日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

COP25で日本の新提案なし:安倍政権は、いずれ中国と石炭火力発電のインフラ輸出で協力するのでは?

COP25、小泉環境大臣は、石炭火力発電の更なる削減等を打ち出せませんでした。日本と中国は、石炭火力発電プロジェクトでいずれは民間銀行の融資を受けられなくなるでしょう。そうなると両国とも頼りは公的融資となり、一帯一路の一環として、石炭火力発電のインフラ輸出で協力する可能性があります。

小泉環境相は期待通りの期待外れ、それでも今後には期待

12月11日、 第25回気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で、小泉進次郎環境相が演説、石炭火力発電の廃止などを打ち出せませんでした。現状の温暖化ガス削減目標の上積みも見送りました。これがまた内外から叩かれまくっています。

小泉氏自身は、何とか石炭火力発電の更なる削減に向けて、新たな方針を決めて発表したかったようですが、力不足だったようです。朝日によると、今回のCOP25の目玉として、日本が海外に輸出している石炭火力発電に制限をかける国際公約など3案を検討していたそうで、11月には環境省幹部も、「目玉」を発表できる可能性を示唆していたようですが、官邸の壁は厚く、失敗しました。

小泉氏、新たな対策出せず COP25で演説、官邸の了解出ず断念:朝日新聞デジタル

公式なステートメントにも、小泉大臣の悔しさがにじんでいます。

小泉氏いわく、若者のサステナブルへの思いには共感しているし、年長世代の気候変動への 態度に怒りも理解する、国際社会の厳しい批判も承知しているし、グテーレス国連事務総長が「石炭中毒」と言ったのは日本に向けたものだと分かっている。COP25までに、石炭政策で新たなことを決められなかったが、私も日本国民も、今まで以上の行動が必要だと思っている、としています。

そして、今後の政策転換のために、自治体主導でのネットゼロを進める方向を示唆しています。東京都が小泉氏就任前に音頭とって、メイヤーズ・サミットで排出ゼロを決めたのが、小泉氏にとっても良い結果になった形です。環境大臣が更に多くの自治体に呼びかけて応じるところが増えれば、官邸もそうそう無視はできなくなるでしょう。

http://www.env.go.jp/earth/ステートメント_1912111115_clean.pdf

安倍総理は小池都知事に感謝すべき:政府の中途半端な目標(2050年までCO2を80%削減)を、小池知事が議長のメイヤーズ・サミットが助け船(100%削減)。 - 日本の改革

もちろん、政治家は言葉だけではダメです。肝心のCOP25までに結果を出せなかった以上、またポエムかと罵られるのは仕方ありません。それでも、予算も力もない環境省の大臣として、経産省主導・経団連主導の官邸を相手に、直前までどうにか石炭火力を減らす「目玉」を作ろうと努力はしたようですし、私はそこを評価します。

今回、結果が出なかったのは残念ですが、政界のプリンスが、内外からボロクソ言われて嘲られ侮られる経験を、今後の飛躍のバネにしてもらいたいと思います。小泉氏の大臣就任時に、小泉純一郎氏が、「環境省でよかった」と言った言葉の意味が分かる気がしています。

グレタが言う通り、行動しないことが脅威。特に日本にとって。

さて、そんなわけで、人気の環境大臣が何と言おうと頑として石炭火力発電推進の方針を変えなかった官邸、日本政府ですが、これは相当マズイ事態です。グレタ・トゥーンベリ氏は今回、「行動しないことが脅威だ」と発言したそうですが、それは、日本にとってこそ当てはまります。

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なぜなら、日本はこのままでは、国際的なビジネスから締め出される可能性があるからです。

こういうリスクに敏感なのは、やはり日経です。

今回の、日本政府の「ゼロ回答」につき、日経は、国連環境計画(UNEP)・金融イニシアチブの末吉竹二郎特別顧問のコメントとして、「石炭火力を維持すると国際社会からみなされるのは、日本企業にとって大きなリスクだ」という指摘を紹介しています。

