日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ECB利下げ見送りで、欧州株価も崩壊、日経平均暴落:金融政策は市場の底抜け防止には必要。日銀は利下げとECB方式のマイナス金利貸付(TLTRO)を。

ECBが利下げせず、欧州株も急落。現状では、金融政策は財政政策のようなプラスの効果はなくても、やらないと経済にマイナスが生じます。日銀は、ECBを反面教師に利下げし、逆に、ECBにならって、マイナス金利で銀行への貸付を増やして、銀行融資を促すべきです。

欧州経済への衝撃を増幅したECBの利下げ見送り

ヨーロッパでの感染症拡大を受け、欧米各国が次々に強力な防止策を打ち出しています。ダウはまた史上最大の下げ幅を記録しました。

欧州株の下落も記録的です。欧州の主要600社で構成する「ストックス600」は大幅に6日続落し、終値は38.24ポイント(11.5%)安、イタリアの株価指数は17%安、ドイツとフランスはそれぞれ12%安。トランプ米大統領が、欧州大陸からの外国人の入国を止める措置を発表したことが主な原因です。

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欧州株下落に拍車をかけたのが、ECBによる金利引き下げの見送りです。 

投資家は、最近のFRBや他の中央銀行からの利下げ後、ECBも利下げをすることを織り込んでいましたが、予測が外れてしまい、これが失望売りを生んで、欧州株の下落を激化させました。

 そのうえ、ECBは、イタリア等の景気減速が深刻な国の国債を買うこともしなかったため、イタリア国債の利回りは1.26%から1.73%に急上昇(国債価格は下落)しました。

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今回の利下げとイタリア国債買いオペの見送りについて、ラガルドECB総裁は、「我々はスプレッドを小さくするためにいるのではない、それは中央銀行の機能でも使命でもない」と発言。これがフランス大統領、イタリア首相等から、強く批判されています。

ここで言うスプレッドとは、各国の国債間のスプレッドのことです。たとえば、イタリア国債ドイツ国債よりも支払い能力で劣るから利回りが高いので、その差がここでのスプレッドになります。

ラガルド氏は、この差を埋めるのは中央銀行の仕事ではないと言い切って、現にイタリア国債を買わなかったのですから、イタリア国債の利回りが急騰したのも道理です。利下げ見送りも悪いサプライズで、株価の崩壊度合を深めました。これを強く批判されて釈明に努めているようですが、手遅れです。信頼回復には、スタンスを変えて、利下げとイタリア国債買いオペを行うべきでしょう。

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ECBの決定から得られる二つの教訓①:反面教師にすべき点

ECBの今回の決定には、日本が反面教師にすべき点と、見習うべき点の二つあります。

まず、反面教師にすべき点は、利下げの見送りです。国債買いオペの見送りと失言も大問題ですが、ECB域内各国のスプレッド縮小は日銀の任務にはないので、日本にとって特に重要なのは、利下げの是非です。

ECBが、マイナス金利を更に下げることをやらなかったのは、株価を考えれば致命的な失敗でした。確かに、各国政府が経済活動を止めている現在、マイナス金利を更に下げても、企業の投資を促す効果はあまり見込めないでしょう。ラガルド氏が、まず財政政策を行うべきだ、と言っているのは、全く正しいことです。

しかし、たとえ利下げが経済にプラスの効果をもたらさないとしても、期待されていた利下げまでしなければ、株価には極めて大きなダメージがあることがあらためて示されました。

日本は、この過ちを繰り返すべきではありません。日銀は今のところ利下げをする姿勢を見せていないので、利下げをしないことが、今回のECBのように、ただちに失望売りを招く状況にはありません。しかし、何らかの政策を打つことは当然期待されている状態で、株価低迷が続いても利下げに踏み切らなければ、更なる株価下落につながります。

日経は、FRBが0.5%利下げしても効かなかったことを理由に、日銀が利下げに慎重だと報じています。しかし、ECBの今回の失敗にも、日銀は学ぶべきです。FRBの利下げは確かに株価を押し上げず、企業投資を刺激する効果もありませんでしたが、もしやらなかったら、株価と米経済へのダメージは更にひどいものになったでしょう。

