日本の改革

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トランプ「敵対すれば多くを失う」、北朝鮮「我々に失うものはない」:北朝鮮がこれまでの合意も完全無視、米朝核協議はアメリカの完敗に終わる

北朝鮮が、これまでの米朝核協議の合意事項を破って、固体燃料でのICBM実験や、新たな核実験の兆候。アメリカが目指したであろう中途半端な目標も完全無視です。トランプも圧力を一時強めるでしょうが、結局は譲歩して、米朝核協議は完全な失敗に終わると見ます。

トランプとの約束を全て破りにかかった金正恩

アメリカと北朝鮮の緊張がまた高まっています。北朝鮮が、米朝核協議での約束も全て破り始めたからです。今回は、トランプ政権でわずかに実現しそうだった、長距離ミサイル開発中止と核開発中止も、ダメになりそうです。

昨日12月8日、北朝鮮国防科学院が北西部・東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場で「非常に重大な実験を実施した」と発表しました。韓国国防省出身の金東葉慶南大教授は、ICBM用の固体燃料エンジンの実験だったのでは、と言っています。

www.nikkei.com

このトンチャンリの実験場での実験と言うのは、トランプ氏にとっては特別に痛いことです。

以下、今日の日経記事によりますが、トランプ氏は2018年6月にシンガポールで開いた初の米朝首脳会談の直後に「金委員長が東倉里のミサイルエンジン実験場を破壊すると約束した」と説明、その後も長距離弾道ミサイルの発射実験中止を米朝協議の成果と言ってきました。

しかも、今回やったことは、これまで北朝鮮が持っていなかった「固体燃料での」ICBM開発に向けた実験で、アメリカにとって直接の脅威になります。金正恩に甘い顔をしていたトランプ氏もさすがに、「米国に敵意を示せばすべて失う」とツイート。しかし、北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長に、「私たちはもう失うものがない」と返される始末。まあ、その通りでしょうし、完全になめられています。何だかんだ言って、北朝鮮は中国からの支援も受けられます。

それどころか、北朝鮮は、爆破した豊渓里(プンゲリ)核実験場さえ復旧させる可能性があるようで、米国の研究機関などは寧辺(ニョンビョン)でのウラン濃縮活動が実は続いている可能性をたびたび指摘しているそうです。

www.nikkei.com

日経が挙げている核開発の点ですが、「38 North」で、スタンフォード大学のエリオット・サーベン氏は、北朝鮮のニョンビョンにある核施設を撮影した衛星写真の分析結果を公表、軽水炉の冷却システムを動かしている可能性がある、と分析しています。

www.38north.org

サーベン氏はNHKの取材に答えて、「北朝鮮が近く軽水炉を稼働させる可能性がある。核兵器への転用が可能な核物質の生産につながり、非核化はさらに難しくなる」と指摘しています。

www3.nhk.or.jp

トランプ氏は、最初は北朝鮮に対して圧力を最大限に強めて、それから一気に融和的な態度に転じて、非核化を引き出そうとしました。しかし、今の北朝鮮が実現した程度に核ミサイル開発の進んだ国が、自ら開発を中止した例などありません。最初から米朝協議の落としどころについては、完全な非核化になどならないだろう、と見られていました。

以前、本ブログでは、ニューヨークタイムズのMichael Crowley氏とDavid E. Sanger氏の記事での見立て通り、アメリカが目指しているのは、新たな核開発の凍結くらいまでだろうし、それでやむを得ない、と主張しました。

www.nytimes.com

実はトランプ政権発足時から検討されてきた訪朝プラン。今後の米朝協議は核開発凍結止まり。日本はミサイル防衛の技術開発加速を! - 日本の改革

しかし、現実はそれより遥かに悪かったことになります。

長距離ミサイル開発の中止もウソ、新たな核開発中止もウソ。アメリカはどちらも実現できない、ということです。

まあ、拉致問題でだまされ続けた日本国民からすれば、あまり驚きはありませんが、大統領選を控えたトランプ氏にとっては面目丸つぶれです。

そもそも、米朝協議の約束など最初から守る気はなかったのでは

トランプ政権になってからの米朝協議、何となく白々しい感じもしつつ、それでも最低限、新たな核開発とICBM実験くらいはなくなるのかな、という淡い期待は持たせてきました。が、北朝鮮が完全にちゃぶ台返しをし始めて、アメリカはそれに対する有効な対抗措置を持たないように見えます。北朝鮮が言う通り、失うものなどないからです。

