日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

安倍総理、対中政策転換の可能性:サプライチェーン改革、中国からの検疫強化、習近平来日延期を同時発表

政府が、中国から日本企業を国内回帰させるサプライチェーン改革と、中国からの検疫強化と、習近平来日延期を、同時に発表しました。感染症対策に対する不満が強まり、安倍総理が対中強硬姿勢に舵を切った形です。検疫強化は感染症対策としては支持しませんが、サプライチェーン改革は支持します。政府はまだ、いやいやながらの方針転換ですが、この方針を加速させて、日本は米国とともに対中冷戦を開始すべきです。

安倍総理が「生産拠点の脱・中国宣言」というサプライズ

政府は昨日3月5日、中国から日本企業を国内回帰させるサプライチェーン改革と、中国等からの検疫強化と、習近平来日延期を発表しました。習近平来日延期は既定路線でしたが、正式発表は初めてです。いずれも、総理自身がやりたかった政策ではなく、自民党や世論に感染症対策を批判され続けた末の方針転換です。

 まず、サプライチェーン改革です。内容は要するに、企業の生産拠点を中国から日本国内やASEANに移す、ということです。当日の未来投資会議で安倍総理が方針を示しました。

具体的には、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、中国等から日本への供給停止による我が国サプライチェーンが機能していないので、①付加価値が高い製品は、我が国への生産拠点の回帰を図る、②付加価値は低くても、我が国への供給が国民経済上、重要なもの(マスク等でしょう)については、ASEAN諸国等への生産拠点の多元化を図る、という方針です。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai36/siryou2.pdf

この方針を総理が表明した未来投資会議では、今の日本は他国と比べて、中国依存が高すぎるという現状が(今さらながらですが)、以下の配布資料で示されています。

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出所:内閣官房

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai36/siryou1.pdf

私は、この方針を強く支持します。一昨日3月4日の本ブログに書いた通り、安全保障上望ましいだけでなく、今や経済合理性も十分にある政策だからです。

既に自民党が、新型コロナウイルス対策の補正予算で、企業の生産拠点を中国から日本に戻す企業への支援策を盛り込んでいました。私はこの方針に賛成し、中長期的にも経済面での脱・中国を進めるべきだ、と主張しました。それからたった2日で、安倍総理サプライチェーン改革と言い出しました。

FRBが利下げしても米株下落、金融政策の限界露呈:短期的な財政政策と、中長期的な「脱・中国」経済の構築が必要。 - 日本の改革

新型コロナ追加対策 自民提言 異例の補正要求 :日本経済新聞

これまで、中国べったりだった安倍政権が、自民党内からの声に押されて、ついに方針を変え始めました。経済産業省は、安全保障上の理由からサプライチェーンの中国依存を見直すべきと言ってはいました。去年4月19日の産業構造審議会・製造産業分科会では、「経済と軍事・安全保障の一体化が進む中、 経済重視で構築されたグローバルサプライ チェーンのあり方の再考」という方向は出されてはいたものの、実際には特段の政策を打っていませんでした。それが昨日、一気に現実化しました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/007_03_00.pdf

これは大歓迎すべき変化であり、世論もこれを後押しすべきです。マスクからコンピュータ部品に至るまで、あらゆるモノの不足で、中国依存がどれほど恐ろしいか、国民も骨身にしみて実感しているところです。

この方針転換には、感染症対策での中国のデタラメなやり方に耐えかねた日本企業からの悲鳴もあったはずです。習近平感染症対策の何がデタラメかと言うと、感染症拡大を防止するために人権無視の強権策を続けながら、同時に、さっさと経済活動を再開しろと尻を叩くという、正反対のことを進めているからです。

  習近平は、初期の隠蔽による失敗を隠すために、強硬策で感染症の早期収束を目指して結局は失敗。その後、強硬策で経済が急減速して自分の立場が危ないとなると、一転して2月23日に操業再開を指示。感染症がまだ流行しているのに生産再開ですから、工場や職場で集団感染が起きています。前後して、状況ごとに習近平の都合の良いように、感染者数の定義をコロコロ変えて、今ではまた定義を一変させて無症状者は感染者数に含めないという、とんでもないことをやっています。これも生産再開を進めるためです。

