日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

米欧中に遠く及ばない日本の電気自動車(EV)販売。販売目標台数規制と、研究開発税制の補助金化で逆転を!

10年足らずで米欧中に大きく引き離された日本の電気自動車(EV)の普及、米中同様に販売目標台数規制を導入し、自動車産業向きの研究開発税制を補助金化し、補助金自体もEVに集中して効率化して、逆転を図るべきです。

電気自動車(EV)でまるで存在感のない日本

まず、最近の電気自動車(EV)のニュースで目についたものを二つ紹介します。

中国の新車販売台数が、9月に、前年実績を15カ月連続で下回りました。米中貿易戦争の長期化や景気の減速等のためです。特に、電気自動車(EV)等の「新エネルギー車」は34.2%減でした。政府が6月末に新エネ車への補助金を減らしたことが響きました。

一方、電気自動車のテスラが、市場予想に反して黒字に転じたことがニュースになっています。採算が改善したうえ、中国・上海市場の稼働が予定より早まることで、株価が上がっていると言います。

9月の中国新車販売5%減、15カ月連続マイナス :日本経済新聞

テスラ、驚きの黒字転換で株価急騰 上海工場の稼働前倒しも好感 :日本経済新聞

販売が下がるにしろ上がるにしろ、こうした電気自動車関連のニュースで、日本の自動車メーカーの存在感がありません。販売台数が少なすぎるし、世界の電気自動車市場を牽引する新技術も開発していないからです。

先月の日経の記事によると、トヨタ自動車グループの取引先で、ソフトウエア会社がエンジンなど既存の部品メーカーを初めて上回ったそうです。過去20年ほどで急速に進んだ車の電子制御に加え、足元で進む「CASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)」の流れがあるから、としています。

この「CASE」の流れの中で、日本の自動車メーカーがいかに立ち遅れているかは、同じ記事に出ているグラフから分かります。電気自動車の販売台数で、日本はたった10年足らずの間に、米欧中に全くかなわないほど引き離されています。

冒頭に紹介した記事のように、中国で電気自動車が売れなくなった、テスラが意外に頑張った、と色々あっても、日本の電気自動車市場に比べれば、はるか雲の上の出来事です。

 

出所:日本経済新聞2019年10月22日

トヨタ「ケイレツ」、CASEで変容 取引社数首位 部品→ソフトに 事業構造転換迫る :日本経済新聞

電気自動車の普及は、地球温暖化対策と経済成長を両立させるために極めて重要なだけではなく、防災等の社会インフラ整備のためにも不可欠です。

経済産業省は、配電分野への新規参入を促し、電力大手以外の企業が工場や家庭に直接電力供給できる仕組みを作るそうです。経産省は今日、11月8日に開く有識者会議で新たな仕組みの制度案を示すそうです。この制度の目的の一つは、大規模化する自然災害への対応です。台風による電柱や鉄塔の倒壊で配電網が破壊された経験を踏まえ、地域の配電網を大手電力以外の企業にも担わせ、電源を分散化させます。

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こうした仕組みを作る際にカギとなるのが、蓄電と移動を両方できる、電気自動車です。再エネの電力を安定的に供給するためには、蓄電が必要です。蓄電池の普及には、移動にも使える電気自動車の普及が早道です。電気自動車は災害時の電源車としても活躍します。

本ブログでも、今年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が、「AIEV」(全自動運転EV)によって、自動車と発電所からのCO2排出ゼロ社会の実現を目指すべきだ、と主張されていることを紹介しました。

吉野彰氏が目指す「移動+蓄電でCO2ゼロ実現」:科学技術は国民の夢を挫くためではなく、実現するためにある - 日本の改革

吉野彰氏は、電気自動車普及のため、そして日本が電池分野で再び優位性を取り戻すためにも、日本が辛うじて優位を保っている自動車産業を中心に、電気自動車での産業ピラミッド構造を作るべき、と主張しています。

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米中同様の販売目標台数の規制と、研究開発税制の補助金化、補助金効率化を!

電気自動車製造のための産業ピラミッドを作り、将来にわたる経済成長と環境保護を図り、国内での雇用を作るために、政府は電気自動車を、規制と財政の両面で、更に後押しする必要があります。具体的には、販売目標台数に応じた規制を導入し、自動車産業をはじめとするメーカーの研究開発税制は全て補助金に切り替えて費用対効果を明示させ、現行の補助金制度も効率化するべきです。

特定の産業分野を成長させるために、規制や補助金を使う産業政策、いわゆるターゲティング・ポリシーに対しては、高橋洋一氏らは反対しています。が、私は、対象となる分野を慎重に選ぶならば、十分効果が見込めると考えています。先に述べた通り、電気自動車は国として投資をするに値する分野です。

この分野を育成する手法としては、自動車メーカーに対して、自動車の販売台数の一定比率を電気自動車にするという、いわゆるZEV規制を導入すべきです。

中国での電気自動車の普及については、色々な評価がありますが、間違いないのは、政府の規制と補助金で伸びたということです。

中国政府は2013年、国産メーカーや外国勢にEVの販売を促す補助金プログラムを導入しました。そのうえ、軌道に乗り始めた2015年、政府は補助金を受ける条件に、認証サプライヤーのバッテリーを搭載するよう定める等、差別的な政策まで使って、電気自動車企業とバッテリー企業を育ててきました。ひどいやり方ですが、これが現実に効果があって、中国で電気自動車が急速に普及したのも厳然たる事実です。

