日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ダイヤモンド・プリンセスから500人下船開始:政府は「良かった点、悪かった点」の振り返りすべき、ただし、政局にすべきではない。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスから、約500人が下船、検査で陰性なので自宅へ。政府は、方針転換の遅れ等で船内での感染リスクを高めた失敗を認めるべきです。ただし、今さら水際政策の失敗を政局にすべきではありません。

ダイヤモンド・プリンセスへの対処で「良かった点、悪かった点」

大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客のうち、検査で陰性の高齢者等の下船が始まりました。日本政府は、船内検疫で乗員・乗客を事実上の隔離状態に置いたのに、残念ながら、集団感染が起きてしまいました。

この点、国際社会は、日本政府に理解を示しつつ、反省を促しています。

WHOは、日本政府の当初の判断は正しかった、ただ、「状況が変化し」、船内で予想以上に感染が広がった、として、事後的な調査が重要との認識を示しました。

また、アメリカの疾病予防管理センター(CDC)は、感染を遅らせた可能性があるとしつつ、船内感染を防ぐには不十分だったかもしれない、と評価しています。一方、日本政府の多大な取組を賞賛し、無症状者間での感染に注意を促しています。

クルーズ船「感染拡大、予想以上」 WHOが見解 新型コロナウイルス:朝日新聞デジタル

日本の措置、船内感染予防には「不十分だった可能性」-米CDC - Bloomberg

さすがに菅官房長官も、「結果として、良かった点、悪かった点、いろいろあると思うが、しっかり検証し、次につなげていきたい」と、神妙に述べています。

mainichi.jp

菅氏が言う通り、何が良くて何が悪かったかの検証は必要です。

まず、悪かったところを考えてみます。

日経の社説は、政府の反省点として、①当初は集団感染について甘い見通しを立て、検査なしに下船させるという方針を立てたこと、②下船の条件やその後の対応の明確化も、全員検査して下船に方針転換も遅かったこと、③そのために専門家の意見を反映できなかったこと、等を挙げています。

www.nikkei.com

これについて、①の、当初の見通しが甘かったのはやむを得なかったと思いますが、②の、対応や方針転換が遅かったことは、反省すべきでしょう。WHOの言う通り、状況が変わって次々に感染者が出たときの方針転換はもう少し早くて良かったかな、と思います。

問題は、③です。日経は、判断を柔軟に変えようとしなかったから、DMATら専門家の知見が十分生かされなかった、と言っています。これについて、昨夜(2月18日夜)に、神戸大学の岩田健太郎教授が、ややイレギュラーな形で乗船して、船内に専門家がおらず、安全なグリーンゾーンと危険なレッドゾーンが区別されておらず、ひどい状態だと批判しました。

これに対し、厚労省幹部の一人は事実誤認だとして、「船内には、感染症に詳しい医師や看護師が毎日現場で業務しているほか、感染症に関する学会の指導などを受けている」と説明している、と朝日は報じています。

digital.asahi.com

今夜の報道ステーションでも、動画で、汚染地域をきちんと区別している様子も映っていました。

橋本岳厚生労働副大臣は、岩田氏の乗船は手続き的に問題があった、と批判しています。

 どちらが正しいか分かりません。ただ、以前に報道された船内の様子、乗客乗員がネットにアップした動画などで、素人目には疑問を覚えたときもあります。一応は見直しが必要なのでしょう。現状では、(イギリス国籍の船内とは言え)日本で一番ハイリスクグループが集中した場所ではあります。

要するに、「悪かった点」として、専門家の意見を十分生かせていない面はあるようなので、そこは改善すべきでしょう。

他に、こうしたクルーズ船のようなケースについて、船や運営会社の国籍が外国の場合につき、国際的なルールを作る必要もあるでしょう。クルーズ船に限りませんが、国内で数千人、数万人、それ以上に療養してもらうような施設の確保も必要でしょう。

