日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

新型コロナウィルスの国内感染を予見した押谷教授「封じ込めは不可能」:最優先すべきは医療体制の整備。

東北大学の押谷仁教授が主張される通り、新型肺炎(COVID-19)はそもそも封じ込めが不可能な感染症と見るべきです。野党は、WHOの専門家の見解をもとに、封じ込め失敗を理由に政府批判をしようとしていますが、間違っています。

・最優先すべきは、国内医療体制の整備です。具体的には、検査手続きの変更、院内感染防止対策、オンライン診療解禁、重症者優先でのベッド等確保、受診基準の明確化、等です。

なぜ、この感染症は封じ込めできないのか

政府は、新型コロナウィルス対策の専門家会議を立ち上げ、今日、協議を行いました。

専門家会議のメンバーはこちらで、東北大学の押谷仁教授が入っています。

https://www.cas.go.jp/jp/influenza/senmonka_konkyo.pdf

押谷教授は、国内で初の死者が出て感染者が続々と報じられた2月13日より10日前、2月3日の日経新聞で、既に国内での感染を予見していました。記事から引用します。

日本と中国との人の行き来を考えると、中国以外の国で最初に感染拡大するのが日本になる可能性は十分に考えられる。日本で感染連鎖がすでに成立している可能性もある。ある日突然、それまで見えなかった流行が顕在化することになる。
出所:日本経済新聞2020年2月3日

www.nikkei.com

 そのうえで、この感染症は、SARSと異なるとして、封じ込めについて悲観的に見ています。「潜伏期間でも感染するとなると、封じ込めを目指した公衆衛生対策にとって致命的だ。負け戦でしかない」と言っています。

押谷教授は、東北大学のサイトで、翌日2月4日付の記事で、詳しく説明されています。

SARSも、エボラウィルスも、封じ込めることが出来たのは、発症者を徹底的に見つけ出す「接触者調査」を行い、隔離することが出来たからだ、として、新型コロナウィルスにはそれが効かない、と主張しています。

押谷教授によれば、SARS等で有効だった「封じ込め戦略」が使えるためには以下のような条件を満たすことが絶対条件となります。

(1)発症者のほとんどが重症化あるいは他の感染症とは異なる典型的な症状を呈すること。
(2)典型的な症状をきたさない軽症者や無症候性感染者(感染しても症状のない人)には感染性がないこと。
(3)感染者は潜伏期間や発症初期には感染性がないこと。

ところが、新型コロナウィルスは、この3条件のいずれも満たしません。したがって、「封じ込め戦略」は不可能です。東北大学サイトの同記事から引用します。

我々は現時点でこのウイルスを封じ込める手段を持っていないということが最大の問題である。日本でも「見えない」感染連鎖が進行している可能性が現実のものとなりつつある。感染拡大が起こるという前提で国内の医療体制の整備などの対策をそれぞれの地域で早急に考えていく必要がある。

(中略)

封じ込めが現実的な目的として考えられない以上、対策の目的はいかにして被害を抑えるかということにシフトさせざるを得ない。

(中略)

日本でも「見えない」感染連鎖が進行している可能性が現実のものとなりつつある。感染拡大が起こるという前提で国内の医療体制の整備などの対策をそれぞれの地域で早急に考えていく必要がある。

出所:東北大学大学院医学系研究科・医学部ウェブサイト

新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(押谷仁教授メッセージ) | 特集・インタビュー|東北大学大学院医学系研究科・医学部

国内での感染連鎖の存在が明らかになる10日前から現状を予見し、WHOでの感染症対策の経験も踏まえての発言であり、今回の感染症について、説得力のある専門家の主張と考えます。

押谷教授は、国内の感染連鎖が明らかになった後、2月14日のNHKの番組で、政府は封じ込めから被害最小化に、政策目的の転換を図るべきだ、と明言されています。

本ブログで紹介してきた通り、他の複数の専門家が、同様の主張をされています。

COVID19(新型コロナウィルス)対策、水際対策から国内対策へ転換し、医療体制を充実させ、米軍・自衛隊施設の利用も検討を。 - 日本の改革

本ブログでは、今回の感染症への対策として一番重要なのは、水際対策ではなくて、国内の医療体制の整備だ、と主張し続けてきました。ランセットの論文で、移動制限のような厳しい措置も有効だと言っていたことを踏まえ、中国からの入国管理について、現状程度の制限を加えることには賛成しましたが、これ以上厳格化して、人的資源を水際対策≒封じ込めに使うべきではない、と主張してきました。押谷氏を含めて、同様の主張をしている専門家の意見に賛成です。

