日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

ベルリンの壁崩壊から30年:リベラリズムとナショナリズムの両立で自由主義陣営を立て直し、両方を否定する中国を変えるべき

昨日11月9日で、ベルリンの壁崩壊で、1989年のリベラル・デモクラシーの勝利から30年です。最近は、民族主義や「ポピュリズム」の台頭が見られますが、もともとリベラリズムナショナリズムは両立可能であり、両者の調和により、自由主義陣営を再結成できます。これを進めつつ、国際的圧力で、1989年からの宿題である中国の民主化を実現するべきです。

1989年の理念:リベラリズムナショナリズムの幸福な結婚

ベルリンの壁崩壊に象徴される冷戦終結から30年。1989年に、せっかく世界中が自由で民主的で平和になるという希望が広がったのに、その後の歴史は、必ずしもそうとばかり言えない、という論調があちこちに見られます。フィナンシャル・タイムズの社説は、シンクタンクのフリーダムハウスの調査結果として、2008年のリーマン・ショック以降、各国で民族主義ポピュリズムが台頭し、世界各国の自由度が下がっている、とのデータを紹介しています。

www.nikkei.com

 

私は、各国での民族主義や、いわゆる「ポピュリズム」の動きは、リベラリズムと両立する限りは、何の問題もない、と思っています。

移民政策に慎重になり、自国の利益や文化・アイデンティティーを大切にしたいと言う諸国民の声は全く正当なものです。自由で民主的な政治体制の枠内でこの声にきちんと答えるならば、米中冷戦の中で、アメリカ側の自由主義陣営の結束をしっかり固めなおすことは十分可能です。

これからの世界が実現すべきは、リベラリズムナショナリズムの両立です。日米欧はじめ、世界中で、リベラルなナショナリズムを旗印とした政治を進めることで、両方を否定する異形の大国、中国の一党独裁制覇権主義を倒すことを目標とすべきです。

本ブログでは、今年1月3日、国際社会は1989年の理念に立ち返り、人権も他国の主権も無視する中国に対し、アメリカの側に立って米中冷戦を戦うべきだ、と主張しました。

米中冷戦と1989年の理念 - 日本の改革

今日はその主張を、リベラリズムナショナリズムという原理的な面で見てみます。

最初に、1989年に始まる東欧革命の意味について考えます。

30年前の1989年、ソ連ゴルバチョフが東欧政治への不介入を示すのと前後して、東ヨーロッパの諸国民が、自国の独裁政権に公然と反旗を翻しました。まず、ポーランドハンガリー民主化を実現。東ドイツでは、国内の大規模なデモに直面して、同国政府が旅行規制の緩和を発表。11月9日には東西ドイツの国境検問所に東ドイツ国民が殺到し、簡単な手続きだけで、西ドイツへの出国が認められました。これが象徴的に「ベルリンの壁崩壊」と呼ばれています。

その後、ブルガリアチェコスロバキアルーマニア民主化を達成、1989年12月に、米ソは1989年のマルタ島会談で冷戦終結を宣言、ドイツは1990年に、民主主義国家である西ドイツ主導で再統一を果たしました。そして、1991年には、ウクライナベラルーシ、バルト3国等が独立、ソ連は消滅しました。

 「ベルリンの壁崩壊」は、自由民主主義陣営の勝利を意味するものでした。同時にそれは、分断国家ドイツの再統一という、ドイツ国民の悲願の達成を意味していました。つまり、この歴史的事件は、リベラリズムの勝利であり、ナショナリズムの勝利でした。リベラリズムナショナリズムの幸福な結婚が、ベルリンの壁崩壊の本質です。

翻って、1989年の東欧革命全体についても、同じことが言えます。東欧革命は、東欧各国の独裁政権を、国民が命がけの戦いで倒して民主化を実現したというリベラリズムの勝利であり、ワルシャワ条約機構というソ連の軛から独立するというナショナリズムの勝利でもありました。ここでも、リベラリズムナショナリズムが両立しています。

歴史は、リベラリズムナショナリズムの両者の発展で動いてきた

一般に、外国が非民主的な形である国を支配するとき、その外国に対する戦いは、リベラリズムナショナリズムの両面での戦いになります。

歴史を振り返れば、アメリカ独立革命は、アメリカ植民地の人権保障を求めるリベラリズムの戦いであり、イギリスに対する独立を求めるナショナリズムの戦いでした。フランス革命は、封建制を倒すためのリベラリズムの戦いでしたが、当時のフランスは、干渉戦争から自国を守るナショナリズムの戦いも同時に行いました。ナポレオン戦争の際のプロイセンは、「上からの改革」でのリベラリズムを追求し、収奪者となったフランスに対してナショナリズムのための戦いを行いました。