一方、日経は挙げていないようですが、「良かった点」もあります。

まず、「とりあえず船内隔離」と決めた最初の判断です。日経は当初の見通しが甘かったと言いますが、私は、初動としては正しかったと思います。前例のない事態だったのですし、入港を認めて物資が補充できれば、豪華客船でもあり、多くの日本国民を含む乗客らの安全は当面確保できます。

入港をそもそも拒否すべきで外国に任せるべきだった、という意見もありますが、私は反対です。乗客に日本人がこれほど多ければ、彼らの扱いも、船全体の扱いも、イギリスやアメリカが丁重になったはずがないと思います(ジョンソンとトランプの国ですよ…)。それ以前に、国際法上、本来、入港拒否権があるのかどうかも、本当は微妙なようです。

www.tokyo-np.co.jp

別のクルーズ船ウェステルダム号を、恐らくは乗客に日本人が少ないと言う理由で入港拒否したのは、本来は問題です。ただ、ダイヤモンド・プリンセスの対応だけで、日本政府はもうキャパを超えていたのでは、とは思うので、ダイヤモンド・プリンセスのみ寄港、ウェステルダムは拒否というのは、やむを得なかったとして、政府の対応は理解します。

また、下船させた人達を公共交通機関で帰宅させたのも、私は、現時点では、「良かった点」に挙げたいと思います。政策の重点を水際対策から医療体制の確保に移すことをはっきり示したからです。

この方法につき、今日2月19日の衆議院予算委員会で、山井和則議員が、あまりに緩すぎないか、と質問をしました。念のために、「快適な場所でもう2週間」隔離すべきではないか、ということです。

これは、船内で感染が広がったことを考えれば、理屈の上では正しいことです。山井氏も言うように、検査で陰性と言っても、1週間前に検査した人もいるし、アメリカは自国民の乗客は2週間隔離しているからです。

これに対する加藤厚労大臣の答弁は、以下のようなものです。

国立感染研究所の意見を聞いて、このやり方で構わないということだった、「念のため」と言い出したら、このウィルスの正体がまだ分からない以上、その中でどれくらいのコントロールが必要かも本当のことは分からない、14日間で本当にいいのか、という話になる、そこで、乗客の人権と、国内の現在の感染状況等、色々考えて、政府の責任で決めた、というのです。(表現は多少違いますが)

私は、この判断を支持します。ちゃんと専門家の意見を踏まえていますし、政治判断のやり方としても正しいと思います。

加藤大臣の主張に一言追加するならば、(専門家の判断を踏まえたうえで)全く普通の人と同様に帰宅可能とすることで、新型コロナウィルス対策を、水際対策から次の段階に移すことをはっきり示すことにもなります。

まあ、自宅に戻ったら、2週間くらい、出来るだけ自宅にいて下さい、よほど大事な用がなければ外出しないでください、と伝えて、保健所で経過観察は出来れば更に良かったと思いますが、これから保健所も大変でしょうから、やむを得ないかもしれません。

以上のように、方針転換が遅れたうえに専門家の知見不足という「悪かった点」はあるものの、当初の方針が正しかったのは「良かった点」だと思います。

新型コロナウィルス対策を政局には絶対使うべきではない

こうして、水際対策で大きな議論となった一つ目のダイヤモンド・プリンセスについて、まだ対応は続くとは言え、一つの節目は迎えました。

もう一つ、中国からの入国管理について、あらためて問題視する対応や報道が出てきました。時事通信の記事から引用します。

「事態を小さく見せようとし、水際で失敗した」。野党共同会派が18日に開いた新型肺炎に関する合同対策本部の会合で、国民民主党泉健太政調会長は政府の対応を厳しく批判した。
 政府は当初、発熱症状や中国・武漢市への渡航歴、武漢滞在者との接触がある人らをウイルス検査の対象にしていた。ところが2月に入り、感染経路の分からない感染例が続出。首相側近は「1月時点で中国人全ての入国を止めるしかなかったが、もう遅い」と頭を抱えた。
 政府関係者によると、習近平国家主席国賓来日を控えて中国側から「大ごとにしないでほしい」と要請があったといい、これも後手に回った要因だとみられる。

www.jiji.com

つまり、中国から大ごとにするなと言われたから、「中国人全ての入国」を止めなかったと、首相側近が言っている、ということです。本件に関する政府の意図について、初めての報道ではないでしょうか。

