日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

無電柱化、ほとんどの自治体が高コストでの実施や法律違反:低コスト法採用はわずか25%、道路法の電柱新設制限の実施は9%

経済産業省が先月末、有識者会議で無電柱化の加速を盛り込みましたが、実際は進んでいません。一つの理由に、ほとんどの自治体が無電柱化推進法も道路法も無視して、無電柱化で低コスト法を使わず、道路法の電柱新設制限もしていないことが挙げられます。今年から去年の台風での電柱被害に鑑み、全国の自治体に無電柱化の法令順守を徹底させるべきです。

台風で電柱があれだけ倒れても進まない無電柱化

10月31日、経済産業省有識者会議、電力レジリエンスワーキンググループが、台風15号・19号の対応を踏まえ、電力の安定供給、停電の早期復旧のための施策につき、中間整理をしました。

そこでは、インフラ投資について、 鉄塔・電柱の技術基準見直し、分散型グリッド推進、送配電網の強靭化・スマート化に加え、無電柱化の推進も挙げられました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/resilience_wg/pdf/007_05_00.pdf

総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会/産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 合同 電力レジリエンスワーキンググループ(第7回)(METI/経済産業省)

官邸も昨年末に決めた、国土強靭化計画を見直す「3か年の緊急対策」で、無電柱化の推進を掲げています。こちらは、去年の豪雨、台風第21号、北海道胆振東部地震等を踏まえて、インフラの緊急点検を行った結果、掲げられたものです。この緊急対策には、緊急輸送道路1000キロメートルについて、来年度までの無電柱化を推進する、とあります(22頁)。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jyuyouinfura/kaisai/dai3/gijishidai.pdf

にもかかわらず、無電柱化は進んでいません。朝日新聞が5月24日に社説で批判していますが、緊急輸送道路1000キロについても、無電柱化する予定の国道1400キロメートルについても、無電柱化は進んでいません。それどころか、2016年の無電柱化推進法の制定後も、毎年7万本のペースで電柱が増え続けています。無電柱化推進法は、ザル法になっています。

(社説)無電柱化 推進法が泣いている:朝日新聞デジタル

 

財務省も問題視、低コスト法採用と電柱の新設制限を求める

理由として普通挙げられるのが、無電柱化はコストがかかり過ぎるということです。

しかし、実際の無電柱化の工事では、既に開発されている低コスト法(従来より浅い場所への埋設や、安価で弾性のある角型多条電線管の利用等)を使わずに、従来通りの高コストの工事をしている例がほとんどのようです。これでは、結果として十分な無電柱化が出来ないことになります。

更に、無電柱化推進法11条は、災害防止等のために無電柱化が必要な場合は、道路法37条による道路の占有禁止・制限をすることが出来る、と定めています。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000112

予算を効率的に執行し、法律(と法律の定めた計画)を遵守すれば、それだけで無電柱化は相当進むはずですが、実際には両方出来ていません。

財務省が今年6月に公表した予算執行調査によると、無電柱化推進事業につき、低コスト法を採用した地方自治体は全体の25%しかありませんでした。国も全体の42%しか採用していないので、こちらも大問題です。採用しなかった理由として、低コスト手法をよく知らなかったり、やる必要性を感じなかった、と担当者が答えているようです。

また、地方自治体について、電柱の新設制限をするための、緊急輸送道路での占用制限につき、占用制限を実施済、又は実施予定の団体は9%しかありませんでした。管理する道路のうち「緊急輸送道 路がない」という回答もあったので、これは本来除外すべきだと思いますが、「制度を知らない・理解していない」、「既設電柱や私有地に対する占用制限をしないと効果がない」との回答が多かったようです。

f:id:kaikakujapan:20191104201938p:plain

出所:財務省

https://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2019/sy0106/34.pdf

このため、財務省は、今後は低コスト法の採用等を国の補助の要件とすることや、既設電柱の専用制限等の規制強化の検討、更に、補助の対象が電力会社という大企業であることを勘案して、予算支援の見直しも検討すべき、としています。

これに先立ち、既に国土交通省も、3月25日の「無電柱化推進のあり方検討委員会中間とりまとめ」で、電柱新設を防ぐための占制限の拡大や、既設電柱についても占用制限も含めた規制強化の検討を挙げています。

f:id:kaikakujapan:20191104204200p:plain

出所:国土交通省

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf/chu_gaiyo.pdf

提言や現行法との関係の一部についての図解等は、こちらの資料にあります。

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf/chu_gaiyo.pdf

要は、新設の電柱でも、既設の電柱でも、もう道路に立てるな、撤去しろ、という規制を国も既に検討し始めている、ということです。

私は、政府の方向は正しいと思います。

防災上の理由で、電力会社に対して道路占用を(猶予期間をおいたうえで)もう認めず、撤去は自腹で行え、という規制をやるべきです。

この際、電力料金への上乗せも、もし可能なら防ぐべきですが、難しいようなら、消費者が電力料金の形で無電柱化コストの一部を負担しても、やむを得ません。電柱によって電気の供給を受けている消費者も、電柱が災害時にもたらす損害予防について、一定のコストは負うべきだからです。

その代わり、消費者が長い送電線に頼らない電力も選べるよう、再生可能エネルギーの余剰電力を地域で蓄電し、需要に応じて供給する仕組み(仮想取引所VPP等)の構築を急ぐべきでしょう。この仕組みについては、以前のブログでも紹介しました。

台風で停電長期化の東電と千葉県・各市は、政府が求めていた倒木撤去の協定を結んでいたのか - 日本の改革

まとめると、国はそもそも、現行の無電柱化推進法での計画と3年間の緊急対策の計画通りに無電柱化を進めるべきで、その際には、地方自治体には低コスト工法での施行を義務付け、電力会社に対しては、道路占用を禁止して電力会社に自前で無電柱化を求めるくらいの強硬手段を使うべきです。これによる電力料金上昇の可能性は出来るだけ防ぎ、長い送電線を使わないような電力も使えるよう競争環境を整えるべきです。それらが当面間に合わない場合は、防災目的での電力料金上昇が一定程度起きても、電柱の社会的コストやリスクが高いことを根拠に、国民に率直に理解を求めるべきでしょう。

とにかく、自治体や電力会社がコスト高を理由にいつまでも何もしないで、毎年のように台風で1000本以上の電柱が倒れて、そのたびに大規模停電が数週間も続く、という事態は、防ぐべきです。