日本の改革

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クッキー取得を規制しようとする公正取引委員会に、経団連が猛反対:リクナビ事件の前には、どんな反対も無駄な抵抗。

公正取引委員会が、独禁法ガイドライン案で、クッキー(Cookie)取得に同意を必要とする方向で検討。これに経団連が大反対していると言います。正しいのは公正取引委員会であり、検討通りの規制を行うべきです。

同意を得ずにクッキーを取得させろ?リクナビ事件があった以上、無理

公正取引委員会は、IT大手、いわゆるプラットフォーマーへの独禁法適用のガイドラインについて、利用者が見たウェブサイトを記録する「クッキー」取得に同意が必要とする規制を検討しています。

このニュースを報じた朝日新聞から引用します。

 氏名などは記録しないクッキーは、単独では個人を特定できないため現在は個人情報保護法の対象にはなっていない。しかし、ほかの情報と結びつければ個人を特定でき、利用者のウェブ上での行動を追跡できる。最近では、就活情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就活生に無断で内定辞退率を算出・販売していた問題でも、当初はクッキーを使ってネット上のデータを集めていた。

 杉本委員長は「集めた情報を何に使うか明確にし、その目的以外に使っていないか透明性を図る規制がいる」と指摘。クッキーに加え、スマートフォンなどに記録される位置情報も規制対象にする方向だ。

digital.asahi.com

この話、リクナビ事件等に関連して、既に本ブログでは何度か取り上げてきました。本ブログでは、そもそもクッキーが個人情報になっていないのがおかしい、として、個人情報保護法の次回の改正時に、この点を変えるべきだ、と主張しました。

リクルートキャリアの悪辣な脱法行為:2020年の個人情報保護法改正で、EU同様、Cookieや閲覧履歴も個人情報にして、「忘れられる権利」も認めるべき! - 日本の改革

クッキーだけでなく、位置情報についても、企業は利用者への開示やデータ・ポータビリティを認めるべきだ、と主張しました。

SNS等のユーザーの個人情報保護は、情報銀行などではなく、データポータビリティ権の保障で! - 日本の改革

今回、公正取引委員会は更に、利用者の同意を得ずにクッキーを取得する行為は、独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたるとして、独禁法上の規制もかけようとしています。

私も、この方針に賛成です。個人情報保護法も改正してクッキーは個人情報にするべきで、そうすれば利用者の同意は当然必要となりますし、プラットフォーマーと利用者の立場の違いを考えれば、独禁法上の規制も別の観点から必要だからです。

公正取引委員会による、「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」は、以下の通りで、ここにある「個人情報」に、クッキーも含めるべきです。

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https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/aug/190829_dpfpc3.pdf

経団連は、このガイドラインが発表された時点から反対しており、今回の、クッキー取得に同意を必要とする規制にも反対しています。

が、どんな反対をしても、リクナビ事件という極めて悪質な事件が、日本企業によって起こされた以上、何を言っても、何の説得力もありません。リクルートだけでなく、利用していた多くの企業も、利用者の人生を左右するような大問題を起こした事件です。そうした企業の集まりである経団連が何を言っても、「お前が言うな」で終わりです。

リクナビ事件については、本ブログでも二度ほど書いたので繰り返しませんが、一点だけ、企業が学生からクッキーをどう集めていたかだけ、リマインドです。彼らは、「簡単なアンケート」と称して、利用目的は一切告げずに、クッキーを集めました。

NHKから引用します。

関係者によりますと、リクナビ側は個別の学生ごとの閲覧記録を把握するのに必要な情報を得るため、サービスの利用企業に対して、学生がウェブ上で簡単に答えられるアンケートを実施するよう指南していたことが新たに分かりました。

このアンケートで得ようとしたのは、どのページを閲覧したか把握するために欠かせない「クッキー」と呼ばれる電子的な識別情報でしたが、その目的についてリクナビ側や利用企業から学生に対して十分な説明はなかったということです。

www3.nhk.or.jp

こんなことをやっておいて、天下に名だたる経団連企業もそのサービスを使っておいて、クッキー取得に同意が必要と当たり前のことを言われたら、反対しています。

既にガイドライン発表時に反論として挙げていたのは、個人情報保護法でもう「バランスに慎重に配慮して」規制しているから、独禁法であらためてやる必要がない、ということでした。その個人情報保護法は、経団連新経済連盟の反対で、個人情報の範囲は極めて狭くされてしまい、クッキーも入りませんでした。それを厚かましくも、バランスの取れた規制だ、と言っているのです。

