日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

米下院の財政支出案とバイデン勝利で、また爆上げの米株価:トランプ政権と共和党、減税の積み増しか

 新型コロナウイルス対策の財政支出案の米下院通過と、バイデンのスーパーチューズデー勝利で、米株がまた上がりました。バイデン復活で危機感を強めるトランプ政権と共和党は、大減税プランを出しそうです。選挙のある今年に、中間層の扱いで両党の政策は収斂し、来年以降、どちらが勝っても、それほど大きな変化はなさそうです。

米下院の財政支出新型コロナウイルス対策のはずが、財政刺激として好感される?

昨日、米国株式市場は今度は大幅反発しました。ダウやS&P等の各指数は4%超も上がりました(2月中旬の最高値からはまだ8%下がっています)。

株価上昇の原因は、新型コロナウイルス対策の80億ドルの財政支出案が下院を通過したことと、スーパーチューズデーで、バイデンが勝ったためです。昨日も紹介した財政支出案については、規模や中身だけでなく、超スピードで(実質1日くらい?)下院を通過したことも効いていそうです。医療保険制度が変わらないことは確定で、ヘルスケア株が買われました。

議会超党派財政支出案は今週中にも上院通過の見込みですが、その中身は、全部で83億ドル、政府の25億ドルの3倍超の規模、全て新たな支出です。内訳は、30億ドルがワクチンや治療法の研究、22億ドルが検査費用や感染防止策での連邦および州などへの支出、10億ドルが医療機器等の費用、10億ドルが中小企業への低金利融資、等となっています。

このように、今回の対策の4分の3超は、感染症対策に特化しています。このプランで株価が上がった、というのは、感染症を防ぐ見通しがついたというよりも、研究開発費や医療機器への支出が巨額になるので、ヘルスケア関連企業には有利だからでしょう。中小企業対策もありますし、全体として、財政刺激策という受け止めもされています。

Stocks Jump on Virus Spending, Biden Wins - WSJ

Wall Street rebounds to close 4% higher | Financial Times

https://www.washingtonpost.com/us-policy/2020/03/04/congress-coronavirus-emergency-spending/

thehill.com

これで分かるのは、やはり財政政策は効く、ということです。ただ、打ち出し方も大事で、日本は緊急対策5000億円を政府が発表し、金額だけはアメリカと遜色ないレベルの対策を準備したのに、あまりプラスのインパクトを与えていません。アメリカで猛スピードで議会を通したところは見習うべきです。ようやく昨夜、野党が立法での協力姿勢を見せたので、政府は予算措置も迅速に打ち出すべきです。

民主党候補はバイデンでほぼ決まり、誰が大統領でも、中間層重視で「分断」緩和

米大統領選ですが、民主党の予備選はもうバイデンで決まりでしょう。

渡瀬裕也氏は、ここまでの推移をほぼ正確に予測していたようで、さすが4年前にトランプ当選を的中させた人です。

私は、去年秋までは、資本主義を堅持した上での改革を主張するウォーレンに頑張ってほしかったのですが、医療保険で財源の裏付けを示せずに大失速、去年の段階でレースから事実上脱落しました。彼女は、もともとメディケア・フォー・オールには慎重だったのに、左派の票がほしくてブレたのが致命傷でした。今回のスーパーチューズデーでは、自分の地元マサチューセッツ州さえ落とす大惨敗で、間もなく正式に撤退でしょう。サンダースとバイデンのどちらを支持するかですが、バイデンを支持してほしいところです。

他の民主党候補の中では、社会主義者サンダースは論外、結局は、最初から言われ続けた「トランプに勝てる候補」という理由でバイデン、ということで、落ち着くところに落ち着きつつあるようです。この1週間ほどで、バイデンは急速に民主党内の支持を固め、中道左派も取り込んで大勝したので、もうサンダース支持者にあまり忖度しないで良いでしょう。

バイデンの外交政策については、以前、本ブログでも取り上げました。彼が今年フォーリン・アフェアーズに発表した主張を見る限りは、トランプ政権と共通するのは、米中冷戦の継続と中東からの米軍撤退、違うのは、関税戦争をやめて人権と同盟国を重視する、ということでした。

