日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

新型コロナウィルス対策、2009年の新型インフルエンザでの失敗も踏まえて、冷静な対応を。

日本も、WHOも、2009年の新型インフルエンザ対策では過剰対応の前歴あり。中国の対応には注意しつつ、冷静な対策が必要です。

中国の情報隠蔽や国際的圧力には注意が必要だが

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、世界保健機関(WHO)は、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」の宣言は見送りました。数日以内に会合を再開の可能性があるので、まだ宣言の可能性はあるようです。

ワシントン・ポストは、緊急事態宣言は経済的負担を生むし、各国政府の反応を考えると政治的に難しい問題だとして、2014年にWHOがエボラ出血熱に関する緊急事態宣言をしなかったのは、ギニアリベリア、シェラレオネの反発を恐れたからだ、と書いています。どうも、今回の宣言見送りについて、中国への配慮を示唆しているようです。

(※2020年1月25日修正:2014年にエボラの緊急事態宣言は出されましたが、最初、やろうとしなかった、ということでした。ワシントン・ポストの記事では、"In 2014, WHO resisted declaring the devastating Ebola epidemic in West Africa to be a global emergency"とあったのを間違えてしまいました。お詫びして訂正いたします)

https://www.washingtonpost.com/politics/the-latest-singapores-1st-coronavirus-case-is-a-wuhan-man/2020/01/23/2ab51b96-3dea-11ea-afe2-090eb37b60b1_story.html

中国の対応には、いつも通り問題があります。地方政府が隠蔽工作をした可能性も指摘されていますが、既に昨年12月末には、武漢で原因不明の肺炎発生の情報が中国のネット上に出回っていたのですから、中央政府も把握していなかったわけはありません。恐らくは地方も中央も最初は黙認か隠そうとしたものの、感染が広がったら今度は、中世ヨーロッパのペスト対策のように、移動禁止の措置をとっています。中世ヨーロッパと違って、数千万人に影響を及ぼすうえ、効果もあまりないでしょう。

新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース

異例の封じ込め「むしろ拡散を加速」 武漢の現実 (写真=共同) :日本経済新聞

新型肺炎死者26人に 中国、春節連休で全土警戒 :日本経済新聞

このように、WHOが中国に政治的配慮をしてしまう可能性や、中国の情報隠蔽等には注意が必要です。WHOについて言えば、緊急事態宣言が適当な可能性もあります。

一方、現状では、日本も、WHOも、それとは逆に、過剰な対策をして、かえって感染症対策としては不適当にならないよう、十分な注意も必要です。

日本政府も、WHOも、2009年の新型インフルエンザ対策で、どちらも過剰対応をする失敗をしているので、その反省を生かす必要があるからです。

2009年、日本は成田空港で無駄に大立ち回り、WHOは・・・

2009年に新型インフルエンザが問題となったとき、麻生内閣で舛添厚生労働大臣の下での対応を、記憶されている人は多いと思います。

成田空港では、「機内検疫」ということで、防護服とマスク、ゴーグルを身につけた検疫官が質問票を配るという対応をしました。

asahi.com(朝日新聞社):機内に防護服の検疫官 豚インフル、成田も「機内検疫」 - 新型・豚インフルエンザ特集

しかし、こうした「水際対策」は実際は効果がほとんどありませんでした。

実際、国内初の感染者は、海外渡航歴のない神戸の高校生でした。神戸市ではその後、渡航歴の有無によらず発熱外来に発熱患者が集まったため、数日にわたって発熱外来が混乱状態となりました。感染症指定医療機関もすぐに満床となったため、全ての患者を入院させることは不可能となり、軽症の方は自宅待機とすることとされました。

こうした色々な問題について批判を浴びて、政府はちゃんと検証を行って、2010年に「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議 報告書」をまとめましたし、一般向けにも当時の対応の是非の検討にもふれる形で、ウェブサイトにも公表しています。

www.cas.go.jp

政府の報告書では、当初は情報が少なかったから最大限の対応が必要だった、と言っているので、誤りを正面から認めてはいません。それでも、水際作戦については、もうちょっと効果を考えてやるべきだったし、今後に生かすべきだ、という提言をしています。

