日本の改革

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ロシア、平和条約の前提に「米軍の脅威排除」文書化を日本に要求。アメリカは中距離核配備を日本に要求。

ロシアが平和条約締結の前提として、米軍の脅威排除を文書化するよう、日本側に求めたようです。一方、アメリカは既に日本に対し、中距離核ミサイル配備を要求していると見られています。ロシアの要求が事実なら、近い将来の北方領土返還は不可能です。

ロシアが「米軍の脅威排除」で、またハードルを上げる

毎日新聞によれば、ロシアが、平和条約締結の前提条件となる文書の作成を日本側に求めている、と、「複数の日露外交筋が明らかにした」そうです。文書の内容は、北方領土を引き渡しても「在日米軍がロシアの脅威とならない」ことなどの確約を求めるものだということです。

mainichi.jp

1956年の日ソ共同宣言では、「平和条約を締結した後に歯舞群島色丹島を日本に引き渡す」とあって、2018年の日ロ首脳会談でも、「共同宣言に基づき平和条約交渉を加速させる」ことで合意しました。

日ソ共同宣言の条文では、以下のようになっています。

ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

○日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言

ところが(毎日の報道が正しいとすればですが)、ロシアは、歯舞・色丹の引き渡しの前提となる平和条約に、更に前提が必要だ、と言い出しました。しかもその前提とは、米軍の脅威を排除しろという、日本には絶対飲めないものです。もう、現状では北方領土返還は不可能になったと言えます。

ロシアが言う「アメリカの脅威」とは、具体的には、日本にアメリカの中距離核ミサイルが配備されることです。昨年2月、アメリカがINF全廃条約の破棄をロシアに通告し、日本への中距離核ミサイル配備の可能性が出てきました。本ブログでも書きましたが、8月に実際に条約が失効すると、アメリカは早速、日本に中距離核ミサイル配備を要求してきた、と報道されています。

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既に昨年3月から、プーチンは露財界人との会合で「平和条約締結には、日米安全保障条約からの日本の離脱が必要だ」「日露交渉はテンポを失った」と発言。昨年1年間で、日ロ交渉は全く進みませんでした。

www.sankei.com

今回、二島だけの返還でも前提とされる平和条約の、そのまた前提として、アメリカの中距離核ミサイルの日本配備を禁止する文書を作れと言うなら、日本は絶対に飲めません。第一、中距離核の配備は、国民には恐らく秘密裡にやるでしょう。安倍総理非核三原則は守ると言っているからです。そもそも公式な文書で言及など出来ないはずです。

ロシアは当然、日本側のそんな事情は分かったうえで、在日米軍の脅威を排除する文書を要求しているのでしょう。ロシアとしては、もう、北方領土返還はしない、平和条約さえ後回しだ、そんなことより、アメリカの中距離核ミサイルだけ置かないと公に約束しろ、という話です。

北方領土に関する日ロ交渉継続に意味があるか

もし、ロシアが本当に、こんな文書を平和条約の前提として要求しているなら、もう北方領土に関する日ロ交渉を続けること自体、意味はないと思います。

日本へのアメリカの中距離核配備は、国民感情からすれば受け入れがたいものですが、中国、ロシア、北朝鮮の核の脅威を考えれば、INF全廃条約に代わる抑止の枠組みを作るために、やむを得ないことです。これを否定するのは、日本の安全保障自体を放棄するに等しいことです。しかも、そこまで約束したところで、すぐに北方領土を返すのではなく、まず平和条約を結ぶだけ、ということになります。平和条約の中身ももちろん問題で、時間のかかる交渉が必要でしょう。

過去を振り返れば、北方領土問題で何らかの進展が見られたのは、その時々の国際情勢が日本に有利に働いたときです。

1956年の日ソ共同宣言は、フルシチョフ時代の米ソ冷戦「雪解け」の時期のことです。1993年の東京宣言等は、エリツィン時代の1990年代のロシアが、冷戦終結後の混乱期で国際的な地位が急激に低下していた時期でした。

プーチンが良くも悪くもロシアを立て直した後は、そう簡単でないのは当然です。それでも、小泉政権時代にはロシアもそれなりのリップサービスはしていました。

日ソ・日露間の平和条約締結交渉 | 外務省

が、第二次安倍政権では、日本にとっての「新しいアプローチ」として、日ソ共同宣言、つまり二島返還で構わないというスタンスで臨んだのに、全然話が進まなくなりました。安倍政権は国民から見ても不可解なほど楽観的な見通しで大言壮語を続け、かえってロシアからは、日本は第二次世界大戦の結果を受け入れろとか、北方四島の主権がロシアにあるのをまず認めろとか、言われるだけならともかく、実効支配も強化されました。

そのうえ、アメリカが、米ロ間のINF全廃条約を廃棄、日本に対ロシア、対中国、対北朝鮮のための中距離核ミサイル配備を要求、ロシアはこれだけは断固拒否。しかし、日本政府は、国民がどれほど反対しても、国民を守るためには、アメリカの中距離核配備は拒否できません。

安倍政権のやり方もまずかったのでしょうが、もともと、領土交渉どころではありませんし、平和条約どころでもない、というのが、日ロ関係の厳しい現実なのでしょう。北方領土返還に向けた努力は粘り強く続けるとしても、今は時期としては最悪です。

アメリカの方針としては、中国とロシアの猛反発を招いても、日本等に中距離核ミサイルを配備して両国を脅して、そのうえで対話のテーブルにつかせて、米中ロ間の新たな中距離核制限条約を結ぼう、ということです。

そのような新たな枠組みが出来るまでは、日ロでの領土交渉などやってもうまくいきませんし、日本政府は内外に向けて恥の上塗りを続けるだけです。総理大臣が恥をかくのは、日本国民にとっても屈辱です。

私は、既に始めてしまった北方領土での共同経済活動だけは、国民世論の理解が得られる範囲で一応続けて、北方領土交渉は、いったん棚上げにするべきだと思います。