そして、当該地域の当局は、企業に生産をしろと言ったり、職場での感染が出たらそのたびにまた生産を止めさせたり、ひどいときは隠蔽したりしています。現地の日本企業もこのデタラメ政策に振り回されています(その一端は昨日3月5日のNHKクローズアップ現代でも報じられていました)。企業活動の予測が全く立たないだけでなく、従業員の命に関わります。

www.nikkei.com

中国の新型コロナ感染防止、最後の山場は「職場」 :日本経済新聞

習近平総書記が秩序ある操業再開に8つの指示--人民網日本語版--人民日報

これでは、日本企業はたまりません。すぐにでも、現地の日本企業が、日本国内やASEANに生産拠点を移せるような政策を打つべきです。中長期的に見ても、中国の感染症リスク、政治リスクに対して、生産拠点の脱中国化を図ることが必要です。安全保障、リスク回避、日本国内の雇用増加、加えて、(一昨日のブログで書いたように)日本の消費者の近くでのICT化された生産を進める合理性、いずれの視点からも、サプライチェーンの脱中国化を進めるべきです。こうした理由から、今回示されたサプライチェーン改革を支持します。

今さらの検疫強化と習近平来日延期

 次に、検疫強化と習近平来日延期の同時発表です。この二つが同時発表であることが、これまで安倍政権が中国全土からの入国管理をしなかった理由を示しています。安倍総理の頭にあったのは、2009年の水際対策の失敗を繰り返さないことではなく、法律上の理屈でもなく、日本経済への影響回避でさえなく、ただただ、習近平来日を予定通り実現したい、中国を怒らせたくない、という理由だけでした。

中国への忖度が理由だということは、報道には既に出ていましたが、二つの方針を同時発表したことから、それがはっきりしました。判断の順番としては、まず、習近平来日の延期が避けられなくなって、そこで、水際対策について受けてきた批判をかわすために、今さらの検疫強化を行いました。

安倍総理が、本当は中国に配慮したいのに、国内の批判に押されて、この政策をいやいや行った様子が、日経に書かれています。

「外国からの流入者は完全に閉じられていない。バランスを欠いている。決断してほしい」。3日の参院予算委員会。野党でなく自民党山田宏氏が首相を突き上げた。首相は「外交的な配慮ではなく必要であれば決断をし、ちゅうちょなく実行していく」と答えた。
「なにもしなければ批判ばかりされる。やり過ぎのほうがましだ」。首相は周囲に強い不満を漏らし、中国への水際対策の強化に傾いていった。

出所:日本経済新聞電子版2020/3/5 23:18

www.nikkei.com

この政策は、感染症対策としては無意味どころか、有害極まるやり方です。単に、入国禁止にするだけならまだしも、わざわざ14日間も隔離せよ、ということです。

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出所:内閣官房

 

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020305.pdf

それほど長期間の隔離をするためには、またそちらに多くの人手を張りつけなければいけません。

私は、水際対策のために貴重な医療資源や行政資源を使っても費用対効果ではマイナスであり、医療関係者や官僚の人手を使う水際対策には反対してきました。以前2月19日のブログで、人手が一切いらない形の入国拒否ならともかく、今さら時宜に遅れた「水際対策の強化」の議論をしたら、政府は、多くの人員が必要な政策パッケージを打ち出すだろう、と書きましたが、心配した通りでした。上に挙げたような、仰々しいものになりました。

ダイヤモンド・プリンセスから500人下船開始:政府は「良かった点、悪かった点」の振り返りすべき、ただし、政局にすべきではない。 - 日本の改革

しかも、香港に対する査証免除措置を停止しています。これでは、香港の民主派の人達まで、容易に入国できなくなってしまいます。連帯すべき香港の民主派の人達に国を閉ざすようなことをするとは何事でしょうか。

また、どうせやるなら、検疫や隔離については、自衛隊にやらせるべきで、ダイヤモンドプリンセス号対応で素人ぶりを露呈した厚生労働省には絶対やらせるべきではありませんし、チャーター便の帰国者対応で自殺者まで出した内閣官房にもやらせるべきではありません。行政官僚には現場仕事は一切させず、どうしても必要な部分は、最低限のリモートワークにすべきです。こんなやり方なら、隔離など一切せずに、中国からの外国人入国を一律で拒否するだけにとどめた方が、まだマシでした。効果は薄くても、人手があまりいらないからです。

この政策を、感染症対策として正当化することはできません。これも、どうせやるなら、ということですが、別の根拠が必要で、二つ考えられます。

一つは、中国が日本からの入国管理を強化したことへの報復措置であり、もう一つは、中国によるプロパガンダの対抗です。政府は、今さらの検疫強化をやるというなら、後付けで良いので、この二つを理由として打ち出すべきです。

