日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

アメリカが緊急事態宣言による財政出動で株爆上げ:日本は法改正で権利制限を先行させ、財政政策遅れる。

アメリカが緊急事態宣言による財政出動決定、米株は2000ドル近く上昇。日本はインフル特措法改正で緊急事態宣言を可能にしましたが、本格的財政政策の決定はまだ先です。今さら国民の権利制限をするより、財政出動を早く決めるべきです。

アメリカが政策総動員、とりあえず市場のパニックを鎮める

昨日13日の米株式市場は3日ぶりに反発、ダウはなんと前日比1985ドル(9.4%!)高くなって、2万3185ドル62セントで取引を終えました。上げ幅は過去最大です。トランプ米大統領が国家非常事態を宣言したことが効きました。前週末比ではまだ2679ドル下がってはいますが、12日にの2352ドルという歴史的暴落は、ほぼ帳消しにしました。

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トランプ大統領の非常事態宣言は、最大500億ドルの連邦政府の座製出動を可能にするものです。各州の検査や治療の態勢を強化するだけでなく、原油価格下落に対して、政府による大量の原油購入も含んでいます。

政府とペロシ下院議長は、下院民主党が準備した財政支出のパッケージで合意。金額は不明ですが、2週間の有給病気休暇、最長3か月の有給家族休暇および医療休暇、失業給付の強化、保険を持たない人を含む無料のウイルス検査、追加の食糧援助、メディケイドの連邦基金が含まれます。

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Pelosi, Trump strike deal on coronavirus response package | TheHill

今回の緊急事態宣言は、スタフォード法(the Stafford Act)という法律によるものです。この法律は1988年に成立したもので、FEMA連邦緊急事態管理庁)が各州や地方政府に、自然災害時の協力を可能にするもので、感染症対策も対象になります。

実はトランプ政権では既に、保健福祉省(the Department of Health and Human Services)が、公衆衛生に関する緊急事態宣言を1月末に出しています。これは今回のスタフォード法による宣言とは別の法律によるもので、中国からの入国禁止措置を可能にするものです。あと、州が自ら緊急事態宣言を既に出したところもあります。

これらとは別次元の緊急事態宣言が、1976年の国家緊急事態法(the National Emergencies Act)によるものです。この法律では、そもそも「緊急事態」の定義さえしておらず、大統領に極めて強大な権限を与え、大統領の裁量で、戒厳令の発令やインターネットの統制まで可能になります。

今回出された緊急事態宣言はそこまでいっておらず、あくまで、FEMAを通じた各州・地方政府への支援に関わるものです。

Explainer: What Happens if Trump Declares Coronavirus an Emergency? - The New York Times

What Can a President Do During a State of Emergency? - The Atlantic

このように、緊急事態宣言と言っても色々あります。アメリカは水際対策の宣言は既に出していて、入国管理に利用しました。今回の宣言では、財政出動を可能にするのを最優先させ、言論の自由まで踏み込むような安全保障上の緊急事態宣言は温存した形です。あくまで財政支出ファーストで、言論の自由の制限など、まだ想定もしない、ということです。

日本は法改正で緊急事態宣言可能に、本格的財政政策は遅れる

これに対して、日本は、インフル特措法改正を優先し、緊急事態宣言でいきなり言論の自由の制限をすることまで、可能にしました。一方で、兆円単位の本格的な財政政策の決定は後回しにしています。この法律の緊急事態宣言の制度自体がゆき過ぎであり、政策の優先順位としてもアメリカと逆のことをしています。

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まだ政府は、この法律の緊急事態宣言という制度を適用する段階になっていない、と言います。私は、この先も、今回の新型コロナウイルス対策でこの制度を適用することに反対です。

インフル特措法の緊急事態宣言では、政府が、現在のような「自粛要請」と違い、都道府県知事と指定公共機関に「指示」が出来ることになります。

確かに、感染症対策では、どうしても協力が得られない場合の最後の手段として、権利制限を行うのもやむを得ないとは思います。SARSエボラ出血熱のような致死率の高い感染症なら必要でしょう。

しかし、この制度は、今回の感染症対策としては過大です。既に、2月下旬に出した一連の自粛要請が効きすぎるくらいに効いており、自治体、企業、国民は、個別の自粛要請に対して、自発的に、やり過ぎなくらいに応じているからです。今後も屋上屋を架すべきではありません。

私は以前、新型インフル特措法による緊急事態宣言は、地域ごとの自粛要請が社会的混乱をきたすので反対、と書きました。私権制限まで必要になるような緊急事態宣言なら、全国的な対応を求める制度にすべきです。これは、2012年の新型インフル対策有識者会議でも指摘があったことです。

新型肺炎対策、緊急事態宣言は不要。無症状・軽症の感染者は自宅療養、病院のベッドは重症者用に空けるべき。 - 日本の改革

新型インフルエンザ等対策有識者会議

なるほどいま現在、政府が全国的なイベント自粛の学校休業の要請を行って、北海道の自治体単位の緊急事態宣言が出されても、何の混乱も起きていません。

しかし、北海道の宣言は政府による国一律の自粛要請と同じ時期に出されており、言わば、全国的な「プチ」緊急事態宣言に少し上書きされた形です。現状は既に、権利制限なしの全国的な緊急事態宣言状態なのであって、だからこそ、北海道で宣言が追加的になされても、武漢のように北海道からあわてて「脱出」したりするような混乱は起きていません。

何より、今回は北海道知事が自らの判断で発した緊急事態宣言であることで、道庁も地域の企業、道民も納得して自粛要請に応じています。2009年の大阪での一斉休校も、まず橋下知事が主導して、政府が追認するように「要請」をした形だから成功裡に実施できました。これが政府の宣言発出で知事に「指示」をする形だと、タイミングや根拠の点で対立が起きる可能性もありますし、おそらく風評被害は避けられません。

一番まずいのは、この宣言が言論の自由を強く制限することです。

インフル特措法の緊急事態宣言で特に強力な効果となるのは、政府が指定公共機関に指示を出せる、ということです。政府は、指定公共機関にテレビ局を含めるという解釈をして、衆議院法務委員会で、政府がNHKにも民放テレビ局にも、放送内容を変更して差し替えることが可能になる、と答弁しました。

さすがに強い批判を浴びて、政府は民放は含めないと修正をしました。しかし、NHKに対しては、放送内容を政府が変えてしまうことが出来ます。それだけでも強大な権限を政府に与えることになりますし、民放は指定しないという「修正」も、実際のところ、守られるかどうか疑問だと言われています。

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改正特措法は報道規制の道具になりうる~緊急事態対処法である新型コロナ特措法の大きな罠(山田健太) - 個人 - Yahoo!ニュース

このような言論の自由に対する極めて重大な制約は、アメリカで言えば、1976年のNational Emergencies Actで許されるものであり、今回のFEMAに関連する緊急事態宣言ではそこまでは出来ません。

日本政府は、アメリカでさえまだやっていない言論の自由への制約を可能にすることを先行させ、アメリカが優先的に決めた財政政策は、未だに水面下の議論だけです。

私は、やるべきことの順番が逆だと思います。 改正インフル特措法の緊急事態宣言は今回の感染症対策では今後も出さないような運用を行い、一方で、今月中に一日も早く、家計への異次元規模の給付金を支出する財政政策を決定すべきです。