ここまでくると、北朝鮮は、そもそも最初から米朝協議での僅かな約束さえ守る気はなかったのでは、という気がしてきます。

スタンフォード大学講師のダニエル・スナイダー氏は、東洋経済の記事で、米朝協議の最初からやる気がなかったとまで言っていませんが、少なくとも、「夏のどこかで交渉を事実上打ち切る決定が下されたようだ」という見方を紹介しています。

また、今後の交渉についてですが、北朝鮮は年末までにアメリカの譲歩を引き出すことにも興味がない、との見方を示しています。朝鮮労働党中央委員会の政治局常務委員会 が先週、12月最後の10日間に党大会を開くという発表をしており、これはもうアメリカと交渉する気などなく、協議での合意は無視してアメリカへの軍事的威圧を強化して、体制保障につなげるつもりだ、と言うのです。

toyokeizai.net

以前、本ブログでも紹介しましたが、ジャーナリストの黒井文太郎氏は、次の北朝鮮の開発目標は、「固体燃料ICBM」と「核搭載潜水艦」だろう、と予測してきました。黒井氏は、北朝鮮の核実験やミサイル実験が、中長期的に明確な目標を持って着実に行われてきた、という見方をされてきました。私も、そう見るべきだろうと思います。

黒井氏は既に12月2日の記事で、北朝鮮は今度は、年内に日本列島を飛び越えるミサイル発射を実行し、年明けには、アメリカを本格的に怒らせない程度に、衛星打ち上げをやるのでは、という可能性を指摘しています。

北朝鮮のSLBMが日本のEEZに。韓国がGSOMIAやっぱり延長と言い出したら、苦笑いして認めるべき。。 - 日本の改革

www.businessinsider.jp

ただ、全くの素人考えですが、北朝鮮はもう、新たな核実験やICBMの長距離発射実験もやるのではないかと思います。トランプ氏の面目を完全につぶしてしまいますが、では、アメリカが本当に軍事行動が出来るかと言うと、無理でしょう。

北朝鮮が、トランプ政権での米朝協議を完全に破棄して、核実験や固体燃料のICBM実験を行った場合、「失うもの」があるのは、トランプ氏の方であって、北朝鮮ではありません。

北朝鮮はもう、交渉ではなくて、正面からの軍事的威圧によって、制裁緩和、在韓米軍縮小、最終的には体制保障とアメリカとの外交関係樹立を目指す方針に舵を切ったのだろうと思います。

仮に北朝鮮が、新たな核実験や固体燃料のICBM実験を行っても、トランプ氏は、何とか理由をつけて、それでも米朝協議は成功だった、と強弁するでしょう。どんな言い訳をするか分かりませんが、たとえば、暫くの間だけでも北朝鮮が自制した、それは自分でなければできなかった、とか、言いようはいくらでもあります。

昔の話ですが、トランプ氏はイラク戦争が泥沼化した時、アメリカは勝利を宣言してさっさと撤退しろ、と言った人です。アメリカ国民には最初からそういう人として認識されているのだし、米朝協議で言った通りにならなかったとしても、大統領選に向けて決定的な失点にはならない可能性が高いと思います。それなら、トランプ氏がいまツイッターで色々言っていることも、しょせんは本気ではない、ということになります。

北朝鮮も、そのように予想して、もう何をやってもトランプ氏は本気で圧力など強められないと見ているでしょう。私は、北朝鮮は来年には核実験や固体燃料を使ったICBM実験も行って、トランプ政権下の米朝協議は完全に失敗に終わると思います。