日本の改革

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大学教育「無償化」で中所得者層は「負担増」、右も左も批判:教育無償化は中所得層こそ対象に、できれば所得制限なしで!

萩生田文科相が、大学入試での英語民間試験の導入で「身の丈に合った受験を」と発言、教育機会の均等への無関心を露呈。これに加え、高等教育「無償化」政策で、実際は中所得層の「負担増」になりそうです。政府は、中所得層の負担増をやめることはもちろん、中所得層の大学教育無償化のため、消費税以外で財源を確保すべきです。

「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば」

大学入学共通テストに導入される予定の英語民間試験について、萩生田光一文科相がBSフジの番組で、司会の反町氏から、民間試験は高額で会場も限られ、大都市の高所得層は練習のために何回でも受けられるが、地方の中低所得層はそれが難しく、不公平では、という趣旨の質問を受けました。

萩生田氏の答えは、以下のようなものです。

「それ言ったら、『あいつ予備校通っていてズルいよな』と言うのと同じだと思うんですよね。だから、裕福な家庭の子が回数受けて、ウォーミングアップができるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないけれど、そこは、自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば」

www.j-cast.com

一応、民間業者に会場を増やす要請はしている、できるだけ負担がないように考える、とも言っていますが、この「身の丈」発言が、教育格差を容認、助長するものだとして、ネットで叩かれています。

togetter.com

この発言はいただけません。萩生田氏や安倍政権の本音が思わず漏れた形です。

私は、英語民間検定試験の導入は必要だと思います。日本の英語教育が全然ダメなのは周知の事実、「使える英語」のためのテストは留学で課されているような民間試験くらいなので、それを国内の入試に使おうというのは賛成です。

TOEICや英検で「使える英語」のテストになるかは微妙ですし、塾・予備校業界のベネッセによるテスト導入が利益相反だと批判されるのは仕方ありません。そこは改善すべきだとは思いますが、TOEFL並みのテストで、まともな試験にはすべきです。

問題が色々あるのは確かですが、野党が言うように延期にすべきとまでは思いません。

が、費用については、これまでの大学受験より負担が増えないようにすべきでした。

BSフジの番組で萩生田氏が受けた質問は、直接的には、大都市や近郊の受験生は、練習のために何度でも民間試験を受けられる、という趣旨でした。それに対し、それは単なる練習、準備だから、予備校と同じだ、というのは分かります。

しかし、そもそも、本番試験のための会場に行くまでの交通費・宿泊費がばかにならないのも確かで、しかもそれを2回受けることになります。大学入試の入り口の試験で負担が大きすぎると、大学進学自体をあきらめる家計が出てくることも考えられます。受験会場の確保は余程しっかりやるべきですし、本来、新しく加わる民間英語試験受験の受験料については、自己負担分を出来るだけ低くすべきでした。

安倍政権は、「教育無償化」というスローガンを掲げていますし、現に消費税増税で1.7兆円の財源を作り、幼保無償化は実現、高等教育無償化も、住民税非課税世帯について来年度から実現の予定です。これについては、財源は消費税でなく行革によるべきだったとは思うものの、無償化を一部実現したことは評価できます。

しかし、萩生田氏は、教育無償化の本来の目的である「教育の機会均等」の実現には、本音では全然興味がないのでしょう。だから、「身の丈」などという言葉が自然に出てくるのです。国民は「身の丈」、つまりは所得の許す範囲で教育を受ければいいんだ、政府がやっている無償化は特別に許す施しだ、負担増があっても、それはもともと「身の丈」で負担すべきなんだから我慢しろ、という発想なのでしょう。

大学教育「無償化」のはずが、実は中所得層には負担増

それでも、民間英語試験は、今までよりも良い英語試験をやろうという建前なのですから、本人負担が少し増えることを認める国民もいるかもしれません。

しかし、説明がどうしてもつかないのは、来年度からの高等教育の「無償化」により、これまでの教育内容は変わらないのに、中所得者層の授業料負担が増えるケースがあることです。

これにつき、9月20日東京新聞が批判しています。

現行の国立大の授業料減免制度では中所得世帯も対象になり得ますが、来年度から、授業料「無償化」つまり減免は、来年度からの新制度で、住民税非課税世帯とそれに準じる世帯に限られることになります。

現行の国立大の授業料減免制度は、文科省が定員に応じて運営費交付金の一部として予算を付けて、その上で各大学が独自の基準を設けて対象者を選んでいるので、中所得世帯も多くなっています。

