日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

公立病院の再編、技術革新も利用して早急に推進を。安倍総理と加藤厚労大臣は、勤務医の過労死を無視する知事たちに負けないで!

厚生労働省が、今後再編・縮小すべき公立病院等のリストを発表したところ、地方の首長や病院が抵抗しています。国が進める病院再編は正しい方向であり、オンライン診療・投薬や新たな交通システムと組み合わせれば、デメリットも解消可能です。

病院再編は待ったなし、すぐに進めるべき

ファクタの12月号が、厚労省による病院再編が進まない実態をあらためて報じています。

官邸と経済財政諮問会議に背中を抑えれた厚生労働省が、全国424の公立・公的病院を具体的に名指しして再編・縮小を促し、来年9月までに結論を出すように求めたところ、リストに載った病院と地方自治体は猛反発し、厚労省は困っています。

facta.co.jp

私は、国が進める病院再編と、その大元となっている地域医療構想の方向に賛成です。医療費が急増しているうえに勤務医の過剰労働が深刻な問題となっており、病院再編を早急に進めるべきだからです。通院が不便になるというデメリットは、オンライン診療・投薬と新交通システムの導入で解消すべきです。これに反対している地方自治体の首長達は、住民のために反対しているというよりも、既得権者である地元病院を守るために、国の医療費への依存を続け、それどころか、地元の勤務医のひどい労働に目をつぶり、過労死を増やすことに加担している、とさえ言えるでしょう。

地域医療構想は、2025年に向けて「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能ごとに医療需要と病床の必要量を推計し、定めるものです。

高度急性期や急性期のためのベッドについては、看護師の数も多く必要ですが、実際の医療実績がほとんどない病院も多いのが実態です。当然、医療費が必要以上に増えて、国の財政を圧迫します。一方、高齢化に伴って、回復期や慢性期のベッドはかえって不足しています。こちらに張り付ける人員は少なくて良いので、医療費も少なくてすみます。そこで、高度急性期や急性期のベッドは減らして、回復期や慢性期のベッドは増やす、更に、病院自体も、出来るだけ再編する、ということです。

団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年以降、医療需要と医療費は急増するのですから、こうした病院再編によって効率化を図ることは、都市部でも地方でも必要であり、出来るだけ早く進めなければいけません。

急ぐべき理由は、病院再編が、医師の働き方改革を進めることにもなるからです。

医師不足の地方で、病院があちこちに散在していると、病院ごとの医師数は少なくなり、医師の過剰な負担につながり、医療の安全も守れません。今年3月に厚労省がまとめた「医師の働き方改革に関する検討会 報告書」の6頁では、今後目指すべき医療での「労働時間短縮を強力に進めていくための具体的方向性」として、「地域医療提供体制における機能分化・連携、プライマリ・ケアの充実、集約化・重点化の推進」が挙げられています。私はこれに加えて、そもそも医師数の増加が必要とは思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf

しかし、こういった抜本的な対策が取られていないため、現状では、勤務医は異常なほど働かされているのに、国は医師会や病院団体の圧力に負けて、過労死水準の2倍もの残業時間を認める方向です。以前、本ブログでも取り上げた通りですが、その後に作られた上記の「医師の働き方改革に関する検討会 報告書」でも、この点は変わりませんでした。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496523.pdf

医師の残業上限は過労死水準の2倍?⇒医師数を増やし、需給に応じた診療報酬を! - 日本の改革

医師と患者の両方の生命と健康を守るために、病院はできるだけ集約して、医師一人当たりの負担を減らしていくことが必要になります。こうした点からも、病院再編は進めるべきです。

 地域医療構想等の中身については、たとえば、厚労省の医療政策研修会の資料等に詳しく出ています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000516866.pdf

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194369.html

もちろん、病院再編を進めれば、患者は通院するのに今までより時間がかかり、負担が増えてしまいます。このため、国は地域包括ケアシステムを進めて、医療も介護も「施設から地域へ」という方向を進めようとしています。これを更に進めるためには、技術革新を有効活用すべきです。以前、本ブログで書いた通り、患者が自宅にいるままで治療が全て完結するよう、オンライン診療・投薬を積極的に認めていくべきですし、

