日本の改革

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イギリスが5Gにファーウェイ採用:ボリス・ジョンソン「ファーウェイ叩くなら、代替案を示せ!」⇒ノキアでもエリクソンでもない代替案とは?

イギリスが、アメリカの要請に反して、5Gにファーウェイを制限付きで採用。EU諸国がこれにならう可能性がありますが、アメリカとオーストラリアの全面禁止が正論です。経済性と安全保障を両立させるため、通信基地局の寡占に挑戦している新興企業の技術革新を支援すべきです。

欧州各国でのファーウェイの扱い:「コア」からは外すと言うが

イギリスは、ファーウェイを5Gネットワークで使い続けることを決めました。「コア」と呼ばれる、安全保障に関わるような重要な部分には使わず、ネットワークの35%の部品にしか使わない、という制限はつけています。が、ファーウェイにとっては痛くもかゆくもない制限なようです。

イギリスはメイ首相のときに既に同様の決定をしていましたが、トランプ政権に言われて、1年以上、ジョンソン首相への交代をはさんでファーウェイを5Gから完全に排除すべきか、再検討し続けてきましたが、ようやく、結局は元の結論に戻る形で決めました。

理由は、「今さら無理」と言うのが大きいのでしょう。イギリスは十数年前からファーウェイ製品を採用しており、携帯ネットワークでは四社中の三社がファーウェイを使っています。また、去年末の総選挙で、消費者に5Gのサービスを早期に実現する、と公約で言っていたため、ファーウェイを外して数年遅らせるのが、国内政治的にも無理だったようです。

やむを得ないことだと思いますが、アメリカ政府との関係が一番懸念されます。ジョンソン首相はじめ政府高官は、アメリカとの情報交換に何の問題も生じない、とは言っていますが、これからポンペオ国務相がイギリスに行くそうです。

www.bbc.com

Mike Pompeo flies to UK for talks amid US Huawei concern - BBC News

イギリス政府の決定後、ジョンソン首相とトランプ大統領は電話で短く会談、ジョンソン首相は、同盟国や友好国( like-minded countries)と、市場の多様性を確保して、現在のような少数企業による支配は破る必要はある、と強調したそうです。アメリカの議員達は、イギリスの決定を批判しています。

Defying Trump, Johnson refuses to ban Huawei from 5G - Reuters

EU欧州委員会(The European Commission:EUの政策執行機関)は1月30日に、EU加盟国に、5Gのネットワークの「コア」に、ファーウェイ等の高リスクなベンダー を利用することを制限または排除するガイドラインを発表する予定です(ロイター)。詳細は不明ながら、5Gネットワークの一部の、何か重要な「コア」と呼ばれる部分のみ外す、という点は、イギリスと同じです。ガイドラインなので、条約のような義務はありません。

EU countries to announce 5G guidelines on Wednesday, impact likely on Huawei - Reuters

ただ、今後、もっと厳しくしようという議論が出てくるかもしれません。

今さっき見つけたニュースなのですが、ドイツのハンデルスブラット紙が、ファーウェイが中国の治安機関と協力していたという確かな証拠、「スモーキングガン」をドイツ外務省が持っている、アメリカから渡されている、と報じました。これが事実なら、少なくともドイツでは、ファーウェイは完全に排除されることになりそうですし、EUの対応も変わるでしょう。

www.handelsblatt.com

Germany has proof that Huawei worked with Chinese intelligence: Handelsblatt - Reuters

他の国では、オーストラリアとニュージーランドが、アメリカ同様に、5Gでのファーウェイ使用を禁止、カナダが検討中です。イギリスとこの四国を合わせた、いわゆる「ファイブ・アイ」(UKUSA協定、5カ国の諜報情報の交換協定)の情報交換がどうなるか、今回のイギリスの決定で懸念されます。

Canada, isolated over Huawei 5G, is studying British decision - Reuters

 最初に禁止したオーストラリアの正論:5Gでは「コア」だけ外してもダメ!

そもそも、ファーウェイを5Gから外すべきだと言い始めて、本当に禁止した最初の国は、オーストラリアです。アメリカは、最初乗り気でなかったのを、オーストラリアに説得されて、今では先頭を切ってファーウェイ排除に動いています。

ファーウェイ排除を決めたのは、もともと親中派のターンブル前首相です。ターンブル氏は、ジョンソン首相の今回の決定を批判して、これでは、ファイブ・アイでの情報交換に支障が生じる、と言っています。現首相ではないとは言え、やはりオーストラリアの反発は強そうです。

www.smh.com.au

イギリスが、ネットワークの「コア」からファーウェイを排除すれば足りる、としているのは、同社製品に対して、独自に検査をしているからでもあります。

ファーウェイは、製品実用化の前に英政府と共同で運営するオックスフォードシャー州のセキュリティ評価センターで、潜在的なセキュリティ上の欠陥を検出するための検査を義務付けられているそうで、これでリスク管理が出来る、というのがイギリスの立場です。

japan.cnet.com

これに対し、オーストラリア政府の判断は、オーストラリア通信電子局(ASD)の提言によるものです。これは、サイバー戦争のシミュレーションを5Gについて行った結果、出されたものです。

