日本の改革

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日経「5G全国整備、光回線に負担金の新制度」:携帯電話会社は、周波数オークションを拒否して電波割当を受ける以上、公的責任を負うべき

※本記事の末尾に、2020年1月22日に補足をし、同1月27日に冒頭の要約に加筆しました。本文の内容に修正はありません。

5G整備のため、光回線を維持する負担金制度を総務省が検討「と日経が報じる」(カギカッコは1月27日加筆)。5G等で得られるメリットは、地域事情に応じつつ、格差は解消すべきです。携帯電話会社は、周波数オークションでなく電波割当を受ける以上、ユニバーサルサービス類似の責任も負うべきです。

携帯やブロードバンドの地域格差解消、携帯電話会社は消極的

日経によると、総務省は、5Gの基盤となる光ファイバー回線を、全国的に維持する負担金制度をつくるそうです。費用は、携帯電話会社の電話代に(月数円程度?)上乗せし、不採算地域で光回線を持つ事業者に資金を交付し、回線の補修や更新に充てる、ということです。

人口の少ない山間部や離島などの不採算地域では、遠隔医療や自動運転といった形で、高速の通信規格である5Gの活躍が期待されています。そこで、そうした地域で光回線を整備する事業者が一つしかないようなエリアで、ケーブルテレビ会社や自治体、第三セクター等に補助することを想定しているようです。

www.nikkei.com

この制度は、光回線維持のための交付金制度ですが、人口減少が進む地方部で、通信サービスに関する地域格差をどう解消するか、という、より一般的な問題の一部です。

そこで課題になるのは、携帯電話会社に、地域格差解消のための公的責任を負わせるか否かです。

現在、日本では銅線などを使った固定電話をユニバーサルサービス(日本全国における提供が確保されるべきサービス)と位置付けて、固定電話会社であるNTT東日本・西日本に、その提供を義務付けています。

しかし、携帯電話の普及で固定電話の利用者は大きく減っており、逆に携帯やブロードバンドは今後ますます生活に不可欠なインフラになる、ということで、新たに全国的な制度を作ろうということで、検討が進められてきました。

具体的には、総務省の「情報通信審議会」の「電気通信事業政策部会」の「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会」で、去年2019年3月に議論が始められましたが、携帯電話各社は、自分達がユニバーサルサービスの義務を負うのには消極的な態度です。

総務省|情報通信審議会|情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会(第6回)配布資料・議事録

携帯やブロードバンド、全国一律サービスにすべきか :日本経済新聞

その後、この議論は、上記「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会」が2019年5月17日出した中間報告をもとに、

総務省|情報通信審議会|情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会(第8回)配布資料・議事録

上記特別委員会の下の「基盤整備等の在り方検討WG」という会議で議論されていました。

総務省|情報通信審議会|基盤整備等の在り方検討WG(第1回)配布資料・議事録

そこでの議論は、何だかおかしなもので、固定電話会社のNTTと携帯電話会社の権限争いのような形で行われています。

簡単に言えば、固定電話会社のNTTが、「うちはユニバーサルサービスを提供するのだから、KDDIソフトバンク等の携帯電話会社の設備で、無線の固定電話をやらせてくれ」と主張して、携帯電話会社が、「そんなのはいやだ、どうしてもというなら、出来るだけ厳しい条件にするべきだ」と反論している、という構図です。よくあるNTTグループと他の携帯電話会社のケンカです。

結局、4回の議論で結論は出ず、2019年10月に論点整理だけをして終わっています。このWGの親委員会の「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会」は、ユニバーサルサービスについては中途半端なままで、全体の最終答申案を、2019年12月に出しています。

総務省|情報通信審議会|基盤整備等の在り方検討WG(第4回)配布資料・議事概要

総務省|情報通信審議会|情報通信審議会 電気通信事業政策部会(第51回)配付資料・議事概要・議事録

冒頭に紹介した日経の記事は、中途半端に終わっていた問題につき、少なくとも光回線の維持については、携帯電話会社にも一定の負担を求めることを総務省が決めた、ということなのでしょう。

全国一律でなくていいから、携帯電話会社も地域格差解消の責任を!

このように、固定電話会社だけが負ってきたユニバーサルサービスの提供義務を、携帯電話会社等が負うべきか否か、という問題について、総務省は、光回線の「維持」という点に限って、携帯電話にも責任を負わせる、という方向のようです。

光回線の維持だけでなく、今後、携帯電話を含めた高速通信へのアクセスというものについて、不採算地域では、誰がどんな責任を負うべきか、ということが問題です。

この問題、二つの点から考えるべきでしょう。

第一に、まず、高速通信インフラに対する国民のアクセスの権利は平等に保障されるべきですが、地域の事情によって、内容は違っても構わない、とするべきです。言わば、「地域格差」は解消すべきですが、「全国一律」である必要はない、ということです。

