日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

東京五輪マラソン・競歩、札幌へ:東京都と国は、お金かけてでも他競技での暑さ対策徹底と、五輪改革の呼びかけを!

東京五輪のマラソン競歩は札幌で「合意なき決定」。東京都は前向きに切り替えて、札幌での競技開催に費用負担以外で全面協力し、費用がかかっても他競技での暑さ対策を徹底し、そして、五輪自体の改革を国際社会に訴えるべきです。

札幌開催は「合意なき決定」、決定を受け入れる際の合意点は四つ

2020年東京オリンピックのマラソン競歩につき、東京都、IOCTOC、政府の4者協議で、札幌開催が決定しました。小池都知事は最後まで賛成とは言わず、IOCの決定を争わないとしました。

「札幌開催」は「合意なき決定」ですが、決定を都が受け入れる際の「合意」は四つあります。①会場変更の権限はIOC、②札幌移転の追加経費は都に負担なし、③既に都、組織委が支出したマラソン競歩に関する経費で今後、都が活用できないものは都に負担なし、④他競技の都外移転なし、です。これらは、東京都が求めてきた条件でした。

小池都知事が、失望した都民に誠意ある対応を示せと繰り返し求めたことに対し、バッハ会長から、大会後に「オリンピック・セレブレーション・マラソン」の開催を打診され、知事もこれを受け入れました。

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バッハ会長が新提案 五輪後に東京で特別イベント - 産経ニュース

この合意、まだまだ安心できません。コーツ氏は先月25日の段階で、札幌開催の追加的費用には、予備費1000億~3000億円を想定していると言っていましたが、この数字はただの見積もりであって、どこが出すかは未定です。昨日の決定後も、組織委の武藤敏郎事務総長は「どこが負担するかも含めて今後の協議」などと言っていますし、橋本五輪相は、国はカネを出さないと言っています。

また、「マラソン競歩関連の経費で、他の目的に活用できないものは都に負担させない」との条項では、都は、遮熱性舗装費などの補償を想定していますが、具体的な決定はこれからです。

東京都は、まずは合意を三者にしっかり守らせるのが大事な仕事になります。

都「条件闘争」妥協探る…「札幌」決着、経費後回し : 東京オリンピック・パラリンピック : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン

競技会場の変更、もうしない…4者確認 : 東京オリンピック・パラリンピック : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン

橋本五輪相、札幌移転に「国としてできることを」 - 社会 : 日刊スポーツ

それでも、あのIOCから、これほどの短期間に、よくこれだけ譲歩を引き出せたと思います。

組織委や五輪担当大臣が全くの無責任体質なのは、最初から分かっている話です。彼らが東京都に押し付けたがっているのは明らかです。しかし、合意でこれだけはっきりと、東京都に追加負担させない、既に支出した経費も今後利用できない部分は都の負担なし、と言うのですから、また前言撤回すれば、都民と国民の反発は更に大きいでしょう。今回、立派に戦ってくれた都知事都民ファーストが、引き続き、合意の着実な履行をさせることを期待しています。

IOCと森氏について言えば、本ブログで紹介したように、世論調査で都民ばかりか全国的に反発が強いことが分かり、少しはヤバイと思ったのかもしれません。

小池知事の都民支持率、去年と変わらず53%:マラソン・競歩で意地悪しても、やっぱり全然かなわない政府・自民党 - 日本の改革

小池知事は、本当に難しい立場でしたが、都民のためによく踏ん張ってくれたと思いますし、最後まで賛成しなかったのは、都民と国民の気持ちをしっかり代弁してくれました。

大会まで残された時間はわずかです。都庁はもちろん、東京都の議員も都民も、決まったことは決まったこととして、少なくとも五輪の開催・運営に関しては、もう恨まない、憎まない、ただ、起きたことは忘れないし、約束はきちんと守ってもらう、そして、今回のことを今後に必ず生かす、というスタンスでいくべきです。

まずは、準備が大変な札幌について、東京都が費用負担はしないもの、引き継ぎはもちろん、このビッグイベントの運営のマニュアルの伝達等、出来ることはしっかりやるべきです。都民ファーストの尾島紘平都議のツイートに賛成します。

 新たに費用がかかっても、他競技での暑さ対策の徹底を

さて、今回のIOC決定を、今後にどう生かすべきでしょうか。

まず、暑さ対策を、マラソン競歩以外でも、徹底するべきです。新たな費用がかなりかかっても、これは絶対に必要です。

小池知事も、4者協議で、夏季オリンピックについて、「開催の前提となっている7~8月の実施では北半球のどの都市でも過酷な条件になると言わざるを得ない。この点を我々がしっかり直視しなければ」と、将来は時期をずらすべきだ、という趣旨の発言をしました。IOCのコーツ調整委員長は、時期変更についてコメントを避けました。

