日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

安倍総理の会見、一斉休校で専門家の意見生かせず。PCR検査は医療崩壊防止と信頼回復のバランスが重要。

安倍総理が、新型コロナウイルス対策について記者会見。国民の信頼回復を重視したことは評価しますが、一斉休校の根拠について、専門家の意見を反映した説明をすべきです。PCR検査の数を増やすことを強調したのは、医療崩壊を起こしかねませんが、国民の政府への信頼も回復せざるを得ず、今後、バランスを慎重に取る必要があります。

政府は専門家会議をうまくマネージメントできているか

昨日2月29日の安倍総理新型コロナウイルス対策に関する記者会見、今年度予算の予備費2700億円超の一部を使った第2弾の緊急対応策を10日程度でまとめると表明する等、これまでの方針を少しだけ具体化しました。

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 ただ、詳細はまだまだこれからで、昨日の会見は何と言っても、総理が国民に直接語りかけることが目的だったのでしょう。

総理が国民に直接理解を求める姿勢は支持します。遅すぎたのは確かなので反省すべきですが、国民が不安を感じている間は、今後も繰り返し、こうした会見を開くべきです。 

肝心の内容ですが、二点、改善すべきところがあります。

一つは、専門家の意見の生かし方です。

突然の全国一斉休校の決断の理由について、総理は、2月24日の専門家会議で、この1、2週間が勝負だと言うから、出来ることは何でもやるという立場で決めた、と言っています。これは、「自分が急に決めたのは専門家会議のせいだ」と聞こえかねない言い方でした。

私は、この経緯がずっと気になっています。

2月24日に専門家会議が具体的で危機感に満ちた「見解」を発表、翌25日に、政府は気の抜けたような基本方針を発表、批判されると一転して、26、27日に全国一律の強い自粛要請。この全国的自粛要請につき、安倍総理は繰り返し、「24日に専門家会議がこの1,2週間が収束できるかの瀬戸際だと言った、それが判断の根拠だ」と言い続けています。

この「1,2週間」という期間は、専門家会議と総理との調整が不十分なまま出されて、総理はまるで、彼ら専門家のせいで自分は追いつめられて無理な決定をしたんだ、と逆ギレしているようにさえ見えます。

私は、世論に押される形で政府が責任を取って厳しめの政策に転換したのは大変良いことだと思いますが、政府が専門家会議をうまくマネージメントできていないのではないか、という心配をしています。

学校の全国一斉休校について、専門家会議にも、そのメンバーの誰にも諮らずに決めたのは、やり方としておかし過ぎます。この方針が、政治的にどうしても必要だと言うなら、内々にでも、会議の長にだけでも方針を伝えて、科学的に正当化できる根拠を挙げてほしい、と相談すべきでした。

それをやらないから、専門家会議メンバーから、この政策の効果は不明だと言われてしまい、同じ意見の研究者や医師の意見があちこちのメディアに出て、国民の不信感をかえって高めています。

子どもが感染したり感染を広げたりするリスクは小さい、と言われているので、確かに効果のあやしい政策です。ただ、一定の効果を認める専門家もいることはいます(皆さん、慎重な言い方ですが)。

ニュースゼロだったと思いますが、順天堂の堀賢教授は、検査がボトルネックとなって未発見のマイクロクラスターが生じている可能性があるとは言える、と発言していました。「先手先手」と言うなら、こういう判断もありでしょう。濱田篤郎・東京医科大教授(渡航医学)は「通学生が減ることで電車の混雑が緩和されるといった社会活動の低下による感染抑制の効果はあるだろう」と言っています。

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こうした声を、専門家会議には仁義を切ったうえで生かす、というやり方も出来たはずです。

私は、総理が秘書官と独断で決めたことであっても、対策が少なすぎると不安を感じている国民の信頼を回復するためなら、あえて科学的根拠の乏しい全国一律の休校措置でも、やる価値はあると思います。ただし、その場合にも、科学的な根拠が必要なのは当然です。専門家会議が期間を1,2週間と区切った、だから何でもやるんだ、だけでは、国民の信頼を回復できるかどうか、微妙です。

少なくとも、「科学は無視して政治判断」という形は絶対に取るべきではなく、「複数の科学的知見の中から、政治判断でこの意見を選ぶ」という形にすべきです。

今後は、専門家会議の位置付けをしっかりさせて、科学的知見が必要な政策決定のときには、必ず事前のコミュニケーションをとって進めるべきです。

検査急増が医療崩壊を招かないか

もう一つ、総理が示した方針で今後改善すべきは、医療崩壊を招かないよう、軌道修正が必要だ、ということです。

特に、検査体制を充実させる、ということを強調した点です。

ウイルス検査については、もう軽症者についてやるべきではない、重症者の命を救う目的にしぼるべきだ、というのが専門家の大体のコンセンサスでしょう。それでも、現状では、国民の不安や不満が高まり過ぎているのは事実です。テレビ番組が不安をあおるのもけしからんとは思いますが、根本的な問題は、軽症の風邪やインフルエンザについてまで、簡単に医者に行くのが当然だという日本の医療制度自体です。

