日本の改革

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香港民主派、区議会選挙で圧勝。下手な強硬路線の習近平には、徹底抗戦が政治的にも合理的。

香港区議選、民主派がなんと8割超の議席獲得。これでますます民主化運動は強くなります。習近平は強硬路線で失敗を続けており、香港民主化まで徹底抗戦するのが政治的にも得策です。

中国は多少の譲歩か、一国二制度の完全否定の徹底か

昨日11月24日投票が行われた香港の区議会議員選挙では、民主派候補が圧倒的勝利を収めました。香港政府と中国による弾圧と戦う民主化運動を支持する意思表示です。

民主派は452議席と前回4年前の4倍の議席を獲得、親中派議席割合は4年前の65%から13%に低下しました。投票率は71%、前回の2倍です。

中国外務省の耿爽報道官は北京での25日の記者会見で、「現時点では香港の暴力を止め秩序を回復させることが最優先課題だ」と述べました。

香港区議会選、民主派が地滑り的勝利-中国は行政長官支持繰り返す

これから中国はどう反応し、民主派や香港の民意はどう動くでしょうか?日本はじめ、民主主義国家はどう予測し、どう振舞うべきでしょうか?

私は、中国は多少の譲歩をする可能性はあるけれど、基本的には、一国二制度を否定して、香港の法制度も選挙制度も教育制度も徹底的に変えようとしてくると思います。既に10月の四中全会でそう決めており、その方針に沿って、弾圧を強化してきたからです。

今回の選挙実施も、耿爽報道官が言う通り、「現時点では」香港の暴力を止めるのが最優先だ、選挙をやってる間はデモ隊も大人しくせざるを得ない、というつもりでやっただけです。選挙結果に中国政府は関心を持たないでしょう。

もちろん、民主派はどのみち行政長官の普通選挙実施を含む五大要求を決して撤回せず、中国・香港政府の強まる弾圧に更に強く抵抗しますし、香港の民意は引き続きこれを支持するでしょう。

今回、抗議活動をしていた人達が多数当選しました。今後彼らは、区議として政治に専念できる環境になりますから、抗議運動の足腰がしっかりします。民主化運動に、正当性が加わったうえ、持続性が生まれます。選挙結果を見れば分かる通り、いま香港で起きていることは、市民のあらゆる層が加わる民主化運動であり、成否がどうなろうと、まさに革命の様相です。どんな悲劇が起きようとも、香港民主化の要求を撤回せずに、最後まで突っ走るでしょう。

このように、選挙後には、ますます政治闘争が激化するので、民主主義国家は、香港民主化を弾圧する中国政府にどう対応するか、間もなく重大な決断を迫られます。

既にアメリカは、選挙前からそのように予測しているようです。

今回の選挙前日11月23日、スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は23日、日本経済新聞とのインタビューで、中国政府が香港への軍による介入を辞さない構えを見せていることに懸念を示し、「一国二制度」に基づく高度な自治について「衰退した」との認識を示しました。そのうえで、

「平和裏に問題が解決しなかった場合に我々がどのような手段を取るべきか理解することに多くの時間を費やしている」

と答えています。アメリカはもう、中国軍による本格的な武力弾圧の際にどうするかを、最優先で考えています。

www.nikkei.com

中国が多少の譲歩をする可能性はあります。まず、行政長官の交代については、見方は分かれるものの、多少の可能性はありそうです。

今回の区議選で、民主派は、林鄭行政長官を選ぶ選挙委員会1200人のうち、117人を確保して、もともとの325人と加えて、442名となりそうです。それでも過半数の601人には遠く及びませんが、3分の1を超えれば、これまでとは違って一定の勢力です。もともと「親中派」も一枚岩ではないようですし、今回の選挙結果で、(団体ごとの選出とは言っても)多少のプレッシャーは感じるでしょう。

こうした構図の上に、中国政府が、香港の治安維持にプラスと見れば、タイミングを見て林鄭行政長官の交代ということも、可能性としてはゼロではないでしょう。

www.scmp.com

香港トップ選挙に影響 行政長官の政権運営困難に―民主派圧勝:時事ドットコム

次に、警察の暴力に対する独立行政委員会の調査も、あるかもしれません。

既に8月、深圳で、中国国務院香港・ マカオ事務弁公室の張暁明主任が、秩序回復後の査問委員会の設置に言及はしていました。中国の香港政策の専門家、Li Xiaobing氏(天津の南海大学所属)も、その可能性はあると言っています。

www.scmp.com

しかし、譲歩があっても、最大限そこまででしょうし、どちらも、恐らく香港市民にとって、大した意味を持ちません。

林鄭行政長官はもう完全にレームダック化して習近平に言われた通りをやるだけですから、続けても辞めても意味はありません。査問委員会くらいは設置してもいいと言った張暁明氏も、「中国に忠実な人物だけが」香港行政長官に就任可能と言っています。誰がなっても同じです。これを見越して、民主派の要求は、最初は「林鄭行政長官の辞任」だったのが、「行政長官の普通選挙」に変わりました。行政長官の選任については、お互いが絶対に譲れない対立があります。

