日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

台湾で蔡英文総統が圧勝:台湾の独立志向と自由民主主義の勝利。東アジアは、対中国でナショナリズムとリベラリズムが両立する時代に。

台湾総統選で民進党蔡英文氏が圧勝したことは、中国の台湾統一の失敗を意味します。中国からの独立を目指すナショナリズムが、台湾のリベラル・デモクラシーを守りました。東アジアは、対中国で、リベラリズムナショナリズムが結合して歴史を変える時代を迎えています。

・日本政府は、台湾を公然と独立国同様に遇して、まずは、TPP参加を促し、リムパックへの台湾の参加に賛成し、中長期的には、日本版「台湾関係法」で台湾と軍事同盟を結ぶことを目指すべきです。

「命と血と涙」で実現した蔡英文氏の圧勝

台湾総統選で現職の蔡英文氏が、史上最多得票数で圧勝しました。立法院選挙も民進党単独過半数で、蔡氏の二期目は安定した政権基盤を得ました。

これは中国にとっては手痛い打撃です。この選挙は事実上、「一国二制度」による中国との統一に関する国民投票でした。

もともと、一国二制度というのは、鄧小平が台湾統一を念頭に考えて、香港とマカオで先行的に実施していたものでした。だから昨年1月、習近平一国二制度での台湾統一を呼びかけたのは、改革開放以降の中国の基本方針を踏襲したもので、いよいよ正面から台湾統一を実現しにきたことになります。本気度を見せるために、武力行使も辞さないと言い出しました。

したがって、その「一国二制度」方式が台湾で否定された、ということは、単に習近平の失敗ではなく、中国の台湾政策が根本から否定された、ということになります。しかも、中国に言わせれば自国の一部である台湾で、公然と民主主義による選挙で、政府・中国共産党の方針が堂々と拒否されたことになります。

www.nikkei.com

今回の選挙結果は、台湾国民が続けてきた長く苦しい戦いの成果です。

台湾は日本統治が終了した後、国民党に支配され、大陸の共産党政権と戦ってきました。国民党独裁政権の下の台湾では、リベラル・デモクラシーは認められず、ナショナリズムだけで中国と戦ってきました。

しかしその後、1948年のニ・二八事件での虐殺、開発独裁での経済成長下での民主化運動があって、そして1996年の李登輝・国民党主席が、初の総統選挙を実施しました。長い戦いで、リベラリズムとデモクラシーが実現しました。

その後、李登輝氏の引退後、2000年代、2010年代には、親中か独立志向か、という根本問題に内政問題も加わって、台湾は必ずしも独立志向ばかりでもありませんでした。中国も経済成長をしているし、あまりひどくリベラリズムやデモクラシーが否定されなければ、ナショナリズムは場合によっては我慢しようか、という姿勢でした。

しかし、昨年1月に、習近平がいよいよ本気で「一国二制度」での台湾統一と言い出したら、台湾の世論は一気に独立志向になりました。香港流の一国二制度では民主主義がなくなるうえ、完全に中国に従属する、と台湾国民は感じたのでしょう。

そこに起きたのが香港のデモです。これで、台湾の民意は「一国二制度」反対、つまりは、中国の長年の台湾併合政策自体に反対、で固まり、その民意が昨日の選挙で示されました。

つまり、中国からは独立を保つというナショナリズムが、台湾の自由と民主主義を守るというリベラル・デモクラシーとが、二つながらに勝利したのが昨日の選挙です。

選挙前日、蔡英文氏は演説でこう言いました。

民主は空から降ってきたものではなく、無数の抗争と多くの人々の命がけの奮闘により、この地に根付いたもの。
皆さんがこの道をどう歩んで行くのか、全世界の人々、とりわけ香港の若い方達に注目されている。
香港の若い方達は、命と血と涙で我々に「一国二制」は通ってはならぬ道だと示しくれた。

蔡英文氏は、香港と台湾の戦いに共通点があるとして、特に「民主」を訴えています。私は同時に、中国からの独立というナショナリズムも、香港と台湾に共通していると思います。

確かに、香港のデモ隊の中核をなす民主派の中にも、中国との関係で、どの程度の独立を目指すかで考え方の違いはあるようです。しかし、彼らはいずれにせよ、自分達を中国人ではなく、香港人であると認識するようになっており、その意味では、「香港国民」という新たなネイション=国民が既に生まれています。また、中国からの弾圧との戦いで、戦術的には、「独立」などと口には出せない面もあるでしょう。

その香港国民が、中国に邪魔をされずに自分達で政治を行いたいというのだから、それはもうナショナリズムと言えるはずです。そして、行政長官の普通選挙等を訴えているのですから、リベラリズムとデモクラシーを目指しています。

このように、香港と台湾の戦いは両方とも、中国という非民主的な大国の圧政や侵略に対して、ナショナリズムとリベラル・デモクラシーを目指しています。香港の血みどろの戦いがそう簡単に終わらないのと同様、台湾の今回の選挙で示された「一国二制度」拒否という民意も、今後の台湾内政がどうなろうと、基本方針として変わることはないでしょう。

