日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

NTTが、再エネ発電も、送電も、配電も全部自前で整備:公正取引委員会は、東電や関電の不当廉売による妨害を防げ

NTTが6000億円かけて、再エネ発電+蓄電+電気自動車+仮想発電所(VPP)+EV充電インフラ整備で、独自の電力網の整備を始めます。こうした動きが進めば、地域での再エネが普及しますが、問題は東電や関電の旧電力の不当廉売です。公正取引委員会は、電力大手による不当廉売について立入調査を行うべきです。また、政府は、再エネ普及のため、電気自動車普及のための充電インフラや、地域間の連系線の整備を更に進めるべきです。

良いことづくめの、NTTによる自前の電力網整備

NTTは、2020年度から、全国約7300カ所ある自社ビルを活用し、自社が再エネで発電したり蓄電池にためたりした電力を、病院や工場などに直接供給します。停電時のバックアップの需要を取り込む予定で、投資額は6000億円規模になる見通しです。日本で電力大手以外が自前で電力網を整備する動きは珍しいので、日経は、「大手が独占していた配電網に風穴が開くことになる」としています。

NTT自前の送配電網は、電力大手に比べ効率が5~10%よくなる見通しだそうです。蓄電池は固定電話の利用減で空いたスペースに配備するとともに、2030年までに、1万台規模の社用車をすべて電気自動車(EV)に変えて、停電時に蓄電池として使って近隣に電力を届けます。

www.nikkei.com

これは歓迎すべき動きです。これが進めば、送電線の空き容量不足で再生エネが接続できない問題が緩和され、電気の「地産地消」がしやすくなります。また、去年からの台風時での停電が増えているのに、大手電力は経営環境を理由に宇送配電設備の更新を怠っていますから、それをある程度代替できるでしょう。

政府も配電について地域限定で免許制を設ける方針を示したばかりですが、NTTは早速それを利用することになるのでしょう。

米欧中に遠く及ばない日本の電気自動車(EV)販売。販売目標台数規制と、研究開発税制の補助金化で逆転を! - 日本の改革

再生エネ、配電に免許制 工場・家庭向けに地域完結 :日本経済新聞

NTTのこうした計画は、発電も、送電も、配電も、全部自前で、大規模な電力網を作るところが、これまでの電力自由化での新規参入と違うところです。既存大手の発電所から電力を買ったり、既存の送配電設備を使ったりしなくてもよいところが大きなメリットで、既存大手から高い電力を押し付けられたり、送電線に接続させないということをされたりする心配がないので、競争は大きく進むはずです。

NTTは既に6月、新会社「NTTアノードエナジー」を設立して、エネルギー事業の連携を強化し、新エネルギー事業を収益の柱にする方針を示していました。グループの営業利益の約6割を稼ぐNTTドコモが、携帯電話の値下げ競争激化などで高成長が難しくなったのが背景で、尻に火がついた状態ですから、旧電力会社とのガチンコ勝負を期待したいところです。NTTは、日本全体の発電量の約1%を消費するということですから、日本の再エネ普及がまた一歩着実に進むことになります。

www.sankeibiz.jp

本ブログで導入を主張してきた先進的な制度・手法も積極的に取り入れています。VPPと呼ばれる、発電設備や蓄電池など企業や家計に散らばる電源を束ねて一つの仮想的な発電所として機能させて、電力需給を最適制御するシステムも作ると言いますし、

固定価格買取制度(FIT)終了後は、①2030年の再エネ比率目標を50%超にして、②企業の再エネ電力購入(PPA)を促進し、③ESG投資の普及を! - 日本の改革

また、バックアップ電源として、電話局の蓄電池や発電機のほか、1万台もの電気自動車を積極的に活用すると言いますから、これは、吉野彰氏が主張している、蓄電+移動で再エネを普及させ、エネルギー問題を最終的に解決する、という長期的なビジョンにも、方向がぴたりと一致しています。

吉野彰氏が目指す「移動+蓄電でCO2ゼロ実現」:科学技術は国民の夢を挫くためではなく、実現するためにある - 日本の改革

さらにさらに、「高度EVステーション」事業も始め、EV充電設備を自社だけでなく、顧客の拠点などにも設置して最適制御し、一般の人の活用を促進することなども検討するそうです。