WHOの緊急事態宣言、科学的判断を中国が歪めた可能性大。ただし、水際対策はもう十分すぎる、今後は中程度以上の症状への準備を。 - 日本の改革

押谷氏の主張を、一刻も早く政府は採用すべきであり、遅きに失した感があるとは言え、専門家会議にこの方が入ったことは、明るい兆しと考えています。

WHOとは「封じ込め」について意見調整が必要

これに対し、WHOのシニアアドバイザーの進藤奈邦子氏が、WHOとしては、あくまでこのウィルスの「根絶」を目指している、と発言しています。

日経によると、新藤氏は「中国では既に新型コロナウイルスに感染する新たな症例が減りつつある」との認識を示したうえで、WHOが目指すのはウィルスの「根絶」であり、「中国以外で、感染経路が追跡できない患者は日本でしか出ていない」と指摘し、日本政府や医療機関が感染経路の追跡に努力するよう促しました。

www.nikkei.com

この点については、現状では、押谷教授と、WHOの担当者とで、認識の違いがありそうなので、日本政府は押谷氏の意見を受け入れたうえで、WHOとは調整が必要でしょう。

調整の余地は十分ありそうで、進藤氏は、WHOが今後、現在の「根絶」を目指す方向から「影響軽減」へ切り替える可能性については「日本がどう対応を取るかが、これに関わる」と指摘したそうです。

私には専門家同士の言葉遣いは分かりませんが、進藤氏の言う「根絶」と押谷氏の言う「封じ込めは無理」というのは、矛盾しないのかもしれません。

新型コロナウィルスは、たとえ隔離政策をとったところで、世界の大半に広がってしまうという悲観的な予測もあります。WHOの立場としては、それを少しでも遅らせるよう、各国には建前を主張せざるを得ないのかもしれません。SARSとエボラとは全く違うウィルス特性を踏まえた対策を、WHOが十分とり得ているのか、検証も必要です。

www.bloomberg.co.jp

いずれにせよ、日本政府がとるべき方針は、水際対策や封じ込めのこれ以上の強化ではなく、今回の感染症のそもそもの特性を考えて、大流行時の被害最小化に備えることです。はっきりとした政策転換が必要です。

まずいのは、WHOの進藤氏の発言を、野党が政局に使おうとしていることです。しかも、国民民主党が、進藤氏の発言前から、新インフルエンザ対策特措法に基づく緊急事態宣言をすべき、とまで言っています。これについては、以前のブログでも批判しましたが、そこでも引用した専門家会議でも、押谷氏は、緊急事態宣言のもたらす問題点を指摘して、批判しています。

新型肺炎対策、緊急事態宣言は不要。無症状・軽症の感染者は自宅療養、病院のベッドは重症者用に空けるべき。 - 日本の改革

上のブログにも書いたことですが、野党の中では、日本維新の会が、今回は期待できそうです。維新の多くの議員の方は、久住英二医師の講演を聞かれて、必要なことは医療体制充実だと認識されているようです。

otokitashun.com

あくまでやるべきことは、国内の医療体制の整備、医療崩壊の防止です。

具体的に何をすべきか

これから新型コロナウィルスによる肺炎等の疾患が大量発生することに備え、医療体制充実のためにやるべきことをいくつか列挙します。

・検査手続きの改善

検査をすれば必ず分かるものではありませんが、やはり当然必要なものです。現状では、医療機関から民間の検査会社に直接依頼して、保健所に事後報告、というやり方が出来ないので、その点を改善すべきです。ここも、維新の梅村議員等が早くから主張しているので、少しでも早く実現していただきたいところです。

 ・院内感染防止対策の強化

本ブログで、一番最初に必要だと言ったのは、この点でした。大変残念ながら懸念は現実になってしまいましたが、こちらも早急に対策が必要です。これは、2009年の新型インフルエンザ対策にあたった、厚労省木村盛世氏が主張したことでした。あらためて、1月24日の本ブログの記述を引用しておきます。(この頃はまだ、私も「封じ込め」が可能との認識でしたが、押谷教授の主張の通り、意見を変えます。)

木村氏は、今回の新型コロナウィルスについても、水際で防ぐのは最初から不可能だから、むしろ入った後の封じ込めこそが重要だ、として、感染症患者を病院の大部屋に入れるようなことを絶対しないような、そのレベルの対策がまず必要だ、と主張しています。

日本でも“初”の感染者が!「新型コロナウイルス」の本当の恐さ | 日刊SPA!

