日本の改革

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バイデンの外交方針:トランプ(米中冷戦・中東撤退)-関税戦争+人権重視+同盟国重視。

米大統領選の有力候補バイデン氏が発表した外交政策、トランプと比べて、人権と民主主義という価値を重視して、同盟国と協力して、中国と対決するというもので、本気かどうかはともかく、方針としては賛成できます。バイデンが大統領になろうがなるまいが、日本も同じ方向を目指すべきです。

バイデンも当選の可能性はあるらしい

アメリカ大統領選、民主党の最有力候補のバイデン上院議員が、フォーリン・アフェアーズ誌に、自らの外交政策のビジョンを発表しました。

www.foreignaffairs.com

Biden pens op-ed detailing how he would undo Trump's foreign policy | TheHill

民主党の候補には、中道派のバイデンか、極左のサンダーズかが選ばれそうです。私は、バイデンは中道で退屈で、サンダーズは極端すぎて危険だと思っていたので、その中間のウォーレンに大統領になってほしいと思っていましたが、残念ながらウォーレンは支持率が落ちて、もう無理なようです。そして、バイデンもサンダーズも、トランプと比べると、客観的な分析はともかく、候補者としての魅力が乏しく、トランプを倒す程の力にはならないだろうと思っていました。

アメリカ民主党予備選、結局は本命バイデン、次点サンダーズ。来年はやっぱりトランプ有利。 - 日本の改革

ところが、年末から今月1月の各種世論調査をRealClearPoliticsで見ると、各州ごとのトランプと民主党各候補との比較でトランプがリードしている例がほとんどなく、全国調査でのトランプ政権の不支持率がかなり上がっています。弾劾やスレイマニ殺害等が原因かと思いますが、やっぱりまだまだ分からないようです。

前回2016年の大統領選挙で、アメリカ大手メディアも、アメリカの名だたる選挙サイトも外す中、見事にトランプ当選を予測した渡瀬裕也氏も、まだ予測できる段階ではない、と言っています。確かにその通りだろう、と反省しました。

 そんなわけで、バイデンも当選の可能性はあるのだろう、ということで、発表された彼の外交プランを見てみます。

バイデン外交の基本方針

最初にバイデン外交の概略をまとめます。

まず、民主主義という基本的な価値観を重視して、これを共有する同盟国を重視して、トランプのようなルール無用のアメリカ・ファーストからの脱却を、内政でも外交でも行います。そして、自由貿易は進めるものの、アメリカの中産階級の利益を害しないように、労働者や環境団体の意見を聞きながら、貿易協定を結びます。

米中冷戦は継続しますが、手段は関税の引き上げではなく、同盟国はじめ民主主義国と団結して、中国に対して、貿易問題と人権問題で圧力をかけます。中東からは撤退して、軍事力より外交を重視し、トランプ政権が脱退したパリ協定にも復帰します。

いくつかの点で違和感はありましたが、全体として見れば、中道派と言われるだけあって、ソツがなく、なるほどと納得できる内容です。

民主主義を核とする価値観外交で、同盟国重視

 

以下、フォーリン・アフェアーズに発表された論説の内容にだいたい沿って、具体的な政策について、コメントを交えながら説明します。

バイデンは、まず国内の民主主義の立て直しが必要だと主張します。外交面で、アメリカが再び世界をリードできると示すために、核となる価値を更新し、人権保障を重視すべきだ、と言っています。

ここで言う、国内での民主主義の立て直しには、反トランプの党派的色彩が結構強い内容が並び、建前としては理解できますが、説得力はいまひとつと感じます。

具体的には、移民や難民について、国境で親子を引き離すのをやめる等、厳しい難民政策の転換を図り、女性の権利向上にも力を入れる等、アメリカ・ファーストで国境管理を厳しくしたことを見直す、という内容になっています。ここはまさにアメリカの世論が分かれているところで、民主党左派の意見をより重視した内容です。

