日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ついに雇用も悪化、ピンチをチャンスに変える成長戦略が必要:トランプ減税にならって、法人税減税による企業の国内回帰を。

アベノミクスの主要な成果である雇用指標も悪化、企業の負担を軽減させる中長期的な成長戦略が必要です。減税は消費税ではなく、企業の国内回帰のための法人税減税を行うべきです。政府のサプライチェーン改革に、雇用対策としての法人税減税を追加すべきです。

とうとう雇用に変調、対策には中長期的な成長戦略が必要

アベノミクスの最も重要な成果だった雇用情勢に、悪化の兆しが出てきました。

2月28日発表の1月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.08ポイント下がり、1.49倍、新規求人数は前年同月に比べ16%減。日経は、製造業で契約社員のライン工が減るなど生産低迷が影を落としている、と報じています。

1月の生産指数はやや上がりましたが、新型コロナウイルスの影響で今後は下がりそうですし、小売業販売は下落が続いています。既にGDP統計では昨年10~12月の内需が総崩れとなっており、遅行指数である雇用は、今後ますます悪化しそうです。

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雇用も変調、日本経済にブレーキ 新型コロナで下振れ懸念 :日本経済新聞

消費税と感染症のダブルパンチで、消費・投資が落ちて生産もふるわず、それがついに雇用にも及んできました。雇用を増やすには、企業の中長期的な負担軽減と、ビジネスチャンス創出の環境整備が必要です。

明後日3月10日に、政府は新型コロナウイルスの緊急経済対策の第二弾を発表する予定です。既に打ち出されているのは、中小企業への資金繰り支援の拡充で、政策金融公庫からの無利子・無担保貸付を行い、第一弾対策でのの融資・保証枠5000億円を拡充するそうです。

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これはこれで当然必要ですが、動きがちょっと遅すぎます。そもそも、財投を使った公的金融の貸付金利が未だに1%超というのが、ゼロ金利・マイナス金利の現状では問題でした。これを共産党にまでおかしいと指摘され続け、今週の参議院予算委員会でようやく経産大臣が利子補給と言い出して、昨日になって無利子・無担保貸付となりました。本来は第一弾の対策に入れておくべき内容です。

10日発表の経済対策には、雇用対策も含まれる見込みですが、まだ具体的な話が出ていません。今回は緊急対策なので、短期的な対策にならざるを得ないでしょうが、この機会に、野党もメディアも国民も、中長期的で抜本的な雇用対策を行うよう、政府に強く求めるべきです。

感染症対策のドタバタから察するに、安倍政権はかなり弱っており、今なら、正当な指摘に答えて大きく政策転換をする可能性があります。雇用指標はアベノミクスの最も重要な成果であり、政権の支えなのだから、なおさらです。

トランプ減税にならって、法人税減税による企業の国内回帰を目指すべき

中長期的な成長戦略は色々と挙げられますが、まずは比較的機動的に決められる財政政策をやるべきです。

第一に、法人税減税です。野党は消費税減税を主張しますが、雇用対策のためには、企業経営をまず重視すべきで、減税をするなら法人税の恒久減税です。

現行の法人税率23.2%を18%程度に、国際的に認められるギリギリまで下げて、地方税も大きく下げて、国・地方を合わせた法人実効税率29.74%を20%程度にすべきです(イギリスは19%なのでその水準にします)。財源が問題ですが、法人税減税の場合、成長促進効果が大きいので、企業収益の上昇による税収増を主たる財源とし、追加的に、各種の租税特別措置を原則として廃止します。

法人課税に関する基本的な資料 : 財務省

法人税減税を、最近の政府の動きに合わせて行うなら、サプライチェーン改革の一環として、企業を国内回帰するための手段に位置づけることができます。

一昨日の本ブログでも書いた通り、既に政府は未来投資会議でサプライチェーン改革を打ち出しました。企業が生産拠点の中国偏重を改めるため、という目的で、高付加価値製品の生産は日本国内で、低付加価値製品はASEANで生産する方針を打ち出しています。

安倍総理、対中政策転換の可能性:サプライチェーン改革、中国からの検疫強化、習近平来日延期を同時発表 - 日本の改革

政府のサプライチェーン改革では、具体的には、中国から拠点を移した企業への補助金を想定しているようですが、特定企業への個別の支援だけでは足りません。国全体の雇用を増やすためには、国全体での法人税減税も行って、国内回帰の大きな流れを作るべきです。

