日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

イギリス政府「我が国はEUからの低賃金労働への依存をやめて、技術と自動化への投資に集中する。経営者は適応せよ」!

イギリス政府が新移民政策を発表。低スキルの移民を減らし、英語能力や学歴などのある高スキルの移民を増やす方針です。はっきりと低賃金外国人労働者への依存をやめると明言しており、日本政府も見習うべきです。

選挙公約を守ったジョンソン首相

イギリス政府は、EU離脱後の新たな移民政策を発表しました。

2021年1月1日から、移民の全体的な数を削減します。その際、高度なスキルを持つ労働者を最優先します。従来のEU市民に保障されていた自由な移動をやめて、EU市民と非EU市民を平等に扱い、ポイント制を導入します。以前、本ブログで紹介したポイント制の中身が決まりました。

EU離脱後のイギリスの移民政策で日本が見習うべきは、語学力等に応じたポイント制の活用 - 日本の改革

このポイント制では、イギリスに移住しようと思ったら、どの外国人も、国の基準で70ポイントの獲得が必要です。

まず、必須の条件として、政府承認の雇用主からの求人があること(20ポイント)、仕事に必要なレベルの技術(20ポイント)、一定レベルの英語能力(10ポイント)が必要です。これらは一つ欠けてもダメで、三つ揃ったら50ポイントが与えられます。

あと20ポイントは、いくつかの条件の組み合わせから、自分に合うものを選ぶことが出来ます。23,040~25,599ポンドの収入なら10ポイント、25,600ポンド以上の収入なら20ポイント、特に労働力不足の仕事なら20ポイント、STEM分野の博士号なら20ポイント、それ以外の分野での仕事に必要な博士号なら10ポイント、となっています。

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Source: The Home Ofiice, the UK government

The UK's points-based immigration system: policy statement - GOV.UK

これは、2月19日にイギリス内務省(the Home Office)が発表した、移民政策に関するポリシーペーパーという文書の説明によるものですが、このペーパーには、新移民制度の趣旨が、以下のように述べられています。

私たちは経済の焦点をヨーロッパからの安い労働力への依存からシフトさせ、代わりにテクノロジーと自動化の投資に集中する必要があります。 雇用主は調整する必要があります。

the Home Office, the UK goverment (2020) The UK's points-based immigration system: policy statement 

これは、先進国の目指す方向として、お手本にすべきものです。

少子高齢化や人口減少で労働力不足なのはいずこも同じ、そこで、どの国も安い移民労働に頼っています。しかしこれが、低賃金労働に頼る非効率な経済構造を残してしまい、国内の賃金水準を抑え、余計な社会的摩擦を生み、多様性の促進のためにさえ、必ずしもプラスになっていません。

誰もが分かっていることではあっても、どの国の経済も、現に移民の労働に頼り切ってしまい、これを変えようとしたら、低賃金労働に依存する非効率的な企業や団体からの反発を受けるので、どの国もなかなか変えられずにいます。そのフラストレーションが、欧米でのポピュリスト政党や政治家の台頭を生んでいます。私は、この文脈での「ポピュリスト」は、人種差別や暴力的手法等、自由民主主義のルールを破るのでなければ、悪いものとは思っていません。

 イギリスの新移民政策についても、これまでルーマニア等の低賃金労働で急拡大した業界(介護業界等)が、早速批判しています。なお、新制度で打撃を受ける低賃金業界とは、主に以下の業界のようです。

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Source: Financial Times, February 19 or 20 2020

Picking winners and losers under new UK points-based immigration system | Financial Times

ところが、イギリス政府は、こうした抵抗を排して、本当に移民制度を変えようとしています。それが可能になったのは、2016年の国民投票と昨年末の総選挙で、東欧からの低賃金移民の流入を止めてくれという民意が示されたからです。

今回のポイント制導入は、昨年末の総選挙での保守党のマニフェストに明記されていたものです。オーストラリア式のポイント制と言っていましたが、今回のものはそれよりも条件は厳しいようです。

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Source: The Conservative and Unionist Party Manifesto 2019

https://assets-global.website-files.com/5da42e2cae7ebd3f8bde353c/5dda924905da587992a064ba_Conservative%202019%20Manifesto.pdf

民意のバックがあるから、政府は改革の必要な産業に対しても、はっきりと主張をすることが出来ます。上の保守党マニフェストの写真で真ん中に写っているパテル内務大臣は、介護分野での人手不足の懸念について聞かれて、移民は解決策ではなく、人々の技術と質の高いケアへの投資こそ求められている、つまりは、人手不足は技術革新への投資で何とかしろ、と答えています。

もちろん、単なる抵抗勢力の反対だけでなく、この政策にも色々とクリアすべき問題はあります。EUからの移民のイギリス経済への影響は、一人当たりGDPはほとんど大きくしていないけれど、もしEUからの移民をやめれば、中長期的には一人当たりGDPにはマイナスという試算もあるようです。一方で、新移民制度で、ハイテク産業には明らかにプラスなようです。EU以外の、インド、アメリカ等から、高度人材を呼びやすくなるからです。

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このように、ハイテク産業に海外から優秀な人材が集まって、一方で非効率的な産業が人手不足で効率化する必要があって、技術革新の供給と需要の両方が用意される形になれば、まだ経済予測の試算に表れないような技術革新や自動化がどんどん起こせるはずだ、だから今までのような低賃金労働への依存をやめて、技術と自動化への投資をどんどん行おう、という方針なのでしょう。

夢のある、しかも現実味のあるビジョンです。我が国でも、「低賃金の外国人労働への依存をやめよう、技術と自動化の投資をしよう、経営者の皆さんはそれに適応してください!」と、明言できるようなリーダーが出てほしいものです。