こうした対立が根底にあるのですから、仮に警察の査問委員会を設置したところで、本気で調査をするとは思えません。恐らくは中国の武装警察等まで一体化して行ってきた大弾圧は中央政府の方針であり、調査はやったとしても形だけでしょう。

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そもそも、スティルウェル米国務次官補も言う通り、中国は一国二制度を完全に否定し始めています。

香港政府がデモ弾圧のために施行した覆面禁止条例に対し、香港高等法院が違憲判断を示しましたが、全人代の常務委員会は、「香港の法律が基本法に合致するか否かは全人代だけが判断できる」との声明を発して、香港特別区内の事項に関する司法判断を公然と否定しました。香港の民主派の弁護士らのグループだけでなく、香港の裁判官も反発しています。

digital.asahi.com

Top judge Geoffrey Ma reasserts Hong Kong’s judicial autonomy after Beijing criticism | South China Morning Post

一国二制度の否定という方針は、10月末に開かれた中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で決められました。

中国政府は「憲法と香港基本法に基づくあらゆる権限」を使い、香港とマカオを「統治管理」し、この2つの特別行政区で「国家安全を守るための法制度と執行機構を構築し、改善する」という方針が発表されました。そして、香港の指導層の任免制度や基本法の解釈を変更する、としているのですから、「一国二制度」モデルを事実上放棄することを決めた、ということです。民主化運動の弾圧強化だけでなく、裁判所の判断さえ無視するのですから、もう正式に制度化する前から、一国二制度を守る気がなくなっています。

www.newsweekjapan.jp

この方針によって、行政長官の選び方も変えられてしまう可能性があります。時事通信西村哲也解説委員が例示するように、「委員の選出方法を変更(改悪)して、民主派を排除したり、親中派の中でも必ずしも習政権に従わない財界系の委員を減らして忠実な左派政党・団体系の委員を増やしたり」ということをやる可能性があります。

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そうなれば、せっかく区議選でこれほど圧勝して、選挙委員会で存在感を持ったとしても、何もならないということになります。中国政府が今回の選挙結果を見て、最大の譲歩をするとしても、行政長官のクビだけ変えて、別の「中国に忠実な人物」を、改悪された選挙委員会で選ぶ、ということになりそうです。

民主派の狙い目は、強硬一本槍で政治が下手な習近平の手法

このやり方に、今の香港市民が我慢できるはずがありません。一国二制度の否定は、2012年に習近平が実権を握って以来、特にひどくなりました。そして実は、強硬一本槍の習のやり方こそが、民主派にとっての最大のチャンスになります。

ジャーナリストの安田峰俊氏によると、2008年に香港大学が18~29歳の若者を対象におこなった世論調査では、自身を「中国人」と考える人が30%近く、対して「香港人」と考える人は約23%にとどまり、中国への「同化」は順調でした。最初のソフト路線が続いた方が、香港にとっては危なかったでしょう。

ところが、その後、約束されたはずの民主化は進まず、特に、2014年に行政長官の普通選挙を求めた雨傘革命が失敗した後、言論を弾圧する銅鑼湾事件、香港独立派や急進的民主派の立法会議員の資格剥奪事件など、習近平は次々に一国二制度制度を制限し始めました。そのうえで、今年の逃亡犯条例が加わります。

これにより、香港大の世論調査では、2019年に自身を「中国人」と考える若者は2・7%まで減少、「香港人」と考える若者は過去最高の75%になりました。

つまり、習近平による一国二制度無視の強硬策は、せっかく香港人アイデンティティが「中国人」になりかけたところを、完全に「香港人」として結束させたことになります。今回の選挙は、あらためてそれが示された形です。

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香港の若い人達が、これほど「香港人」としての自覚を持つに至った理由の一つに、教育があります。

