日本の改革

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安倍総理、新型コロナ対策で一転して全国一律の自粛要請:基準明確なのは支持。企業倒産の増え方によっては、中小企業向け特別保証を検討すべき。

 政府が全国一律の自粛要請はしないと言っていたのが一転、安倍総理が、今後2週間の全国的イベントの自粛要請。終期を明確化させ、総理自身が責任もって発信したので支持します。が、経済には劇薬なので、休業補償と小渕政権時代の中小企業向け特別保証をやるべきです。

わずか一日で方針転換

安倍総理新型コロナウイルス対策本部で、「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請」しました。

前日発表した基本方針では、イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請は行わないとしていて、それを具体化しただけなのか、それとも、前日の方針を覆したのか。

総理発言では、基本方針では全国一律の自粛要請は行わないとした、「その上で、政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ」、今後2週間の自粛要請をすることといたします、という表現です。基本方針通りなのか、違うのか、よく分かりません。

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日経は、「首相が決めたのは企業などから国の強い後押しを求める声があったためだ」としていますし、

イベント中止・出社禁止 新型コロナ、経済非常時モード :日本経済新聞

朝日は、菅義偉官房長官も会見で聞かれても基本方針との整合性については言及しなかったことも踏まえて、わずか1日での事実上の「方針変更」だ、として、政権批判の高まりが影響しているのでは、と書いています。

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ダイヤモンド・プリンセス号への対応で海外メディアから批判を受け、読売の世論調査では、新型コロナウイルス対策での政府のこれまでの対応を、評価しない人が52%、する人が36%で内閣支持率も下落と、このところ政府の対応への評判は散々でした。

2020年2月 電話全国世論調査 質問と回答 : 世論調査 : 選挙・世論調査 : 読売新聞オンライン

そのうえ、基本方針に対して、栃木県の福田知事が「国にはいま一歩踏み込んだ対応を」と言い出したり、企業からも対策の上乗せを求められたり、丸投げされた方の不満が強くなりすぎて、方針転換したのでしょう。

IOC委員がオリンピック中止に言及したことを受けて、午後からの予算委員会で野党の党首に色々言われて更に支持率が下がるのを心配したのかもしれません。

基準は明確なので支持、ただし、経済に急激な打撃なので、中小企業の資金繰りで異例の対応必要

私は、今回の安倍総理の方針転換を、結論としては支持します。2週間と終期がはっきりしており、総理自身がリスクをとって政府が責任を取る姿勢を見せたからです。

基本方針では、地域ごとにクラスターが出来始めているから、政府が関与する形で地域ごとの対応、という形になっていて、そちらの方が理にはかなっています。それを覆して、全国一律の自粛要請を総理大臣が行うのですから、理屈よりも、自治体等に丸投げして不信感がつのるよりも、やり過ぎでも政府が一律にやって、政府への信頼を回復しようとした形です。

正直、中身はやりすぎ感がありますが、期間を明確にしていますし、強制力のない自粛要請には政府への信頼が大事ですから、この政治判断は支持します。

ただ、今回の総理の示した方針は、経済には相当の劇薬になるでしょう。政府が大きく方針転換したので、これまでの予定を急に変える必要が出てきましたし、何より、感染者が出ていようがいまいが全国一律で自粛要請を行うので、消費や投資のマインドに、長く悪影響を与えます。自粛の期間はたった2週間ですが、押さえ込み不可能な感染症なので、感染者数が減るのには時間がかかりそうです。

2019年10~12月GDP最悪+新型肺炎の経済への悪影響は、政策次第で長引く。株式市場に注意。 - 日本の改革

経団連と連合を呼んで協力を要請したのも、本気度を見せて大変良かったですが、全国的な自粛要請は急な方針転換で起きたのですし、企業にも労働者にも、経済対策で、一定の補償は必要でしょう。既に民間は自粛で進んでいました。総理が期間を区切って予見可能性を高めたのは経済活動にプラスですが、方針転換が急すぎた点はマイナスです。

既に昨夜、自民、公明両党の幹事長、国会対策委員長は、追加の経済対策の財源として補正予算も考えることにしたようです。公明党は3月に経済対策発表と報じられていましたが、こちらも前倒ししたのでしょう。