お手本になるのは、トランプ政権が法人税減税によって、アメリカ企業の国内回帰と雇用改善を実現・持続させた例です。2017年末に決まったトランプ米政権の大型減税で、米企業は国内投資と雇用増を一気に進めました。当時の報道によると、大統領自身が強く国内回帰を促したこともあり、アップルは税制改正が決まった翌月、300億ドルを米国内で投資すると表明しました。減税決定からわずか1か月で「トランプ減税」を契機に雇用増や賃上げを決めた企業は100社を超えました。

減税幅が極めて大きかったためでもありますが(連邦法人税率35%を21%に減税)、法人税の大幅減税を実現するのは(財務省が反対するので)大変でも、いったん決まれば、雇用を増やすための即効的な手段になることが分かります。その後も、アメリカの雇用はトランプ政権下で、これまでのところ好調です。

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トランプ減税効果は目標未達、民主党に追い風 - WSJ

日本政府が打ち出したサプライチェーン改革は、あくまで中国依存へのリスクを回避するため、という目的の政策で、中国から日本やASEANに生産拠点を移したときの支援です。これに雇用対策を加味して、法人税の減税も行い、中国だけでなく、ASEANを含めた他国から日本に生産拠点を移したときにもメリットが生じるようにするべきです。

国税である法人税の税率は、これまでも下げてはきたので、法人税の減税幅は、トランプ政権ほどには大きく出来ません。また、OECDで、法人税減税競争がゆきすぎないように、OECD法人税率の最低税率を定める議論をしているので、国際的に許されるぎりぎりまで下げることになります。

法人税下げ競争に歯止め OECDが最低税率で論点整理 :日本経済新聞

このため、企業の国内回帰が起きるようば大規模減税を行うためには、地方税の減税も必要です。先にも書いた通り、国の法人税率は18%程度(シンガポールが17%なのでその水準)にして、地方の法人課税を大きく減税して、国・地方を合わせた法人実効税率を、現行の29.74%から20%程度に下げるべきです。

法人からの税収は不安定なので、もともと自治体の財源には向いていません。地方自治に向いた安定的な税源は、消費税です。消費税の段階的な地方への税源移譲とともに、法人事業税と法人住民税等の大幅な引き下げを行うべきです。こうした方向での地方法人2税の改革は、森信茂樹氏も主張し続けています。

http://kantou.mof.go.jp/content/000135372.pdf#search=%27%E5%9C%B0%E6%96%B9+%E6%B3%95%E4%BA%BA%E8%AA%B2%E7%A8%8E+%E6%A3%AE%E4%BF%A1%27

また、トランプ減税では、米企業が海外にプールしている所得を自国に戻させるため、第一に、米企業の海外子会社が国内に資金を還流させるために課税するのをやめる一方、第二に、海外子会社が海外に利益を留保している場合には一回限りの増税を行いました。

2017年トランプ政権最大の成果、税制改革を振り返る | トランプ政権の1年を振り返る - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

第一の、資金還流への課税をやめて二重課税を防ぐというのは、日本にも同様の制度として、外国子会社配当益金不算入制度があり、既に2009年に導入されています。この制度も、企業の国内回帰を一つの目的としていました。政府税調の昨年の提言でも、趣旨が説明されています。

https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/1zen28kai1.pdf

このように、既にトランプ税制改正に近い制度があるのですが、外国子会社の配当金を日本に資金還流させるときに、非課税(益金不算入)となるのが配当金の95%となっているので、これを100%にすべきです。経団連も要望しています。

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/074_honbun.pdf#search=%27%E5%A4%96%E5%9B%BD%E5%AD%90%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E9%85%8D%E5%BD%93%E7%9B%8A%E9%87%91%E4%B8%8D%E7%AE%97%E5%85%A5%E5%88%B6%E5%BA%A6+%E8%AA%B2%E9%A1%8C%27

第二の、海外子会社が海外に利益を留保している場合の一回限りの増税、これもやるべきです。こちらは経団連が最初は賛成しないでしょうが、企業の国内回帰のための法人税改革なのですから、減税というアメばかりではなく、ムチも必要です。世論の賛成を得るためにも、このくらいはやるべきです。

他のムチとしては、本ブログで繰り返し導入を主張し、自民党でも山本幸三議員も主張している、内部留保課税を導入すべきです。法人税の大減税を、企業の国内回帰による雇用対策としてやるのですから、企業が雇用や配当を増やすインセンティブとセットにすべきです。

このように、「雇用対策としての法人税減税」という点を明確にして、国・地方を合わせた法人課税の改革を行うべきです。野党は、消費の下支えのためには消費税減税でなく、家計向きの支出金(2014年の子育て特例給付や、維新の音喜多議員が言う児童手当増額等)で行い、雇用と成長のための法人税減税をこそ主張すべきです。今なら、安倍政権も聞く耳を持つはずです。