日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

経営危機のジャパンディスプレイを支える官民ファンド(JIC)に、来年度の財投でまた1000億円…

再建の見通しが立たないジャパンディスプレイを間接的に支える官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)に、来年度の財投計画で、また1000億円の公金が使われます。ジャパンディスプレイは再建型の倒産をさせて、JICを含む官民ファンドは全廃し、低金利下での政府によるリスクマネー供給は、一本化した政府系金融機関でやるべきです。

来年度財政投融資計画で官民ファンドを延命

来年度の予算案と財政投融資計画は12月20日に正式に閣議決定、発表となりますが、そろそろ報道で中身が出てきています。

それによると、産業革新投資機構、略して、革新投資機構(JIC)という官民ファンドに、1000億円の投資を行うそうです。

www.nikkei.com

この官民ファンドについては、本ブログでも何度か取り上げてきました。経営再建中のジャパンディスプレイを支えているファンドです。

少しややこしいのですが、国は、財政投融資特別会計で、革新投資機構(JIC)の株式を95%持っています(残り5%はトヨタ等の民間企業です)。そして、革新投資機構(JIC)は、INCJという100%子会社を持っています。そのINCJが、ジャパンディスプレイの株式を約25%持っています。

https://www.j-ic.co.jp/jp/report/pdf/report190701_01.pdf

株式会社INCJとは | 株式会社INCJ

6740 ジャパンディスプレイ | 企業情報FISCO

ということで、国⇒革新投資機構(JIC)⇒INCJ⇒ジャパンディスプレイという形で、公金(財政投融資特別会計のお金)が、革新投資機構(JIC)を通じて、経営危機にあるジャパンディスプレイに投じられていますが、同社の経営は一向に上向きません。にもかかわらず、また来年度、革新投資機構(JIC)に、1000億円もの資金が投じられます。

一応、革新投資機構(JIC)は、ジャパンディスプレイ以外で収益を上げてはいます。しかし、本ブログで何度も取り上げた通り、このジャパンディスプレイに対しては、革新投資機構(JIC)の前身である産業投資機構の時代から、既に3000億円以上も支援をして、それでもまだ同社は債務超過です。

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ジャパンディスプレイは、中国と台湾のファンドに逃げられ、今月12月12日になってようやく、いちごアセットマネジメントなる独立系ファンドから、800~900億円の出資を得るということで、一応の支援策をまとめました。ジャパンディスプレイの社長は、いちごアセットは長期保有を「前提にし」、熱心なサポートを「もらえそう」と言っていますが、どうも発言が頼りありません。日経は、支援の詳細に不明の部分があるし、そもそも事業環境が厳しいし、11月に発覚した不正経理の調査中で、過去の経営について何が出てくるか分からないし、まだまだ先行きは流動的だ、としています。

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ちなみに、いちごアセッマネジメントの「いちご」は、一期一会の「いちご」だとかで、このファンド(投資顧問会社)は日本株に特化しているそうです。

いちごアセットマネジメント株式会社

一応は再建のスキームを決めたとはいえ、先行きが厳しいことに変わりはありません。私は、中台のファンドの支援が決まったときも、後にそれが白紙撤回されたときも、ジャパンディスプレイ社はもう再建型の倒産手続に移行すべきだ、と主張してきました。国が支え続けると、今後更に負担が膨らむ可能性があるからです。

会社更生法民事再生法で裁判所の下でやるのでも、あるいは金融機関主導で私的整理でやるのでも良いので、国民負担を増やさないために、出来るだけ早く、倒産させるべきです。国が官民ファンドを通じて持っていた25%の株式は紙くずになりますが、更なる追加支援で損失が増える可能性がある以上、損切りは仕方ありません。

現に、来年度の財投計画で、ジャパンディスプレイ社を支える革新投資機構(JIC)に、また1000億円を出すことが決まりました。建前としては、ゾンビ企業を救うのではなくて、AI等の将来性のある分野へのリスクマネーの供給ということになっていますが、今後、ジャパンディスプレイ社の経営が更に悪化したら、理屈をつけてまた追加支援に使われかねません。

