実質的に買い取ることにします。事実上、FRBが企業に直接融資することになります。

また、FRBが州政府など地方債の買い取りなども行っています。

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FRBによる一般企業への実質的な直接融資の制度も組み合わせて、日本については、以下のようにすべきです。

まず、既に日本銀行が導入した「企業金融支援特別オペ」を使って、(ECB同様に)マイナス金利で地域金融機関に貸し出し、返済条件が極めて緩い融資を中小企業に行わせます。これで、需要急減や休業要請で資金がひっ迫する中小企業が、1年か2年は生き延びられるようにします。

こうして時間を稼ぎつつ、日銀はFRB同様に、新たな制度として、その企業融資の債権を、地域金融機関から買い取ることを可能にします。こうして、貸し倒れリスクを地域金融機関から日本銀行に移します。こうすれば、地域金融機関には不安がありません。

日本銀行には、中小企業向け債権の貸し倒れリスクが移りますが、仕方ありません。アメリカでも、FRBが抱えるリスクをどうするかはこれから考える、ということになっていますが、それで問題ありません。通貨発行銀行である中央銀行はつぶれないからです。戦後最大の経済危機なのですから、それくらいの対応は必要です。

また、地方への財源を準備するために、日本銀行が直接、地方債を買うなどの形で、資金供給を行うべきです。そうすれば、地方自治体についても、金融政策が使えるのと同じ結果となり、自治体が財源を気にして感染症対策(休業要請時の協力金等)の支出を渋ることもなくなるはずです。

政府が財政政策で失敗を続けている上に対応が遅すぎるので、日本銀行も積極的に動くべきです。今すぐ、臨時の金融政策決定会合を開いて、マイナス金利での「企業金融支援特別オペ」を大規模に行って、各地の中小企業にキャッシュを届け、その後、この債権を買い取る形で、企業への事実上の直接融資を行うべきです。また、地方自治体に対しても、地方債買い入れ等の方法で、直接資金供給を行うべきです。