日本の改革

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スウェーデンがマイナス金利終了:日米欧の金融緩和は継続すべき。超低金利で既存金融機関は更に淘汰を!

スウェーデンがマイナス金利政策をやめましたが、日米欧はまだまだ金融緩和を続けるべきです。既存の金融機関の経営が苦しくなって、現在のような金融業界が縮小するのはむしろ望ましいことです。金融という機能は非常に重要ですが、「現在の金融業界」はムダが多すぎるので、超金融緩和で淘汰を更に進めるべきです。

マイナス金利をやめろと言い募る日経

マイナス金利政策をいち早く採用していた、スウェーデンのリクスバンクが、マイナス金利政策の終了を決めました。この政策が長期化し、家計債務の膨張といった副作用を無視できなくなったため、とされています。

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 これに合わせて、日経の前田昌孝編集委員が、日本もマイナス金利をもうやめるべきだ、と言っています。

前田氏は、マイナス金利をやめるべき理由として、第一に、超低金利でしか生き残れない非効率的な企業を延命させ、第二に、世界的な超低金利で信用度の低い社債が発行され過ぎているから、と言います。

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確かに、マイナス金利をはじめとする金融緩和政策で、家計と企業の債務が膨張するのは課題です。

スウェーデンの例で言えば、家計の負債の可処分所得に対する比率が190%に迫り、金融危機前の米国の水準(140%強)を上回っている、というのは懸念材料です。住宅バブルとなっている可能性が指摘されているようです。

また、前田氏の言う、信用度の低い社債の累積も問題で、本ブログでも、たびたび取り上げました。特に、低格付け企業への債権で組成したローン担保証券(CLO)は、リーマンショックを引き起こしたCDOまがいの危険な商品で、発行を規制すべきだ、と主張してきました。

インスタのアカウントまで担保にする低格付け債権で出来た金融商品CLOの保有規制を強化し、国内投融資促すため、国債で家計向きバウチャー発行を。 - 日本の改革

ローン担保証券(CLO)保有残高7.4兆円の農林中金、リーマン・ショック時の二の舞となるか。農協と金融事業の完全分離を! - 日本の改革

しかし、住宅ローン等の家計債務だろうが、CLO等のもととなるジャンク債だろうが、信用度の低い借り手に債務を負わせているのは、金融業界です。問われるべきは彼等の貸し手責任、金融商品を組成する責任です。

現在の世界的な金融緩和政策は、リーマンショックによって、既存の金融業が根本的に間違っているばかりか、彼らが途方もない既得権者であることが露呈したから、金融業界の利益よりも、借入を行う立場の非金融業の企業や家計のために続けられています。債務が膨張しすぎないように、金融当局が監督して規制・指導すべきは、金融業界です。

超金融緩和でしか生き残れない非効率的な企業が生き残るのはおかしい、という批判も間違っています。金融緩和で経営が苦しいと文句を言っている金融業界こそ、非効率的な企業が多すぎるからです。

先進国の超金融緩和を続け、既存金融機関の淘汰を更に進めるべき

日経の前田編集委員に限りませんが、マイナス金利を含む超金融緩和をやめろと言っている人達は、意図はどうあれ、超金融緩和で経営が苦しくなった金融業界の利益を代弁することをやってしまっています。

最近、ECBの内部で、マイナス金利政策を見直すべきという声が上がったそうですが、これも金融業界の声を反映してのことでしょう。実際、今月行われたダボス会議で、大手銀行トップがマイナス金利を批判しています。日経から引用します。

今月21~24日にスイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムでは、欧州銀行トップからマイナス金利への批判が相次いだ。「(ECBは)出口の機会を逸した」。ドイツ銀行のゼービング最高経営責任者(CEO)がこう気炎を上げたほか、スイスの金融大手UBSのウェーバー会長も「長く続ければ副作用も甚大を増す」と訴えた。

出所:日本経済新聞2020年1月26日

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日本も似たようなものですが、幸い、日銀の黒田総裁は、マイナス金利には副作用があっても、効果がコストを上回るので、金融緩和は今後も続ける、と明言しています。そのうえ、日銀の新たな審議委員に、リフレ派で知られる安達誠司氏が指名されました。金融業界は、これでますます金融緩和が続く、利回り曲線のフラット化が進んでもうからなくなる、と嘆いているようです。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2020/kk200122a.pdf