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「金融政策の限界」とは、金融政策だけでは経済にプラスの影響を与えられないということであり、株価が下がり続けているときに中央銀行が利下げをしなかったら、金融政策をしないことが経済にマイナスの影響を与えるというリスクに注意すべきです。

ECBの決定から得られる二つの教訓②:見習うべき点

一方、今回のECBの決定から、日銀が学ぶべき点、見習うべき点もあります。今回の理事会でECBが積極的に行うと決めたのは、民間銀行にマイナス金利で貸し付けて、銀行の長期融資を増やす政策です。長期資金供給オペ(TLTRO)と呼ばれる手法です。

具体的には、ECBが2020年6月から2021年6月まで、銀行に対して、マイナス0.75%という低金利貸付を行います。これによって、特に中小企業への長期の銀行融資をサポートします。0.75%という金利は、ユーロ圏の平均金利よりも0.25%低いので、銀行にとっては大変有利です。

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2020/html/ecb.mp200312~8d3aec3ff2.en.html

欧州中銀、1200億ユーロの資産購入 金利は据え置き :日本経済新聞

(民間資金供給オペは、貸出条件付き長期資金供給オペとも言います。TLTROは、"targeted longer-term refinancing operations"の略です。過去のTLTROの説明は以下にあります)

欧州中銀、緩和縮小路線を修正 銀行向けに低利資金供給策検討 :日本経済新聞

アングル:ECB貸出支援策再開へ、TLTROの仕組みと課題 - ロイター

ECBや日銀が、マイナス金利になってからの更なる利下げに慎重な大きな理由が、長短金利差(ターム・スプレッド)が小さくなって、銀行の収益を圧迫することです。今回のECBの理事会前の議論でも、オーストリア中央銀行総裁等が利下げに反対、理由は、銀行収益悪化への懸念だったようです。

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日本も事情は同じです。マイナス金利は、導入当初から、銀行業界が強く反対してきました。これに対し、本ブログではむしろ、マイナス金利の深掘りによる民間銀行の収益圧迫は、中長期的にみれば経済にプラスだ、と主張してきました。マイナス金利政策の強化は、利ザヤをとるだけの金融機関を淘汰し、従来型の金融業界を変えて、フィンテックでより直接的な資金仲介が発展する契機になるからです。

米株が史上最大の下落:「中銀バブル崩壊」でも金融緩和は必要、「石油カルテル崩壊」は、長い目で見れば良いニュース。冷静に、迅速・大規模な財政・金融政策と構造改革を。 - 日本の改革

一方、現在の経済状況を見ると、中小企業への融資が突然止まって貸し渋り貸しはがしが起きないようにすることも当然必要です。マイナス金利政策を強化するとともに、少なくとも短期的には、銀行も生かさぬように殺さぬようにする必要があります。

このために、日銀は、マイナス金利を更に下げるとともに、ECBの行っている民間資金供給オペ(TLTRO)という手法を導入し、長期の融資を行うことを一つの要件として、民間銀行に対して、市場金利よりさらに低いマイナス金利で貸付を行うべきです。

この制度、マイナス金利下でも「銀行にやさしい」やり方として、日本でも導入すべきという議論はこれまでもあったようですが、日本銀行はまだ採用していません。ECBは既に数十兆円規模で行っており、銀行収益確保と銀行融資維持に一定の役割を果たしています。

「銀行株に優しいマイナス金利」 日銀、新たな工夫も :日本経済新聞

 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2019/fuji20190627mf.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%89%88TLTRO%27

日銀発金融ショックを招いた海外勢の都合のよすぎる注文 | inside | ダイヤモンド・オンライン

日本もこの制度を導入すべきです。今日3月13日の日経平均は17000円台になり、2016年11月以来、約3年4カ月ぶりの安値です。日銀は、ECBが利下げしなかった失敗に学んで、利下げを行うとともに、ECBに学んで民間資金供給オペ(日本版TLTRO)として、有利なマイナス金利での民間銀行貸付によって、長期の融資を銀行にさせるべきです。