日本の改革

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落ち込みは「前回(2014 年)ほどではないと見られる」:経済対策の1頁目から間違っている政府の現状認識。追加対策の実施を。

政府が12月5日に発表した経済対策、景気落ち込みは2014年よりマシという認識は、翌12月6日の家計調査と景気動向指数で否定されました。追加の経済対策が必要です。

2014年を上回る景気悪化の足音

12月5日に、政府は「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を発表しました。

その1頁目に、以下のように、経済の現状認識が述べられています。

本年 10 月1日に実施した消 費税率引上げについては、軽減税率制度や臨時・特別の措置など各種 の対応策もあって、引上げ前の駆け込み需要やその後の落ち込みは、一部では台風の影響等もあって販売減がみられるが、現時点では全体 として前回(2014 年)ほどではないと見られる。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/1205/20191205_taisaku.pdf

その翌日の12月6日に発表された、総務省の家計調査では、この認識が間違っていることが示されました。2人以上の世帯の消費支出は、物価変動の影響を除いた実質で前年同月に比べて5.1%減りました。落ち込み幅は5%から8%に消費税率を上げた後の2014年4月(4.6%減)より大きかったことになります。

www.nikkei.com

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出所:総務省

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr.pdf

本ブログでは既に、経済産業省の小売販売額のデータで、今回の景気の落ち込みは2014年度の消費税増税時を上回る可能性がある、と指摘しました。

2014年の増税時以上の小売り落ち込み、13兆円の経済対策はやむなし。学校へのIT端末配備だけでなく、教育無償化の範囲拡大等、教育投資こそ大幅増を! - 日本の改革

今回発表された総務省の家計調査は、財だけでなく、サービスも含めた需要側のデータなので、消費については、こちらの方が重要です。そこでも、2014年の増税時以上の消費下落が確認されました。

大規模な経済対策を組む際の政府の現状認識がそもそも間違っていることになります。消費落ち込みによる景気後退が起きつつあるのですから、今回の経済対策のような、企業・団体中心の従来型の対策に加えて、家計を直接温める施策を直ちに追加して実施するべきです。

これにつき、政府の認識は鈍いままです。

昨日、この家計調査が発表された後の記者会見で、日経の記者から本件で質問を受けた菅官房長官は、台風なども影響した、消費者態度指数は持ち直しの動きもある、いずれにせよ、全体像はまだ十分なデータの蓄積がないので、今後の各種データをきめ細かく見て、各種施策の効果を見る、という程度の返答です。

もちろん、すぐに新たな対策と言えないのは当然ですが、今回の消費の落ち込みが、2014年を上回るスケールだというのは、供給側の小売販売額という「各種データ」の一つでも確認されていました。

www.kantei.go.jp

西村康稔経済財政・再生相も、昨日の記者会見で、今回の消費支出の減少について、「駆け込みの反動」という受け止めで話しており、去年と今年のそれぞれの自然災害の影響にふれて、「全体として見れば、駆け込み反動は前回ほどではない」としています。一応、(菅官房長官好材料として挙げた)11月の消費者マインドは実は弱いし、外需も弱いので、引き続き今後注意する、とは言っていますが、前回ほどではないという認識も、単なる駆け込み需要の反動だという認識も問題があります。

nettv.gov-online.go.jp

消費だけではありません。昨日、内閣府が発表した景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が94.8と6年8カ月ぶりの低水準になりました。見れば分かる通り、全ての一致指数がマイナスです。

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出所:内閣府

https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/201910psummary.pdf

一致指数から決まる「基調判断」は、3カ月連続で「悪化」しています。ということは、リンク先に出ている内閣府の定義によっても、「景気後退の可能性が高いことを示す」ことになります。

前月比のマイナス幅は5.6ポイントで、東日本大震災のあった2011年3月以来の下げで、当然、前回2014年4月の増税時(4.8ポイント低下)よりも落ち込みが激しい、と日経がまとめています。

www.nikkei.com

軽減税率を導入して、幼児教育の一部無償化もやって、ポイント還元までやって、なぜ、こうなっているのでしょうか。消費税増税による価格上昇はこうした対策である程度は抑えられているはずです。

おそらく、全体的な景気の見通しが悪いので、わずかな消費者物価の上昇でも、大きく消費を減らす家計が多いのでしょう。これによって、消費が前回の増税時以上に落ち込み、それにつれて、(一致指数の一つである)商業販売額(小売業)が一番大きく落ち込んでおり、こうした事態を見越して、(一致指数で二番目に落ち込みの大きい)投資財出荷も落ち込む、等々ということになっているのだと思います。

家計がこれほど慎重になっている背景には、外需や内需全体の動きもあるでしょうが、やはり直接的には、消費増税による消費下落が一番重要で、そこを改善させる対策が必要です。

政府は、数字の上では増税分を上回る対策を打ったから、全体としてはそのうち回復するだろう、と、未だに思っているようですが、認識が甘いと思います。官房長官の言う「各種データ」で、経済対策を作ったときには想定もしなかったような、前回の消費増税以来、いや、大震災以来の景気後退になりつつあるのですから、早急に経済対策の上積みを行うべきです。

今回の経済対策を、日経や朝日は批判しています。

[社説]「賢い支出」なのかをしっかり監視したい :日本経済新聞

(社説)26兆経済対策 必要性と効果の精査を:朝日新聞デジタル

確かに、自民党のやることですし、項目を一瞥するだけでも、企業・団体向けの支出のオンパレードなのは明らかです。また基金を増やそうとしているのも、警戒が必要です。基金に限らず、例によって執行が追い付かず、受益者が一部にとどまる事業が多いであろうことは想像がつきます。個別事業の精査と、国会での厳しい追及は必要です。

しかし、批判すべきはむしろ、この経済対策を策定した時の、景気の現状認識です。冒頭に引用した通り、消費増税の悪影響を甘く見すぎています。この結果、家計向けの支出よりも、解散総選挙目当てのような、企業・団体向けの支出に大きく偏っています。

消費回復のために一番効くのは、消費税減税でしょうが、どうせ政府はやりません。それなら、現状の経済対策の組み替えか、それも出来ないなら上乗せをしてでも、中長期的に家計を直接温める対策を打つ必要があります。以前も書いた通り、教育国債発行による教育無償化範囲の拡大に向けて、ただちに議論を始めるべきです。