現行制度で授業料の負担増となる在校生は約19000人にもなると言います。文科省は在校生については経過措置をとると言いますが、新入生については、今までより負担が重くなります。

www.tokyo-np.co.jp

左の東京新聞だけでなく、右の産経新聞も、この負担増を批判しています。

既に7月末の時点で、対象が狭くなることを問題視する見出しをつけて、減免措置の拡大=せめて今までから負担が増えることは避けるべき、という各団体の声を紹介しています。

www.sankei.com

萩生田文科相はこれに対し、新たな制度で統一的に線引きをするために、財源のある大学が出来る範囲でやっていた減免措置をやめさせる、経過措置は設けるが、大学ごとに違うのはダメだ、と言っています。

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和元年9月24日):文部科学省

この説明もおかしな話で、国立大学運営費交付金の使い方として、学生の負担軽減に回すというのは自由なはずです。それどころか、優先順位が高くても良い使い方です。財源に余裕のある大学が自分の判断でやっていた減免措置まで無理やりやめさせて、学生・家計の負担をわざわざ増やすようなやり方は、「教育無償化」という看板とは正反対です。

もちろん、住民税非課税世帯という低所得世帯への授業料の負担はなくすべきであり、それに加えて、これまでの各大学の減免措置の継続を認めるべきです。そもそも、国が財源を見つけて無償化すべきものを各大学が自助努力でやっていることであり、国は速やかに中所得者向きにも大学の授業料無償化を実現すべきです。

私は、教育無償化については、民主党政権時代の「子ども手当」は、実は良い制度だったと思います。次世代を社会全体で育てるという理念の下、所得制限がなかったからです。

確かに子ども手当は、バラマキと批判されて結局は所得制限をつける議論になっていきましたし、民主党は財源を十分に見つけられず、今では失敗例とされてはいます。

しかし、教育の機会均等を実現し、次世代の国民が教育を受ける権利を保障するためには、本来は所得制限はつけるべきではありません。高所得者については、どうしても世論の理解が得られないこともあるとしても、中所得者層については、出来る限り、授業料無償化等の対象とすべきです。

公立高校の授業料無償化は、安倍政権も結局は引き継ぎました。対象は910万円未満で、中所得層のかなりの部分がカバーできる制度になっています。

高等学校等就学支援金制度:文部科学省

民主党政権下でこの制度が実現して間もなく、橋下徹氏が府知事だったときに、大阪府が私立高校の授業料無償化の対象を中所得層にも広げました。対象は所得800万円未満、当時の言い方では、「ボリュームゾーン」をカバーしようということでした。今では少し対象が狭まったようなのが残念ですが、本来は、所得800万円くらいまでは、無条件で適用対象とすべきでしょう。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11430/00000000/20110829_1658_mushouka_kakudai.pdf

大阪府/平成31(2019)年度以降に入学する皆さんへの授業料支援制度について

橋下徹氏御自身は、本当は所得制限なしにして、将来世代を育てる、という理念を一貫させた制度にさせたかったようです。が、御自身が高額所得者で、自分のために無償化政策をやろうとしているというあらぬ批判を受けたため、やむを得ず所得制限付きにした、とのことです。

橋下氏はその後、おおさか維新の会という名称だった頃の日本維新の会で、教育無償化を憲法改正の項目として掲げるようにさせました。内容は法律によって定めることにしているので、所得制限も可能ですが、憲法で財源確保を国・自治体に義務付けたことで、教育無償化の理念が明確になりました。この政策は本来、教育の機会均等を実現し、将来世代の国民が平等に「教育を受ける権利」を保障するための政策であり、憲法の条文とするなら、こうした目的がはっきりします。

https://o-ishin.jp/news/2017/images/90da581ba24723f77027257436ab13c1cec1a1ed.pdf#search=%27%E7%B6%AD%E6%96%B0+%E6%86%B2%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%E6%A1%88%27

このように、教育無償化を、将来世代の国民の基本的人権の問題として捉えるなら、本来は所得制限などすべきではありません。どんな家庭に生まれるかによって、権利の有無を決めるべきではないからです。

もちろん、財源を獲得できるかが問題ですが、そこを憲法で義務付けるかどうかが、その国の大事にする基本的な理念を明らかにします。歴史上例のないような少子化に直面する我が国は、将来世代の権利保障を徹底して、そのための財源確保を予算組み替えによってでも行うべきです。

以上が最終的に目指すべき目標です。政府はまず、大学教育での負担増が生じないようにしたうえで、無償化の対象範囲を更に拡大すべきです。