中国は日本からの入国者に対して、14日間の自宅待機や外出制限等を課していますし、自分達の感染症対策の失敗を隠すために、他国の批判や責任転嫁まで始めています。これに対する報復と位置付けるべきです。

www.nikkei.com

更に、中国は、自国の感染症対策は素晴らしい、感染症が広がってきた他の先進国はこれを見習え、という、虚偽を交えたプロパガンダを始めました。これは絶対許してはならないことであり、日本と国際社会は中国の感染症対策の間違いを厳しく批判すべきです。今回の検疫強化はその一環として、中国の感染症対策が信用できないという意思表示のため、という正当化をすべきです。

中国政府の公式発表によると、国内の新たな感染者数は連日200人以下、感染の中心地である湖北省以外ではほぼ10人以下で推移しましたが、これは発症者を含めないという無茶苦茶な数え方にもよるものです。一方で、中国は、日韓などからの入国者に対する隔離措置を広げています。

以下、中国当局者等の対応を昨日3月5日の産経の記事を下敷きに概観します。

海外での感染拡大を受けて、習近平は、「この感染症拡大は中国のせいではない」というプロパガンダを始めました。昨日3月5日、馬朝旭外務次官は記者会見で、湖北省武漢市の封鎖措置などを念頭に「中国の強力な行動が、世界の感染予防・制御のために時間を稼いだ」と強調し、「巨大な犠牲を払って全人類に貢献した」と、去年から今年1月までの情報隠蔽の口を拭って、感染症対策に名を借りた、あのすさまじい人権弾圧を、全人類への貢献だなどと公言しています。

更に、中国政府の専門家チームトップ、鍾南山氏は、2月27日の記者会見で「感染は最初に中国で起きたが、必ずしも中国が発生源とはかぎらない」とまで発言しています。

3月4日、国営新華社通信のサイトは「新型ウイルスの発生源はおそらく他国だ。中国が謝る必要はない」と主張、「中国は巨大な経済コストを支払った。世界は中国に感謝しなければならない」と言い放った、と、産経は批判的に報じています。

special.sankei.com

このように、習近平は、感染症対策の失敗を隠すためにデマを広げ、中国を見習えとまで言って、人権無視の残虐な政策を他国に求めるような様子さえ見せてきました。この芽は、すぐにつぶさなければいけません。

中国政府は既に、"A Battle Against Epidemic: China Combatting Covid-19 in 2020"という本まで出版して、中国の感染症対策を美化し、正当化し、他国にさえ広めようと言う本格的なプロパガンダを始めています。

chinamediaproject.org

こうした動きには徹底的に対抗すべきです。中国及び国際社会に対して、中国の感染症対策が習近平の権力維持のためだけに使われており、中国の国民の人権を完全に無視したものであり、許されるものではない、というキャンペーンを、日本も行うべきです。そのためにも、日本国内での感染症対策は、一定の科学的根拠に基づいた合理的な形で実効性をあげるようにする一方、国民の自由を最大限尊重し、出来るだけ自発的な協力を求める自粛要請策によるべきです。

新型コロナウイルス対策では、人権無視の侵略国家である中国相手であっても、出来る限り協調していくべきではあります。このため、私は、この問題を米中冷戦で日米欧に有利になるように利用しよう、という発想はすべきでないと思ってきました。中国に対する差別的な見方はもちろん論外です。

しかし、中国政府・中国共産党は、先進国で感染症が広がり始めて、国際的な協力が一番必要な今の今、自分達の権力維持や他国の批判に、この問題を利用し始めています。それなら是非もありません。

日本と国際社会は、感染症対策で中国に一定の協力はしつつ、中国の国民には人道的な対応もしながらも、中国の感染症対策の失敗を厳しく批判し、正すように要求すべきです。そして、感染症対策を行いながらも、米中冷戦でのアメリカ側への参加を明確にし、日米欧による中国の封じ込めを行うべきです。サプライチェーン見直しで、中国経済は苦しくなるでしょうが、やむを得ません。

その代わり、中国の国民への支援は行うべきです。中国の国民が、自国の政府の政策の誤りによって、感染症からも救われず、経済成長の果実も得られない、これを批判する言論の自由もない、感染症対策の名目で独裁制が強化されるばかり、という現状に対して、民主化のために立ち上がれるよう、陰に陽に支援していくべきです。