日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

英語民間試験の延期はとんでもない愚策:受験機会の均等を保障のうえ、TOEFL等でやるべき。日本でしか通じない英語教育はもうやめよう。

文部科学省による英語民間試験、導入の延期こそ愚策です。受験料は財政支援、会場確保は自治体に協力要請して、受験機会の格差を図り、利益相反を解消したうえで、TOEFLTOEIC、英検等での試験にすべきです。

「身の丈」発言で自滅した政府

来年度からスタートする大学入学共通テストで、英語民間試験の活用が延期になり、萩生田文科相が陳謝しました。

全体的に見て、文部科学省、試験実施団体、大学入試センターの連携が悪く、お互いに責任をとらないという、ひどいマネジメントになっていたようです。たとえば、文科省は会場確保について実施団体に丸投げして責任を取らず、実施団体への要請も五月雨式で場当たり的。嫌気がさしたのか、TOEIC実施団体は撤退してしまいました。

大学や学部によっても、利用についてのスタンスは色々で、受験業界さえ情報収集に苦労していて、ましてや受験生にはさっぱり分からない状態だったようです。今となって見れば、いち早く利用しないと発表した東大は、さすがこの手の「政治」には慣れている感じです。

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今回、官邸が失言した萩生田文科相を見捨てた形ですが、そもそも、大学入試改革という官邸主導の重要な改革について、官邸と文科省の連携がとれていませんでした。読売でさえ、延期は官邸の責任だとしています。

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「延期」とは言いつつ、新試験は2024年度からということで、随分先にしています。実質的には、英語民間試験の導入自体は白紙撤回なのでしょう。大学入試センターにやらせるという見方まであるようで、そうなったら、全くの元の木阿弥です。

英語新試験、24年度から 文科省、民間活用は白紙 :日本経済新聞

こんなことになった原因は、何と言っても、萩生田文科相の「身の丈」発言です。

英語民間試験では、経済的に豊かで都市部在住の受験生は何度でも受験できて有利では、との質問に対して、地方在住の受験生は「身の丈」に合わせて規定の2回だけで結果を出せばいいんだと発言。これが与野党双方と左右のメディアから批判されました。

この発言は教育の機会均等を否定するとんでもないものであり、萩生田氏等の本音が伺えるものでもあって、英語民間試験導入への信頼を大きく損ねてしまいました。私も、この発言については、本ブログで批判しました。

大学教育「無償化」で中所得者層は「負担増」、右も左も批判:教育無償化は中所得層こそ対象に、できれば所得制限なしで! - 日本の改革

しかし、私は、大学入試の英語に民間試験を導入すること自体には賛成です。今回、延期などせずに、指摘された問題点は、財政的な支援等によって解消したうえで、予定通り来年度から実施すべきでした。

フジテレビの平井文夫氏は、今回の延期を「天下の愚策」と批判、私も同意見です。

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日本の英語教育が全くものの役に立っていないことは確かです。文部科学省が、高校3年生について、国際標準であるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という英語力の指標で、学力を調べた調査があります。

それによると、下から2番目のA2、基礎レベル(基本的な日常会話が分かる、時間をかければ文章を組み立てることができる、短く単純な単語や親しみのある事柄を理解できる)に達している割合 は、「聞くこと(33.6%)」「話すこ と(12.9%)」「読むこと(33.5%)」「書くこと(19.7%)」でした。今までのセンター試験でやってきた「読むこと」、「聞くこと」でさえ3分の1の達成度、「話すこと」、「書くこと」に至っては2割を切っているという悲惨な状態です。日本人の英語力がアジア圏最悪と言われるのも道理です。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/__icsFiles/afieldfile/2018/04/06/1403470_03_1.pdf

こうした現状を変えるために、上記の英語四技能「聞く」「話す」「読む」「書く」を身に付けさせ、国際標準の英語力に近づけるために導入が決まったのが、英語民間試験です。

これは、昨日や今日検討が始まったことではなく、30年以上にわたって議論されてきました。その間、ずっと英語教育の改革が訴えられていたのに、「現場」の抵抗で実現しませんでした。20世紀の自民党政権のときも、民主党政権のときも続けられてきた議論と改革が、安倍政権に引き継がれただけです。旧民主系の野党が、今になって口を拭って実施延期に反対してきたのは、筋が通らないことです。やっとのことで動き出した英語教育改革を止めてはいけません。

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センター試験でやってきた「読むこと」、「聞くこと」さえ十分な結果が出ていないのですから、もっと実践的な形で利用されてきた民間英語試験を使うべきです。

ベストはTOEFLですが、中高教育の実態からすると難しすぎるし受験料も高いので、次善の策として、TOEIC、英検でもやむを得ない、ということろでしょう。他にも使えるところは使えばいいでしょう。

実際に英語留学で使われているTOEFL、あとは、有用性に議論はあっても多くの企業が実務的な英語力の指標に使うTOEIC、また、中高生には使いやすくて、一級についてはそれなりの評価もある英検を使うのは、理にかなったことです。

延期を主張していた野党は勢いづいています。経産省と法相の辞任もあって、予算委員会が開かれることになり、そこでは、萩生田文科相に辞めろと要求するのでしょう。

延期判断で野党主導権 英語民間試験…衆参予算委で追及へ : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

 

受験機会の均等を確保し、ベネッセは排除したうえで、TOEFLTOEIC、英検で実施を!