日本は、東アジアのリベラルなナショナリズムのリーダーであれ

このように、香港、台湾は、対中国を軸に、リベラルなナショナリズムを実現しようとしています。韓国も、中国・北朝鮮という二つの全体主義国家に対して、リベラル・デモクラシーとナショナリズムを両立させようとして対峙しています。

日本は、こうした諸国・地域の中で、リベラルなナショナリズムという政治理念を掲げたリーダーであるべきです。つまりは、台湾、香港、韓国の国家的独立を対中国に対して実現するよう、軍事・外交・経済・文化の各面で助力し、これらの国での自由主義と民主主義の発展のために協力すべきです。

今日は、日台政策について考えます。

蔡英文氏は、昨日の選挙後、アメリカに対して、さらなる武器の売却や軍事技術の供与を要請しました。更に、日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会大橋光夫会長と会談し、対中政策について「屈服せず、挑発せず、暴走しないとの原則で台湾海峡の安定維持に尽力してきた」と理解を求め、日台関係は「段階を上げることができる」として、強化を求めました。

www.sankei.com

習近平武力行使も辞さずに台湾統一を目指すと言う以上、アメリカに更なる軍事支援を直ちに求めるのは当然です。フィナンシャル・タイムズが、今回の選挙直前、中国が台湾を侵略した場合のシミュレーションを記事にしていました。中台で圧倒的な軍事力の差があるのは周知の通りで、台湾は自国だけでは防衛が出来ません。中国による台湾侵略の可能性について、台湾当局者はこの2、3年以内にもあり得る、と危機感を募らせています。

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Source: Financial Times January 9 2020

https://www.ft.com/content/e3462762-3080-11ea-9703-eea0cae3f0de

昨年の、トランプ政権によるF60の台湾への売却は話題になりましたが、当然それだけでは全然足りません。最新鋭の戦闘機よりも、ミサイルを大量にそろえた「ハリネズミ作戦」が必要だ、中小船舶も全然足りない等の専門家の指摘もあります。

www.newsweekjapan.jp

アメリカは既に、台湾関係法という事実上の軍事同盟と国防権限法で台湾への軍事的支援を定めていますが、更に踏み込んだ協力も必要でしょう。

去年の秋、蔡英文氏は、(ぶっちゃけ選挙対策も兼ねて)アメリカに、リムパック(環太平洋合同演習)への参加を要請しています。日本は、台湾のリムパック参加に賛成をするべきです。

www.asiatimes.com

また、台湾が対中関係で苦労するのは、やはり経済的な相互依存関係が強いからです。

【台湾の選択】(上)民主主義掲げ中国に対抗、経済依存脱却が課題 - 産経ニュース

米中冷戦のこの時代、中国と台湾の経済関係を減らすよう、日本も動くべきです。しかもそれは、経済的自由主義と両立する形で行うべきです。

そのためには、台湾に、TPP参加を呼びかけるべきです。障害があるとすれば、中国への忖度だけです。中国はまだ日本と自由貿易協定を結んでいないのに、RCEPをさしおいて台湾とTPPは許せない、と言い出すかもしれませんが、リベラリズムという価値観に基づいて、はっきりと優先順位をつけて、台湾との関係を重視すべきです。

【一筆多論】台湾のTPP加盟を急げ 河崎真澄(1/2ページ) - 産経ニュース

日本も、本来は、日本版「台湾関係法」を作って、中国からの台湾侵略に対して、軍事的に協力をするべきです。これは、保守系の政治家や論者が昔から主張している通りです。

日本版「台湾関係法」の制定を! | 本会の提言 | 日本李登輝友の会 │ 新しい日台交流にあなたの力を!

ただ、これまで、日台の友好関係に尽力してきた日本の保守派の人々が、リベラリズムやデモクラシーという理念をどの程度大事にしているのか、疑問なしとしません。

一方、日本国内の「リベラル」な人々(必ずしも「リベラリスト」(自由主義者)と一致しないと思いますが)は、台湾への軍事支援など関心を示してきませんでした。

今の総理大臣である安倍晋三氏はと言えば、2013年にはASEANについて価値観外交と言っていたはずが転向して、完全に中国寄りになってしまいました。保守派は安倍氏の変節を口では批判しますが、本気で安倍氏を退陣させはしません。

今回の台湾の選挙で勝利した蔡英文総統は、内政では同性愛者の権利を守り、同性婚も制度として認めました。こうした多様性を認めるリベラリズムの立場に立って、しかも台湾等のナショナリズムに対して、頼りにされる支援をしてあげるような、そんな政治勢力が、日本には求められています。

既存政党でも新党でもその組み合わせでもいいので、中国に対して、リベラルなナショナリズムを掲げて、日本国民と東アジアの諸国民を安心させるような、そんな政治集団が生まれてほしいものです。