日本の改革

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自衛隊、感染症対策の災害派遣終了、予備自衛官も活躍:医療関係者にも「予備役」的な資格新設の検討を。

 新型コロナ対応で災害派遣されていた自衛隊の任務が全て終了しましたが、予備自衛官も活動しました。今後、感染症対応も含めて、災害時の医療崩壊を防ぐため、医療関係者にも、普段は別の職業につく「予備役」的な資格を設けてはどうかと思います。厚労省は平時の医師需給の予測を根拠に、医師数の増加には慎重ですが、それなら、普段は別の仕事について、災害時に召集できる体制を検討すべきです。

 感染症対策で、医師資格等を持った予備自衛官が大活躍

3月16日、新型コロナの対応で関連施設に派遣していた自衛隊は全ての活動を終えました。1月31日の派遣命令を受け、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」や中国・武漢からの帰国者の滞在施設で、延べ約8700人が任務に就きました。

こうした業務については、やはり自衛隊が頼りになりました。特にクルーズ船対応で、厚労省内閣官房職員は感染が相次いだのに、自衛隊には感染者がいませんでした。

防衛省自衛隊は、今回の経験を踏まえ、自衛隊病院での受け入れ体制を拡充し、医師免許を持つ自衛官医官」の育成もめざす方針で、大変結構なことです。

www.nikkei.com

 今回の災害派遣には、予備自衛官も参加しました。河野防衛大臣によれば、彼らは特に医療支援を行うことが多かったそうです。3月13日の大臣記者会見から引用します。

医療支援もやらざるを得ないというのと、自衛隊病院にかなりの人を受入れいたしましたので、医療支援と生活支援の2本立てという感覚でおりました。自衛隊の病院、特に中央病院には、外国の方をかなり大勢受入れいたしましたので、例えば通訳の予備自衛官、あるいは中央病院で受け入れると看護師や医者が他に行ったり来たりができなくなりますから、医師、看護師の予備自衛官を招集して、そこをしっかりやってもらった、ということもありましたので、予備自衛官の招集はどちらかというと、医療支援の関係が多くなったのかなと思います。

出所:防衛省

www.mod.go.jp

招集された予備自衛官の人数は、2月13日の招集時で、約50名です。上記会見のように、予備自衛官のうち医師や看護師の資格保持者が、帰国者やクルーズ船乗客で陽性反応が出た人の健康管理にあたりました。あわせて、自衛官OBらで構成する「即応予備自衛官」の招集も行いました。

予備自衛官即応予備自衛官はともに非常勤の特別職国家公務員で、災害などの緊急時に招集されます。

河野大臣は、今回の災害派遣終了後も、自衛隊中央病院で受け入れた感染者の6割が外国人なため、外国語通訳ができる予備自衛官を招集しています。

防衛相、予備自衛官を招集 医師・看護師の資格者 新型肺炎対応で :日本経済新聞

www.taro.org

医療にも「予備役」的な資格の導入の検討を

このように、予備自衛官らが、今回の感染症対策では大活躍しています。ただ、自衛隊にだけ頼るわけにはもちろんいきません。

今回の感染症対策から得られる反省の一つは、こうした災害時のための備えが、現状では十分でないということです。私自身も認識を改めて反省しましたが、平時での医療の需給だけを考えて、医療体制の効率化を論じるのは危険です。現状の地域医療構想による病床数の機能別の調整も病院の統廃合も必要ですが、災害時のための余裕、冗長性が十分かどうか、検討し直す必要があるでしょう。

ベッドだけでなく、医療機器、薬品やマスク等も同じです。日本では諸外国に比べて多すぎて非効率だと批判もされてきたCT等も、有事の備えとして見直すべきかもしれません。

 同様に、医師数についても、感染症流行を含めた有事も想定して、平時の基準では多すぎると思われるような余裕が必要でしょう。今回のパンデミックから得られた教訓を生かして、医療に関し、平時に負担する社会的負担を少し増やして、有事での医療崩壊防止の体制を少し強化すべきです。そのためには、ベッドや医療機器だけでなく、やはり医療関係者、特に、医師の数は増やすべきです。

安全保障上の有事や大規模な自然災害等を考えれば、どの診療科についても医師数の見直しは必要でしょう。少なくとも、感染症専門医の数については、感染症学会等の専門家の意見を、より重視して取り入れるべきです。日本感染症学会は、病院に勤務する感染症専門医の人数は3,000~4,000人程度が適正としていますが、現状は1500人強と、大きな開きがあります。

感染症専門医の医師像・適正数について|専門医制度|日本感染症学会

専門医名簿|専門医制度|日本感染症学会

しかし、医師数を増やすことには、厚生労働省は消極的です。医師会等の反対という政治的な理由はもちろんありますが、それだけでもありません。

厚労省の現在の考え方は、将来にわたる医師の需要と供給を比較したら、人口減少で医療需要が実は減っていくので、供給を増やしすぎるべきではない、というものです。医師不足と言っても将来はむしろ医師が余る可能性があり、問題なのは、地域間の医師数の偏在だ、ということです。これはこれで、一定の説得力はあります。

https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000491613.pdf

弁護士同様に競争で切磋琢磨だと言っても、医師の収入は保険料と公費がほとんどを占めます。医療はサービス供給者と利用者の間で情報の非対称性が大きいので、医師が不必要な治療を施して医療費が上昇するという、医師誘発需要の問題もあります。もちろん、医師間にも一定の競争や切磋琢磨は必要で、その面からも医師数は増やすべきとは思いますが、民間企業と全く同様でもないのは確かです。

一方で、パンデミックを含む大災害時という有事の需要を考えて、そのための医師数を確保すべき必要もあります。

そこで、医師についても、予備自衛官のような、「予備役」的な新しい資格を設けることを検討してはどうかと思います。医師や専門医の資格ではあるけれど、実際の診察を行うのは基本的には災害時のみとして、普段は、官僚や研究者、製薬会社等の民間企業等、別の仕事に就く、ということにします。

こうすれば、平時には、需要を上回るほどの医療の供給が起きずにすむ一方、本当に多数の医師が必要な有事にも、十分な医師数が確保できます。

現在では、医師資格を持って他の仕事に就くことを、社会倫理的に問題視する風潮もあるようです。現状の医師資格だけだと、医師免許をとった人達の職業選択の自由や多様な生き方にも、障害が生じている面もあります。

medical.nikkeibp.co.jp

https://kiyoc.blog/medicalstudent-career/

今回、医師資格を持つ予備自衛官が、大きな活躍をして実績を上げ、これからもその期待が高まっています。平時は別の仕事について、有事には有事対応を行うという人材は、医療においてこそ必要でしょう。このため、現行の医師資格や看護師資格に加え、通常は臨床の仕事は原則として行わずに別の仕事に就き、定期的に訓練や資格更新もして、有事の際には医師として働く、という資格も検討すべきです。