官民ファンド改革も不十分。同じことは政府系金融機関がやれば良い

そもそも、革新投資機構(JIC)を含む官民ファンドの改革が進んでいません。これについては、今年1月から何度か取り上げてきましたが、

ゾンビ企業を支援するゾンビ・ファンド:官民ファンドは全廃を - 日本の改革

革新投資機構(JIC)は、社長等の報酬問題で政府ともめて、社長職が空席になってしまいました。10月に、元みずほ証券社長の横尾氏が何とか社長に就任、日経も一応は手堅い人事とは言いつつ、信頼回復はまだまだ難しい、としています。

www.nikkei.com

革新投資機構(JIC)のガバナンスについて、財務省は疑問視しています。JICは、原則として企業に直接投資するのではなく、民間投資の呼び水とするために、認可ファンドというのを間にはさんで、企業に投資することになっています。このやり方で、認可ファンドに対してどうガバナンスやモニタリングを利かせるのか、はっきりさせるべきだ、と、財務省は12月11日の財政制度等審議会財政投融資分科会で言っています。そして、そもそも、JICの投資が我が国の経済に役立っているのか、来年度に1000億円も出すのは適当か、とぶつけています。もちろんジャパンディスプレイ社が念頭にあると見られますが、これまでの報道によると、1000億円は通ってしまっているようです。

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出所:財務省

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/proceedings/material/zaitoa011211/zaito011211_09.pdf

私は、官民ファンドの下に、認可ファンドをまた置くような複雑なスキーム自体を取るべきではないと思います。リーマンショックの一つの教訓は、ファンドの仕組みが複雑になり過ぎて、そのファンドごとに手数料も取られて、結局は一般の投資家を無視した金融業界の利益追求がひどくなった、ということでした。個々の家計・国民から企業にマネーが流される過程は、出来るだけ単純であるべきで、だからこそフィンテックに大きな期待が集まっています。

そもそも、官民ファンドは、各省が恣意的に運用してひどい損失を上げています。官民ファンドの下にまた認可ファンドを置くのも論外、それ以前に、官民ファンドを作ること自体も問題です。比較的うまくいっていると言われた革新投資機構(JIC)でさえ、これほどの投資の失敗を出して、しかもガバナンス上も政府と深刻な紛争になるような問題を引き起こしています。ひどいファンドとなると、クールジャパン機構をはじめ、もう目も当てられない有様です。

民間企業がクールジャパン機構に投資すると、2倍~22倍もキックバック:蓮舫氏が暴いた官民ファンドのデタラメ - 日本の改革

JICやクールジャパン機構を含む官民ファンドについては、「官民ファンドの運営に係るガイドライン」に基づいて、「官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議幹事会」というところが一応監督しています。官民ファンドが様々な批判を受けたため、この幹事会が今年10月4日に、ガイドラインの改正を発表しています。改正の趣旨も含めて、検証報告で概要が述べられています。

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出所:内閣官房

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kanmin_fund/pdf/kenshohoukoku_dai11.pdf

目玉は、各ファンドごとのパフォーマンスを比較できるような「横串」の指標を作ります、ということなのですが、「政策性」の指標は曖昧にならざるを得ず、まともなガバナンスが効くとは思えません。いくら共通の指標ですと言っても、各省が政策ごとの独自性を主張すれば、いくらでも言い訳は出来てしまうからです。

(なお、内閣官房の同幹部会での有識者の意見はこちらで、

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kanmin_fund/dai12/gijigaiyou.pdf

財務省財政制度等審議会財政投融資分科会での、官民ファンドに関する議事要旨等はこちらです。)

財政投融資分科会(令和元年11月12日開催)議事要旨 : 財務省

財政投融資分科会(令和元年11月12日開催)資料一覧 : 財務省

政府が、民間企業にリスクマネーの供給を行う必要性については、否定しません。しかし、官民ファンドというのは、制度が出来てから比較的歴史が浅く、やってみた結果は、あまりに所轄官庁が好き勝手に無責任な経営が出来てしまう、という弊害ばかりを生んでいます。

私は、政府が将来のための投資で、財投や国債発行でリスクマネーの供給をするのは、従来の政府系金融機関で十分だと思います。これまで一応、それなりの金融規制の下で、長い間の経験も積んでは来ています。

もちろん、政府系金融機関も、民業圧迫の恐れはありますし、伝統的に天下り先となっているというデメリットもありますが、こうした点は官民ファンドも同じです。まずは、最近出来たばかりで日本の経済・社会に貢献せずに損ばかりしている鬼っ子の官民ファンドを全廃するべきです。

同時に、政府系金融機関についても、小泉改革の原点に立ち返って、一本化するべきです。財務省天下り先である政策投資銀行国際協力銀行も民営化し、経済産業省天下り先である商工中金も民営化して、日本政策金融公庫に一本化するべきです。そして一本化された公庫の中に、国際金融部門も、リスクマネー部門も置くという形にすれば、民業圧迫の恐れがある機関は一社だけとなりますし、ポストが減って天下りも減らせます。たった一社なので、官邸、国会、メディア、国民からの監視も容易になるでしょう。

したがって、やはり官民ファンドは全廃、リスクマネー供給やるなら一本化した政府系金融機関でやるべきです。