日本の改革

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安倍総理の発言「日中関係は完全に【正常な軌道】」は、尖閣についての敗北宣言だった?

日中首脳会談、諸問題につき、特段の成果も見通しもないまま終わりました。安倍総理の「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」という発言は、尖閣問題を棚上げにする意図でしょう。経済界の利益のためだけに主権をないがしろにする姿勢は間違っています。

日中首脳会談、形ばかり「強く求め」たり「説明を求め」たりの安倍総理

中国で日中首脳会談が行われましたが、日本国内で習近平国賓来日に対する批判の声が高まり、国民世論も中国に強い反感を持っているにも関わらず、安倍総理は、各種の懸案について、形ばかりの言及をするだけでした。

一応、アリバイ的に、「言うべきことは言っています」という体裁を整えた部分もあります。

外務省によると、安倍総理習近平に対し、尖閣問題等について、「東シナ海の安定なくして,真の日中関係の改善なし」との原則を述べて、「中国側の対応を強く求め」ました。邦人拘束事案については、「中国側の速やかな対応を引き続き強く求め」ました。「強く求め」るのはこれまでもずっとやってきて、特段の色よい返事はありませんでしたし、今回も同じです。

習近平・国家主席との日中首脳会談・夕食会 | 外務省

これが人権問題になると、言うべきことも言っていません。こちらも外務省の公式発表で総理発言の表現を見ると、香港については、全ての関係者の自制と早期の事態収拾を求め、香港は一国二制度の下での自由な繁栄が大事だ、と型通りの言い方だけです。ウイグル問題に至っては、「透明性を持った説明」を求めただけです。人権侵害があるという認識さえ示さず、ましてその改善など求めていません。そして両方とも、習近平から内政干渉だと言われてそのまま引き下がっています。

最悪は北朝鮮の核問題です。外務省は、朝鮮半島の非核化に向けての連携と、安保理決議の完全な履行の重要性では一致した、と言います。しかし、「朝鮮半島の非核化」とは、北朝鮮の言い分による朝鮮半島全体の非核化、つまりは、アメリカによる核の傘の撤回も含むものです。そのうえ、習近平は、中国とロシアが国連の安全保障理事会に提出した北朝鮮への制裁の緩和を求める決議案への支持まで求めてきた、ということです。北朝鮮の非核化など、全然やる気がないどころか、「お前ら制裁をやりすぎだからやめろ」と、面と向かって言われています。

www.jiji.com

要するに、中国に対する厳しい国内世論を気にして、懸案について発言するポーズをとった形で、当然成果はありませんでした。

各紙とも、異口同音に、尖閣や法人拘束、更に香港、ウイグル北朝鮮の核といった諸問題は残したままだ、と書いています。唯一、読売が尖閣問題について、習近平が「東シナ海を平和、協力、友好の海とすべく、防衛当局間の交流促進なども含め、問題に取り組んでいきたい」と述べた、として、「日本国内の反発を踏まえ、強気の姿勢を控えた可能性がある」としています。しかしこれも、強気の「姿勢」を控えた「可能性」というだけで、現状を見ればとても改善の見込みなど見えません。

「日中新時代」課題なお 習氏、香港「内政問題」 (写真=ロイター) :日本経済新聞

習氏の「国賓待遇」に身内からも批判 首相は歯切れ悪く:朝日新聞デジタル

[スキャナー]習氏の国賓来日へ安倍首相「次々と注文」 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

首相、習氏に懸念伝達 「国賓待遇」国内に説明必要 北京立ち寄り会談(2/2ページ) - 産経ニュース

尖閣問題で悪化した日中関係、日本が尖閣でベタ降りして改善?

安倍総理日中関係改善への姿勢が鮮明になったのは、去年の8月からです。そもそも、日中関係の悪化と言われている状態は、民主党政権が2012年9月に、尖閣諸島を国有化してからです。

したがって現在、「日中関係改善」と言われる外交関係の中身、特に、来年の習近平来日で、尖閣問題がどういう「改善」を果たせるか、というのが、今回の安倍外交の評価にとって、特に重要です。

私は、安倍政権は、習近平の来日による日中関係改善を全てに優先させて、尖閣問題では既に中国に完全に譲歩したのだ、と思います。これを示すのが、日中両国政府が使っている「正常軌道」という表現です。

この言葉について、FACTA1月号が、日中関係が「正常な軌道」に戻る、という表現と、習近平の訪日招請が一体のものだった、と書いています。

第二次安倍政権が誕生すると、駐日中国大使・程永華(当時)が、日本に「正常軌道」に復帰するよう呼びかけました。当初の安倍政権はこれを無視していました。

ところが、2018年8月、日中関係は「正常な軌道に戻った」と、日本の方から、当時の河野外相が表明しました。翌月の日中首脳会談でも確認されましたが、習近平は安倍首相からの訪日要請をつれなく留保。10月下旬に安倍総理は「競争から協調へ」云々と言って改めて訪日招請しましたが、習近平は「検討します」だけ。

焦った安倍総理は、2019年1月、通常国会の施政方針演説の中で、「日中関係の正常軌道」復帰を宣言して、6月のサミットでまた習近平に「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と言って、やっと来日をOKしてもらいました。ということで、「完全に正常な軌道」と習の国賓訪日招請は一体だった、というのがFACTAの見方です。

facta.co.jp

私も、この「正常な軌道」という文言と習近平の訪日との関係は、FACTAの言う通りだろうと思います。

それに加えて、この「正常な軌道」という言葉が、もともと尖閣問題で日中関係が悪化した際に、中国政府から発せられた言葉だったこと、日本政府がそれに応えて同じ表現を使っていること、を考えれば、この言葉は特に、尖閣問題を念頭に置いているはずです。だとすると、安倍政権は、習近平の訪日(それも国賓で)を実現するため、尖閣問題は目をつぶります、と中国に伝えたに等しいことになります。もちろん、大っぴらに、もう尖閣についてあまり文句は言いませんなどと言ったら政権が倒れますから、目立たないように、暗号めいた言い方にしているのでしょう。

こう考えれば、なぜ今年になって、中国交船による尖閣接続海域への侵入が過去最多になっているのかも分かります。日本政府から、尖閣諸島周辺での中国船の活動を黙認する、という事実上の意思表示があったからでしょう。政府が日中関係が「完全に正常な軌道」だと言うのに、尖閣では戦後最悪の事態が進んでいるのを、国民もメディアも不思議に思っていましたが、「正常な軌道」とは、中国にとっての正常だったのです。

www.nikkei.com

尖閣問題で日中関係が悪くなった中、なんとか習近平の訪日を実現したい、そのためには、尖閣の問題についても目をつぶる。こんなやり方は許せません。2018年に尖閣について「正常な軌道」、2019年に「完全に正常な軌道」と言う前に、2017年には、「第三国市場協力」の名目で、一帯一路への事実上の協力も表明しています。

欧米が中国の正体を知って遅まきながら本気で対抗しつつある中、またしても日本だけが1989年の天安門事件時と同様に、中国を許す態度をとるなら、我が国の国際社会での地位はますます下がり、いずれは倒れる独裁政権にますます圧迫され、中長期的には経済にとっても良い影響を及ぼしません。

何回でも繰り返しますが、安倍総理は、対中外交を転換すべきです。