日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

トランプ大統領、弾劾裁判で無罪評決:景気が良いときには、野党はスキャンダルだけでは現職を倒せない。安倍政権も同じ。

トランプ大統領の弾劾裁判で無罪評決。安倍総理モリカケ桜だけでは倒れないと同じく、経済が好調なときに、現職のトップをスキャンダル「だけ」では倒せない、というのが日本への教訓です。

「弾劾はやる価値があったのか?」

トランプ大統領への弾劾裁判、上院で無罪の評決が出ました。

ウクライナ外交に関する「権力濫用」では、一票だけ造反が出ましたが、下院の「議会妨害」では共和党議員全員が反対、両方について、無罪です。

昨年8月以降続いてきた弾劾騒ぎ、何の意味があったんでしょうか?

ワシントン・ポストが、そのものずばりのタイトルの記事を載せています。「弾劾はやる価値があったのか?」(Was impeachment worth it?)

https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/02/05/max-boot-was-impeachment-worth-it/?itid=hp_no-name_opinion-card-g%3Ahomepage%2Fstory-ans

結論は、政治的には、やる価値はなかった、弾劾は、政治的な状況を全く変えていないし、弾劾をやった影響も消えつつある、というものです。

確かに、共和党の票はほぼ全く割れなかったし、世論調査でトランプの支持率は過去最高ですし、弾劾に対する賛否自体もほとんど変わっていないので、民主党にマイナスにもなっていない、要するに、何も変わっていません。

ただ、民主党としては、この弾劾手続は「やらざるを得なかった」、ウクライナへの軍事的支援をするかしないかという権力濫用を放っておいたら、トランプはもっと大胆な権力濫用に踏み切っただろう、民主党としては弾劾すべきだった、というのが、この記事の(同紙コラムニストのマックス・ブートの)意見です。

ウクライナの件で民主党がトランプを批判するのは当然だし、批判すべきことでもありましたが、私は、先の見えていた弾劾という手続は取るべきでなかったと思います。民主党の左派が弾劾を求めたのは、遵法精神というよりもトランプの支持率を下げるためだったでしょうが、結局それにも失敗しました。

経済は好調で大統領支持率は底堅く、民主党の支持層も切り崩しにかかる

アメリカ国民が関心を示さなかったのは、外交政策に結局は影響がなかったということや、職務の公正がどう害されたのかが、少し分かりにくかったからかもしれません。

が、何より、アメリカ経済が好調で、個人的なスキャンダルよりも生活に関わる成果を国民がより重視しているからだと思います。

失業率低下は、既にオバマ政権で始まったものではありますが、とりあえずトランプ政権で歴史的な低水準に達したのは確かです。

https://data.bls.gov/timeseries/LNS14000000

景気全体については、確かにトランプ政権で改善しています。実質GDPは、2016年に1.6%、2017年に2.4%、2018年に2.9%と、法人税減税等がはっきりと効果を出しています。2019年は米中貿易戦争で、2.3%と減速しましたし、コロナウィルスで今年の景気は予断を許しませんが、中国については今年1月に第一弾合意を正式署名、感染症は対策を誤らなければ、景気減速が政府の責任とは見なされないでしょう。

基礎的経済指標 | 米国 - 北米 - 国・地域別に見る - ジェトロ

Gross Domestic Product, Fourth Quarter and Year 2019 (Advance Estimate) | U.S. Bureau of Economic Analysis (BEA)

トランプ大統領が、今年の一般教書演説で政権の成果を誇った次の日に、弾劾裁判で無罪評決が出たのは象徴的なことでした。ニューヨーク・タイムズは、トランプが演説で弾劾には一切触れず、経済成長や歴史的な低失業率を誇ることを、弾劾裁判での弁護の代わりに使った、と言っています。

大統領の意図はともかく、現職大統領としての実績を示す演説は、弾劾のマイナスのイメージを打ち消して余りあるでしょう。前日のアイオワ民主党大会の大失態には全く触れない余裕さえ見せています。これには民主党もほっとしただろう、と、ウォーレンらを支持しているニューヨーク・タイムズさえ書いています。

