日本の改革

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2020年度政府予算案決定、実はこれでも緊縮型、新しい分野の投資に国債発行を!マクロでもっと緩く、ミクロでもっと厳しく!

史上最大規模の2020年度政府予算案を閣議決定。メディアは財政規律が緩んでいると叩きますが、全体的に見れば、実は緊縮型予算であり、個別事業は確かに問題があります。今後の財政運営は、マクロではもっと緩く国債も増発し、ミクロでの不公平・非効率を厳しく正すべきです。

マクロはもっと緩く、ミクロはもっと厳しく!

2020年度(令和2年度)予算案が閣議決定されました。

令和2年度予算政府案 : 財務省

この予算案は、現在の経済・社会状況を踏まえれば、全体として緊縮型と言うべきです。新発国債は減っているし、米中冷戦や消費税増税の影響を考えれば、プライマリーバランスの赤字がしばらく続くのはやむを得ません。中長期的に見ても、日本の財政は、地方も含めた「一般政府」等のバランスシートで見れば、特段問題ありません。

現在の低金利は日本だけでなく世界でも長期化すると見られていますし、日銀が適切な金融政策を取ることも出来るので、むしろ今のうちに国債発行はもっと増やして、日本にとって必要な政策にどんどんお金を使うべきです。例としては、脱原発・脱石炭のための産業構造転換に必要なグリーン投資、気候変動対応の公共事業、中国に対抗するための防衛費・科学技術投資、教育の全課程の無償化、等々です。

ただし、個別の事業については、不公平・非効率な支出や制度も多いので、そこは厳しく削減するべきです。世代間の不公平を是正するため、年金・医療・介護での、高齢者の自己負担増や給付削減は避けられません。低所得の高齢者の生活は、高齢者間の所得分配で手当てすべきです。また、脱原発・脱石炭を進めるうえで、既得権化した産業・企業への補助金・租税特別措置を廃止・削減するべきです。分野ごとには、地方創生、中小企業、農業、財投では官民ファンド等への支出を削減すべきです。

つまり、2020年度予算案については、マクロはもっと緩く、ミクロはもっと厳しくするべきです。

日本は財政危機ではない。国債発行で、効果のある公共投資を!

まず、マクロについて、日本の財政の現状認識を正確に行うべきです。日本は財政危機ではありません。

来年度予算案の一般会計の総額が102.7兆円で、過去最大だった2019年度より1.2兆円増えた、ということで、メディアは一斉に批判しています。

[社説]財政の持続性に不安残す来年度予算案 :日本経済新聞

20年度予算案 「100兆円」は持続可能なのか : 社説 : 読売新聞オンライン

膨らむ予算案、官邸・与党が圧力 経済対策に走る背景は:朝日新聞デジタル

クローズアップ:20度予算案 歳出膨張、歯止め利かず - 毎日新聞

メディアの批判は、要するに税収63.5兆円に対して歳出が102兆円もあって、ギャップが大きすぎる、これでは将来が心配だ、ということです。税外収入と言われる「その他収入」が、6.5兆円にもなるのも、弥縫策だということで気に入らないようです。税外収入は、外国為替管理資金特別会計の剰余金等を使ったもので、特別会計のいわゆる「埋蔵金」等です。

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出所:財務省

そうは言っても、国債の新規発行額はちゃんと1000億円減っていて、新発国債はこの10年で着実に減っています。

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出所:財務省

プライマリーバランス基礎的財政収支)の赤字は、確かにあまり減っておらず、黒字化目標が先延ばしになりました。行ったことを実行できなかったのは確かに反省が必要です。が、この赤字が急激に膨張しているわけでもありません。

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出所:財務省

要するに、2020年度予算案は、規模こそ過去最大であっても、全体として見れば、新発国債は減っているし、プライマリーバランス赤字も前年度並みだし、メディアが批判するほどの放漫財政ではない、ということです。プライマリーバランスの赤字も、米中冷戦で世界経済にリスクがあり、消費税も増税した現在、無理に減らして追加の増税を急いだりするのは逆効果です。景気を冷やして税収をかえって減らすからです。

