日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

EU離脱後のイギリスの移民政策で日本が見習うべきは、語学力等に応じたポイント制の活用

イギリスがEUから正式に離脱。最大の課題である移民政策につき、単純労働者について、EU域内移民への優遇中止以外は比較的自由に、一方で、英語能力等を見る「ポイント制」は重視して、経済的自由主義と、保守的価値観のバランスを取りそうです。語学能力等を重視したポイント制につき、日本も高度人材以外にも適用すべきです。

ブレグジットで、肝心の移民政策はどうなるのか

イギリスがEUから正式離脱し、移行期間に。ジョンソン首相はスピーチで、国民の統合やEUとの引き続いての友好関係等についてふれました。

www.telegraph.co.uk

本ブログは、ブレグジットで一番重要なのは移民問題だと言ってきましたが、イギリスの新たな移民政策はどうなるのでしょうか?

今、どういう段階かと言うと、一昨年12月にメイ前首相が新移民政策を発表、これをジョンソン首相が変えるため、新たな制度の方向性を示して、移民政策の諮問機関であるMigration Advisory Committee(MAC)に対して9月に諮問、MACが1月28日に報告書を発表したばかりです。

メイ政権の方針はこちらで、

EU離脱後の移民制度案の公表(イギリス:2019年5月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

EU離脱後の移民政策案、諮問機関が提言(イギリス:2019年1月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

ジョンソン首相の示した新たな方向性はこちらです。

EU離脱後の移民制度案で新方針(イギリス:2019年12月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

メイ内閣では、これまでEU域外からの移民のみに適用されていたポイント制(職種・職務・賃金等の「ポイント」で在住可否を判断)を、EU域内にも適用するという方針でした。それを、ジョンソン内閣では、EU域外・域内両方の移民に、各人が有するスキルによるポイント制(年齢、英語能力、技能経験、教育)を適用する形に変える方針です。

従来のポイント制は、受け入れ先の企業を通じたチェックで、半ば形骸化しているようなところがあったようです。これに対し、ジョンソン政権では、EU域内・域外を問わずに、外国人の個人の経験・資格ベースでチェックして、より実効性のある体制に変えようということです。

昨年12月の総選挙で、保守党のマニフェストでは、このオーストラリア型のポイント制度導入で、高スキル労働者を世界中からひきつけ、低スキル労働者は減らす、ということをうたっていました(移民への英語教育強化等が、この後の頁に出ています)。

f:id:kaikakujapan:20200201134214p:plain

Source: The Conservative and Unionist Party Manifesto 2019

https://assets-global.website-files.com/5da42e2cae7ebd3f8bde353c/5dda924905da587992a064ba_Conservative%202019%20Manifesto.pdf

政権はこうした方向で、移民政策の諮問機関であるMigration Advisory Committee(MAC)に検討させ、MACが1月28日に報告書を発表しました。

UK should lower planned salary threshold for migrants, report says - Reuters

www.gov.uk

報告書は、低スキルの移民については、ポイント制はあまり意味がないとして、高スキルの移民についてのみ適用すべきだ、と提言しています。

しかし、ジョンソン首相らは、選挙で、英語が分かり、法を守り、教育のある移民を受け入れるようにすべきだと言ってきたので、諮問委員会のMACが何と言おうと、ポイント制にはこだわるだろう、と、英官邸で働いた経験のあるCamilla Cavendish氏は書いています。一方、移民の数の上限や、給与水準の下限等は、実はそれほどこだわらず、見かけよりはリベラルな態度をとるのではないか、と予測しています。

このため、ジョンソン政権の移民政策は、経済的には自由主義的な態度をとって、英語能力等の文化的・社会的な面では保守的な態度を目指すだろう、と見ています。

(Camilla Cavendish "Brexit gives Britain a chance to fix its immigration policy" Financial Times January 31 2020)

https://www.ft.com/content/175974c2-42b1-11ea-9a2a-98980971c1ff

 特定技能労働者にも、ポイント制で日本語能力や文化の試験を!

今後、ジョンソン政権が、移民政策をどうするか、まだ詳細は未定です。しかし、ポイント制にこだわって、英語が分かり、法律を守って、イギリス社会で共生しようとする外国人を移民として受け入れるのは、日本も見習うべき政策です。

このポイント制、日本では、高度人材についてのみ、既に導入されています。最近になって、地方創生のためということで、日本の地方大学を卒業した外国人にも、高度専門職としてのポイントがつくように、制度を拡充もしました。

www.nikkei.com

しかし、高度人材以外には、こうしたポイント制は導入されていません。入管法が改正され、上限5年のみで家族帯同が許されない特定技能1号労働者にも、更新制で永住も可能で家族帯同が許される特定技能2号労働者にも、この制度は要求されていません。

これでは、日本国内での日本国民と外国人の共生がうまくいきません。既に事実上の労働者として多数の外国人が日本に暮らしていますが、日本語試験はおろか、子弟への教育自体が全く行われていない場合が大変多いことが大問題になっています。

日本社会を多様性のある活力のあるものとしつつ、日本国内での社会的統合を図り、実効性ある共生政策とするために、特定技能労働者については、1号と2号どちらにも、日本語試験や日本の法律・文化に関する試験を課すべきです。

この点について、民間の有識者が、既に外務省に政策提言を行っています。ヒューマンライツウォッチ代表の土井香苗弁護士らが、外国人労働者政策有識者会合 の報告書として、「外国人労働者政策に関する提言〜改正入管法の施行を踏まえて〜 」という提言を、昨年6月に、外務大臣に提出しています。

外国人労働者政策に関する民間有識者による河野外務大臣表敬 | 外務省

その報告書では、日本語や日本の法制度・文化に関する試験に合格すれば、特定技能2号への移行を出来るようにすれば、特定技能1号の外国人にも、日本語等の勉強をするインセンティブになる、という形の主張になっています。これはこれで、一つのやり方で、方向性としては私も賛成です。

f:id:kaikakujapan:20200201153659p:plain

外国人労働者政策有識者会合 (2019)「外国人労働者政策に関する提言〜改正入管法の施行を踏まえて〜 」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000485937.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E5%85%A5%E7%AE%A1%E6%B3%95+%E7%89%B9%E5%AE%9A%E6%8A%80%E8%83%BD+%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E5%88%B6%27

この際、制度設計で重要なのは、受け入れ企業や監理団体等とは別に、日本政府自身が(独法を使ってもいいので)、日本語等の試験を実施すべきだと思います。もともと、外国人に低賃金労働をさせようとする受け入れ企業やそれに協力する監理団体、そして、そうした企業や団体と政治家との結びつきが、日本の外国人問題をここまで深刻化させてしまいました。共生政策を彼等から切り離して行う必要があります。

イギリスが検討しているオーストラリア型のポイント制では、主に考慮されるのは、年齢や言語能力、専門的職種における就業経験や教育資格だそうです。これに対し、従来のイギリスのポイント制は、受け入れ主体である雇用主(スポンサー)に重点を置いたもので、雇用先が決まっていれば、対象者に付与されるポイント自体は、満たしているとして運用されている側面が強い、と言われているようです。だからこそ問題視されて、移民政策について深刻な対立が起こり、ついにはEU離脱、そしてオーストラリア型ポイント制の検討に至ったのでしょう。

EU離脱後の移民制度案で新方針(イギリス:2019年12月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

日本は、イギリスのこの経験に学ぶべきです。ジョンソン政権が恐らく進めようとする通り、経済的自由主義と社会の安定・統合を両立させるため、特定技能労働者として認めるために、日本語・日本法・日本文化等の試験等を含むポイント制を導入すべきです。