実際のところどうするかは分からないものの、とりあえず、日本や国際社会にとっては良さそうには見えます。特に、TPPへのアメリカ復帰が見込めるのは、経済的にも、対中の安全保障上も、大きなメリットですし、パリ協定復帰も歓迎すべき変化です。ただ、中国との関税戦争をやめて、日欧とともに中国の改革に向けて圧力をかけるというのは、アメリカが主導権を手放すようならまずいので、注意は必要です。

バイデンの外交方針:トランプ(米中冷戦・中東撤退)-関税戦争+人権重視+同盟国重視。 - 日本の改革

内政については、トランプでもバイデンでも、見かけほどには変わらないでしょう。どちらも、大企業フレンドリーで、成長重視だからです。バイデンはトランプよりは中間層重視の姿勢になりそうですが、これも今年中にトランプが軌道修正しそうで、結局、どちらも、政策の目標は似てくるはずです。

バイデンはトランプ政権での法人税減税を批判して、中間層への支出のために、21%の連邦法人税を28%にすると言っています。ただ、もともとトランプ政権前の法人税は35%もあったので、トランプ減税の半分は残すことになります。その意味ではちゃんと成長重視です。所得税の最高限界税率は、トランプ政権での37%を39.6%に変えるだけで、ほぼ変わりません。

Biden Proposes Smaller Tax Increases Than Rivals Do - The New York Times

https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/12/05/joe-bidens-surprisingly-liberal-tax-plan/

2017年トランプ政権最大の成果、税制改革を振り返る | トランプ政権の1年を振り返る - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

https://www.dir.co.jp/report/research/economics/usa/20200131_021297.pdf#search=%27%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%87%E3%83%B3+%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97+%E6%94%BF%E7%AD%96+PDF%27

また、バイデンの躍進でトランプ政権も共和党も危機感を持ち、これから、減税を上積みするようです。共和党は、給与税(payroll tax)の減税や、中国からアメリカに拠点をもどす企業への減税を時限的に行う案が上がっています。給与税減税はトランプ大統領も賛成です。

さらに大きいのが、去年から言われている、中間層への減税です。トランプ政権の一期目で法人税の大減税をやったので、今度は中間層の個人向けの減税だということで、"Tax Cuts 2.0"と言っていますが、所得税率10%の減税が柱です。一昨日3月3日、トランプは民主党は、この減税も、先の給与税の一時減税も、議会で賛成するなら実施すると言っています。民主党が乗るかどうかはともかく、中間層の負担軽減という点では、民主党と同じ方向です。

Trump weighing 10 percent middle-class tax cut plan - POLITICO

www.politico.com

バイデンは、公共事業に今後、1.3兆ドルを使うと言って、道路や橋の補修から環境投資まで色々やる、と言っています。これについては、既に共和党民主党も昨年、2兆ドルの公共投資の実施で超党派の合意をしていますから、むしろ控えめなくらいの数字です。このプランが今進んでいないのは、両党が有権者向きに政争をアピールしているからで、大統領選が終わればどうせやるでしょう。新型コロナウイルスの流行次第では、今年中に妥協して始めるかもしれません。

Joe Biden releases $1.3 trillion infrastructure plan, criticizes Trump

このように、税制についても、財政支出についても、トランプもバイデンも、見た目よりは共通点がありますし、インフラ投資のように、継続性も見られます。民主党は中道派のバイデンになり、二大政党制で両党とも中間層を取りに行く形になってきたので、分断どころか、経済政策上の収斂が進むでしょう。

こうなってから振り返ると、2016年の大統領選やトランプ政権で社会の分断が進んだ、と言われてきましたが、むしろ逆ではないでしょうか。

これまで見捨てられたと感じた中間層が、2016年にトランプに投票してまさかの当選、あわてた民主党もまた中間層を取り返しに行って、2018年の中間選挙では民主党が下院で勝利、そして今年2020年は、両党とも、中間層の取り合いゲーム、ということで、結果的には、二大政党制での競争が働いているのでしょう。トランプが再選しようがしまいが、案外、分断よりも社会的統合のきっかけになった大統領と、後世には評価されるかもしれません。