経団連:「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見 (2019-09-30)

でも、もうそんな理屈は通りません。リクナビ事件があったからです。

あの事件で、現在の個人情報保護法では、取得に同意が必要な「個人情報」の定義が狭すぎることが世間にもよく分かりました。それどころか、同意を求めて取得することさえ規制すべきセンシティブな情報(たとえば内定辞退率)がある、ということも知れ渡りました。規制の必要性は、国民がよく自覚したところです。

経団連はほかに、独禁法上の「優越的地位」にあたることの判断について、公正取引委員会が言うように、「代替可能なサービスがない」とか、「サービスの利用を止めることが事実上困難」という基準によることに反対しています。技術革新で代替可能なサービスが出るかもしれないとか、基準が曖昧だとかいう理由です。

こうした批判も、以前だったらそれなりの説得力があったかもしれません。でも、リクナビ事件があった以上、もう通りません。

リクナビのサービスは、就活生が利用せざるを得ないものであり、代替サービスはない、または極めて少ない寡占状態であり、データポータビリティがない以上、使い始めたら、サービスの利用を止めることもできません。技術革新でライバルが出るなど先の話で、どんなに短くてもあと数年は今のままの状態が続きます。

こうした規制を入れると、得をするのはGAFAだけだ、という議論もあります。グーグルやフェイスブックは利用者が「ログインしっぱなし」にしたくなるようなサービスがたくさんあるが、普通の業者はそうではない、消費者のログインを増やすために苦労している。だから、クッキー取得にいちいち同意を求めたら、利用者はめんどくさがってログインが減ってしまう、GAFA以外の普通の企業が損するだけだ、だから反対、ということです。こうした批判はヨーロッパでもあるようです。

digiday.jp

 でも、日本ではこの理屈は通りません。リクナビ事件があったからです。

リクナビ事件で、規制が必要なプラットフォーマーGAFA等の米系大手だけではないことがはっきりしました。リクナビが、ログインしっぱなしにしたくなるようなサービスだったとも思えません。にもかかわらず、あのような事件を起こしました。ネット上で大量のクッキーを収集している日本の大企業は、リクルートに限らず、どの業種にもあるでしょう。こうした企業について、利用者保護のための規制をかけるのは当然のことです。

クッキーは、ターゲティング広告にはよく使われています。クッキー単体では個人を特定することはできませんが、リクルート等がやったように、他の情報と突き合せれば、個人を特定できる場合があります。クッキーなどのデータを収集・分析する業者であるDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)全体の商売の仕方を、この際、公正取引委員会が調査する必要もあるでしょう。リクナビ事件で問題となった企業の一つは「リクナビDMPフォロー」であり、DMP業界全体が、利用者保護の観点から大きな問題を抱えている可能性があります。

DMP業界全体の大掃除が必要なのではないでしょうか。

リクナビ問題、クッキー、DMP等については、朝日に解説記事があります。

その中で、以前本ブログでも紹介した、新潟大の鈴木正朝教授は、「個人情報保護法は個人情報を特定個人の識別情報であるとの定義にこだわり、無記名の履歴データを個人情報に含めることに踏み込めずにいる。何を保護する法律なのか本来の目的を再確認し、規制の対象情報のあり方から見直すべきだ」とコメントしています。

全くその通りで、個人情報保護法改正では、クッキーを個人情報に含めるべきですし、加えて、リクナビ事件のように、利用者がそのサービスを使わざるを得ない場合は他にもあるでしょうから、独禁法上の規制も必要です。

digital.asahi

要するに、経団連だろうとその他の経済団体だろうと、クッキー取得に同意を求めるべきだと言う公正取引委員会の正論に対し、反論することはできません。日本企業であるリクルートキャリア等が、プラットフォーマーとして、誰が見ても問題のある事件を起こしてしまったからです。

クッキー規制に対し、ネット上では、リクルートのような「一部のクズ」のために、他のまともな企業まで規制強化で大迷惑をこうむる、という嘆きもあるようです。それも一面の真理でしょう。しかし、少なくとも現状では、リクルートは「一部のクズ」ではなくて、「氷山の一角」と見るべきです。