それによれば、IoTでの基幹技術となることが想定されている5Gは、日常生活に関するあらゆるネットワーク(人ー人、人ー機械、機械ー機械)の支えとなるので、ネットワークの一部にでも攻撃が加えられれば、一国の経済活動全体、国民の日常生活全体に甚大な影響が及びます。

このため、ネットワークの「コア」か「周辺」かで規制を分けても意味がない、というのが、オーストラリアの立場です。これも、以前のブログで紹介しました。アメリカも、同様のことを言っているようです。

Director-General ASD speech to ASPI National Security Dinner | ASD Australian Signals Directorate

特別リポート:ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争 - ロイター

トランプ、大統領選で足元見られ、成果なくファーウェイへの輸出承認。日本は豪州同様、独自の安全保障上の判断を! - 日本の改革

このように、ファーウェイを排除するかどうかについては、5Gネットワークについてのセキュリティについての考え方の違いが背景にあります。

ただ、私は、そんなことを考えるまでもなく、ファーウェイは排除すべきだろうと思います。

先のドイツの報道に見られるように、ファーウェイは国営企業そのものであり、現在の中国の意図を考えれば、やはり危険だと思うからです。

Gigazineに出ていましたが、ファーウェイの株主は創業者の持ち分は1%だけ、残り99%は労働組合で、中国の労働組合は完全に中国共産党の一部だから、ファーウェイは事実上の国有企業だということです。スモーキングガンも何も、ファーウェイとは中国政府・中国共産党の一部と見るべきでしょう。

gigazine.net

ファーウェイの「代替案」は、ノキアでもエリクソンでもない新興企業の新技術

しかし、それでも、ファーウェイ製品は安いし、技術力はあるし、既に5Gだけでなく世界中に根付いてしまっています。ジョンソン首相が、ファーウェイを批判するなら、代替案を示してくれ、というのは、全くもっともな話です。

www.theguardian.com

安易な「代替案」は、ノキアエリクソンを使えばいい、ということです。両社とファーウェイで、5Gを含めた基地局市場の8割を占めるそうです。しかし、3社の寡占を2社の寡占にして、しかも一番安い企業を排除するというのは、経済的に見て合理的ではありません。

解決方法は、ファーウェイでも、ノキアでも、エリクソンでもない、新興企業の新技術を使って、三社の機器を使わなくてもいいようにしてしまうことです。

こうした企業の高価な専用ハードウェアを使わなくても、安くて一般的なサーバーでソフトウェアを作動させれば基地局になるような技術が既に開発されており、寡占3社に挑戦して成長中のようです。サーバーの処理能力が高まったことから、専用機を利用してなくてもすむようになってきたそうです。

この方向を徹底すれば、ファーウェイ含む寡占三社の供給能力によらずに、5Gの基地局を迅速に整備できる可能性が出てくるでしょう。

大手三社は、基地局について、色々な機械を抱き合わせ的に販売しているようですが、そこにも改善の余地があります。日経産業新聞から引用します。

現在の携帯基地局は、無線信号の処理機能と、実際に無線信号を送受信するアンテナ機能を分けて導入する形が一般的。標準仕様上は、基地局のアンテナ部分と処理機能は別々の通信機器メーカーの製品でも組み合わせて利用できる。

本来、新興企業の機器も柔軟に導入できるはずだが、実際のところは通信機器大手が囲い込みを進めており、同一メーカーの製品でそろえなければ動作しないことがほとんどだ。5Gは既存の第4世代(4G)の設備をベースに展開するケースが多いため、大きなシェアを握る通信機器大手が圧倒的に有利な状況だ。

日経産業新聞 2019年3月22日

www.nikkei.com

もう黒電話の昔から散々経験してきた、産業組織論の問題が、また出てきた形です。

5Gインフラ革命、中国の巨人脅かす新勢力 :日本経済新聞

こうして見ると、「経済的に不合理なファーウェイ排除を安全保障上の理由でやるかやらないか」という問題というより、「ファーウェイ含めてたった三社の寡占をどう破って、新技術を持った新興企業の参入をどう促すか」という問題になります。

そうなれば、解決方法は、新技術を持った新興企業の参入を促し、支援すべき、ということになります。

実はそうした新興企業の代表格、アメリカのマベニア社の役員が、早速、「ボリス・ジョンソンの言う代替案は、うちの社だ!というか、単にファーウェイを他社に変えるんじゃなくて、全く新しいインフラを作れるぞ!」と、名乗りを上げています。さすが商魂たくましく、頼もしい話です。

telecoms.com

https://mavenir.com/sites/default/files/2019-11/Mavenir-Tale_of_a_Rising_US_Telecom_Network_Champion.pdf

マベニアの調査によれば、モバイル通信事業者のすべてがOpenRAN導入を計画していることが判明 | Business Wire

それに、こういう新しい分野なら、日本の企業もチャンスがあるんではないでしょうか?

政府が旗振りするとどうもうまくいかないことが多いですが、志のある日本の起業家や投資家や技術者の方々は、既にこの分野でとっくに活躍中でしょうけど、是非、マベニアなんか食ってしまう勢いで、「私こそ、ボリス・ジョンソンの言う代替案だ!」と、声を上げてほしいものです。