オンライン診療・投薬「解禁」かと思ったら・・・ - 日本の改革

緊急避妊薬のオンライン処方指針に下らない要件いくつも:毎年16万人が人工妊娠中絶、虐待死の6割は0歳児の現実。早急に市販も認めるべき! - 日本の改革

どうしても通院等が必要な場合のために、新たな交通システムであるMaaS(Mobility as a Service、あらゆる移動手段(モビリティー)を統合し定額料金で提供すること等)や、自動車のシェアリングサービスを活用するべきです。本ブログでは、競争政策上は十分注意して、サービス料金が高くなり過ぎないようにする等の注意をすれば、新たな交通システムを積極的に使うべき、と主張してきました。特に、地方での病院再編の場合で通院が不便にならないようにするためには、このシステムは有効でしょう。

MaaS関連の国交省懇談会、なぜか、事業者等のヒアリング資料がほとんど非公開。利益相反等の問題点も国民に見せつつ、政策を決めるべき。 - 日本の改革

新たな交通システムでかなめとなるのが、オンデマンド型の乗り合い交通サービスですが、既に、医療・介護需要と組み合わせたサービスにフィリップスが参入し始める等、民間では相当準備が進んでいます。国が制度を整備してゴーサインさえ出せば、実現にそう時間はかからないでしょう。

xtrend.nikkei.com

以上のように、国の進める地域医療構想の基本的な方向は正しいものであり、早急に進めるべきですし、それによる患者・国民の不便は、オンライン診療・投薬や、新たな交通システムといった技術革新によって、解消することは可能です。

病院再編が進まないのは、地方の政治家や病院長のエゴのせい

この病院再編を求める地域医療構想については、まず、都道府県が策定を進めることになります。厚生労働省が2015年に「ガイドライン」を作成し、「医療介護総合確保推進法」により、2015年4月から、都道府県が「地域医療構想」を策定を始めました。

2017・2018年度を集中検討期間とし、地域ごとに自治体、医師会、病院が参加する調整会議で、対応方針をまとめてください、ということになっていました。ところが、これが出てきた案では、病院の再編は全然進んでいませんでした。高度急性期・急性期病床の削減は数%に留まり、、トータルの病床数は横ばいでした。つまり、具体的対応方針の合意内容が、地域医療構想の実現に沿っていませんでした。そこで、国が具体的方針を示そうということになり、経済財政諮問会議が、今年6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針2019)で「19年度中の対応方針見直し」を明記しました。

経緯については、厚労省の「今後の地域医療構想の進め方について」でまとめられています(医療政策研修会の資料、8月末時点)。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000542823.pdf#search=%272017%E3%83%BB18%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%82%92%E9%9B%86%E4%B8%AD%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E6%9C%9F%E9%96%93+%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%A7%8B%E6%83%B3+%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%80%81%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A%E3%80%81%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%8C%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%95%B4%E4%BC%9A%E8%AD%B0%27

こうした経緯を踏まえて、厚労省が、第二十四回の「地域医療構想に関するワーキンググループ」資料として、再編すべき424の公立・公的病院のリストを発表しました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000551037.pdf

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06944.html

リストはメディアでも大きく取り上げられ、日経は、対象となった病院名を記事でも載せています。

www.nikkei.com

424病院に「再編検討を」 公立・公的の25%超 厚労省、非効率解消促す :日本経済新聞

これが冒頭のファクタの記事にもある通り、自治体や病院団体の猛反発を招きました。やむなく、総務省が国と地方の協議の場を設定、ここで各県知事が、風評被害だのリストを撤回しろだのと言いたい放題です。

www.nikkei.com

しかし、以上の経緯を見れば分かる通り、もともと自治体で協議をして決めるはずが、自治体側がろくな病院再編プランを出してこなかったから、やむを得ず国が動いた、というのが実態です。

