日本の改革

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トランプ、香港人権民主主義法案に曖昧な態度。日本はファーウェイ等への輸出規制で中国の逃げ道をふさぐべき

拒否権を行使できるはずがないのに、トランプが香港人権民主主義法案に曖昧な態度。往生際悪い米大統領の背中を押すには、日本も貿易で中国の逃げ道をふさぎ、アメリカへの譲歩をさせるべきです。

未だに習近平金正恩とのディールを夢見るトランプ

トランプ大統領が、香港人権民主主義法案への署名をいやがって、無駄な抵抗をしています。

上下両院でほぼ全会一致、反対は下院の一票だけで可決されたこの法案につき、トランプはフォックスとのインタビューで、香港の抗議運動への肩を持ちつつ、習近平にも配慮した発言をして、要はすぐに署名しない姿勢を見せました。

私がいなければ香港は14分間で抹殺されただろうなどと、以前も使ったレトリックを弄しています。つまり、自分はもう香港のためには十分気を使っている、だからこれ以上肩を持たなくても良いはずだ、ということです。

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トランプがこの法案の署名をためらうのは、もちろん再選のためです。そして、再選のためにトランプが気にしているのは、株式市場と中西部の農業州の票でしょう。

トランプの支持率が底堅く、再選の可能性も十分にあるのは、何と言っても経済が好調で、特に株価が上がっているからです。法人税の大減税等の企業収益重視の政策が、やはり効いているのでしょう。ウクライナ疑惑等の個人的なスキャンダルでどんなに叩かれても、トランプの支持率は経済の好調さに支えられています。この点は、安倍政権の支持率の高さに似ています。

トランプの上記発言の前後、習近平アメリカとの合意に前向きに見える発言をしたということで、アメリカの株価は上がりました。もう来年の本格的な選挙戦に向けて時間のない今、株価を維持したいというのが一つの動機でしょう。

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もう一つは、10月に発表した米中の第一弾の合意の目玉である、農産品の大量購入を早く実現したいという動機です。こちらの方が、より切実でしょう。2016年にトランプが当選したときに僅差だった三州、ミシガン、ウィスコンシンペンシルバニアでは、トランプとヒラリーの票差を農業票が大きく上回っていました。中国との貿易戦争で農家が離反して、これらの州でトランプが負けると、それが大統領選全体に決定的な影響がありうる、と、選挙専門サイトのFiveThirtyEightが去年から言っていました。

fivethirtyeight.com

最近の情勢で言えば、トランプ政権はエタノールに関する政策で、選挙戦で同じく重要なアイオワ州のトウモロコシ農家の言いなりになっていると言われています。トランプは中国への飼料輸出を増やして、彼らの歓心をひきたいはずです。米中貿易交渉の停滞で大豆の価格が上がらず、ただでさえ豚コレラのせいで不振な中国向け輸出につき、アメリカ大豆輸出協会が心配しているとか報じられています。トランプも、選挙と言うことで言えば、直接的には農業の方を心配していそうです。

A Trump Policy Shift Gives Farmers in Key 2020 States ‘Exactly What We Wanted’ - The New York Times

大豆、にじむ先安観 米中対立の「カード」化に不信 (写真=AP) :日本経済新聞

一方、中国への強硬策を支持する経済団体もあります。トランプが拒否権を行使する可能性が報じられた際、アメリカ製造業連盟会長のスコット・ポール氏は、そうなったら、議会は再可決すべきだ、とツイートしました。この団体は、中国の産業政策に反対し続けており、トランプ政権の対中政策に賛成してきました。こうした団体が多いからこそ、議会はほぼ全会一致で香港人権民主主義法案を可決させました。

 Alliance for American Manufacturing

拒否権など行使すれば、もちろん議会も黙ってはいません。法案を主導した共和党のマルコ・ルビオ議員はもとより、上院では共和党民主党両方の院内総務が、この法案に賛成するよう、トランプに要求しています。

拒否権を行使しても、上下両院それぞれ3分の2以上の賛成で、議会は再可決できて、これによって法案は成立しますし、両院はこれをやるでしょう。拒否権も行使せず、署名もせずにほっておいたら、そのまま日曜除いて10日間たてば、法案は自動的に成立します。

