日本の改革

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行革推進会議、デジタル化対応で新組織:日本維新の会は「公務員人件費2割削減」の再検討を。

行政改革推進会議が、来年1月に専門チームを作って、行政全体のデジタル化を進めます。行政にICT化と働き方改革が必要となる中、維新マニフェストの「公務員人件費2割削減」は中身を再検討すべきです。

ICT化で人件費は減らせる一方、働き方改革で人件費は増やす必要

今日の日経で、政府の行政改革推進会議が、デジタル技術の進展を業務省力化につなげる、という記事が出ていました。来年1月にも専門チームをつくり、デジタル化で不要になる行政の規制や業務を洗い出し、各省庁に業務改廃や人員配置の改善を促す、ということです。
同会議は20年春までに、デジタル化での行革指針をまとめ、各省庁は内閣人事局に21年度以降の予算にかかわる業務や定員の見直しを要求するそうです。また、自民党行政改革推進本部(塩崎恭久本部長)が求めてきた通り、政府の取り組みを定期的に点検する仕組みも入れるようです。

行革会議、デジタル化対応で新組織 省庁業務の省力化推進 :日本経済新聞

ICT技術で規制自体を減らし、その見合いで人件費も減らす。規制改革と公務員人件費の削減が同時に出来るので、ICT技術の導入を進めることで、行政改革を一気に進められます。

一方で、霞が関には働き方改革も必要です。

国会待機の非効率性が取り上げられることが多いですが、それ以前に、与党だろうが野党だろうが、当選回数の多い国会議員がちょっと何か聞きたいことがあったら、電話一本で議員会館まで説明に行かなければいけません。国会が開いていようがいまいが関係ありません。

「ちょっと聞きたい」どころか、自分のアイディアについて役人に政策を作らせようとする国会議員もいます。それは本来、議員の政策秘書や(政党の手続きを経たうえで)政党職員、あるいは、両院の調査局や法制局がやるべきことですが、そのケジメがあまりついていない議員もいます。

いま、「桜を見る会」の件で、議員の資料請求に応じずに公文書を廃棄したことが大問題になっていますが、あそこまでやったのは、政治家へ「忖度」せざるを得なかったか、政治家から指示を受けたためでしょう。森友事件と同じです。日常的には、こうした資料要求にも大概は応じてくれます。議員だけではなくて、秘書や政党職員が説明してくれとか資料くれとか頼んだら、いちいち議員会館まで来てくれることまであります。

普段からこんな風に、国会質問のための「国会待機」以外に、色々な形での「国会対応」を1年中しなければならず、そのうえ、行政府として政策を作り、民間を相手に監督等を行って法令を執行しなければいけません。当然、こちらの業務量も膨大なうえ、大変な緊張を強いられます。

こうした職場ですから、霞が関の残業時間は月平均100時間で、民間のおよそ7倍、精神疾患による休業者の比率は3倍、自殺者の比率は1.5倍だそうです。慶大大学院・岩本隆特任教授の調査(2018年)によります。

prtimes.jp

「月100時間残業」活力奪う 官僚、長時間の国会待機 :日本経済新聞

こうした非人間的な職場環境の改善は、行政改革推進会議が決めたデジタル化対応だけではもちろん出来ません。本質的な問題は、政と官の関係にあるからです。先ほど書いた通り、それなりの当選回数の国会議員の言うことには、とにかく何でもかんでも対応せざるを得ないのが現状で、根本的にはそこを変える必要があります。

今の政官関係がおかしいので、早急に変えるべきなのは確かです。よく言われる通り、たとえば野党議員が質問期限を守らないのは大問題で、厳しく守らせるべきです。

ただ、政治と官僚のなあなあの関係で利益を得ているのは、野党だけではなくて与党も同じです。本当に変えようと思ったら、自民党内の抵抗も抑えられるような強い総理がリーダーシップを取って、率先してやる必要がありますが、安倍総理には全然やる気はありません。それどころか、森友事件を見れば分かる通り、公文書管理等で求められる行政の自律性が歪められるのを、自分の利益のために放置しています。

www.tkfd.or.jp

ということで、国民としては、安倍総理のように自分のために行政が歪められても平気なリーダーではなくて、もっと高潔で、政官関係を自ら正してくれるような強いリーダーの出現を待たなければいけません。が、それこそ百年河清を俟つような話です。

