日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ゴーン逃亡は許せないが、森法相の失言は辞任相当。野党は、「桜」より「刑事司法改革」で安倍退陣を目指すべき!

ゴーン逃亡事件を契機に、刑事訴訟法を改正し、無罪を主張したら(GPS装置装着のうえ)原則として保釈されるよう、「人質司法」を変えるべきです。野党はまず大失言の森法相のクビをとり、刑事司法制度改革をしないなら安倍政権退陣、という覚悟で臨むべきです。それくらいやらないと、日本の前近代的な司法は変わりません。

ゴーンは許せないが、人質司法は必ず変えるべき

ゴーン被告がレバノンで会見、自分が日本の法を犯して逃亡したことを正当化しようとしました。いくら日本の刑事司法制度に問題があっても、逃亡など絶対に許されないことです。

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資金力と政治力にものを言わせて、おそらくは外国政府の手も借りて、日本の主権を侵害し、元軍人の手助けで逃亡することで、日本国民の生命・身体さえ危険にさらした、というのが、ゴーン逃亡事件です。絶対許してはいけませんし、ゴーン被告は日本で裁かれるべきです。これは元日のブログで主張しました。

謹賀新年:ゴーン被告の逃亡事件、大企業(元)経営者の私的権力行使を許すな - 日本の改革

www.sankei.com

一方、これも元日のブログに書いたことですが、日本の刑事司法制度改革は必要です。ゴーン事件をきっかけに、長年にわたって国の内外から批判されてきた、いわゆる「人質司法」については、速やかにやめるべきです。

人質司法とは、検察官が主張する被疑事実や公訴事実を認めなければ釈放されないという制度、慣行のことです。

堀江貴文氏も、被害者として、人質司法を強く批判しています。起訴後拘留は、無罪を主張したらずっと拘留される、いつ釈放されるか分からない、精神にも異常をきたす、だから自分は精神安定剤を私も飲んでいた、と言うのです。堀江氏は毀誉褒貶をものともせずに大きな仕事をしてきた、腹の座った人ですが、その堀江氏でもそこまで追い詰められるのですから、普通の人は無罪でも簡単に自白してしまいます。

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以下、刑事弁護士の高野隆氏の解説をもとに、人質司法を可能にする保釈制度の問題点を指摘します。

そもそも、刑事訴訟法89条は、「保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない」として、原則として保釈されることが被告人の権利だと定めています。これを権利保釈と言います。

この権利保釈にはいくつかの除外事由があります。そのうちの一つが、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法89条4号)です。高野氏によれば、保釈制度の中では、これこそが人質司法を可能にしています。日本の裁判官は、この要件を使って、検察官が「被告人は黙秘している」「全面的に争っている」などと言えば、保釈拒否をしているからです。このため、自白して罪を認めないと保釈されず、自白を強要され続けることになります。

そうなると、無罪推定の原則が全く有名無実化してしまい、被告人は自分で有罪ですと言うまで、ずっと拘禁されてしまいます。アメリカでは無罪を主張すれば、無罪と推定されて、直ちに保釈されるのとは真逆です。

刑事裁判を考える:高野隆@ブログ:人質司法の原因と対策

法務省は、ゴーン逃亡事件を受けて、保釈制度の改正について検討を始める、と言い出しました。ただ、関心としては、保釈中の逃走を防ぐことにばかり関心が言っているように見えます。

ゴーン会見の前、森法務大臣が、逃走罪の適用を保釈中の被告にも拡大する方針を発表しました。これにあわせて、被告にGPSの発信機を装着させて所在を把握することも検討するようです。

www.sankei.com

この方針には賛成です。が、現状では逃亡の防止しか関心がないようであり、これだけでは全然ダメです。逃亡を厳しく防止すると同時に、人質司法を可能にする保釈拒否をやめさせるため、高野隆弁護士が主張するように、以下の項目を満たす保釈制度とすべきです。

1)逮捕された被疑者は、遅滞なく裁判官の面前に引致され、保釈を請求する権利があること

2)「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」という権利保釈除外事由を削除すること

3)権利保釈の除外事由を、保釈保証金やGPSアンクレットの装着などの措置によっては①逃亡の防止や、②地域社会の安全確保が測れないことが十分に認められる場合に限定すること

4)罪を自白した被疑者・被告人には権利保釈を認めないこと

5)保釈の可否や保釈条件の決定手続は公開の法廷で行わなければならない:検察官は、公開の法廷で、権利保釈の除外事由――GPSモニタリングなどの措置では防止できないほどに高度の、①逃亡の蓋然性または②地域社会への危険発生の蓋然性――を立証しなければ権利保釈を阻止できないこと