朝日は、今回の件が夏季五輪の「終わりの始まり」か、との見出しの記事で、今後もIOCと踏み込んだ議論をしてほしい、と小池知事に期待しています。

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今後の夏季五輪のあり方は、是非、IOCに強く迫ってほしいところです。

それに加えて、来年の東京五輪での暑さ対策は喫緊の課題であり、ただちに全面的な見直しを行うべきです。

本ブログでは、札幌移転の是非に関する、東京都医師会の意見を紹介しました。そこでは、総合的なリスク軽減で言えば東京だが、暑さ対策では札幌が望ましい、としています。そこでは、競歩について、全コースに天幕設置して日陰にするくらいのことが必要だ、としていました。私も、ブログではこれに賛成し、東京での競歩開催を主張するなら、全コースの天幕設置すべき、と書きました。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるマラソン・競歩大会の実施に関する東京都医師会の意見について | 公益社団法人 東京都医師会

小池知事の都民支持率、去年と変わらず53%:マラソン・競歩で意地悪しても、やっぱり全然かなわない政府・自民党 - 日本の改革

おそらくこれは、どの競技についても言えるでしょう。気温と湿度もそうですが、7、8月の東京の直射日光は、文字通り殺人的です。

日本医師会は、既に2016年に、政府にも組織委にも東京とにも、暑さ対策について要請をしていました。そこでは、熱中症予防だけでなく、熱中症になったときの体制の不備に強い懸念を示していました。ただでさえ足りない救急医療の体制を徹底して充実させる必要がある、東京五輪で観客以外にも外出者が増える、言語・宗教・慣習の違う外国人への十分な医療ケアも必要、五輪期間中は東京圏だけでなく地方にも外国人が足を伸ばすし、全国的な医療体制の問題だ、としています。

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20161116_1.pdf

日本医師会の2016年の要望につき、分かりやすくまとめたブログがこちらで、楽しく読めます。この方は、以前から、東京五輪での暑さを心配されているようです。)

56emon-cafe.com

要は、暑さ対策に、ヒトとカネが全然足りません。五輪は都市が開催すると言っても、3年前に医師会が既に主張していた通り、東京五輪の暑さ対策は、日本全国の医療体制に係る問題です。まして今回、政府もマラソン競歩は札幌にまで移転すると言うのだから、なおさらです。

開催都市の東京都はもちろん、国も、しっかり費用をかけて、暑さ対策を行うべきです。

東京都の対策がこれまで不十分だったのは、費用を出来るだけかけない、という都民との約束をしっかり守ろうとしたからかもしれません。それはそれで有難い話なのですが、今回の件を機に、暑さ対策について、都民の理解が一気に進みました。これからであれば、他競技や観客のための暑さ対策に相当費用が増えても、理解されるはずです。

朝日によれば、8月のテスト大会では、海の森クロスカントリーコースでの種目では、あまりの暑さに「本番では(午前8時半の)開始時間を午前6時台に早めるべきだ」などといった意見が相次いぎました。ホッケーのテスト大会では、暑さに慣れている日本チームでさえ、ぼーっとなった選手がいたかも、という声がありました。ビーチバレーでは軽い熱中症が出ました。

いずれも、暑さに慣れている日本選手についての話です。選手が会場に合わせてコンディションを整えるべきはもちろんですが、外国選手の命に関わるような形で、アドバンテージを追及すべきではありません。

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IOCに都民、国民、メディアが憤っている今こそ、五輪改革の呼びかけを!

 そして、今回の移転騒ぎを今後に生かすために何と言っても大事なのは、五輪自体の改革です。

今回、私は、東京都にも、暑さ対策の点で反省すべき点があったと思います。多くの都民、国民も、恐らくはそう思っていたので、世論調査では、最初は札幌開催に賛成の声の方が多数でした。ところが、わずか1週間で、それがひっくり返り、札幌反対が賛成を大きく上回りました。これも以前のブログで書きました。

小池知事の都民支持率、去年と変わらず53%:マラソン・競歩で意地悪しても、やっぱり全然かなわない政府・自民党 - 日本の改革

これは、IOCが最初から傲慢な態度を取り続け、オリンピック開催都市契約の一方的な内容に、怒りの感情が広まったからだと思います。

メディアも、右の産経から左の朝日、真ん中?の日経まで、一様にIOCに怒っています。

産経によると、東京都の担当者がIOCに会場変更の権限の根拠を聞いたら、「これがIOCだからだ」でおしまい。コーツ氏の態度については、産経も相当怒っているのが、書きぶりから伝わるので引用します。