なお、トランプの現在のギャラップ支持率の49%というのは、オバマビル・クリントンの(二期目の選挙の年での)同時期の支持率より高いそうです。

www.nytimes.com

今回の一般教書演説、あまりに党派的で選挙キャンペーンのようだ、と叩かれています。確かに、ヴェネズエラの独裁政権を批判して、返す刀で「社会主義アメリカを滅ぼす」として、民主党左派の医療保険政策メディケア・フォー・オールを批判、不法移民による犯罪の例を持ち出して、不法移民に寛容なサンクチュアリの州・都市(民主党が首長)を叩く等、民主党との対決姿勢をむき出しにしています。

一方で、身もふたもない選挙目的の演説だからこそ、中間派や民主党支持層を切り崩そうともしていて、奨学金の充実やマイノリティの失業率低下等についても強調しています。結果として、包摂的な姿勢も見せています。

https://apnews.com/1ccd6b39ec04a96451306d5bbd3c7f63

ポリティコの記事にも出ていますが、アフリカ系の票を意識して、彼ら・彼女らの失業率が歴史的な低水準になったことを誇り、キューバやヴェネズエラ出身の米国民の票がフロリダ州で重要なこともあって(同時に民主党左派の社会主義批判の意図で)、ヴェネズエラの独裁政権の批判には力を入れました。そしてもちろん、経済成長が実現していることも強調しています。

www.politico.com

 このように、基本的には景気が良くて失業率が低いのがベースとしてあって、底堅い支持のある現職大統領が、自分の岩盤支持層以外も意識した政策もやるということになると、野党としては、個人的なスキャンダルだけを叩いても、政権を倒すことはやっぱり出来ません。

トランプ政権と安倍政権の共通点

このように、経済が理由で支持されていて、個人的なスキャンダルでは散々叩かれている、という点では、トランプ政権と安倍政権は似ています。

もっとも、経済については、全体的な景気、GDPで見れば、安倍政権は大してほめられたものではありません。緩やかな成長が続いているとは言うものの、2014年の消費税増税で2013年の金融緩和の成果を吹き飛ばして長く消費低迷を招き、去年10月にまた消費税増税で景気腰折れのおそれが強くなっています。

しかし、失業率については低下しているのは確かです。完全失業率の年平均では、2013年の4.0%から、毎年下がり続けて昨年2019年は2.4%と、1993年以降で一番低くなっています。これが若い世代の支持率の高さにもつながり、安倍政権の支持率を支えています。もっとも、失業率の低下が実は2009年から、民主党政権のときから始まっているのも、トランプ政権と共通していますが。

統計局ホームページ/労働力調査 長期時系列データ

一方、個人的なスキャンダルでは、モリカケ桜などで、いくらも叩かれていますし、実際にそのたびに支持率が下がっています。

そして、どのケースでも、すぐに謝罪して改善策を出せばいいものを、安倍総理が意地になってディフェンスラインを誤り、森友では公文書を改竄したり、加計では申請時期について国会で嘘としか思えない答弁をしたり、桜では政治資金規正法の意味を否定するような答弁をしたりしています。本当に腹立たしいだけでなく、許してはいけないことなので、野党が批判するのは当然です。

これも、トランプ政権と共通しています。野党としては、当然批判しなければいけないような問題ばかりなので、国会で追及しています。

が、それだけではとても政権が倒れないのも、トランプ政権と同じです。単に、個々の問題について、たとえば公文書管理等での対案を出すだけでもダメで、自分達だったら、経済をこう変える、と説得力をもって主張しなければいけません。

野党はこの点で、消費税減税でまとまろうとするのかもしれませんが、共産党・れいわ主導でそれをやっても、共産党と共闘するような政党に経済を任せようという国民は圧倒的少数派です。第一、旧民主党の政治家達は、今でもはっきり消費税増税を言う人もいますし、枝野氏も本音では消費税増税に賛成でしょう。

少なくとも、民主党政権時代に決めた安易な消費税増税が間違いだったと認めて、共産党・れいわと経済政策で組まない姿勢を見せないと、いくら総理の個人的スキャンダルを叩いても、国民の支持は得られません。トランプ大統領弾劾の空振りは、あらためてそれを示しました。旧民主党の政治家には、有能で選挙に強い人達も多いのですから、目を覚ましてほしいものです。