日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

米政府、既に7月から在日米軍の駐留経費負担4倍増要求か:日本政府は真剣に受け止めて、対中政策の根本的転換を

米政府、日本と韓国に、駐留米軍経費を4~5倍にするよう要求。これだけの厳しい要求は、中国との対決でアメリカ側に立って戦えという求めだと見るべきです。日本政府は、中国を想定した軍事支出を大幅に増やせという要求を重く受け止め、一帯一路から手を引き、対中政策を協調から対峙に転換すべきです。

駐留米軍経費の負担を4倍に増やせ」

米外交誌フォーリン・ポリシーは11月15日、トランプ政権が日本政府に対し、在日米軍の駐留経費負担を約4倍に増やすよう要求していると報じました。

在日米軍の駐留経費負担4倍増要求と米報道

ソースは、米政府の現スタッフと元スタッフだ、とフォーリン・ポリシーは書いています。

具体的には、前大統領補佐官ボルトン氏とマット・ポッティンジャー国家安全保障会議NSC)アジア上級部長が、7月の東アジア訪問の際に、日本政府に対して、現在の駐留米軍経費の約20億ドルを80億ドルにしろと要求したとしています(国防省の元スタッフ3人の証言)。記事では、日本政府は米軍基地での公共事業を増やしたり、日本に新たなミサイル設置をしたりすることを検討している、と書かれています。

米政府は韓国に対しても同様の要求を行い、駐留米軍の経費負担を5倍にしろ、と言っているそうです。

CIAのアナリストは、日韓で反米ナショナリズムが台頭するのを懸念し、ある政府関係者は、こうした要求は、中国・ロシアと競争するという政権の方針と反している、と批判している、としています。

foreignpolicy.com

これが事実なら、今年末に、2021年度以降の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の交渉がありますが、そこで更に正式に要求されるのでしょう。

同様の要求については、今年3月にも報道がありました。本ブログでも取り上げましたが、そのときは経費総額の5割分を上乗せしろ、という話でした。「費用プラス50」と名付けられた同構想では、50%の上乗せ分は米軍駐留で恩恵を受けている対価と位置づけられていました。

が、今年7月からは、50%上乗せどころではない4倍もの要求をし始めた、ということになります。3月の報道では、国によっては現行の5~6倍の経費負担を迫られる可能性がある、とされていましたが、何のことはない、日本が4倍にしろと言われている、という状態です。

www.sankei.com

私は3月に5割増しの要求が報じられたとき、本ブログで、トランプ政権の言う「アメリカによって守られている日本の利益」、つまり駐留経費以上の価値はどれほどなのか、日米で真面目に議論して試算し、日米両国民に示すべきだ、と書きました。いわゆる「核の傘」がどう機能して、その社会的価値はいかほどかも、合わせて議論したら良いと書きました。

トランプ「日本は、駐留米軍の費用を全部払え。あと、米軍防衛によるプレミアムも払え」:日本はどう答えるべきか? - 日本の改革

今でも、その意見は変わりません。ただ、5割増しではなく、4倍にしろ、と言うのは、単なる金額の増額というよりも、質的に異なる要求だと見るべきです。

私が以前書いたように、日米で日米同盟のメリットを冷静に試算し国民に公開して、国防を充実させる契機とする、だけでは足りません。これに加えて、日本政府が何をするべきか、考えてみます。

アメリカの要求は、単なる「ディール」目的ではない

まず、アメリカがこの要求をしている意図を考えます。

今回の報道にはアメリカの政局がらみの面もあるでしょう。また、この要求には、トランプ氏が日本との貿易交渉で成果をあげたいという「ディール」目的の一面も、なくはないでしょう。

このところ、アメリカのメディアはとにかく大統領に対する弾劾一色、前・現政権スタッフから内部告発が相次いでいます。今回のフォーリン・ポリシーの記事も、水面下の交渉を暴露して、トランプ政権が同盟国にひどいことを要求している、と叩くトーンで書かれています。来年の大統領選で何とかトランプにダメージを与えよう、という動きの一つではあるでしょう。

また、今年7月にこの要求をしたというのが事実なら、日米貿易協定が8月の基本合意に向けて煮詰まっているところですから、日本を譲歩させようとして、安保上の要求を出してきた可能性もあります。

しかし、日本にも韓国にも、米軍駐留経費を4~5倍にしろと要求すると言うのは、とてもそれだけでは説明できません。要求額は明らかに現状の米軍駐留の全経費を大きく上回っています。ということは、米軍が今まで以上に費用をかけて、中国に軍事的圧力を加えることを意味しているからです。だから今回の要求も、「中国との軍事的対決を本格化させるから、日韓は本気で協力しろ」という求めだ、と見るべきです。

アメリカの本気度が分かるのが、GSOMIAに対するこだわりです。日韓間の協定なのに、正直言って日本政府がそれほど強くこだわっていないのに、アメリカは必死になって韓国を翻意させようとしています。

訪韓したクラーク国務次官は11月7日、韓国外交当局者を前に「中国は米国、ドイツ、韓国の製造業やハイテク技術基盤を崩壊させており、知的財産権を侵害している」と中国を批判。中国の広域経済圏構想「一帯一路」への対抗策である、インド太平洋戦略に積極的に参加するよう要求しました。

日経が、「米中のいずれを選ぶか、韓国に踏み絵を迫った形だ」と言っているのは正しい認識です。

www.nikkei.com

そして、「米中どちらを取るかの踏み絵」は、日本にも突き付けるのが、今回の要求です。

今回の要求が報じられる少し前、11月13日に、アジア太平洋担当の国防次官補にランダル・シュライバー氏が、エスパー国防長官の韓国訪問に先立ち、日本や韓国は、今より重い負担を受け入れざるを得ないはずだ、と発言していました。

A $5 billion bill and Japan tensions in focus as U.S. defense heads visit South Korea - Reuters

この発言をしたランダル・シュライバー氏は、徹底した対中強硬派です。2018年1月、シュライバー氏が米国防総省アジア担当に任命されたとき、遠藤誉氏が、これを歓迎する記事をニューズウィーク日本版に書いていました。同氏が既に2016年9月20日、「日中戦争時代、毛沢東が日本軍と共謀した事実」を話し合う国際会議を主宰した人物で、「トランプ政権の対中政策が変わる」と予想したからです。

www.newsweekjapan.jp

遠藤氏の予想通り、トランプ政権は2018年になって、米中冷戦を開始しました。

シュライバー氏は当然、日韓に対する軍事費増額の要求を知っていたどころか主導していたでしょうし、日韓両国ともそれを受け入れざるを得ない≒受け入れろ、と要求しているわけです。米中貿易交渉では、大統領は相変わらずナヴァロ氏のアドヴァイスも聞きながら判断しています。

もちろん、米中冷戦は、トランプ政権の中がどうこうという問題ではなく、米議会も超党派で賛成しています。香港に関する米議会の圧力も、香港での警察暴力のエスカレートで、更に強まりつつあります。

日本は、駐留米軍経費負担を大幅に増やせ、というアメリカの要求を、対中政策の転換を含むものととらえるべきです。日本政府は、一帯一路への協力をやめ、中国に対して香港民主化ウイグルの人権弾圧を中止を要求し、こうした主張の裏付けとすべく、駐留米軍経費の大幅増とそれに伴う米軍の能力向上に協力し、自国の防衛費も、可能な限り増やすべきです。