ある地域に必要なサービスが、他の地域では得られるのに特定の地域では得られない、という事態は出来る限りなくすべきです。しかし、本当に必要なサービスが何なのか(通話、メール、遠隔医療、自動運転等)は、地域によって違うでしょうから、必要のないサービスのためのインフラまで、法律で全国一律に供給義務を負わせるべきではありません。通信に限りませんが、「ユニバーサルサービス」の意味を、地域と時代に合わせて柔軟に考えるべきです。

第二に、以上のようにユニバーサルサービスの意味を再定義したうえで、携帯電話会社には、地域格差解消のための一定の責任を法律で義務付けるべきです。もともと、銅線等による固定電話サービスを念頭に設けていたユニバーサルサービスの提供義務を、5G以降の時代に、固定電話会社だけに負わせることは、不可能だし不適当です。

先に紹介した総務省の「基盤整備等の在り方検討WG」にしても、地域格差解消の責任は、固定電話会社のNTTにしかない、という前提で議論をするから、NTTが携帯電話会社の設備を使うの使わないの、という、ややこしい話になってしまいます。端的に、固定電話会社だろうが、携帯電話会社だろうが、通信インフラを提供する事業者は、地域の事情に応じた形で地域格差を解消する義務を負う、という形にすべきです。

携帯電話会社は、NTTグループのドコモだろうが、それ以外のKDDIソフトバンク楽天だろうが、電波を利用できるのは、周波数オークションでの自由競争ではなくて、裁量行政による電波割当のおかげです。公的な資産である電波を利用できる特権を持つ以上は、公的な責任を一定程度負うのは当然です。

5Gについて言えば、日本ではようやく去年4月に携帯電話各社に割当をしたのに、各社の投資計画は、速やかな全国整備というにはおぼつかないようです。まして、不採算地域への投資など、ほっておいたら全くやらないでしょう。

以前、本ブログでは、周波数オークションを行って、地域格差の解消のために、オークション収入を使うべきだ、と書きましたが、5Gについてはもう電波の割当は終わってしまったので、6G以降は、その方式にすべきですし、携帯電話会社にも、一定の設備投資の義務やサービス提供義務を、地域の実情に応じた形で課すべきです。

ケータイ料金値下げへの菅官房長官の執念は立派。2年縛り等をなくそうとするその気合いで、周波数オークションも断行を! - 日本の改革

もちろん、大前提として、人口減少対策として、地方自治体の広域連携を進めて、スマートコンパクトな都市・国土を作るべきなのは当然です。しかし、これは言うは易し行うは難しで、それこそ橋下徹氏が総理大臣にでもならなければ、そう簡単には進みません。

自治体の大再編による統治機構改革にはまだまだ時間がかかるのに対し、5G、6Gの全国的な整備は猛スピードで進める必要があります。当面は、自治体の実態に比べて人口が少なすぎて、社会インフラ整備が非効率な地域がたくさんある現実を受け入れたうえで、通信インフラを整備する必要があります。まずは、携帯電話会社に、時代にあった形でのユニバーサルサービスの供給義務を課すべきです。

(2020年1月22日補足)

この記事の冒頭で引用した、日本経済新聞の2020年1月21日記事「5G全国整備へ新制度 光回線維持で負担金 24年にも、ネット利用者から月数円」につき、ネット上で、「インターネット税」とか、「毎月1000円の負担」とかいう表現が広まりました。

こうした表現につき、ITメディアが総務省に取材したところ、同省がそれらを「うわさでありデマ」と切り捨てたそうです。ITメディアは、日経と名指ししていませんが、「一部報道」のソースは、ユニバーサルサービス制度の見直し案で、これを誤解したのだろう、としています。

www.itmedia.co.jp

私も、総務省の検討内容も、日経記事の内容も、「インターネット税」という国税の導入ではなく、「毎月1000円の負担」というのも間違っていることは当然理解していました。

が、ブログを書いた後、ツイッターのトレンドに「負担金制度検討」というのが上がっているのを見て、関連するツイートで、「インターネット税」と書いている人がいたので、話が通じやすいかと思い、以下のようにツイートして、本ブログを紹介してしまいました。不正確な表現でのツイートをしていまい、誠に申し訳ありませんでした。

また、IITメディアの記事によると、私が本ブログで書いた記事で引用した日経新聞の記事の内容が誤っていた可能性があります。日経の記事の真偽につき、総務省に直接問い合わせれば分かった話ですが、その時間が取れず、誤っている可能性のある記事を引用していることについては、読んでいただいた方にお詫びをさせていただきます。

記事を修正をすることも検討しました。ただ、私の記事は、総務省ユニバーサルサービス制度の見直しの経緯を主に紹介し、基本的には、総務省の検討内容に基づいて、あるべき制度の方向につき、私見を論じたものです。日経記事が誤りだったとしても、記事の趣旨には影響がほぼないと考えました。このため、記事自体の修正ではなく、末尾に記事引用に関するお詫びと事情説明の加筆の形を取らせていただきました。

最後に、ブログを紹介するツイートで不正確な表現をとったことと、引用した記事が誤っていた可能性があることにつき、重ねてお詫び申し上げます。