事実なら、許せない話です。

が、正直言って、誰もが、どうせそんなことだろう、と予想していたのではないでしょうか。私も「やっぱり」としか思いませんでした。相変わらず安倍政権は親中でどうしようもないと思います。

それでも私は、中国への配慮という安倍総理の判断とは全然別の理由で、入国管理について、政府の方針を現状では支持します。

私は、最初から一貫して、2009年の新型インフルエンザでの失敗を踏まえて、水際対策に医療資源や行政資源を使いすぎるべきではない、むしろ国内の医療体制が大事だ、ということを言い続けてきました。医療体制への懸念を最重視しているのは、新たな感染症があろうがなかろうが、いま現在の日本の医療体制が極めて脆弱だからです。

本ブログでは何度も取り上げてきた通り、医師不足は深刻です。急性期病床も医療費効率化のために減らす、という方針でやっています。今回の感染症の流行次第では、この方針も見直さざるを得ないでしょうが、とにかく今、全然足りません。

そもそも、加藤厚労大臣の先の答弁に見る通り、今回、未知のウィルスへの対応をすることになります。専門家も含めて、対策が完全に分かる人はいません。どれくらいのリスクと見積もるべきなのか、どの程度の対策をすべきなのか、最後は、政治判断です。

このウィルスをどう見るかにつき、封じ込めの可否には、悲観論、楽観論があるようですが(下記の記事など)、私は、本ブログで書いてきた通り、悲観論に立ちます。最初から封じ込められないなら、徹底した入国管理や隔離よりも、通常プラスアルファの国内感染防止策と、かかったときの治療を重視すべきでしょう。残念ですが、一定の被害は覚悟して、その最小化を目指すやり方です。

www.thinkglobalhealth.org

日本政府の今のやり方は、良くも悪くも、結果的にはこの方針に近いと思います。もちろん、封じ込めは無理です諦めますとは言えないでしょうが、「水際対策から医療体制の整備へ」というメッセージは明確で、封じ込め不可能な新型コロナウィルスに対する方針として、一定の合理性はあると思います。もちろん、未知のウィルスに対しては最大限の警戒を、というのは合理的ですが、それは封じ込めについて楽観論に立った場合のことでしょう。

入国管理については、単に中国から来る外国人の入国拒否をすればいいだけだから、人手なんかいらなさそうです。しかし、この政策をやるときには恐らく、水際対策の強化の一環として行われるでしょう。単なる入国拒否以外に、検査や医療のためのスタッフを、何らかの形で使うような政策パッケージになりかねないと思います。

特に、野党が支持率を下げるのに効くと踏んで、水際対策は失敗だった、もっと強化しろ、と言い出して、本当に支持率の落ちた安倍政権が、安易に費用対効果の薄い水際対策を増やすことを懸念しています。

今日の山井議員の質問、上記の時事通信の記事に出てくる泉健太議員の発言等が、危険な兆候だと思います。岩田健太郎医師の内部告発も、おかしな方向に生かされることになりかねません。現状では、感染が広まって国民の意識が変わって、そうか水際対策より感染防止と医療体制の維持が大事なんだな、という空気になってきたところなのに、それを逆戻りさせてはいけません。

政府の水際対策には、クルーズ船対応も含めて、反省点はあります。入国管理に中国への忖度がなかったか、厳しく追及はすべきです。ただし、これを政局に使って、ぎりぎりの行政資源・医療資源を無駄に使うべきではありません。