コーツ氏は4者協議後の会見で「都民の気持ちはわかる。理解してほしい」と繰り返すだけで、最後まで都民や混乱に対する謝罪の言葉はなかった。さらには五輪憲章や開催都市契約の存在を口にし「次回大会でも同じことになる。IOCには必要な意思決定の権限がある」と言い放った。

出所:産経新聞2019年11月1日

www.sankei.com

朝日は、開催都市契約について、見出しで「不平等条約」と揶揄しています。私も以前のブログで書きましたが、IOCは競技も勝手に変えることが出来ると明文で書いてあるし、紛争解決方法もとにかく最後はIOCが全部決めることになっていて、開催都市には極めて不利な内容です。

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日経の編集委員氏も、こんな風に怒っています。 

それにしても国際オリンピック委員会IOC)の「これは決定事項」と言い放つ態度には驚いた。五輪招致熱の冷え込みから、開催都市への過大な要求を避けて負担軽減を打ち出していた昨今の方針からは信じられない豹変(ひょうへん)ぶりである。

最終決定する権限は確かにIOCにある。だが、問答無用での"決定"は「五輪を開催させてやるのだから、黙って従え」と言わんばかりだ。

IOCはドーハでの陸上の世界選手権の惨状に危機感を抱いたというが、それならまず東京に問題提起して再提案を求めるのが筋である。

出所:日本経済新聞2019年11月1日

www.nikkei.com

こんな現状は、変えなければいけません。都民、国民、メディアが怒り心頭で、高い関心を示している今こそ、当事者である東京都が五輪改革を訴えるべきです。もちろん、政府もやるべきです。

まず、競技会場については、開催都市の意見が反映されるよう、決定・変更方法を定めるべきです。大会の半年前くらいまでしか変えられないとか、特に人気のあるいくつかの競技については、必ず開催都市で行う、少なくとも、開催都市の意見が十分反映できる形にする等、ルール化をすべきです。こんなことが続いたら、ますます開催都市への立候補が減って、中国のような独裁国家ばかりが宣伝のために積極的になるでしょう。もともと、五輪を人権弾圧国家で開いてはいけないなずですが。

開催季節については、小池知事含めて誰もが言うように、「夏季」五輪は秋季開催に変更すべきです。温暖化はますます進んでおり、もう夏のマラソン競歩自体が無理です。既に2032年大会まで契約で夏季になっているようですが、今後のため、この機会に訴え始める必要があります。

開催都市契約の紛争決定方法も、IOCが最終決定権限を握るのはごく一部の、五輪の本質に関わる部分だけにして、それ以外の大会運営に関する事項は、協議で定めるとして、協議が整わなければ訴訟という常識的な内容にすべきです。

以上が、今回の件について、最低限主張すべきことでしょう。

加えて、東京五輪の現状の最大の問題点、誘致に伴う買収について、今度こそ実効性のある解決策をとるべきです。

オリンピックの歴史について著書のあるジャーナリストのジュールズ・ボイコフ氏は、オリンピック委員による投票について、誰がどの都市に投票したかを開示すべきだ、と主張しています。この案をバッハ氏らも出席するスポーツ・マフィア達の会議で提案したら、9割超の出席者が賛成したのに、未だに実現していないそうです。

オリンピック秘史: 120年の覇権と利権

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 ボイコフ氏は、IOCが現在掲げる「アジェンダ2020」という改革プランには、IOCの説明責任を強化する内容がないことを批判しています。氏は更に、現地の組織委員会を監視するための仕組みも必要だ、としていますが、東京五輪組織委の無責任ぶりを見れば、これはIOCのためにも是非やるべきでしょう。

オリンピックは、深刻な問題を色々と抱えています。しかし一方で、世界中の諸国民が一つの大会に注目するイベントであり、熱狂する人達も多く、国際理解に一定の役割を果たしていることも確かでしょう。

だからこそ、東京都は、そして日本は、開催地となった以上、IOCや五輪の問題点を率直に指摘し、国際社会と協力して、変えていくべきです。 札幌に立候補するから忖度してまたカネを渡して、などということは、絶対にあってはいけません。もう世界中の国が、世界中の都市が連携して、IOCの得手勝手を許さないルール化をすべき時期にきています。