政官関係が当面このままだとすれば、公務員に対しては、業務のICT化で規制とともに人員を削減する必要がある一方で、働き方改革で人員をむしろ増やす必要もあります。公務員の中で一番多い自衛隊については、規制改革で人員を減らせない部分は大きいですし、待遇についても、これまでよりは上げる必要があります。

つまり、公務員人件費というのは、減らせる余地はあっても、増やすべき理由も十分ある、ということです。

「公務員人件費2割削減」が妥当か、もう一度見直すべき

以上のように考えれば、政党や政治家が公務員人件費削減で数値目標を掲げるときには、ICT化による削減余地と、働き方改革による増加余地と、両方を考える必要があります。

いま、日本維新の会は、公務員人件費2割削減を主張しています。これは、国家公務員も地方公務員も合計した人件費を両方減らすべき、という主張です。国家公務員人件費は約5兆円、地方公務員人件費は20兆円なので、国家公務員で1兆円、地方公務員で4兆円、合計で5兆円の削減となります。5兆円あれば、確かに高等教育まで含めた無償化は簡単にできます。

しかし、今となっては、この目標について、見直すべきです。公務員人件費を削減するべきだ、という方針はもちろん堅持するとして、その中身について、もっと調べて党内で議論したうえで、方針を決めて発表すべきです。もちろん、野党の出来ることは限りがありますが、現状では、少なくとも国民に伝わる形では、削減の具体的な内訳や手法を出していません。

特に、2012年に維新八策という名前でマニフェストを作ったときには大きな課題となっていなかった二つの点、即ち、ICT化による規制改革と人件費削減、及び、働き方改革による国家公務員増員の可能性、を加味して考えるべきです。

まず、ICT化によってどれくらいの削減が図れるか、シミュレーションが必要です。以前、ブロックチェーン技術の応用でどれくらい削減できるかを会議でやったことがあるはずですが、あらためて、あらゆるICT技術の利用を想定して、試算してみるべきです。

次に、働き方改革です。現状の政官関係を前提にせざるを得ないなら、日本が抱える行政課題の多さを考えれば、中央省庁の官僚の数は、もっと増やすべきです。やむを得ない国会対応に今のように人が割かれるなら、シフト制を可能にするために、人も増やさざるを得ないでしょう。更に言えば、特にICT、金融、安全保障等の分野で、外国や民間の「悪知恵」を出し抜けるような優秀な人材を多数集めるためには、現役時の待遇も上げるべきです。

この一方で、天下り根絶を図るべきです。天下り規制が今でも甘いうえに、決めた規制さえ守られないのは、官僚の現役時の働き方があまりにひどいので、その埋め合わせとして良い待遇が与えられている、という一面があるからです。そんなやり方ではなく、現役時の働きに応じて現役時に給与で遇する形にすべきです。そうすれば、この悪習を官僚も守り切れなくなり、天下り根絶、つまり関係業界団体には一切の再就職を禁ずる形の規制も可能になるでしょう。長い目で見れば、天下り団体への補助金交付金の類を減らすことにもなり、歳出削減にも資するはずです。

地方公務員人件費の削減についても、「政府が」何をどうすべきなのか、全然決まっていません。教育無償化等の政策の財源として、公務員人件費2割削減は当然考えているでしょうから、5兆円の歳出削減のうち4兆円を占める地方公務員人件費削減の道筋が決まっていないのは無責任です。

地方交付税を削るというのは出来ないでしょう。道州制を導入した後の財政調整制度も決めていないのだから、地方交付税制度には維新は立ち入れないはずです。

維新の「思い」としては、大阪府・市のように、身を切る改革から始めて住民の支持を得て、日本全国の自治体が、徹底した行革を自らやってほしいなあ、ということなのでしょうが、その思いは、まだ政策として形になっていないのです。

維新が全国で首長・議会の第一党を取って地方ごとにやるんだ、ということなら、当然、控えめに言って大変に長い時間がかかるでしょう。控えめではなく、はっきりと言えば、私はそんなことは不可能だと思います。とにかく、国政政党として掲げた目標の達成手段は示すべきです。

AIの発展や働き方改革など、国政維新が出来たときに想定していなかった課題が生まれていますし、マニフェストは常に改定が必要です。維新は、新たな情勢に対応するため、公務員人件費2割削減という政策について、実現の手段を検討し、必要ならこの目標を変えるべきです。