確かに、英語民間試験導入については、多くの問題がありました。官邸は文科省に丸投げ、文科省は、会場確保等について実施団体に丸投げ、成績提供システムを担う大学入試センターも何もしない。批判を浴びたのは仕方ありません。

かと言って、白紙撤回に近い形でいきなり延期してしまったら、何が起きるでしょうか。当面はこれまでと同じセンター試験同様の英語になってしまいましたし、今後もそれが続くおそれがあります。

相変わらずの英語教育を続けたい、新しいやり方はいやだ、教えられない、という「現場」の抵抗はまだまだ強いものがあり、今回、そうした古い人達が勝ってしまいました。

英語民間試験については、「教育関係者」から反対の声が強く、全国高等学校長協会(全高長)が延期を要請していました。会場と日程がいつまでたっても決まらないことや、地域格差や経済格差が解消されていないことを理由としていて、そこは確かにもっともでした。

http://www.zen-koh-choh.jp/iken/2019/20190910.pdf

一方、私立学校だけで作る団体である、日本私立中学高校連合会(中高連)は逆に、「延期せず実施を」と要請していました。これだけダメだダメだと批判されていても、着実に準備してきた学校もたくさんあったわけです。

延期を主張した「全校長」というのは、国公立も私立も入っている団体ですが、予定通りの実施を主張した「中高連」は私立だけの団体です。中高連に入っている私立校も全校長に入ってはいるようですが、全校長が延期要請を出したとき、「私立の意見は聞かれなかった」と言っています。

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要するに、公立高校は英語民間試験導入に反対、私立高校は賛成、という構図です。公立にも私立にも賛否について例外はあるでしょうが、団体全体の動きとして見ればそういうことです。私立なら独自のプログラムで十分に準備も出来るし、実際にしてきているので今さら延期は困るけれど、公立は対応しきれずに不利だから反対、ということでしょう。

こう見ると、延期を主張してきた「教育関係者」が、一定の偏りを持っていたのではないか、と思えてきます。国際標準でのまともな英語教育をする能力がないから新しい英語試験には反対、という人達やその関係者が、政府の不手際や文科相の失言に、これ幸いと付け込んだ形です。野党もそれに乗りました。

今回、政府の英語民間試験導入のやり方には確かに問題がありましたが、方向としては正しいものですし、今でさえ、ちゃんと対応している高校は団体単位でありました。

今後、英語教育を抜本的に変えるためには、大学入試の改革とともに、中高での英語教員の質も変えなければいけません。質の低い教員、学校が多いから、公立高校中心に、今回のような「抵抗勢力」が出来てしまいます。人事を含めて、対策が必要です。

また、そうした抵抗勢力に勢いを与えるような、政府のやり方を改めるべきです。

もともと、民間の試験実施団体は文科省の所管外で法令で締め付ける権限がなく、さりとて十分な財源もないから、ムチもなければアメもない状態でした。このため、十分な協力も得られないし、TOEICの実施団体は途中でやめてしまいました。

そのうえ今回、いきなりこんな形で延期したことで、民間の実施団体との信頼関係も壊れてしまいました。信頼回復をして、また新しい制度でやってもらうには、延期に伴う賠償に応じるのはもちろん、たとえば会場確保については文科省自治体に要請する等の形で一定の責任を負うべきです。更に、経済的な機会均等のため、受験料に対するバウチャー式の補助金も、上限は設けたうえで導入すべきです。

民間試験については、実施団体の利益相反についての批判もあります。実際、採点基準を決めて採点も行う団体が「受験対策」で儲けることについての疑問はもっともな面はあります。

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実施団体の利益相反を防ぐためには、一定の規制も必要でしょう。私は、もともと受験業界の企業であるベネッセは、本来なら適格性がないものとすべきだと思います。

ただ、少なくともTOEFLTOEICは、もともと日本の大学受験が目的で作られた試験ではありません。英検も以前は今ほど入試では使われていなかったはずです。こうした試験については、ことさらに「大学入試対策」と銘打っての商売は自粛させたり規制したりすれば、利益相反の問題は防げるでしょう。

まとめると、政府は受験機会を均等にするために、①財源を確保したうえで、受験料についてはバウチャー方式の補助金を出す、②会場確保には文科省も責任をもって自治体に公共施設等の利用要請を行う、③試験実施団体については、旧来型の大学受験産業の企業が外れるような基準を設ける、ベネッセには賠償する、参加団体には利益相反を防ぐ規制を設ける、といった対策のうえ、国際標準の英語試験を大学入試に導入すべきです。

 もう、日本でしか通じないムダな英語教育はやめさせるべきです。