次に、政治の世界での、利益相反、裏金、腐敗の問題に取り組み、私的問題で外交問題が影響受けないようにして、海外資金の国内選挙への介入について規制強化をすると言っています。ここも、2016年の大統領選でのロシアによるトランプ応援や、現在のウクライナ疑惑を念頭に置いたものです。政治腐敗根絶という主張は、ウォーレンのような左派の言い分も含みますが、従来のワシントン政治にどっぷり漬かっていたバイデンがどの程度変えられるか、本気度や実効性には疑問符はつくでしょう。

しかし、国内政治ではなく、世界のリーダーとしてアメリカがどう振舞うべきか、という話になると、なるほどと思う主張が出てきます。

バイデンは、世界中の民主主義国家の指導者を、世界的課題で民主主義を強めるためにアメリカに招く、と言っています。1930年代以来、民主主義が最も圧迫を受けているという現状認識によります。

昨年は、香港からスーダン、チリからレバノンまで、世界的にデモが広まり、市民がまともな統治を求め、腐敗への嫌悪を叫んでいるのに、トランプ政権では、腐敗と縁故主義がはびこっていて、とても世界のお手本にはなっていない、と現政権を批判します。

そこで、大統領就任最初の年に、アメリカは「民主主義サミット」を開き、オバマ政権時の核セキュリティ・サミットのモデルで、腐敗防止、権威主義に対する防衛、人権保障の拡大を目指していく、と主張しています。

そして、腐敗との戦いを国家安全保障上の核心とする大統領令を出し、世界の金融システムの透明性を確保し、タックスヘイブン対策を強化し、世界中の政治家が国民から盗んだ資産を取り返す、としています。

オバマ政権時の核セキュリティ・サミットの実効性はともかく、腐敗防止や、中国・ロシア等の権威主義と戦うことや、世界的に人権保障を拡大することを目標とするのは、素晴らしいことであり、今でも、世界中の諸国民がアメリカに求めていることです。

トランプ政権は、アメリカ・ファーストの実利主義で、それが米中冷戦ではうまく働き、イランに対しても、自国の利益になることから、国内の民主化運動に好意的な態度を取っていますが、これではやはり、御都合主義という批判は免れません。アメリカには、同盟国とともに世界中で自由と民主主義を守り、広げる責務がある、と宣言し、それに基づいた政策を外交で進めてもらえるのは、日本を含む国際社会が、大歓迎すべきことです。

中産階級のための外交

次にバイデンは、「中産階級のための外交」を進める、と言っています。アメリカ国民がグローバル経済の中で成功できるようにする、として、つまりは、まず国内の中低所得者に手厚い支援を行うべきだ、経済的な生活保障は安全保障だ、と主張します。

まず貿易政策以前に、中産階級の利益になる投資、即ち、ブロードバンド、高速道路、鉄道、エネルギー・グリッド、スマートシティ、教育への巨額投資を行い、医療保険オバマケアを続け、最低賃金は月15ドルに上げ、自然エネルギーを支援して1000万人分の新たな雇用を生み、最先端技術での研究開発投資を増やす、と、大盤振る舞いです。

このあたりは選挙対策ですが、そもそも巨額インフラ投資では超党派の合意が出来ているので、言いやすい話です。

そして、中産階級のための外交は、国際経済のルールが、アメリカの利益に反しないようにすることだとして、貿易障壁を取り払い、保護主義と戦うとして、結局、自由貿易政策を主張します。ただし、新たな貿易協定は、労働団体と環境団体のリーダーが意味ある形で参加しなければ、そして遵守の仕組みがなければ、結ばない、としています。

このあたりは、ウォーレンの経済的愛国主義の主張も取り入れて、自由貿易アメリカの労働者利益の両立を何とか図ろうとしています。

日本国民として気になるのは、TPPという言葉が全然出てこないことです。バイデンはオバマ政権で副大統領としてTPPを実現した立場ですが、去年の夏には、TPPは復帰するが再交渉する、と言っていたのが、言及もありません。ただ、今回も、貿易のルールは中国ではなくてアメリカが書く、という言い方をしているのは、TPPを想定しているようにも見えます。