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更に今年から、自動車メーカーに電気自動車など新エネルギー車を一定比率、生産することを義務付ける規制を導入しました。未達の場合は達成した企業から余剰分を「クレジット」として買い取るか、車の販売台数が制限されます。これまで中国政府からの多額の補助金を受け、新エネ車の生産体制が整う中国メーカーが有利になります。

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中国の産業政策はころころ変わるので、この規制の持続性については疑念もありますが、こうした規制は、アメリカの各州も採用しています。最初、カリフォルニア州で導入されたZEV規制は、メリーランド、マサチューセッツニュージャージー、ニューヨーク、オレゴンコロラドに広がり、現在では10州で採用されています。環境規制を嫌うトランプ政権は連邦レベルでの規制をしませんが、政権が変われば、全国レベルの規制も行われる可能性があります。

米コロラド州、排ガスゼロ車規制導入に向け自動車各社と合意 | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

これに対し、日本は、電気自動車普及のためには燃費規制を強化しましたが、ZEV規制のような販売台数規制は導入していません。

今年6月、経済産業省国土交通省は、新車販売の新たな燃費規制をまとめ、2030年度までに約3割改善することを自動車メーカーに義務付けました。政府は30年に国内新車販売に占める電気自動車の割合を全体の2~3割に高める目標を掲げており、その達成のために、燃費規制で間接的に後押ししよう、ということです。

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燃費規制に高いハードル、国内勢にEVシフト促す :日本経済新聞

これでは、電気自動車の普及には力不足です。

この規制の売りは、環境性能を走行時だけでなく、発電所などの源流に遡って評価する手法を「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪へ)」の手法を採用したこと、そして、普及させる自動車の種類を決め打ちしないで、燃費だけで行う技術中立的な規制だ、ということです。

[社説]新燃費規制テコに車の革新を (写真=共同) :日本経済新聞

CO2等の排出について、発電所まで遡って評価するのは良いことですが、「技術中立性」という理由で、電気自動車以外のハイブリッド車ディーゼルエンジン車等、どんな種類の自動車でも構わないということで、政策目標が定まっていません。「規制の先進性」を言い訳に、販売台数規制という、より厳しい規制を避けています。販売台数を直接規制することで、消費者も乗り換えざるを得なくなりますし、企業も技術革新を更に進める必要が出てきます。端的に、販売台数規制を導入すべきです。

財政的な支援については、企業の技術革新を促すためには、従来通りの研究開発減税はやめて、補助金に一本化して、財政支援の費用対効果が政府にも国民にも明らかになるようにすべきです。

トヨタの20年3月期の研究開発費は過去最高の1兆1千億円で、このうち、先に紹介した「CASE」関連に割く比率は4割弱でした。将来は5割まで引き上げる考えだと言います。逆に言えば、トヨタと言えど、次世代自動車の開発にかける研究開発費は、全体の半分もいっていないということで、過半を占める「研究開発費」が本当に財政支援に値するべきものかどうか、厳しく見直すべきです。

トヨタ「ケイレツ」、CASEで変容 取引社数首位 部品→ソフトに 事業構造転換迫る :日本経済新聞

以前、本ブログでも書いた通り、研究開発費の総額について、中身も見ないで一律減税にする現在の制度は、昔に研究開発費を増やした業種の大企業の既得権を生んでいます。研究開発促進は、減税よりも、補助金の方がかえって透明性が高くなります。補助金にすれば、法律によって、支出の目的、手続き、支出先等、全て公開されます。現在は、税務上のプライバシー情報だからという理由で非公開の情報が、どの国民にも分かるように公表されます。

大企業ほど軽くなる法人税負担率:研究開発減税の「既得権」部分は廃止を! - 日本の改革

電気自動車開発・普及のような重要な政策でこそ、巨額の財政支援をすべきですし、その政策の効果も当然公開すべきです。

更に、現在の次世代自動車への補助金制度自体も、見直すべきです。現在は、「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」という補助金が、次世代自動車振興センターという中抜き団体を経由して、電気自動車に限らない色々な種類の自動車開発のために、各社に配られています。

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出所:経済産業省

https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2019/saisyu/3002862METI.xlsx

 ここでも、補助対象とする自動車は電気自動車に集中させて、中抜き団体の効率性も更に厳しくチェックし直したうえ、費用対効果をより明確に数字で示させるべきです。そのような改革を条件に、補助金はもっと増やしてもよいくらいです。

電気自動車普及のためには、充電施設の効率性が悪く充電に時間がかかることも課題です。2016年の英政府の調査では、充電インフラの問題がEV購入の最大の障壁と指摘されたということで、要は、充電のためのスタンドの数を増やし、充電時間もガソリンスタンドよりも短くする必要があります。こうした分野にも、政府の支援が必要です。

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日本の製造業は、辛うじて自動車産業が支えています。その自動車産業は、ガソリン車やハイブリッド車が辛うじて売れている現状を維持するのに汲々としており、電気自動車という将来性のある分野で、米中欧との距離は広がるばかりです。政府は、電気自動車販売を直接後押しする販売台数規制、そして財政支援の税制から補助金への転換、補助金自体の効率化を行い、そのうえで、補助金の対象は電気自動車の開発・販売・インフラに絞るという方法で、とにかくやれることは何でもやって、結果を出すべきです。