日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アメリカが1%も金利を下げたのに、日銀の「利下げなし」はダメ、「企業金融支援特別オペの導入」は予想外の良い方向。

日銀の金融政策、マイナス金利を更に利下げしないのは評価できません。もっと下げて、長期金利をマイナスにして、国と企業の投資コストを下げるべきです。一方、新たに導入した「企業金融支援特別オペ」は、ECBの長期資金供給とは違いますが、方向は評価します。

借りれば得をするマイナス金利の深掘りをすべき。新たなオペは評価できる

日本銀行が前倒しで金融政策決定会合を行いました。現在マイナス0.1%の政策金利の引き下げ(マイナス金利の深掘り)は見送り、中小企業の資金繰り支援のための「企業金融支援特別オペ」を導入しました。その他に、上場投資信託ETF)と不動産投資信託J-REIT)の購入を12兆円に倍増、大企業のコマーシャルペーパー(CP)・社債の購入もやります。ETFJ-REIT、CP・社債の購入は、株価を上げはしなかったようですが、予想はされていたのでやらないよりはやった方が良かったでしょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200316b.pdf

www.nikkei.com

日経平均大引け 4日続落、429円安 日銀ETF増額も方針に失望 :日本経済新聞

今回、マイナス金利をさらに下げる利下げ、いわゆるマイナス金利の深掘りがなかったのは、賛成できません。利下げはないだろうとは言われていましたが、予想通りにダメでした。

マイナス金利をさらに大きく下げて、去年のように、また長期金利をマイナスに出来れば、政府は借りれば借りるほど財政再建のためにもプラスという状態になります。新型コロナウイルス対策に限らず、教育・環境・科学技術・国防等の分野での公共投資を増やすべき時代に、政府の借入コストを下げて、借入がむしろ有利になる状況にするべきです。これにより新たな民間投資を生む際の借入コストも、最大限低下させておくべきです。

マイナス金利が必要な公共投資のために有用というのは、高橋洋一氏の以前からの主張でもあります。

diamond.jp

利下げの「副作用」として、銀行経営への悪影響ということが言われていますが、はっきり言って、大したことではありません。もともと、マイナス金利になるのは、銀行が日銀に預けている準備預金のうちのほんの一部にすぎません。それ以外に長短金利差がなくなって苦しいとは言っても、2019年度中間決算での地銀全体の業務純益は、5,465億円にもなっています。2016年のマイナス金利導入時に至っては、大手行、地方銀行とも、過去最高に近い収益を上げていました。

一般社団法人全国地方銀行協会

「銀行株に優しいマイナス金利」 日銀、新たな工夫も :日本経済新聞

それでも経営の厳しいような金融機関は、本来淘汰されるべきです。個別の金融機関が破綻したところで、信用秩序が揺らぐような状況ではありません。以前も書いたように、従来型の金融業はもう構造不況業種であり、マイナス金利を深掘りすることで、金融業界のリストラと技術革新等の改革を進めるべきです。地銀の経営改善のためには、金融業界全体の改革とともに、地方経済全体の成長のための地方分権改革や男女共同参画の推進が必要であり、マイナス金利の深掘りを避けて地銀の株価を下支えしても、無意味です。

地方銀行7割が減益 収益モデル崩れ、日銀への恨み節も:朝日新聞デジタル

利下げについて、それが「通貨安競争」につながるのでは、などという見方を今日の日経はしていますが、それも心配ありません。

明後日からだった会合を2日間前倒しで急に決めたのは、米連邦準備理事会(FRB)が日本時間の今朝、今月2度目の緊急利下げで、一気に1%も金利を下げたからだ、と日経は書いています。一方、日銀は前倒しの理由を、世界経済の不透明感が強まり、内外金融市場の不安定になり、我が国の景気も弱くなって企業の資金繰り対策も必要だから、と言っています。いま、日銀の黒田総裁も会見で同じ説明をしています。

日経は、アメリカの利下げのせいでドル安になり、円高になって日本株が下がるとまずいからだ、として、通貨安競争になるかもしれない、と心配しています。日米欧の中銀が協調してドル資金の供給を行ったこともドル安になるから、「協調」と言いつつ、通貨安の「競争」になるのでは、ということです。

日米欧など6中銀、ドル資金の供給を拡充 :日本経済新聞

「協調」の陰で「競争」も 警戒の日銀は会合前倒し (写真=ロイター) :日本経済新聞

しかし、この心配はないでしょう。実際、今回、利下げをしなくても、為替レートは大して動いていません。心配だと言っている日経自身が、半年前に、もう通過競争の心配はない時代だ、と書いています。長期金利がマイナスかゼロ近くでは、生命保険会社や年金基金などの大手投資家がは、大して資産を動かさないからです。

www.nikkei.com

ということで、マイナス金利には国と企業の借入コスト低下というメリットはある一方、銀行の収益悪化や「通貨安競争」というデメリットは大したことはないので、日銀は利下げを行うべきです。

新たなオペは歓迎。今後、必要なら拡大して、マイナス金利にすべき

一方、今回の金融政策で評価できるのは、「企業金融支援特別オペ」の導入です。

これは、銀行融資を増やして、「企業金融の円滑確保に万全を期す」目的で、融資を受けた企業の差入担保の範囲内で、金利ゼロでの資金供給を銀行に対して行う特別オペで、8兆円の枠を設定しています。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200316e.pdf

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k200316b.pdf

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200316f.pdf

銀行に対する貸付期間は1年間、このオペ自体も今年9月まで半年だけ、というものですが、経済状況によっては、もっと長期の貸付にも利用し、制度として恒久化することも出来るでしょう。最初から8兆円の枠ですから、いま以上の経済危機になれば、数十兆円規模に拡大できる余地があります。

そうなれば、制度は違っても、以前のブログで書いた、ECBの長期資金供給オペ(TLTRO)に、趣旨としては近いものになります。企業向けの長期融資を増やすために銀行に対して低利融資を行うものだからです。

ECB利下げ見送りで、欧州株価も崩壊、日経平均暴落:金融政策は市場の底抜け防止には必要。日銀は利下げとECB方式のマイナス金利貸付(TLTRO)を。 - 日本の改革

この新しいオペは、ECBの制度同様、マイナス金利による銀行への不利益を緩和させる意味もあります。私は、銀行経営に厳しい結果になってもマイナス金利を深掘りすべきと考えてはいますが、銀行業界(や日経新聞?)の反対が強すぎて、実施できなくなっては元も子もありません。銀行にいくらか優しいマイナス金利政策にして、現実に実行可能にすることには賛成です。その意味で、今回のオペは評価できます。

もともと、日銀は2016年にマイナス金利を導入する時に、準備預金を三種類に分けて、マイナス金利にするのはごく一部だけ、という工夫をしました。準備預金の階層構造化と言われますが、こうした手法では、日銀はむしろECBに先んじていたようです。

https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/securities/20191216_021201.pdf#search=%27%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E5%8A%A0%E7%AE%97%EF%BC%92%E5%80%8D%E6%8E%AA%E7%BD%AE%27

そう考えれば、今回、銀行にも有利な(企業金融にもプラスになる)制度を導入したことは、ひょっとしたら、将来のマイナス金利の深掘りという選択肢をとりやすくしているのかもしれません。意図はどうあれ、日銀の今回の工夫は、使い方によっては、日本経済にはプラスになるはずです。今回は、まだ半年だけのお試し期間のようですが、小さく産んで大きく育てることが期待されます。