末吉氏は、「再生可能エネルギー100%の電気を条件とする世界企業も増えている。脱炭素を進めなければサプライチェーン(供給網)の国際化が進む中、日本から出る企業も増える」と懸念しています。

日本は今回、単に「新しい提案をしなかった」だけではありません。日本の現状では、既に発表した国際的な約束、即ち、2030年までに温暖化ガスを13年度比26%減らすという目標さえ、今のままでは達成できないと見られています。つまり、石炭火力発電を今以上に減らす、と新たな提案をしなかったことで、既に約束したことさえ守る気がないと見られてしまいます。

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というわけで、日本は、パリ協定に基づいて自ら決めたことさえ守らず、まして効果的な温暖化ガス削減もしないのだから、国際的なサプライチェーンから外される、つまり、日本企業と取引しない欧米企業が増える、という懸念が現実になりかねません。

特に深刻なのが、金融です。

本ブログでも何度も取り上げましたが、世界はESG投資を重視しており、環境に負荷の大きい活動を行う企業への投融資を控える動きがあります。

固定価格買取制度(FIT)終了後は、①2030年の再エネ比率目標を50%超にして、②企業の再エネ電力購入(PPA)を促進し、③ESG投資の普及を! - 日本の改革

安倍総理も小泉大臣も、この分野は大事だ、と口では言っています。そして、10月にグリーンイノベーション・サミットというのを総理主催で開いて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)等の一連の国際会議も、いっしょに東京で行いました。TCFDは、金融安定理事会(FSB)により設置された組織で、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨することで、ESG投融資の促進を図っています。

安倍総理、環境分野の技術革新に「10年間で30兆円を投資」:ESG投資だけでなく、炭素税も財源にすべき。 - 日本の改革

日本はこんな風に環境金融でリーダーシップをとっている、だから、石炭火力発電を減らさなくても、十分貢献しているから良いんだ、などと国際社会、国際金融業界が見てくれるはずがありません。結局、大したことは何もしていないからです。

実際に何をするかと思ったら、12月10日に、金融庁がESG(環境・社会・統治)を重視するよう明記した機関投資家の行動指針(スチュワードシップ・コード)を発表しました。これをもとに、来年春に指針の改定をするそうです。

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たぶん、COP25に合わせて発表したのでしょうけれど、この指針、まだ生煮えな感じで、出席者コメント(以下リンクに資料があります)でも、もうちょっと分かりやすくないと、とたしなめられています。それだけならまだしも、とにかく抽象的過ぎて、とても実効性が上がりそうにありません。ましてや、「石炭」なんて具体的な単語は一切出てきません。グレタじゃなくても、「空っぽの言葉」と言いたくなります。

「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度第3回)議事次第:金融庁

金融庁がこんな風に、空っぽの指針しか作らなくても、せめて日本の金融機関なら、石炭火力発電プロジェクトへの融資をしてくれるでしょうか?どうも、それさえ危ういようです。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は今年5月、原則として、環境負荷が少ない高効率のものも含めて、新設石炭火力発電所に融資しない方針を決めました。三井住友銀行、みずほFGも低効率の石炭火力への融資を取りやめる方針を示しています。「世界では環境への取り組み不足をリスク要因とみる流れがある」(メガバンク幹部)からです。

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このように、日本が石炭火力発電を今まで通りに続けるという方針を続ければ、国際的な約束を守らなかったと批判され、それ以前に、国際的なサプライチェーンから締め出されかねません。既に、民間の金融機関は、日本の銀行も含めて、石炭火力発電に融資しなくなっています。その傾向が今後強まって、石炭火力発電などやりたくても出来なくなる可能性さえある、ということです。

石炭火力発電の逃げ道は、日中での公的プロジェクトだけではないか

そうなると、石炭火力発電が出来るのは、もう国が主導する公的なプロジェクトに段々と限られてくるのではないでしょうか。

特に、発展途上国向きのインフラ輸出については、その傾向がますます強まるでしょう。

政府は、インフラシステム輸出戦略(令和元年度改訂版) というのを作って、その37~38頁で、「エネ ルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り」、「相手国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請 があった場合に」、「原則、世界最新鋭である超々臨界圧(USC)以上の発電設備について」導入を支援する、としています。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai43/siryou2.pdf#search=%27%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%B5%B7%E5%A4%96%E5%B1%95%E9%96%8B%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6%27

