日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

イギリス総選挙、未だに移民問題(≒EU離脱問題)で党内対立の労働党、たぶん惨敗では。

12月12日のイギリスの総選挙、世論調査の結果は分かれていますが、与党の保守党が勝つでしょう。労働党は、未だにEU離脱問題の根幹である移民問題で割れています。支持層の労組も反発しており、恐らく、労働党の惨敗でしょう。

労働党、ヒトの自由な移動で未だに党内不一致

イギリスの総選挙まであと2週間を切りました。この3年間の混乱に終止符を打てるか、注目されています。

世論調査は割れています。今日12月1日に発表された、BMGというオンラインの調査によると、保守党のリードは、この間のわずか1週間で、13ポイントから6ポイントまで半減したそうです。

Johnson's lead over Labour halved to 6 points - BMG poll - Reuters

ただ、4日前11月27日に発表されたユーガブの調査は保守党が有利と言う結果を出しています。この調査は手法が通常と異なっていて、各選挙区ごとの特性を考慮して、議席がどうなるかを予測したものです。それによると、保守党が過半数を獲得、それも圧倒的な勝利になる可能性もある、ということです。

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出所:YouGov

英保守党が過半数議席獲得の見通し、12月総選挙-ユーガブ調査 - Bloomberg

YouGov MRP: Conservatives 359, Labour 211, SNP 43, LD 13, Plaid 4, Green 1 | YouGov

私は、こちらの方が信憑性が高いと思います。EU離脱問題でイギリスにとって一番重要な、ヒトの自由な移動の是非について、労働党内の意見が割れていて、イギリス国民の支持をとても得られそうにないと思うからです。

フォーリン・ポリシー誌によると、イギリス労働党内には昔から、植民地時代の反省という意味合いもあって、国境管理自体に反対という極端に進歩的な意見もあるらしく、以前の労働党の党首だったミリバンドもそのような考え方だったようです。そこまでいかなくても、中流階級は、移民の流入が自分達の生活にプラスとなので、自由な人の移動を支持しています。党の会議では、議員達のこうした声が強かったようです。

これに対し、労働者階級は移民に反対してきました。イギリス全体では、2018年4月の時点で、63%が過去10年間の移民流入は多すぎる、と感じているということです。また、労働党の最大の支援団体であるユナイトという労組の事務局長も、最近になってはっきりと、労働党議員が人の自由な移動に賛成でも、自分は反対、と発言しました。

foreignpolicy.com

労働党の腰が定まらないのを見て、保守党は、移民問題を選挙の主要な争点にしようとしています。労組ユナイトのマカラスキー事務局長は、それはまずいと自覚していて、労働党移民問題ばかり取り上げるべきではない、と言っています。この人は、移民が入ってくれば労働者の賃金が下がる、だから、より厳しい労働法制にしない限りは、移民に反対、という意見です。

こうした発言に対し、移民賛成の労働党支持者は反発しており、労組は移民労働者もイギリスの労働者も両方守るのが仕事のはずだ、ルーマニア出身の労働者とイギリス人の労働者の違いは、それぞれの雇用者との違いよりも小さい、と批判しています。

www.theguardian.com

労組が言うように、移民がイギリスの賃金を下げるか否かについては、以前も紹介した通りに、イギリス政府の調査があります。EU離脱後の移民制度を立案するにあたっての、諮問機関からの報告("EEA migration in the UK: Final report")なのですが、それを以前より詳しめに紹介します。

孫引きですいませんが、労働政策研究・研修機構のまとめによると、国内の雇用や賃金への影響については、全体としては認められず、一部の若年層・低技能層の雇用減少や、低賃金層の賃金水準の停滞につながったとの分析もあるが、確実ではない、ということです。また、生産性やイノベーションへの影響も全体としては明確ではないものの、高技能層についてはプラスの影響がみられる、としています。

EU離脱後の移民政策案、諮問機関が提言(イギリス:2019年1月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)

EU離脱でイギリスの混乱から学ぶべきは、政治制度・手法の失敗よりも、移民受け入れの失敗。 - 日本の改革

ということは、不確実さは残るものの、低所得労働者にはやはり移民流入は不利な可能性があり、それ以外にはプラスという結果です。世論の63%が移民が多すぎると感じていることと比較すると、移民反対の世論が非合理的に見える面があるのも分かります。先に引用したフォーリン・ポリシーやガーディアンは、移民が賃金を下げるという労組の主張を批判し、それなら労働規制を強化すればいいだろう、と主張しています。

しかし私は、以前のブログで書いた通り、「国民に普通どう思われているのか」が、やはり民主主義国家では重要だと思います。これまで進められてきた移民政策が、十分な説明も納得感も足りなかった、ということについて、労働党の内外の移民賛成派とEU残留派は、認識が甘かったのは確かで、だからこそ国民投票EU離脱の判断が下り、すったもんだの末に、とうとうジョンソン首相が、EU離脱案についてEUの了解も、実は議会の了承も取り付けています。労働党は審議時間が足りないという反対はしましたが、実はもう決着は着いているようなものです。これも以前のブログで書きました。

イギリス下院解散、ついにEU離脱に道筋をつけたジョンソン首相:日本も移民問題は国民の声を聞いて進めるべき - 日本の改革

労働党は、政権公約を発表し、子育て世帯支援、無料の大学教育、高齢者への支給増など全世代向けの政策を掲げました。現役世代や若年層の支援は結構な話ですが、肝心のEU離脱については、今後半年以内に解決するとし、2回目の国民投票を実施する、ということで、相変わらず曖昧な形です。あと、製薬企業を国有化するなど、なかなかに過激なことを言っています。アメリカの民主党極左に寄ったと言われますが、やはり今のイギリス労働党はその上をいく極端さです。

英労働党が政権公約、EU離脱再投票や国有化など 法人増税も - ロイター

www.theguardian.com

1990年代に労働党を右寄りにして復活させたブレア元首相は、与野党ともに非現実的だ、という言い方で、今の労働党を酷評。コービン氏が「革命」を喧伝するのは無責任だ、と批判しています。

ブレア元英首相、与野党とも総選挙に向け非現実的考え流布と批判へ - ロイター

今度の選挙で一番重要なEU離脱問題の決着について、そのEU離脱問題で一番重要な移民問題について態度が定まらないうえ、こんな党内対立を見せられては、国民もとても任せられないと思うでしょう。まだ時間はありますし、ネット調査等で差は詰められてはいるようですが、あえて、政策や政党の筋という点から世論の反応を想像して、労働党惨敗と予想しておきます。