日本の改革

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厚生年金加入逃れ36万事業所:歳入庁導入しないのは、徴収職員が税金と保険料の勉強するのが大変だから?国民は両方勉強して納めてます!

厚労省が、厚生年金加入逃れの企業に対し、立入検査を強化します。年金保険料の徴収強化の手段に、税と保険料の徴収を一体化する「歳入庁」設置があります。政府は、やらない理由の一つに、職員が税金と保険料の知識を両方身に付けるのが大変だから、と言っていますが、国民は両方勉強して納めているのだから、それは理由になりません。保険料徴収促進と国民の利便性のため、国税と年金保険料徴収を一体化すべきです。

厚生年金保険の加入逃れ、36万事業所、対象者156万人

毎日新聞によると、厚生労働省は、厚生年金の加入義務がありながら逃れている事業所への対策を強化するため、強制力を伴う「立ち入り検査」の対象を拡大する検討に入ったそうです。

これまで立ち入り検査の対象外だった、年金気候に届け出をしていない事業所にも立ち入りが出来るよう、厚生年金保険法を改正するため、今月末の審議会に案を示すということです。

mainichi.jp

加入逃れの可能性のある事業所数は、日本年金機構の平成30年度業務実績報告書16頁に出ています。2015年には97万事業所あったのが、今年2019年3月時点で36万人に減ったということで、だいぶ努力はしている様子です。

https://www.mhlw.go.jp/content/12508000/000525104.pdf

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05476.html

それでも、36万もの事業所で、2年前には156万人が未加入状態にさせられていたのだから、深刻な問題です。労働者も保険料を払っていないならまだしも、労働者には払わせて企業は払わない悪質なケースもあるようです。建設業がよく話題になりますが、一部業種で特に多いと言われています。

消費税増税の前提だったはずの歳入庁設置、その後検討だけして「無理でした」

加入義務のある事業所には加入をさせて、保険料徴収をしっかりする必要があります。

金保険料徴収については、厚生年金さえ、こんな実態なので、まして国民年金での保険料徴収は更に大変で、2018年度の納付率は金額でみて68%、納付者は全体の5割だけ、4割は低所得での猶予・免除なので仕方ありませんが、1割が未納です。

www.nikkei.com

低所得者に対する無理な徴収はもちろんすべきではありませんし、猶予・免除が必要なら行うべきです。しかし、払うことが出来る人や企業については、厚生年金でも国民年金でも、保険料徴収の強化はやはり必要です。

そのために提唱されてきたのが、国税と年金保険料の徴収を両方行う「歳入庁」の設置です。

この制度はもともと、消費税率を5%から10%に上げることを決めた「社会保障と税の一体改革」で、消費税増税の前提として挙げられていた沢山の項目の中に、ちゃんと入っていました。消費税増税という大きな国民負担を課す以上、国として出来ることは、行革から保険料徴収強化まで、何でもやるべきだ、ということになっていたはずでした。

そこで、2012年の消費税率増税を決めた法律(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する法律)の法案に衆議院で修正が入り、7条8号に

 八 年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること。

というのが入りました。

閣法 第180回国会 72 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/180diet/tk20120330g.pdf

その後、当時の民主党政権が、歳入庁創設に向けて、具体的な工程表まで作っていました。それによると、2018年には、国税と年金保険料の徴収業務を一体化する形の歳入庁が創設されるはずでした。

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出所:内閣官房

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/5daijin/240612/siryou.pdf#search=%27%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E3%81%A8%E7%A8%8E%E3%81%AE%E4%B8%80%E4%BD%93%E6%94%B9%E9%9D%A9+%E6%AD%B3%E5%85%A5%E5%BA%81%27

ところが、安倍政権になって、この結論がひっくり返されました。検討の結果、やっぱりやらない、ということになったのです。

これはそもそもおかしな話です。歳入庁設置をやろうとしたのは民主党政権であったとしても、消費税増税は三党合意で決めて、法案についても、三党が賛成して通りたものです。自民党政権に代わったからと言って、安倍政権が、消費税増税だけをやって、前提となるはずの歳入庁設置をやらないのは、消費税収の食い逃げであって、間違っています。これは、行政改革についても言えることです。

なぜ政府は歳入庁設置はしないと言っているのか

ではなぜ、安倍政権は、歳入庁設置はしないと言っているのでしょうか。

2013年に、政府は以下のような理由を挙げて、課題が多いのでやらないと決めました。

第一に、国民年金保険料と国税とで、徴収対象の重なりが小さいから意味がない、第二に、新たな役所の設置は行革に逆行する、第三に、年金と税は制度が違うから実務上問題があるし、徴収職員が両方の知識得るのが大変だ、第四に、税・年金とも、制度の企画立案と徴収は一体の方がいい、ということでした。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nenkin_kentou/pdf/h250808_2.pdf

しかし、どれも大した理由ではありません。

第一の、徴収対象となる人が同じでないことが多いから意味がないというのは、端的に間違いです。

冒頭に紹介した厚生年金の加入逃れを把握するにあたって、年金機構は国税庁からの情報を利用しています。国税庁と年金機構の情報共有で現に一定の成果をあげている面もあるのですから、組織として一体化すれば、更に迅速・正確に徴収を進められるはずです。

第二の、新たな役所を作るのは行革に反するというのは、メリット、デメリットの比較で決まる話です。必要な業務のために組織の設置コストを上回る効果が上がるなら、新組織を作っても行革に反するわけではありません。

第三の、年金と税金で時効期間等の制度が違うのは当たり前で、それが徴収実務上、非常に大きな影響を与えるということを政府は示していません。

一番ひどいのは、徴収職員が税金と年金の両方について専門知識を身に付けるのが大変だから、という理由です。

国民は、民間での仕事を持ちながら、国と社会に対する責任を果たすため、税金と年金の両方について、何をどれくらい払わなければいけないか調べて勉強して、両方を払っています。それを、徴収を仕事としているプロの徴収職員が、両方の専門知識を身に付けるのは大変だから無理です、というのは通りません。

第四の、制度の企画立案と徴収部門が一体であるべき、というのも、連携はもちろん必要ですが、業務としては別のもので、現に毎年の税制改正国税庁が担当しているわけではありません。

以上のように、政府の言い分は説得力に欠けています。

最近の議論では、去年の4月に中央省庁の再編の議論が出たとき、日経が、歳入庁も俎上に上がっていると書きました。

www.nikkei.com

が、その後は、中央省庁再編の話も立ち消え、まして歳入庁の話など全く聞かなくなりました。要は、去年4月の中央省庁再編というのが、森友問題で慌てて出してきた案で、それ自体がなくなったので、誰もふれない状態です。

上記の日経記事が出たときは、慶應義塾大学の土居丈朗教授が、やるなら年金保険料の徴収業務を国税庁に集約すべきだ、と書いています。

news.yahoo.co.jp

私は、これも一つのやり方だと思います。

歳入庁の件、とにかく財務省国税庁が本気で嫌がっているのが話の進まない大きな原因のようです。財務省がけしからん、というのも確かですが、このまま全く議論さえない状態が続くよりは、とりあえず国税庁に年金保険料徴収をやってもらう、年金機構の職員はそちらに移動する、という形の方が、まだましでしょう。国民にとっても、税務署に行けば年金保険料も払えるなら、それはそれで便利なはずです。

いずれにせよ、歳入庁設置をはじめとする年金保険料徴収の強化は、消費税率を2倍にするための前提の一つだったはずです。政府は、国民がみんなやっている税金・年金の両方の勉強が大変だなどという言い訳をせずに、歳入庁設置に真剣に取り組むべきです。