出所:高野隆(2020)「保釈制度の見直し」(刑事裁判を考える:高野隆@ブログ)

刑事裁判を考える:高野隆@ブログ

もちろん、保釈制度だけが問題なのではありません。ヒューマンライツ・ウォッチのアジア・ディレクターのブラッド・アダムズ氏が主張し、日弁連も長年求め続けてきたとおり、警察・検察が再逮捕を繰り返して長期間拘留して自白を強要すること、容疑者の取り調べに弁護士が同席できないこと、裁判官があまりに安易に逮捕状請求を認めてること、等も、同時に変えるべきです。

日本の人質司法 | Human Rights Watch

弁護士出身の法務大臣さえ「被告が無罪を証明しろ」。度し難い前近代性を正すには、安倍退陣のプレッシャーを!

ゴーン会見の後、森法務大臣はゴーン氏を批判し、「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」と発言しましたが、その後、ツイッター上で「無罪の『主張』と言うところを『証明』と言い違えてしまいました」と訂正しました。

森まさこ法相、「無罪証明すべき」発言訂正「主張と証明を言い間違えた」 - 弁護士ドットコム

ツイッターだけではありません。以下のまとめに上がっているいくつかの動画によると(フェイク動画ではなさそうです)、記者会見でもはっきりと、「無罪を証明すべき」という表現を使っています。

togetter.com

これは単なる言い間違いというにとどまらず、法務省の感覚を如実に示すもので、「語るに落ちた」というべき大失言です。ゴーン被告の逃亡を許さないという日本の立場を主張すべき場で、内外に法務省・検察の前近代的な感覚を暴露した形です。しかも、森大臣は弁護士出身であり、この問題には専門知識のあるはずの人物なのですから、大臣辞任に値すると考えます。

野党は、この問題についてこそ、通常国会で野党は徹底的に安倍政権を批判し、「人質司法の全面廃止がなければ、安倍政権退陣を」と主張すべきです。まず、森大臣辞任を主張し、次いで任命責任者の安倍総理に総辞職せよと迫りつつ、辞めないなら人質司法を止める全面的な司法制度改革を行え、と主張すべきです。

桜を見る会の公文書管理問題は確かに重要です。カジノ疑惑の徹底追及も、もちろん必要です。しかし、国民生活にとっての重要さと言う点で言えば、人質司法の廃止は、それらよりもはるかに重要であり、優先順位の高いものです。これほど重大な人権侵害がこれほど長年にわたって続いてきた、というのは、単なる悪習というにとどまらず、検察・警察権力と国民との間に、厳然と身分の上下関係が存在していることを示しているからです。だからこそ、権力周辺について、刑事司法上の不公平な取り扱いの例がいくらでも出てきています。

このままいけば、政府・与党は、刑事訴訟法等の改正につき、逃亡防止での制度改正しかやりません。そのかわり保釈が認められやすくなる制度的保証など、今のところ全然検討課題になっていないようです。これでは、警察・検察をますます強くするだけで、恣意的な逮捕や自白強要のための長期間拘束は、更に悪化するおそれさえあります。政府は焼け太りで更に強くなります。

日弁連や国連・人権団体等が長年批判し続けても全然変わらず、堀江氏やゴーン被告のような著名経営者だろうが、キャリア官僚だろうが、政治家だろうが、あらゆる階層の人々が被害者となり、潜在的被害者は全国民であるのが、人質司法という前近代的な制度・悪習です。経団連の中西会長も国際的な批判を受け止めるべきだと主張しており、社会階層や支持政党・イデオロギーの問題ではありません。

海外の批判、受け止めを 勾留長期化で経団連会長 :日本経済新聞

これほど強力な警察・検察権力を正そうと思ったら、政府のトップに、よほど強い危機感を抱かせる必要があります。他の誰でもない安倍総理に、「人質司法を変えないと自分は辞めざるを得ない」と、実感させなければいけません。

野党は、この制度の改正のためにこそ、必死で安倍政権を追及すべきです。公文書管理も、カジノ疑惑も、政府が強すぎるから起きることです。政府が強いのは、もちろん選挙に強いせいでもありますが、警察・検察という恐るべき権力を握っているからでもあります。この権力をもっと適正な形で制御できなければ、今のようなデタラメで身内びいきの行政はずっと続いてしまいます。野党は、通常国会での政府追及では、刑事司法制度改革を最優先で主張すべきです。