NTT、スマートエネで新事業創出へ 新会社が司令塔、脱炭素を推進 (2/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 これは、電気自動車普及の最大の障壁と言われる、充電インフラ不足の問題の解決にもつながる方向です。充電のためのスタンドの数が増えて、NTTの技術力で充電時間もガソリンスタンドより短くできるようになって、それがスタンダードになれば、電気自動車の普及が早まるでしょう。

www.nikkei.com

これは、東京都が2050年にCO2排出ゼロ宣言を行って、都内で約300基にとどまる急速充電器を、30年には1000基へと3倍超に増やす計画を立てている方向とも一致しています。こうした先進自治体の動きを更に加速させるきっかけにもなるでしょう。

www.nikkei.com

以上のように、NTTによる自前電力網整備は良いことづくめです。政府は、NTT以外の企業もこうした画期的なビジネスを始められるよう、障害は除去し、必要なら支援もするべきです。

せっかくの明るい動きを、旧電力に邪魔をさせてはいけない

心配なのは、これを東電や関電等の電力大手が、不当廉売等で邪魔しないかです。

経済産業省資源エネルギー庁)の総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会の資料「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」(2019年8月29日)では、新電力のシェアが以下のようになっています。新電力は、家庭向けの低圧では健闘、企業向けの高圧・特別高圧でも伸びてはいるものの、一昨年後半あたりから、伸び率が鈍化しています。

f:id:kaikakujapan:20191112080011p:plain

出所:経済産業省

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/020_03_00.pdf#search=%27%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%8C%96+%E9%80%B2%E6%8D%97%E7%8A%B6%E6%B3%81%27

 新電力苦戦の理由の一つが、東電や関電等の電力大手の不当廉売です。本ブログでも取り上げましたが、大手電力会社は、小売市場で極端な不当廉売を行い、新規参入した新電力の契約を奪っています。以前も書いた通り、経産省はまともに監督していません。電気事業法独占禁止法を踏まえた「適正な電力取引についての指針」(2019年9月27日付)により、公正取引委員会が立入調査を行うべきです。

https://www.jftc.go.jp/hourei_files/denki.pdf#search=%27%E4%B8%8D%E5%BD%93%E5%BB%89%E5%A3%B2+%E9%9B%BB%E5%8A%9B+%E5%B0%8F%E5%A3%B2%E3%82%8A+%E7%8B%AC%E5%8D%A0%E7%A6%81%E6%AD%A2%E6%B3%95%27

経産省の電力・ガス取引監視等委員会は、今年9月になって、「小売市場重点モニタリング」というのを始めることにしましたが、これがまともに機能していません。一定の価格水準を目安として、競争者(新電力)からの情報提供によって、対象事業者(東電や関電等)へのヒアリングを行うのですが、新電力が監視委員会に情報提供しても、その後どうなったか一切何も教えてくれない、ということです。

小売市場重点モニタリングについて

監視委員会が小売モニタリング開始、大手電力に切り込めるか|日経エネルギーNext

もう、経済産業省の監視委員会だけに任せておくべきではなく、公正取引委員会が独立行政委員会としての強みを発揮して、自ら立入調査を行い、NTTによる新規参入が自由で公正な競争につながるように、あらかじめ環境を整えておくべきです。

関西電力等、小売市場で極端な不当廉売、新電力が苦境に。公正取引委員会はただちに強制調査を! - 日本の改革

今朝のNHKのニュースで、東京電力が今月から、北海道や中国、四国など全国で、家庭向けの電力の販売に乗り出すことを報じていました。

www3.nhk.or.jp

電力の小売り自由化の影響で新規に参入した事業者に多くの顧客を奪われていることから、沖縄を除く全国に販売地域を広げるということです。

大手電力も必死です。案の定、電気料金は地元の電力会社に比べ標準的なプランで3%程度安く設定する、としています。関電は、それどころではないような10%やそれ以上の値引きをして、自治体等が電気の地産地消のために作った、公的な新電力の顧客まで奪ってきました。東電の今後の安売りには要注意です。

公取は、既に行われている不当廉売について、出来るだけ早く強制調査を行うべきです。これにより、NTTの始めたような自前電力網整備を、他の企業も安心して行えるような環境を用意すべきです。