日本の改革

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トランプの「イランの文化施設を攻撃する」発言は、味方を敵にする間違いであり、撤回すべき

アメリカとイランは、表向きの脅迫合戦と違い、冷静に戦争回避をしています。しかし、トランプ大統領の「イランの文化施設を攻撃する」という発言は、スレイマニ殺害を喜ぶイラン人も反対しており、撤回すべきです。

スレイマニ殺害の直後からアメリカはイランと交渉開始

アメリカとイラン両国の政府は、メディアでの脅し合いの言葉の中でさえ、冷静に戦争回避をしています。

イラン革命防衛隊のファタビ副司令官は、スレイマニ殺害から「数時間後」、米政府がイラン政府に対し、「相応」の規模での対応を要請してきた、と、イラン国営テレビで発言しています。アメリカは「イランが報復に出たければ、われわれがやったのと相応の規模で報復してくれ、とさえ言ってきた」とのことです。ファダビ氏は、米国がイランの対応を「決定する」立場にないとし、「米国民は重大な報復を待たねばならない」と述べてはいます。

www.afpbb.com

しかし、イランのハメネイ最高指導者へのアドバイザーであるHossein Dehghan少将は、CNNのインタビューで、ソレイマニ殺害への報復は、イランの代理勢力ではなく、イラン自身が「軍事施設」に対して軍事行動で行う、と言っています。そして、戦争と報復につき、こう言っています。

"Let me tell you one thing: Our leadership has officially announced that we have never been seeking war and we will not be seeking war."

"It was America that has started the war. Therefore, they should accept appropriate reactions to their actions," he said.

"The only thing that can end this period of war is for the Americans to receive a blow that is equal to the blow they have inflicted. Afterward they should not seek a new cycle."

Source: CNN January 5, 2020 

edition.cnn.com

イランの指導者は戦争を望んでいないとしており、「戦争」を始めたのはアメリカだと言っていますが、イランはスレイマニ殺害当初から、これは開戦に等しい、と言っているので、その言葉遣いを続けているのでしょう。国際社会は、アメリカとイランの現状について、戦争の可能性を排除しようとしていますが、既に戦争をしているとは考えていませんし、両国ともに、戦争は望まないと言っています。

重要なのは、報復は攻撃と同程度のものになる、それ以上の拡大はない、としている点です。これは、イラン革命防衛隊の副司令官がスレイマニ殺害直後に受けたというアメリカの要求と合致しています。

私は、アメリカは恐らく本当に、報復はあまり大規模にするな、とイランに要求したのだろうと思います。もちろん、こんなことはアメリカ国民には絶対言えないはずです。大規模だろうが小規模だろうが、イランのアメリカへの攻撃を容認する姿勢など、表向きは見せられないからです。秘密裏に、イランに対して要求したつもりが、イランに暴露された形なのでしょう。いずれにせよ、アメリカの要求に対し、CNNのインタビューで、イランは承諾しています。

つまり、アメリカは長年国交のないイランに、既にスレイマニ殺害の直後に、イランからすれば厚かましくも、反撃はこれに見合う程度にしろと言ってきて、イランも、腹は立てつつもそれに従い、受けた攻撃に比例した報復にします、と答えた、ということです。ということは、アメリカとイランの間では、既に一定の対話が成立しています。

また、軍事施設に対する軍事行動を行う、と言うのは、裏を返せば、民間人へのテロはしない、ということです。イラン革命防衛隊がテロ組織に指定され、そのトップがアメリカに攻撃をしようとしているからスレイマニを殺害した、というのがアメリカの言い分なのですから、報復が「テロ」と言われないよう、代理勢力ではなくイラン自身が、民間人への攻撃も避ける形でやる、と言ったのでしょう。