つまり、安全保障や経済性の理由から石炭火力が必要な国にだけ、超超臨界圧(USC)以上という、特に効率の良い石炭火力発電保水樹でだけ、支援する、としています。

この戦略は今年改訂版が作られたばかりで、現状ではまだ完全に守られていないのはやむを得ませんが、それでも、高効率の石炭火力発電だけ支援するという従来からの政府方針と実際とが違う、という批判がされ続けています。

発展途上国での石炭火力発電への日本の支援は、通常、国際協力銀行JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、国際協力機構(JICA)で行われています。

JBIC が支援した設備の効率は、世界平均をむしろ下回っていて、日本が支援する石炭火力技術は高効率だという日本政府の建前と違っている、という批判がされています。また、南アジア・東南アジアの石炭火力発電は、高効率のもの(超臨界圧(SC)と超々臨界圧(USC))は、日本だけが提供しているわけではありません。中国、韓国、インド、ロシアも、高効率の発電設備を提供しています。ということは、日本が支援しないと他国が低効率の設備を支援するから日本が支援するべきという主張も成り立たなくなります。

日本政府は、せめて自分で決めたインフラ輸出戦略に実態が合致するよう、早急に現状を改善して、他国支援の発電所以上の高効率化を実現する必要がありますが、既に動いている発電所についてリプレースするのは相当時間がかかるでしょう。

(石炭火力発電を続けることについての日本政府の理由付けはこちらで、

なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

それに対する上記批判やデータ等は以下のリンクにあります)

JBICの投融資について | JBICの石炭発電融資にNO! – No Coal Go Green!-

東京新聞:石炭火力、国際援助継続へ 政府、COP25で批判の中:政治(TOKYO Web)

 一方で、発展途上国の石炭火力発電を支援しないと、中国やロシアが支援することになる、これは安全保障上問題だ、だから、日本が積極的に他国の石炭火力発電を支援すべきだ、という主張もあります。

キャノングローバル戦略研究所の杉山大志氏が、そのような主張をしています。杉山氏はなんと、石炭火力への支援は「自由と平和のため」だ!と言っています。彼の主張を引用します。

もしも当該国が日本ではなく中国の事業者を選んだならば、それはその国と中国の関係が一歩深まることを意味する。中国はその国の政治・行政・民間レベルへの影響力を高め、その国は親中的な立場をとるようになる。これは中国が一帯一路政策で狙っていることそのものだ。わざわざその手助けを日本がするのだろうか。

日本の石炭戦略 | キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)

このように杉山氏が書いたのは、今年2019年7月です。既に、日本政府が、「日中第三国市場協力」という名前で、事実上の一帯一路への協力をとっくに決めた後であり、複数のプロジェクトが既に動き出してからのことです。その事実を無視して、「自由と平和のための石炭火力」などと書いているのですから、へそが茶を沸かすとはこのことです。

私はむしろ、これから安倍政権は、中国とはインフラ輸出での協力を深めていくし、石炭火力発電がそれに含まれることもありうる、と予想しています。

2017年11月、一般財団法人日本エネルギー経済研究所の井上洋文氏が、「中国の石炭火力の現状と今後の見通し」という資料をまとめています。

https://eneken.ieej.or.jp/data/7665.pdf#search=%27%E4%B8%AD%E5%9B%BD+%E7%9F%B3%E7%82%AD%E7%81%AB%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%27

それによると、中国は石炭火力発電につき、国内での環境規制強化もあって、過剰開発能力を一帯一路を通じて海外に輸出することを国策として決めています。そして、ヴェトナム等で日本と競合すると認識しています。日本企業も当然そう認識しています。

二国が、あるいは二大勢力が、二大企業が、ガチンコでぶつかりそうになってお互い損をしそうになったら考えることは?カルテルですよね。現に、井上氏は資料の最後で、日本企業と中国企業がいっしょにプロジェクトをやるべきだ、と主張しています。

