日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

世界の国防費、断トツのアメリカが他国とのギャップ広げる:米ロ中の核軍縮には、日本も協力必要

アメリカの国防費が増え続け、中国等とのギャップを広げています。アメリカの圧倒的優位は、トランプの目指す米ロ中での核軍縮のためには、プラスにもマイナスにもなり得ます。中国を核軍縮に向かわせるには、日本も、中距離核の配備を最終的に受け入れる形で、貢献することが出来るはずです。

トランプ政権でアメリカの国防費は中国を引き離す

英国際戦略研究所(IISS)が2月14日、世界の軍事情勢を分析した年次報告書「ミリタリーバランス2020」を発表しました。2019年の世界の防衛費は1兆7300億ドル(約190兆円)で、前年比4・0%増と、過去10年で最大の伸び率、と朝日が報じています。

digital.asahi.com

IISSのサイトで、アメリカと他国の国防費の比較をピックアップして解説しています。

それによると、2019年には、国防費で断トツのトップのアメリカが、2位の中国に対して差を広げています。また、アメリカの兵器投資(investment in weapons:兵器調達費と研究開発費)だけでも、中国の国防費総額より多く、ヨーロッパ各国の兵器投資の総額の4倍を超えているそうです。

トップ15カ国の国防費は以下の通りで、アメリカは2位の中国の3.5倍超です。

f:id:kaikakujapan:20200215143338p:plain

Source: IISS

Global defence spending

米中の国防費の推移と、両国のギャップの推移も出ています。オバマ政権でアメリカの国防費は一気に減り、これに伴って米中のギャップも縮小しましたが、トランプ政権になってから国防費を少しずつ増やして、米中ギャップもまた開き始めています。

f:id:kaikakujapan:20200215144654p:plain

Source: IISS

Global defence spending

もちろん、安全保障は費用だけで測れるわけではありませんが、少なくとも、国防費という一つの指標で考えるなら、トランプ政権は、中国に対抗する意思を明確にしていますし、2018年の米国国家防衛戦略にも沿って、複数の戦争を戦えるようにするとともに、装備の近代化も進めています。

https://dod.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/2018-National-Defense-Strategy-Summary.pdf

トランプ政権は、2021年度の予算教書は、現実味は危ぶまれているものの、国防費をさらに伸ばし、特に、核兵器の近代化を進めることを表明しています。米ソ冷戦時代からの核ミサイル基地も改良して利用するとともに、SLBM搭載の新たな核弾頭の開発もしようとしており、これも、議会を通るかはともかく、姿勢ははっきりしています。オバマ政権の方針を転換して、核戦力の優位を一層固めようということです。

米予算教書発表 中国にらみ国防費増を確保 本格検討は大統領選後(1/2ページ) - 産経ニュース

Trump Budget Calls for New Nuclear Warheads and 2 Types of Missiles - The New York Times

www.nytimes.com

米中のギャップは中国を変えられるか?

問題は、こうして米中の国防費のギャップを広げることが、実際にアメリカと世界をより平和にするか、ということです。結論から言えば、米中のギャップが広がることは、米中冷戦を終結させる力になり、平和のために望ましいことだと思います。ただ、これだけでは足りず、日本等の同盟国の協力も必要だと思います。

米ソ冷戦時代、レーガンは国防費を増やし続け、1970年代のデタントGDPの5%に減っていた国防費を6%まで増やしました。

Is US defense spending too high, too low, or just right?

ソ連はこれに対抗して国防費を増やしたのが、不振の国内経済に大きな負担となり、冷戦終結につながったと言われています。

アメリカは中国に対抗して国防費を増やすことで、同様の効果を狙えます。中国の経済も成熟化して低成長になってきており、ここで更にアメリカが国防費でも軍拡競争を挑めば、中国も対抗せざるを得ず、国内の経済・社会に大きな負担となります。それが中国内部での政府や共産党への反感につながって独裁制を揺さぶり、一番うまくいけば、米ソ冷戦と同様に、アメリカの平和的な勝利と中国の体制転換が出来るでしょう。

ただ、そこに至るまでは時間がかかるでしょうから、まずは、軍縮交渉によって中国の軍事力を平和的に削減することも必要です。そのためにトランプ大統領は、米ロ中三か国での核軍縮条約を結びたいと言っています。

トランプ政権は、このために中距離核戦力(INF)全廃条約を失効させました。最近では、INF全廃条約だけでなく、更新期限が2021年に迫った新START(新戦略兵器削減条約)についても、延長はせずに、中国を入れた新条約で核軍縮をしたい意向です。

しかし、これには反対論が強くあります。中距離核で歯止めがなくなったところを、新STARTまでなくなったら、ICBMSLBMでも、核の軍拡が米ロ間で起きてしまう、ということです。

米中の軍事力のギャップは、ここに関係してきます。

STARTを更新すべきだ、という意見は、アメリカと中国の間のギャップは、国防費でも核戦力でも大きすぎるので、中国にはそもそも核軍縮に参加する誘因がない、というものです。だから、せめてロシアとのSTARTは守り続けて、中国に参加を促すべきだ、と言っています。また、そもそも、何をやっても中国は核軍縮など参加しないだろう、という見方もあります。

The road to strategic arms talks with China begins by extending New START | TheHill

Trump Still Hoping for US-Russia-China Nuclear Arms Pact - The New York Times

Trump flirts with a new nuclear arms race - POLITICO

最初に書いたように、米中のギャップがあまりに大きくて、もうとてもアメリカにかなわない、国内の不満も高まってこれ以上の軍拡は無理だ、というところまで、中国を追いつめられれば、問題ありません。しかし、中国は今のところ、アメリカに少しでも追いつくための軍拡を続けています。

結局、アメリカが中国を国防費と核戦力で更に差を広げようとしているのは良いことですが、それだけでは、中国を核軍縮の交渉に参加させることは難しいでしょう。

このため、本ブログで書いてきた通り、トランプ政権が要求するように、日本に中距離核を配備することも、最終的には受け入れる方向で、検討をするべきです。

アメリカが「日本に中距離『核』ミサイルを置かせろ」と要求したら、日本政府は受け入れるしかない - 日本の改革

ロシア、平和条約の前提に「米軍の脅威排除」文書化を日本に要求。アメリカは中距離核配備を日本に要求。 - 日本の改革

中国が経済と科学技術で相当追い上げてきたとは言え、まだまだ国防費全体と核戦力では、アメリカと大きなギャップがあるという現状は、残念ながら、まだそれだけでは中国の軍拡の意思を屈服させるには全く足りません。旧ソ連のように中国を軍縮のテーブルにつけるためには、中国にとっての現実の脅威が必要です。そのためには、アメリカの中距離核の配備は、国民感情を考えればそう簡単に受け入れられるものではありませんが、それでも、最終的にはやらざるを得ないことです。

国防費の数字を見れば米中の差はまだまだ圧倒的ですが、日本は、だからこそ、中距離核受け入れという困難な選択をせざるを得なくなる可能性があります。

もちろん、今は大統領選が始まったばかりです。以上に書いたことはトランプ政権が続いた場合についての話です。ただ、どうもトランプ再選もある程度の可能性がありそうなことを考えれば、日本は、米ロ中の核軍縮条約のために何が出来るか、真剣に考えるべきでしょう。