Biden says he would renegotiate TPP - POLITICO

www.nikkei.com

米中冷戦をどう戦うか:関税戦争ではなくて、同盟国と一致して圧力

米中冷戦については、中国が自分達の政治的モデルを輸出していることに警戒感を示しています。そのうえで、アメリカは中国に強硬に望む必要がある、ほっておいたら、中国はアメリカの技術と知的財産を奪い続けるし、不公正な産業補助金も続く、として、米中冷戦は継続する姿勢を示しています。

そして、中国と戦う最も効果的な方法は、アメリカの同盟国、友好国と協力して、中国の濫用的行為と人権侵害と戦うことだ、としています。アメリカと他の民主主義国と合わせれば世界のGDPの半分を超えるので、これをテコにして、環境、防衛、技術、透明性等について中国にルールの変更を迫り、我々の民主的価値を実現する、と言っています。同時に、関税の引き上げについては否定的です。

中国への高関税をすぐ下げるとも言っていないのですが、全体として見れば、関税引き上げ戦争ではなくて、同盟国と協調した圧力で、中国を変えるという方針で、これも支持できます。米中二国間の関税合戦という手段は、たぶん、トランプでないと使いこなせないでしょうし、同盟国とともに、場合によっては経済制裁も使って、中国に圧力をかけるのは、実効性があるでしょう。

軍事力も使うが外交優先、中東からは撤退

最後に、アメリカは、武力は最後の手段として、まず外交で世界をリードすべき、と言っています。

具体的には、中東での「永遠の戦争」を終わらせる、アフガニスタンと中東からはほとんどの軍隊を撤退させ、その地域での任務はアル・カイーダとイスラム国を倒すことに限定する、としています。

ここは、オバマ政権、トランプ政権と続いてきた一貫した方向で、今年誰が大統領になっても、アメリカの中東撤退はもう変わらないでしょう。

地球環境問題については、オバマ政権でのパリ協定に復帰するとともに、他国にも責任を強く求め、特に中国に対しては、石炭火力発電の輸出をやめさせる、一帯一路を通じて環境汚染を他国に押し付けるやり方をやめさせる、としています。

日本がやるべきこととほぼ一致している「バイデン外交」

このように、バイデン外交は、人権・民主主義という基本的価値観を最重視し、この価値観を共有する同盟国と協調して、国内の中産階級の利益を図りつつ自由貿易を推進する、というのをトランプ政権との違いとして打ち出しています。一方、米中冷戦は継続して、その際に同盟国と結束しての人権カードも使う、という方針です。中東からの撤退は、米中冷戦への集中を可能にするでしょう。

これが現実に出来るかとなると、先に書いた通り、国内の腐敗防止を本当にバイデンがやる気かどうか、また、自由貿易と国内労働者の利益の調和というのも、どんな形でどの程度出来るのか、色々と疑問はあります。

しかし、アメリカという国が国際社会で果たすべき役割、自由民主主義のリーダーとしての責任という点では、大変心強い内容にはなっています。米中冷戦という最重要方針は、きちんと引き継がれるようです。

今年、トランプが当選しても、米中冷戦は続きますし、仮にトランプ自身に興味がなくても、日本は、自由と民主主義という基本的価値を共有する諸国との協調、これによる米中冷戦への参加ということが、外交方針の柱となるべきです。この意味で、今年の大統領選の帰趨がどうあれ、今回、バイデン氏が示した外交方針に沿うような外交を日本も行うべきです。

即ち、一帯一路からは撤退し、アメリカ、イギリス、EU、TPP諸国といった自由と民主主義という価値観を共有する国々と協力して、中国に人権でも経済でも改革を要求し、地球環境問題では、石炭火力発電の輸出をやめる、まして中国との協力は即中止する、といった政策転換を行うべきです。