これこそが、日本政府が一帯一路に協力すると言い出した原因の一つでしょう。

今年になってからも、日中企業の一帯一路での協力、特に共同でのインフラ輸出へ向けた官民の話し合いがどんどん進んでいます。

今年5月21日、国際協力銀行JBIC)は、中国国家開発銀行(China Development Bank:中国開銀)本店で、中国開銀との共催で、「日中第三国市場金融協力フォーラム」を開催しました。

横井裕在中国特命全権大使が、「2030年までに毎年1.7兆ドルの規模に達すると見込まれるアジアのインフラ需要に対し、日中両国の金融機関や企業が手を携えて対応する必要がある」と発言したそうです。鄭持平国家発展改革委員会外資司副司長および羅暁梅商務部アジア司副司長は、日中第三国協力を実現する上での金融協力の重要性に言及しました。

日中両国で公的金融を使って、日中企業両方がアジアのインフラ需要に応えよう、ということです。

「日中第三国市場金融協力フォーラム」を開催 | JBIC 国際協力銀行

今年7月10日~11日、中国国際経済交流センターと日本経済団体連合会は、第5回日中企業家及び元政府高官対話を東京で開催しました。そこでは、日中第三国市場協力においては、「とりわけ、質の高いインフラ整備」が大事だ、と謳っています。

経団連:第5回日中企業家及び元政府高官対話 共同声明 (2019-07-11)

こうした下ごしらえの総仕上げが、来春の習近平来日です。

今年9月、日中両政府は、2020年春の習近平来日に合わせ、「東南アジアなど第三国でのインフラ投資で協力関係を進める官民合同会議」を日本で開く方針を決めました。日中の金融機関や企業間の連携を強め、投資案件が決まれば両政府が資金面などで支援するという、「日中第三国市場協力フォーラム」の開催で日中両政府が合意しました。すでに経済産業省などが日本の主要企業に参加を呼びかけているそうです。

日本側は日本貿易振興機構ジェトロ)、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行、中国側は政策金融機関の国家開発銀行や中国輸出信用保険などが参加する見通しです。

分野としては、「エネルギーや環境」、物流、地域開発など幅広い分野で分科会を開くとしていて、「第三国のインフラ案件に日中の企業が合弁会社をつくって取り組んだり」するそうです。

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というわけで、もしも今後、日本が中国とともに石炭火力発電支援で「第三国市場協力」など始めたら、(少なくとも現状では)低効率の石炭火力発電を発展途上国に増やして温暖化を進め、しかも、財界も日本政府もますます中国に言いなりになる、という、とんでもない政策になることが分かります。

こんな風にさせないためには、まずは日本政府による石炭火力発電への支援自体をやめさせるべきです。発展途上国への支援は、出来れば水力を含む再エネで、次善の策としては天然ガスについて行うよう、政策を転換するべきです。そして、環境負荷は少ない、国際的なルールも守る、債務の罠もない、という、より質の良いインフラ輸出を行うことで、中国よりも日本が選ばれるような支援にしていくべきです。

日本だけでは資金や技術が足りないなら、アメリカも一帯一路に対抗して日本と協力した国際支援をしたがっているのですから、日米で協力してやっても良いですし、再エネ支援なら、ヨーロッパの政府・企業は喜んで乗ってくるでしょう。

とにかく、石炭火力発電を日中両国がいっしょに進めようとしている今の流れは、何とか断ち切らないといけません。小泉進次郎氏も、やろうとして出来ませんでしたが、彼は、まずは地方自治体と国民の声に期待する、と言っています。

確かに、上記のような現実を見れば、経済団体も経産省主導の官邸も、石炭政策をそう簡単には変えないでしょう。旧民主系の野党も、連合が脱石炭をやる気がないので、あてになりません。国政維新には期待したいのですが、おそらく脱石炭に大して興味がありません。

やはり広く世論を興し、国民が声を上げて、自治体が政策転換していく、その積み重ねの先に、現在の安倍政権の石炭火力重視政策の転換の可能性が出てくるのだろうと思います。