その後、19世紀のヨーロッパでは、各国の諸国民が、リベラリズムの確立を求めて革命・改革を繰り返し、同時に統一と独立を目指すナショナリズムの運動を進めました。

そして、欧米諸国の植民地化に対して、日本は明治維新大日本帝国憲法の制定等によって、自国内での自由民主主義化と近代国家としての独立の両方を確立しました。自由民主主義と国家的独立の両方を達成した日本は、当時の中国やヴェトナム等、諸国の改革を促しました。その後、二度の世界大戦を通じて、諸国民は、自由民主主義改革と植民地状態からの独立を次々に達成していきました。各国は、リベラリズムナショナリズムの両方の理念を追求し、実現していったことになります。

なぜ、リベラリズム的な改革だけでなく、ナショナリズムも必要なのでしょうか。それは、世界各国の諸国民は、それぞれの文化や歴史を持っており、同じ民主主義国でも当然利害対立はあるのだから、その点を無視した政治は、結局は各国の諸国民の支持を得られないからです。

各国の民族主義、「ポピュリズム」は、リベラリズムと両立する範囲で認めるべき

1989年以降の歴史を振り返れば、1990年代から2008年のリーマン・ショックまで、欧米の投資銀行や、欧米諸国の一握りのエリートが、各国のナショナリズムを無視して、やり過ぎました。

彼等が1990年代にロシアや東欧諸国に要求した「改革」の中には、民主的な正当性や情報公開も不十分なままで国有財産を売却するなど、リベラリズムの点からも正当化できないものもあったと思います。

1990年代後半の東アジア通貨危機も、リベラリズムの点から言えば、ターゲットとなった諸国の政治腐敗は確かに正すべきだったものの、いきなり通貨アタックを浴びせてドル建て債務を膨らませて現地資産を奪うようなやり方が、ナショナリズムの観点から強い反発を招いたのは当然です。

2001年の同時多発テロ以降は、アメリカは、イラク戦争に見られるように、中東諸国のナショナリズムを無視してリベラリズムを実現しようとして、失敗しました。アメリカは結局、中東から手を引かざるを得なくなりました。今後は、現地での民主化運動、「アラブの春」で長い時間をかけて、各国ごとのリベラルな改革が進められるでしょう。これは以前も本ブログで書いたことですが、中東諸国での内側からの民主化も、自国の独立や文化的アイデンティティを守るというナショナリズムと、中東諸国の独裁を倒すというリベラリズムの両方を追及する戦いとなるでしょう。

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ヨーロッパについて言えば、EUが財政健全化やヒトの移動について加盟国に対して無理な要求をしたことが、各国での民族主義の台頭を招きました。リーマン・ショック以降の低成長時にどの国も経済対策を行いにくかったうえ、ブルガリアルーマニアEU加盟で低賃金労働者が先進的な国に流入、そのうえシリア難民も押し寄せたことが、経済的にも文化的にも、諸国民を苦しめることになりました。これが、ハンガリーポーランドの非リベラルな政権を生み、ドイツではAfDを躍進させ、ブレグジットの原因にもなりました。

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ただ、それでも、西欧、中東欧の政治は、基本的にはリベラル・デモクラシーがしっかり機能しています。「ポピュリズム」諸政党が暴力に訴えるなら断固戦う必要がありますが、現状ではおおむね、議会を通じて政策を実現しようとしており、その目標も、通貨政策や移民政策で自国の自由度を高めようという、リベラリズムの観点から何の問題もないものが掲げられてもいます。

1989年以来の流れで見るならば、ポーランドハンガリーのような、ソ連の圧政から独立した国々が、今またEUに手足を縛られるというのでは、東欧革命の成果が十分感じられないことになってしまいます。EUに対して物申す姿勢を見せるのは当然です。

欧州のポピュリスト政党がEUに対して政治的に目指したのも、テロや謀略ではなく、欧州議会選挙での勝利でした。しかも、緑の党諸派に及びませんでした。彼らは今後、ナショナリズム的な主張を、リベラル・デモクラシーの枠内でEUに反映させることになります。

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トランプ政権の「アメリカ・ファースト」も、注意してみれば、リベラリズムを標榜する米民主党と共通するところがあることが分かります。

トランプ氏は就任演説で、「既得権者(establishment)は自分達を守ったが、国民を守らなかった」と述べました。

自由貿易推進は正しい政策であるにせよ、中国の滅茶苦茶な産業補助金知的財産権侵害に目をつぶって不透明な手続きで貿易を自由化する、安い労働力が欲しいばかりに不法移民をいくらでも入れて賃金低下を招く、それでも富裕層はゲーティッド・コミュニティで自分達は守られているから気にしない。アメリカはそのようになってしまった、と考える人達が多いからこそトランプ政権が出来たのであり、民主党もその事実は直視して、来年の大統領選に臨んでいます。

要は、現在、リベラリズムの限界とか課題とか言われていることは、ナショナリズムを十分考えずに行われた政治のせいであって、それを是正する当たり前の動きが起きているだけです。

各国の諸国民が自ら興す改革や民主化について、リベラリズムと両立するナショナリズムを正当な要求として正面から認め合うことで、自由主義陣営の結束を再び強めれば、1989年の理念を再生させ、2020年以降に実現していくことが可能です。

自由主義諸国は、リベラルなナショナリズムという共通の理念の下に結束し、この二つの理想を否定する中国に対峙していくべきです。