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出所:厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100610-00.pdf#search=%27%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8+%E3%83%B3%E3%82%B6%E5%AF%BE%E7%AD%96%E7%B7%8F%E6%8B%AC%E4%BC%9A%E8%AD%B0%27

当時の現役厚労省官僚の木村盛世氏は、最初から「水際作戦」を批判して、対策の重点はむしろ、感染症にかかった患者の治療を十分出来るような医療機関が少ない、感染を防ぐ設備を備えた病院がほとんどないことだ、と主張していました。

新型インフルエンザ、水際封じ込めはナンセンス|ニュース|ロハス・メディカル

木村氏は、今回の新型コロナウィルスについても、水際で防ぐのは最初から不可能だから、むしろ入った後の封じ込めこそが重要だ、として、感染症患者を病院の大部屋に入れるようなことを絶対しないような、そのレベルの対策がまず必要だ、と主張しています。

nikkan-spa.jp

私も、木村氏の主張に賛成です。武漢での肺炎発生は昨年12月半ばで、年が明けてしばらく立つまで何の対策もとられていなかったのだから、対策の重点は、入るのを防ぐことよりも、入った後の封じ込めと、感染患者をちゃんと治療できるような医療供給体制の準備を重視すべきです。

日本政府の2009年の間違いと、それを踏まえた対策は以上の通りです。

WHOの間違いはもっと深刻です。

2009年6月、WHOのチャン事務総長が「2009インフルエンザ・パンデミック」のはじまりを宣言しました。ところが、そのときに「パンデミック」の従来の定義を変えて、「病気の重篤度」を削除して、つまりはそれほど重篤でないインフルエンザだと知りながら、パンデミックを宣言しました。

これだけでも大問題でしょうが、WHOの専門家が、製薬企業とつながりが深いから、実際よりも重大に見える宣言を出したのではないか、という疑惑が広まり、欧米のメディアが批判しました。そして、以前からWHO専門家と製薬企業の関係を問題視していたEU欧州評議会欧州議会も批判しました。WHOは外部専門家を入れた検証する委員会を設立、結論としてはWHOに問題なしとしつつ、批判をある程度受け入れる内容の報告を出しました。

パンデミックインフルエンザに対する専門家会議を用いたWHOの対応

WHOのパンデミック対策、外部検証委員会が批判 - コラム - 先見創意の会

日本のマスメディアが取り上げない海外インフルエンザ情報 - コラム - 先見創意の会

WHOのパンデミック政策は製薬企業の影響下にある (BMJ誌がWHOの利益相反問題を検証) | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan

Report Criticizes W.H.O.’s Response to Swine Flu - The New York Times

以上のような、とんでもない問題を引き起こしたのが、WHOです。組織として第三者委員会の検証の上で否定はしていますが、製薬企業との利益相反を少なくとも公表せずに、事情を知らない各国政府や諸国民が当然誤解するようなパンデミック宣言を出してしまいました。

こうしたこともあったうえでの、今回の新型コロナウィルス対策になります。今回、現状で言えば、毒性が低いとされる新型肺炎ですし、仮にも誤解を招かないように、WHOが慎重な対応をまずはとった可能性もありますし、それは理解できることです。もちろん、中国は事態を小さく見せたいという動機はありますし、WHOは2014年にはアフリカ諸国に配慮し過ぎた前例はあるので、緊急事態宣言を出すのが不当に遅れる恐れもあります。一方、WHOというのは、かつて過剰な宣言を、自分達の利益のために出した疑いのある組織だ、ということも、知っておくべきでしょう。

日本政府とWHO等がどのような対策をとるべきか、日本国民は、過去の例も踏まえつつ、冷静に事態を観察して、判断すべきです。