日経の大林尚編集委員が書いている通り、リストのもととなった議論や資料は、厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」でずっと公開されていたのですし、今さら「オレは聞いていない」と騒ぐ方がお門違いです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_368422.html

www.nikkei.com

地方の政治家達のこうした得手勝手については、厚労省の検討会の中でさえ、有識者が指摘していました。

既に去年2018年12月21日の第十七回・地域医療構想に関するワーキンググループで、地域医療構想の協議に加わった山形大学の村上正泰教授は、首長が公立病院の現状維持にこだわるどころか拡大路線さえ見せるので、話が進まないと批判していました。以下は、村上教授作成の資料の一部です。

f:id:kaikakujapan:20191121141331p:plain

出所:厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000462107.pdf

この手の首長達の反発を受けて、経済財政諮問会議は10月28日には、民間病院も含めて、3年以内の再編を、と打ち出しました。すると今度は、日本医師会が、「民間病院と公立・公的病院が競合している場合は、公立・公的が引くべきだ」と言い出しています。やれやれです。

第9回会議資料 令和元年 会議結果- 経済財政諮問会議 - 内閣府

www.nikkei.com

病院再編だけで、医師の過重労働問題が解決するわけではありません。医師数も増やすべきですし、それが難しいなら、偏在対策も必要です。しかし、病院再編が医師の働き改革のために実効性ある手段の一つであることは確かです。

医師の働き方改革進まず、地域医療で長時間残業 :日本経済新聞

山形県酒田市日本海総合病院は、2008年に400床の市立病院と528床の県立病院が統合して誕生しましたが、医師を増やして当直を減らすことが出来たうえ、人件費は統合によるコスト効率化で捻出できたそうです。統合後に看護職員や事務員などを増やして医師の業務を移管させ、働きやすい環境を整えたことが、医師が増えた要因の一つだと、院長は話しています。こうなれば、地方で医師が確保できて、しかも労働条件も改善され、医療の質や安全性が向上します。

こうした良い例があるのだから、公立だろうが私立だろうが、病院は統合・再編に協力していくべきです。どうしても院長をやめたくないというなら、まずは場所だけでも同じところにして、診療科ごとのシフト体制をしっかり組めるようにするというところからでも良いですし、とにかく、国民、患者ファーストで考えるべきです。

www.nikkei.com

 

 本来は、地元でこういう団体の利害を調整して一つの方向を示すべきは、各地域の首長ですが、残念ながらほとんどの自治体で、病院統合・再編に向けたリーダーシップが示されていません。

11月12日に、地域医療確保に関する国と地方の協議の場の二回目が行われましたが、ここでも、知事会や地方三団体は、やはり病院の統合・再編には後ろ向きで、それをやるなら十分財政支援しろ、と言っています。やる気がないどころか、騒動になったのを良いことに、あわよくば焼け太りさえ狙っているように見えます。

総務省|第2回地域医療確保に関する国と地方の協議の場|第2回地域医療確保に関する国と地方の協議の場

医師の過労死は、20代から40代に集中しています。医師が足りないと言って将来ある若い医師を酷使して死なせて、また医師不足になったと騒いでいる状態です。どの業界の話であっても、若い人たちが過労死にまで追い込まれることには、怒りと悲しみを感じますが、若い医師の過労死は、患者の命にも関わる重大な問題です。

新潟市民病院女性研修医の木元文(あや)さんは享年37歳で、2016年1月に市内公園の雪の上で自死しました。労働基準法違反で遺族が院長を告発しましたが、不起訴処分でした。大学病院の研修医だった娘(享年26歳)を2006年に過労自死で亡くした埼玉県の医師・山田明氏は、「希望に燃えて研修を開始した」娘さんが、最後は疲れ果て自ら筋弛緩薬を点滴で投与して自死した無念を語っています。 

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000539456.pdf#search=%27%E5%8B%A4%E5%8B%99%E5%8C%BB+%E9%81%8E%E5%8A%B4%E6%AD%BB%27

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こうした声は完全に無視され、医師会や病院団体のせいで、医師不足の地方では、過労死水準の2倍の残業時間が認められてしまいました。医師不足に対する実効性のある解決策の一つである病院の統合・再編には、地方の政治家達や病院の院長たちが、自分勝手な理由で反対を続けています。

もう、この件で、建前だけの「地方自治」なんていりません。いったん仕切り直してしまったのは仕方ないにせよ、安倍総理と加藤厚労大臣は、これが人の命の問題であり、国民全体の生命・健康の問題であるとまなじりを決して、不退転の決意で病院再編を断行していただきたいと思います。