私も、木村氏の主張に賛成です。武漢での肺炎発生は昨年12月半ばで、年が明けてしばらくたつまで何の対策もとられていなかったのだから、対策の重点は、入るのを防ぐことよりも、入った後の封じ込めと、感染患者をちゃんと治療できるような医療供給体制の準備を重視すべきです。

新型コロナウィルス対策、2009年の新型インフルエンザでの失敗も踏まえて、冷静な対応を。 - 日本の改革

・オンライン診療解禁

できるだけ感染を防ぐために、リモートワーク等を進めるべきと言われていますが、院内感染対策も兼ねて、当然、オンライン診療も、この機会に解禁すべきです。

本ブログでは、昨年1月から繰り返し主張して、ちょうど今年、公明党国重徹議員が衆院予算委で取り上げたばかりでした。ここは公明党に、与党として腕力を発揮していただきたいですし、規制改革を重視する維新は是非協力すべきです。

オンライン診療・投薬「解禁」かと思ったら・・・ - 日本の改革

衆議院予算委員会、オンライン診療での徹底した規制改革求めた公明党の質問が白眉。立民等の野党は見習うべき。 - 日本の改革

・重症者優先でのベッド等確保

これが言うは易し、行うは難しだろうと思います。これまでの医療行政で、感染症対策どころか、急性期向きのベッドを十分確保しきれなかった怠慢が問われます。

が、今はそんな責任追及など後回しどころか完全に無視して、とにかくベッドを含め、重症者がちゃんと入院して治せる体制を大至急整えるべきです。

これについては、メディアにも全然危機感が足りません。

日経が、特別な設備がある「感染症病床」の設置数を調べたところ、14都道県が自らの基準を満たしていなかった、問題だ、と書いていますが、

専用病床、14都道県で不足 :日本経済新聞

問題は専用病床というよりも、一般病床も含めて、何が何でもベッドを確保することです。もう政府は、一般病床への収容は可能という方針を示しているのですから、あとは院内感染を防ぎつつ、実際にベッドを確保することです。日経の記事については、早速、久住英二医師から、ツッコミが入っています。

押谷教授は、指定医療機関で対応できない可能性があるとして、(複数の市町村でつくる)2次医療圏ごとの備えが大事だ、としています。そもそも、普段から集中治療室(ICU)のベッドは足りないので、「緊急でない手術の延期など、踏み込んだ想定が求められる」と主張しています。それくらいの対応が必要でしょう。

国内「見えない流行」顕在化/新型肺炎 東北大大学院医学系研究科 押谷仁教授に聞く

医療機器についても、厚生労働大臣の動きは鈍すぎます。

既に1月31日の参議院予算委員会で、維新の柳ヶ瀬議員が、人工呼吸器や人工肺がどれくらいの数をあるのか質問して、厚労大臣は答えられませんでした(通告はしているはずです)。それだけでも問題ですが、昨日2月15日の記者会見で、まだ把握していないようです。

 柳ヶ瀬議員だけでなく、維新は党としてもう大騒ぎして、すぐに確認して数を揃えろ、何とかしろ、と叩きまくった方がいいんではないでしょうか。国民は強く支持します。

・受診基準の明確化

本ブログで繰り返し主張している通り、武漢のような医療崩壊を防ぐためには、病院は重症者優先、軽症者や無症状者は自宅療養、という割り振りをすることが必要です。

問題は、何が重症で、何が軽症かの見極めです。

最初は患者や家族の判断によらざるを得ないのですから、専門家がある程度の基準を示して、国民・患者が冷静に判断して、相談・受診するかを決める必要があります。このとき、相談や受診が遅すぎると、重症化するリスクがあります。

既に医療崩壊したと見られる武漢では、軽症者を長い間自宅に留めざるを得ず、結果として軽症者が多数、重症者になってしまいました。昨日2月15日のNHKWEBから引用します。

国家衛生健康委員会の担当者は15日の記者会見で、武漢では感染者全体のうち症状が重い患者が18%前後を占めているとしたうえで、発病してから入院するまでに長い時間がかかり、入院時にすでに重症になっているケースが多いという実態を明らかにしました。

そのうえで、武漢では体育館や会議場などを転用した9つの臨時の病院が5600人以上の軽症患者を受け入れたことによって、重症患者が指定された重点病院で治療を受けやすくなってきているとして、こうした臨時病院を増やして医療体制の拡充を急ぐ考えを強調しました。

出所:NHK

www3.nhk.or.jp

このように、相談・受診が遅れ過ぎると、結局は軽症者まで全部抱え込まざるを得ず、病院以外での収容まで必要になります。

岩田健太郎医師は、日本では、多少の熱では無理をして出勤する風潮があるので、その点を十分注意して、適切なタイミングでの相談・受診が大事だとして、日本社会自体も変わる必要がある、としています。

https://georgebest1969.typepad.jp/

受診基準については、冒頭の専門家会議で示されるはずで、速やかで適切な決定を期待します。

政府は、色々と対応がまずいのは確かですが、いまは、絶対に政局にしてはいけません。今回の専門家会議の設置は、遅すぎたとはいえ、良い方向です。公明党や維新は良い提案を持っていますので、しっかり政府の対応を改善し、支えるべきです。