税外収入が6兆円超もあって、外為特会の剰余金を使ったりしているのは、一時的なごまかしではないか、という批判もされています。確かにこの収入は恒久財源ではありません。しかし、特別会計等の「埋蔵金」は、最大限活用して、真っ先に国民に還元すべきです。増税国債発行に頼らない財源調達という点では、こうした埋蔵金の利用は望ましいことであり、むしろまだまだ足りないくらいです。

本ブログでも以前、この点は指摘しました。そのときに紹介した、日経新聞の2012年12月3日の記事によると、2005年~2012年の8年間で、埋蔵金発掘の実績は、自公政権で18兆円、民主政権で17.5兆円と、小泉政権直後は両党が競い合って、税外収入を増やしました。これは大変良いことであり、安倍政権もそれを引き継いでいるだけです。

与野党とも通常国会で、あらためて「霞が関埋蔵金」の発掘と国民への還元を!:労働保険特会積立金、官民ファンド等 - 日本の改革

上に挙げた予算フレームを見れば分かる通り、税外収入は2019年度予算でも6.3兆円もあり、2020年度予算案の6.5兆円と合わせて、わずか2年間で12.8兆円もの税外収入を生み出しているのは、大変立派なことです。

メディアの中でも、今回の予算案を含めて、最近の財政運営が実は緊縮型だ、という指摘があります。

日経が12月20日の「財政政策、実は緊縮的? 資金循環統計やGDP比が示す」という見出しの記事にある通り、資金循環統計で見た「一般政府」(中央政府地方公共団体社会保障基金)のバランスシートを見れば分かります。

 「一般政府」の資金不足(財政赤字)の幅は、以下のグラフの通り、2013年以降、縮小傾向が続いています。

出所:日本経済新聞2019年12月20日

財政政策、実は緊縮的? 資金循環統計やGDP比が示す :日本経済新聞

(「一般政府」の資金不足については、以下のリンクで確認できます)

http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

以前、本ブログで書いた通り、IMFの発表した各国のバランスシートを見ても、中央銀行と合計したときの、日本の純資産はゼロくらいです。金融緩和を継続することで、中長期的な財政運営にも特段の問題はありません。

「日本の消費税率を20~26%にしろ」:日本の旧大蔵省官僚がOECD事務次長なため、OECD報告書は消費税の部分だけメチャクチャ。 - 日本の改革

 

今の日本のように経済成長率が低い状態が続いているときに、財政で下支えする必要があるのは当然ですし、これほどの低金利なのですから、国債発行はもっと行っても構わないはずです。

この低成長、低金利という状態は、かなり長い間続くと見られています。

米中冷戦はかなり長い期間続くでしょうが、それ以前のリーマン・ショックの頃から、日本に限らず、先進国全体が低成長となり、金融政策で日本同様の低金利政策がとられるようになってきました。それでも、各国の成長率はそう上がってはいません。

こうした状況を踏まえて、クリントン政権で財務長官だった経済学者のローレンス・サマーズ氏が、「長期停滞論」というのを唱えています。要は、低成長はまだまだ続く、金融政策で低金利にしたが、それももう下限に来た、だからこれからは財政政策をするべきだ、ということです。もちろん賛否両論あるようですが、低成長も低金利も続く、という認識には、一定の支持があることが分かります。

www.nikkei.com

先進国が患う長期停滞に克つには(大論戦) (写真=ロイター) :日本経済新聞

この考え方に立って、サマーズ氏は、日本の財政危機というのは誇張され過ぎているの、と主張しています。

日本の財政危機「誇張されている」 サマーズ氏語る:朝日新聞デジタル

そして、現在、成長率が金利を上回る状態が続いています。かつて小泉政権時に、竹中平蔵氏が、成長率が金利を上回る状態が続くなら、財政運営は持続的なはずだ、つまり、増税などをしないでも、国債が際限なく増え続けたりしない、と主張しました。そのときは反論も強く、理屈の話について小泉総理がどちらとも「判定」することもありませんでしたが、いま現在、成長率が金利を上回る状態がずっと続いています。

もちろん、この状態が長く続く保証がない、という主張もされていますが、

財政赤字拡大容認論を問う(中) 超低金利下でも維持不可能 :日本経済新聞

金利については、日本銀行が今のように適切に管理していれば、成長率が金利を上回る状態は維持できるでしょうし、国債発行が急増して財政破綻するようなおそれはありません。