イラン政府も報復はせざるを得ない立場ですが、限定的、抑制的にせざるを得ないことが分かります。

これに対し、トランプは、とにかく攻撃は一切するな、そっちが比例的と言っても、こっちは「比例しない形で」徹底的に叩くぞと脅しのツイートをしています。

国民向けにはそう言うしかありませんが、実際のところは、小規模の比例的な報復は、黙認とまで言いませんが、覚悟しているのだと思います。目的は、スレイマニ殺害による抑止効果は最大限生かし、それに伴うリスクは最小化するということです。

「イラン文化施設の攻撃」発言は撤回せよ

ここまでは、双方が冷静に一種の対話を成立させているのだから、良いニュースです。

しかし、トランプが繰り返し、イランの文化施設を攻撃する、と言っているのは間違っており、撤回すべきです。 文化施設への攻撃は戦争犯罪なうえ、スレイマニ殺害を歓迎するイラン人や他の中東の人々まで、つまりアメリカの味方まで、敵に回してしまうからです。

まず、文化施設への攻撃は、アメリカも署名したハーグ条約に違反します。この条約は、文化施設に敵対的な攻撃をしたり、文化施設を軍事利用したりすることを禁じています。ユネスコはトランプ氏の「攻撃予告」を批判しています。

Protection of cultural property in the event of armed conflict | International Committee of the Red Cross

www.afpbb.com

もちろん、ハーグ条約でも、相手国が文化施設を軍事利用していて、やむを得ないときの攻撃は認めています。

だから、わざわざ「文化施設」を攻撃するなどと言う必要など全くありません。どれほど壮麗な美しい宮殿でも、そこからイランがミサイルを発射すれば、宮殿も軍事施設に過ぎないからです。

また、アメリカはテロとの戦いを進めるにあたって、タリバンイスラム国等のテロ組織による文化施設の破壊を批判してきました。今回、スレイマニの殺害も、テロ組織のトップを排除するという意味で行われたのですから、アメリカが自ら文化施設を破壊するなどと言っては、正当性が疑われてしまいます。この点では、メディアの批判は全く正しいと言えます。

ポンペオ国務長官はさすがに、トランプのツイートに反対とは明言しないものの、アメリカは国際法を守ると答えてはいますが、トランプ自身が「文化施設攻撃」という発信だけは撤回し、謝罪すべきです。

Trump Iran war: his threat to bomb Iranian cultural sites, explained - Vox

Defenders of History Take Aim at Trump’s Threat to Strike Iran’s Cultural Sites - The New York Times

何よりも、イラン国民や、イラク、シリア、レバノン、イエメンの諸国民等、スレイマニに苦しめられてきた人々が、スレイマニ殺害は歓迎しても、自分達の歴史や文化を破壊されることには、もちろん絶対反対です。イラン以外の国の人々も、イランの文化施設への攻撃には、自国の文化施設への攻撃同様に反対するでしょう。

アメリカ在住のイラン人民主活動家のマシ・アリネジャド氏は、スレイマニ殺害は強く支持しており、イランの官製デモに騙されてはいけない、11月の反政府デモでスレイマニが1500人を粛正したのを忘れるな、と言っています。

www.washingtonpost.com

一方で、アリネジャド氏は、文化施設への攻撃には反対しています。彼女は、イラン共和国が革命以来、イランの文化施設保護にとって脅威であり続けたのだから、アメリカはそれを守る立場であるべきだ、と主張しています。

 このように、スレイマニと戦い続けた、アメリカの味方であるイラン国民、しかも、イラン反政府運動のリーダーの一人まで、トランプの文化施設攻撃予告に反発しています。ましてや、イランのタカ派に対しては、合理的な判断能力を失わせて、本来は必要ない軍事行動まで起こさせる可能性も否定できません。

国内政治でもそうですが、特に国際政治では、文化を否定するような野蛮な言動は厳に慎むべきです。トランプ大統領は、文化施設攻撃を予告した発信を撤回し、謝罪すべきですし、安倍総理は、出来るだけ早い機会に、トランプ氏にそれだけでも要求すべきです。