本ブログでは、以前、そもそも医療がフリーアクセスになっている現行制度が問題で、この機会に、有識者が、今までがおかしかった、と声を上げるべきだ、と主張しました。

新型コロナウイルス対策、専門家会議も重症者優先を強調、萩生田文科大臣は地域ごとに患者なしでも休校検討:両方おおむね支持。 - 日本の改革

しかし、その時も書いた通り、政府の口からは、それは言えないでしょう。そうした現状を放置してきたのは日本政府なのですし、政府の感染症対策に国民の不信が高まっている今、そもそも論を持ち出しても、かえって反発を招いて信頼が失墜し、今後の対策への国民の協力も得にくくなってしまいます。

だから、総理が、検査体制の充実に万全を期すという方向で発信したのは、やむを得ないことと理解します。不要な検査が多少増えても、国民をいったん安心させる必要がある、という判断は正しいと思います。

総理の発言もよく聞くと「かかりつけ医など身近な医者が必要と考える場合には」という限定付きで、全ての患者が検査を受けるようにする、と言っています。国民の信頼回復と医療崩壊防止との間で、難しいバランスを取ろうとしているのが伺えます。

ただ、これでひとまず国民に安心感を与えて検査能力も充実させたら、細かく情報発信をしつつ、不要な検査抑制と医療崩壊防止に段々と戻していくべきです。

一般の病院やクリニックを通じた検査の場合には、院内感染防止のために万全の対策をとらせることや、医師誘発需要による余分な検査(平たく言えば、開業医等がもうけのためにいらない検査をすること)の抑制が必要です。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-sakamoto?bfsource=relatedmanual

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 今回、水際対策について、2009年の失敗の経験が、十分に生かされませんでした。

国内の対策についても、同じ過ちは避けるべきです。外来に人が押し寄せて、病院でかえって感染のリスクを高めた失敗は、絶対繰り返してはいけません。昨日の会見で誤解を招く部分、誰でも病院やクリニックに行って、検査をいくらでもして下さいと思われるような部分については、これから軌道修正をして、再度バランスをとるべきです。

医療崩壊防止のため、総理が会見で言った5000床というベッドの確保は一日も早く具体化し、人工呼吸器もどうやら全然足りないようなので、大至急、増産も含めたあらゆる方法で確保すべきです。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-wada-2?bfsource=relatedmanual

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/pm-abe-hannou

水際対策以外は、政府の方針をだいたい支持

色々注文をつけていますが、私は、政府の対策を、水際対策以外は、現状では、全体としては、支持します。

政府は、水際対策へ人手を使いすぎ、しかも間違った人(自衛隊でなく厚労省内閣官房)を使いすぎたのは大失敗でした。チャーター便の帰国者対応であれほど大勢の厚労省内閣官房の職員を使ったのは初動の遅れにつながった可能性がありますし、自殺者まで出しました。クルーズ船については、船内の防疫体制が全然ダメだったうえ、下船の判断が遅れたのは乗客・乗員に感染を広げた可能性が高く、官僚等にも感染を広げました。

総理もぐずぐずして、あれほど時間があったのに、基本方針をきちんと詰めなかったために、世論ばかりか政府内部の反発も招いている様子も見られます。全体に、甘く見て対応が遅れたうえ、専門家会議の動かし方も含め、組織運営としても失敗を重ねました。

それでも、政府が出来るだけ国民の自由の制限をしないようにして、それがゆきすぎると、かえって国民、野党、専門家から強く批判を浴びて、世論に応えるという民主的な対応で、一転して対策を強化させた、という過程は、私はむしろ評価します。

対策をやり過ぎても批判を浴びるし、対策が足りなくても批判を浴びます。総理は最初、危機感も足りませんでしたが、それ以上に、やり過ぎとの批判を恐れて、大した対策は打ちませんでした。そのときには、責任回避の姿勢も目立ちました。

それでは対策として足りなさ過ぎるということで、強い批判を浴びて軌道修正し、観念して記者会見し、やり過ぎとの批判を浴びても責任を取る姿勢をようやく見せました。仕切り直しで、国民の信頼回復に努めつつ、効果的な感染症対策をとるよう、応援したい気持ちでいます。

検討中の新法で、2009年と今回の失敗の反省を生かしてほしいと思います。