政府、経団連・連合らに新型コロナ対策を要請 :日本経済新聞

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経済対策の中身については、財政支出も必要だと思いますが、まず中小企業の資金繰り倒産を減らすことが大事です。今回のショックは、感染症の急な流行と政府の要請によって、一気に受注等が蒸発したうえに、総理大臣が強烈なダメ押しをしたもので、まず激変緩和措置が必要だからです。高橋進氏も、25日のWBSで、モノ、人が動かないから財政支出は効きにくいので、大事なのは信用保証と言っていました。

私は、この信用保証枠の上積みをすべきと言ってきました。既に政府は、観光業等の中小企業支援で、政策金融公庫による5000億円の緊急貸付・保証枠を設けています。

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が、安倍総理の全国一律の強い自粛要請を見ると、それだけでは足りないと思います。観光・外食・小売等といった特定業界を想定した対策だけでなく、経済全体へのマクロのショックを想定した対策にすべきです。もともと、消費税の打撃は民間の予想をはるかに上回っていますし、何より、今回のダメージは急すぎます。そして、この押さえ込み不可能なウイルスの影響は比較的長く続く可能性があります。

朝日によれば、多くの保険会社は、保険料算定の難しさを理由に、基本的に感染症を保険の対象外としています。

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以上を考えれば、今のところ、1997年の金融危機や2008年のリーマンショックほどの落ち込みが見られなくとも、中小企業への資金繰り対策だけは、その当時と同様の対応をすべきです。

私は、1998年に小渕政権がやった中小企業金融安定化特別保証制度と同様、中小企業が金融機関からの借入れの際、信用保証協会が100%保証する制度を、数兆円規模でやることを検討すべきだと思います。当時は、最初は20兆円、結局は30兆円を要しましたが、一桁少ない程度の枠です。

この制度は当時、かなり批判されました。事実上、中小企業の借金をチャラにするものだからです。ひどい不公平感がありましたし、非効率的な企業が生き残るデメリットはあるからです。

確かに、個々の業界・企業単位では不公平感があったり、企業のモラルハザードをもたらすという、ミクロでのデメリットが大きい政策です。

しかし、今は、マクロ経済全体への急激な打撃を緩和することを優先すべきです。観光・外食・小売等の業界の資金繰り倒産が増えて、それが連鎖倒産や、失業の増加につながる可能性が高いのが現状です。もともと消費増税でマイナス成長になっているところですし、総理の方針表明以前でさえ、自粛の経済効果はGDPでマイナス1%と言われています。それにプラスして、全国的な自粛が追加された状況です。

1998年の特別保証制度は、貸し渋り貸しはがし対策として行われたものなので、金融危機で導入された制度を今回利用するのは筋違い、という批判は当然あり得ますが、消費税増税に、民間主導の自粛効果だけでマイナス1%の下押し、更に自粛を急に追加、という状況で、合わせ技で考えれば、企業倒産という点については、金融危機並みの波及効果を想定はすべきです。ミクロでの公平や効率性については、経済成長がプラスになる見込みがはっきりしたところで、別途対策をするべきです。

こんな禁じ手をそもそも議論することさえまずい、今後また蒸し返される、という批判もあり得ますが、パンデミックになるような感染症の対策が必要となるのは、めったにないことです。

特別保証制度は、不公平さや非効率は確かにある政策ですが、倒産減少には、大きな効果を発揮しました。東京商工リサーチによると、1998年に年間1万8,988件だった企業倒産は、1999年には1万5,352件まで約2割(19.1%)減少しました。

企業倒産で振り返る「平成」30年(前編)~バブル崩壊、金融危機、リーマン・ショックに揺れた日本経済~ : 東京商工リサーチ

安倍総理の君子豹変による全国一律の自粛要請は支持しますが、経済の急減速には、よほどの対策が必要です。今後、中小企業の倒産増加には十分な注意が必要です。もし、連鎖倒産が続く兆候が見られたら、数兆円規模の特別保証制度を導入すべきで、政府は非公開でも、今から検討、頭の体操はしておくべきです。