このため、議会との関係で言えば、拒否権を行使したところで、トランプには何も良いことはありません。弾劾騒ぎで共和党内でさえ、いくらかは動揺があるところで、味方を減らすだけです。

Trump suggests he could veto Hong Kong legislation because it might affect China trade talks - The Washington Post

以上を考えれば、拒否権なんて行使できるはずがありません。どうせ議会にひっくり返されるうえ、共和党議員の多くまで敵に回してしまうからです。いま、トランプが香港人権民主主義法案に対して示している態度は、要するに署名の先延ばしでしかなく、法案をつきつけられて逃げられなくなって、駄々をこねているだけです。

そこまでしてこの法案をいやがるのは、トランプは、株価と農業票を製造業団体や議会より重視した方が、大統領選で得だ、と考えているからでしょう。株価全体に及ぼす影響はともかくとして、後はほんの一部の州での勝ちのために、アメリカ全体の政策を停滞させています。その根本には、中国との間に、良い条件の取引が成立するはずだ、との誤った思い込みがあります。

トランプのこうした思い込みを、世界中が何とか正さないといけません。

もともと、トランプ政権は、中国と北朝鮮に対して、思い切り強硬姿勢を見せて脅しあげて、これまでの常識で考えられなかったような有利な形で、彼らを交渉のテーブルに引きずり出しました。これは、トランプ本人も言う通り、彼にしか出来なかったことです。これについては、トランプの首を取ろうと必死のニューヨーク・タイムズの有名コラムニスト、トマス・フリードマンさえ認めています。

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しかし、その後がいけません。せっかく交渉のテーブルに中国と北朝鮮を引きずり出したのに、何とか交渉を成立させようという段になったら、度外れた態度で習近平金正恩をべた褒めしました。向こうも最初は慌ててアメリカとの協議に応じたものの、そのうち冷静になって、いつも通りの、ウソと先延ばしの戦略に戻りました。米国防省の元スタッフのジョゼフ・ボスコ氏も言う通り、もともとアメリカの方が有利な立場なのだから、また最初の強硬路線に戻って、両国を締め上げつつ、国際社会に有利な合意を引き出すべきです。

thehill.com

現状では、せっかく香港問題を契機に、アメリカが米中冷戦の徹底でまとまりつつあるのに、トランプ大統領がその障害となってしまっています。トランプの態度を変えるには、中国がアメリカに譲歩せざるを得ない環境を作る必要があります。

そのためには、中国が米中冷戦での「逃げ道」として頼っている日本が、安全保障を理由にして対中貿易を制限して、更に中国を追い込むべきです。

外為法改正で、中国からの投資に対しては、一応は規制の枠組みを作りつつありますが、これだけではもちろん足りません。旧通産省OBの細川昌彦氏も言う通り、技術流出を防ぐために必要なのは、各種の法制度を使った、国全体としての『技術管理』であって、外為法はその「部品のひとつ」にすぎません。政府は輸出管理を強化すべきです。

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この点で、当面有効なのは、ファーウェイへの輸出規制をしくことです。ファーウェイのナンバー2の梁華会長は一昨日11月21日、都内で記者会見し、2019年の日本企業からの部品調達額を前年より5割多い1兆1千億円にする、と発表しました。米国に代わり、日本が最大の部品調達先にして、日本企業との連携に活路を求める意図がある、と日経が報じています。

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こうした抜け穴を、日本政府はふさぐべきです。技術管理を理由に、ファーウェイを始めとするハイテク企業に対して、日本企業からの輸出を、かつてのCOCOM同様に制限して、中国がアメリカとの貿易戦争で「活路」を見いだせないように追い込むことで、中国の香港人権民主主義法案への「報復」は難しくなります。そうなれば、トランプも中国に対し、今のような甘い態度ばかり取らなくても良くなってくるでしょう。

根本的には、トランプの対中認識の甘さを正さないといけません。そのためには、大統領と個人的な信頼関係のある安倍総理が、対中強硬姿勢をとるよう、更にトランプに伝えるのも有効なはずです。だからこそ、まずは日本が、一帯一路政策などやめて、習近平国賓として招くのもやめて、まずは自ら襟を正すべきです。安倍政権は対中政策を転換させるべきですし、国民は、右も左もなく、政府にそう要求してくべきでしょう。