ウォールストリート・ジャーナルによると、親中派が問題視しているのは(逆に言えば、香港人の「国民意識の醸成」に貢献しているのが)、10年前に香港で必修となった一般教養教育科目です。そこでは、市民の反抗など、本土の教育現場では禁止されている内容が含まれています。教師には一定の裁量が与えられていて、その時々の時事問題などを取り扱うこともできます。香港の教師の多くは1989年の天安門事件について、授業の一環として取り上げるようです。

が、今では、中国の締め付けが強くなり、教師たちは失業への不安から、香港デモに関してはあまり扱いたくないとの声も上げているそうです。

そんな情けない教師ばかりでもなく、2012年の愛国教育強化時には、教師や生徒らが主導するデモが10日間にわたって続き、棚上げになりました。参加者の一人が当時14歳の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)だったのは、よく知られています。

そうした空気が恐らく今も香港の中高生の間でも生きていて、日本人の感覚では仰天するような若い未成年達が、デモの最前線で命がけで戦っています。

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大学生ともなれば、卒業式で中国国歌の斉唱に背中を向けて革命のスローガンを叫ぶくらいは余裕です。

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 10月の四中全会で、中国は、2012年に香港政府が導入を断念した愛国教育の復活を目指しています。これを強行すれば、何が起きるかは想像に難くありません。また、おびただしい、若い血が流れるでしょう。

そして、この強硬策が、実は中国の弱みになります。今までも、これからも、このように若者が犠牲になっていくのを見て、香港の民意はますます反中国と自由民主主義のために結束します。政治状況と教育が生んだ「香港人」としてのナショナリズムと、リベラリズムとが一体となって、極めて強固で持続的な政治的な力となっていきます。そうなれば、国際社会も人権問題をテコに介入が図りやすくなりますし、中国の国内でも、強硬一本槍の習のやり方に批判も生まれます。

時事通信の西村解説委員の見方を引用します。

香港政府はこれまで、中央からの指示または圧力を受けて、国家安全条例制定、国民教育導入、民主派を排除する長官「普通選挙」導入、中国公安当局の香港介入を可能にする逃亡犯条例改正を試みて、ことごとく失敗した。さらに、デモ取り締まりのため、英領時代から悪法の典型として知られた超法規的な緊急状況規則条例(緊急条例)まで持ち出して、大きな反発を招いた。いずれも香港人の政治意識や感情を無視した強硬路線の結果なのだが、4中総会の「決定」はこの路線を強化するもので、火に油を注ぐことになる可能性が高い。

出所:西村哲也「香港の「高度な自治」縮小へ~共産党、締め付け強化の方針決定~(下)」時事ドットコムニュース2019年11月14日

西村氏に言わせれば、習政権と林鄭氏は、反中運動を結束させてしまったうえ、親中派さえまとめられず、法治主義を無視して親中派の財界勢力を不安にさせており、李嘉誠氏さえ若者の抗議活動に同情的な発言をすることになりました。要は、政治的にあまりに下手くそだ、ということです。

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歴史を顧みれば、圧倒的な武力を持っているはずの側が、大義名分を失って、反対勢力が結束して負けてしまう例は、少ないけれど厳然としてあります。習近平達の香港に対するやり方をよく見ると、実は敵ばかり増やして味方を減らすフェーズに見えます。今の中国政府・中国共産党に対して、過小評価は禁物ですが、過大評価もすべきではありません。

今回の選挙結果を受けて、周庭(アグネス・チョウ)氏が会見を開き「選挙に勝つことはただの第1歩」として、以下のように述べています。

「私にとっても民主派の当選者にとっても、もらった1票1票は全部市民が流した血です。この運動でたくさんの人が暴行されてけがをして、実弾に撃たれて、そして亡くなった人までいます。そういう仲間のことを決して忘れず、これからもデモに参加していきます」

出所:AbemaTimes2019年11月25日

times.abema.tv

「1票1票は全部市民が流した血」だと感じて、亡くなり傷ついた人達の負託を受けていると感じている香港の民主派は、普通選挙の実現まで、どうせ戦いをやめません。そして、中国がいかに強大とは言え、そのトップの政治は、実に拙いものです。圧倒的軍事力と経済力を持っている相手であっても、しょせん人間のやることは穴だらけ隙だらけ。今回の選挙結果を見れば分かる通り、現状では、民主化を目指した徹底抗戦が、むしろ政治的には合理的です。

最後に、ネットで見つけたマンガを紹介します。

面對極權,肩頭上的是每一位手足的重量。 P.S. For English translation please click the pictures #FreeHongKong #DemocracyForHongKong #五大訴求缺一不可