以上のように、少なくとも現在のような低成長、低金利が続いている状態でなら、国債発行をもっと増やすことには、何の問題もありません。金額ありきになってはいけないのは当然ですが、日本が将来のために行うべき大規模投資はいくらでもあります。本ブログでは、脱原発・脱石炭で再生エネルギー100%を目指すのグリーン・ニューディール政策や、教育無償化の徹底、更には、中国等に対抗するための軍事・科学技術への投資などを主張してきました。こうした、国の中長期的な成長率を上げる政策を実行するために、低金利のうちに国債を増発することは、中長期的な財政運営にとってむしろプラスです。

温暖化で成果見込めないG20。日本の環境政策は、欧州緑の党の「炭素税・配当」政策と、アメリカの「グリーン・ニューディール」を取り入れるべき! - 日本の改革

衛星分野で米中逆転。宇宙、5G、海底等の「デジタルシルクロード」で世界支配目指す中国。日米欧は対抗して、巨額の科学技術投資を! - 日本の改革

ミクロでの不公平・非効率は深刻。大規模な予算組み替えを!

一方で、2020年度予算案を含めた現在の財政運営について、個々の事業について言えば、不公平・非効率で削減するべきものも多々あります。この点について言えば、メディア等による予算案に対する批判は正しいものです。

まず、使いもしないでためられている「埋蔵金」は、積極的に活用すべきです。税外収入については先ほどふれましたが、外為特会以外にも、発掘すべき埋蔵金はあります。たとえば、以前、本ブログでもふれた通り、労働保険特別会計の雇用勘定の積立金だけで、純資産(資産から負債を引いた差額)が7兆円を超えています。

独立行政法人等の政府出資法人の純資産も100兆円を超えており、しかもそうした法人に対して、多額の運営費交付金が支出されており、いずれも、削減していくべきです。

与野党とも通常国会で、あらためて「霞が関埋蔵金」の発掘と国民への還元を!:労働保険特会積立金、官民ファンド等 - 日本の改革

アメリカの超富裕層も賛成し始めた富裕税。日本の「休眠」金融資産は、①個人への資産課税、②企業への内部留保課税、③政府出資法人への行政改革で吐き出させ、有効利用すべき。 - 日本の改革

以上のように、政府がムダに持っている資産、特に金融資産を吐き出させること等、官民の間に生じる不公平、非効率をまず正すべきです。もちろん、公務員人件費も、議員の身を切る改革をちゃんとやったうえで、働き方改革とIT化を同時に進めつつ、削減していくべきでしょう。2020年度予算案では、公務員人件費は、国で150億円マイナス、地方で増減ゼロで、特に地方でまだまだ効率化の余地があります。

https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/22.pdf

このように、まず官の不公平・非効率を切ったうえで、大きく二つの分野での歳出削減、予算組み替えが必要です。

まず、業界団体向けの支出、次に、家計向けの支出という順で切る、または予算組み替えを行うべきです。

第一に、業界・団体への既得権化した補助金交付金・租税特別措置等の廃止・削減です。

地方創生交付金、中小企業対策の「ものづくり補助金」、農業補助金財政投融資での官民ファンドへの支出、法人税の租税特別措置等が対象となります。また、原発、石炭火力のための補助金等も切っていくべきです。

第二に、世代間の不公平を是正するための予算組み替えです。これは政府も徐々に始めていますが、高齢者への支出に偏った年金・医療・介護への給付の削減や自己負担アップによって、現役世代の負担を軽くする一方、待機児童対策や教育無償化等の現役世代向けの支出を大幅に増やす形で、予算組み替えを行うべきです。高齢者の負担アップによる低所得者対策については、出来る限り高齢者間の所得分配で、特に、所得税で行うべきです。

このように、今年度予算案の編成を含めた財政運営は、マクロではもっと緩く、必要な公共投資のために思い切って多額の国債を発行し、ミクロではもっと厳しく、第一に政府、第二に既得権者となった業界団体、最後に高齢者、という順で削減・組み換えを図るべきです。