日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

国民民主党議員、吉野家の牛丼はアメリカンビーフなので「健康に悪い」ツイートは、農業守旧派の確信犯的発信。

国民民主党岸本周平議員が、アメリカンビーフは肥育ホルモン等のせいで健康に悪いとツイートして、批判されて削除。岸本議員も、国民民主党代表も、農業改革には以前から反対で、その立場から確信犯的に行った発信で自爆した形です。

岸本周平議員の確信犯的なアメリカンビーフ揶揄

一見小さなことですが、見かけよりは悪質な話です。

国民民主党岸本周平議員が、吉野家の牛丼を食べたとして、「成長ホルモンや成長促進剤を使ったアメリカンビーフの可能性が高く、健康には悪いのですが、安くておいしいのでよく食べます。人生も後半戦なので、まあいいかっと。若い人は気をつけてくださいね」とツイートして、吉野家公式にやんわり批判され、結局、削除・謝罪しました。国民民主党代表の玉木雄一郎氏も、岸本氏を注意して、謝罪しました。

国民・岸本氏、「牛丼は健康に悪い」とツイート 吉野家「大丈夫だよ」反論に削除、謝罪 - 毎日新聞

 この撤回・謝罪ツイート、よく見ると、「特定の企業や商品を批判」したことについて謝罪しただけです。「成長ホルモンや成長促進剤を使ったアメリカンビーフ」の可能性が高いので「健康に悪い」と言い切っていることについては、撤回も謝罪もしていません。岸本氏は、この件の認識を変えておらず、吉野家を取り上げたのは謝罪するが、成長ホルモン等を利用したアメリカンビーフは健康に悪いのは事実だ、と言い続けているのです。

では、「成長ホルモンや成長促進剤を使ったアメリカンビーフ」は、本当に健康に悪いのでしょうか?

国民民主党代表は肥育ホルモン使用牛肉の輸入に反対

これについては、国民民主党玉木雄一郎代表が、民進党時代の2016年10月17日に、衆院予算委で聞いています。当時の民進党は、民主党で議論参加を決めたはずのTPPに反対でした。

玉木氏は、肥育ホルモン(「成長ホルモンや成長促進剤」のことです)の畜産での利用は日本国内でもEUでも禁止されているのに、禁止されていないアメリカやオーストラリアから輸入できるのはおかしいし、TPPでこれが増える可能性がある、と批判しています。

ameblo.jp

【衆院予算委員会】民進党も“対トランプ”の妙案なし TPPも2国間交渉も反対(1/2ページ) - 産経ニュース

政府のスタンスは、FAO(国連食糧農業機関)とWHOの食品添加物の専門委員会が決めた基準(健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量である 一日摂取許容量)に基づいて、食品規格の専門委員会が残留基準値を決めていて、日本の規制はそれにならって作ったものだ、その規制によって検疫でチェックのうえ輸入している、だから大丈夫だ、というものです。

https://www.fsc.go.jp/topics/factsheet-cowhormone.pdf

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000150442.pdf

玉木氏はこれに対し、①日本の規制はFAOとWHOの専門委員会の基準より緩い、②表示を義務化すべきだ、③検疫をしていると言うが、日本の店頭での残留物が実は基準よりはるかに多いという研究がある、という趣旨の議論をしています。

政府は要するに、①は国際基準を踏まえた規制をしているから安全だし、②はそもそも検疫で検出されていないのに表示させるのはSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)で過剰規制とされる可能性がある、と答えています。③の事実はもちろん認めないようです。

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119204011X00320161017&current=8

玉木氏の主張は正しいのでしょうか。

まず、①の国際基準より緩いという点については、政府答弁によれば、酢酸メレンゲステロールという肥育ホルモンについて、国際的な基準の15倍の残留基準だそうです。これが安全かどうかは、政府と玉木氏で意見が分かれる、ということです。個人的には、もともとの国際基準が厳しければ、特に問題なさそうには見えます。

②の表示義務については、確かに表示させるのは一つのやり方です。ただ、検疫で検出されないものを流通させるなら、肥育ホルモンを使ったかどうか分からない状態で表示義務を課すということで、ちょっと無理があります。生産段階からの「ホルモンフリー」のものかどうか分かるようにすべきだ、というなら、これまでよりだいぶ厳しいトレーサビリティ規制を課すことになるので、コストが上がって価格に上乗せされることとの兼ね合いでしょう。これは立法裁量の問題です。

③については、「そういう研究がある」というだけなので、正しいのかどうかは、何とも言えません。政府は別の専門家による食品安全委員会等での検討で決めているので、科学的安全性について「議論がある」ということでしょう。

この問題について、河野太郎議員は、安全性については全く問題ない、というスタンスで解説しています。

www.taro.org

なお、EUは、前身のECの時代、1980年代に、肥育ホルモンを使った牛肉の輸入を禁止し、アメリカとの間で延々と紛争を続けてきました。WTOEUの規制がいったんWTO協定違反とされた後もEUは規制を続けたので、アメリカが制裁を課していましたが、2009年に暫定合意が成立。EUは規制を続けてアメリカの制裁は解除、そのかわり、ホルモンフリーの牛肉をアメリカから輸入するゼロ関税枠を割り当てられました。

https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2009/attach/pdf/091020_01.pdf#search=%27EU+%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB+%E7%89%9B%E8%82%89+%E8%82%A5%E8%82%B2%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3+%E7%B4%9B%E4%BA%89+%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%AB%27

要は、肥育ホルモンに関する現状の規制が望ましいかは、科学的には意見が分かれているし、立法裁量の問題については、禁止しているEUだけが正しいともされていない、ということです。

国民民主党は農業については完全に既得権者の代弁者

岸本周平氏のツイートに戻ると、農政に詳しい彼は当然こんな議論は知っていて、そのうえで、片方の立場だけに立って、しかも、成長ホルモンや成長促進剤を使ったアメリカンビーフの可能性が高いので「健康には悪い」と言い切っています。

要は、TPPに反対、農業自由化に反対、アメリカの牛肉輸入に反対という自分達の主張のために、確信犯的に、政治家が健康に悪い、と言い切った発信をした、ということです。単に吉野家という特定企業を巻き込んで迷惑をかけただけでなく、政治家が議論のある問題で健康情報で断定的な言い方をするのは、問題です。河野太郎氏の「安全面の問題は全くありません」という表現も、同じように問題だと思います。

岸本氏は以前から、農協改革に徹底に反対してきて、農業なんかやっていない准組合員が農協に加入できるという現状を絶対に変えようとしません。玉木氏も同じ、国民民主党全体も同じです。一部については、以前もブログで書きました。

農協改革の法案審議スタート! | 衆議院議員 岸本周平 official website

食料安保を根幹に【国民民主党・玉木雄一郎代表】|シリーズ|農政|JAcom 農業協同組合新聞

自民も旧民主も、農家保護の公約。一貫してTPP賛成の唯一の政党・維新は、徹底した農業改革の訴えで独自色を! - 日本の改革

本件、岸本氏のツイートが問題だと思うのは、そもそも岸本氏も、玉木雄一郎氏も、国民民主党も、アメリカからの牛肉輸入を含めて、農業改革自体に自民党以上に反対し続けていて、今回の発信もそうした活動の一環だからです。

農業改革に大反対なのは国民民主党の大きな限界であり、都市部の有権者に支持が広がらない一つの原因でしょう。