日銀総裁、緩和の副作用「留意必要だが効果がコストを上回っている」 :日本経済新聞

日銀委員に安達氏指名で市場はフラット化を警戒、緩和長期化の象徴 - Bloomberg

先進国での現在の超金融緩和は、それだけでは経済を力強い成長に乗せることは出来ませんし、行革による財政支出の組み替えや規制改革、大規模な教育・環境投資等も必要です。

しかし、現在の超金融緩和は、リーマンショックであれほど傷ついた各国経済がデフレに落ち込むのを防ぎ、失業率を大幅に低下させることに成功しています。

日銀出身の田幡直樹氏も、超金融緩和の多様な手段が実際に効果を上げているとして、現在の金融政策への様々な限界論に対して、一つ一つ説得力のある反論をしています。

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以前、本ブログで紹介したジョン・ケイ氏(リーマン・ショック後の世界の金融規制に大きな影響を及ぼした「ケイ・レポート」を作成)の著書から、ケイ氏の主張する金融制度改革案のいくつかをピックアップして、それぞれの項目に、コメントしてみます。

(ジョン・ケイ著・薮井真澄訳(2017)『金融に未来はあるか』ダイヤモンド社p300-302)。

 ・金融仲介の鎖は短く、シンプルで直線的なものとする

⇒本来、金融は、異時点間の所得の交換であり、いまお金がある人が、将来お金を作れる人に、お金を貸したり投資したりする、という活動です。金融業はそれを仲介するものですが、ジョン・ケイ氏に言わせれば、それが肥大化し過ぎて、金融仲介のコストが過剰になり、金融システムは不安定になり、ガバナンスが効かなくなっています。

それならば、ケイ氏はここまで言っていませんが、CDOやCLO等のローン組成商品のような仕組み債は、そもそも認めるべきではなく、販売自体を規制すべきですし、ファンド・オブ・ファンズ等も同様にすべきです。「仲介の鎖は短く、シンプルで直線的」であるべきだからです。

このように、金融業界が無責任に債務を膨張させて手数料を取る余地をなくしてしまえば、家計債務や企業債務の膨張は抑制できるでしょう。

・金融仲介で他人の金を扱う際の忠実・注意義務を強化し、違反した場合の責任は、企業ではなく個人に対する刑事・民事罰で負わせる

⇒日本の不動産バブル、欧米のサブプライムローンCDOやCLO等の無責任な販売に対しては、金融機関単位だけではなく、担当者レベルの個人的な刑事・民事罰によって、抑止を図るべきです。超金融緩和での債務膨張も、こうした規制で抑えるべきです。

・政府は金融サービスを、他のいかなる産業とも同列に扱う。規制は預金保護、消費者への背信行為や詐欺行為の防止など、個別具体的に定める。公的補助、政府保証その他、政府による支援メカニズムは、中央銀行による「最後の貸し手」機能も含め、廃止する。

⇒特に銀行業界というのは、途方もない既得権集団です。信用・預金創造も決済ネットワークもこれまで独占し、中央銀行による支援が受けられ、預金保護を理由に公的資金さえ投入される場合があるからです。リーマンショック等では、預金取扱機関でも何でもない投資銀行さえ、公的な救済の対象となりました。

こうした独占や政治力を含めた既得権を打破して、ジョン・ケイ氏の過激に見える主張を現実的にする一つの手段が、超金融緩和の継続です。長短金利のサヤを抜くだけの既得権者達は、超金融緩和による利回り曲線のフラット化をあと30年も続ければ、ほぼ淘汰できるでしょう。

既に、フィンテックや暗号通貨によって、銀行に限らず、既存の金融業界の死が見えてきました。もちろん、フィンテックについても、フェイスブックのような大手プラットフォーマーの新たな独占などの問題には、適切な規制が必要です。しかし、巨大になり過ぎた金融仲介と金融業界を破壊し、「金融仲介の鎖は短く、シンプルで直線的なものとする」のが、こうした技術革新です。

超金融緩和で従来型の金融業界が苦しくなること、既存金融機関が淘汰されていくことは、超金融緩和のデメリットではなく、むしろメリットです。日米欧の金融緩和は更に継続するだけでなく、マイナス金利の深掘りも含めて、更なる金融緩和も行うべきです。