日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

政府の気候変動適応計画、水害対策の指標は協議会の設置数??地方創生同様のヒサンな失敗になる前に見直しを!

政府全体の地球温暖化対策を決める「気候変動適応計画」。政策に生かされてきてはいますが、政策の効果・進捗を図る指標が、単に協議会の設置数になっている例などがあるのは問題です。指標全体の見直しが必要です。

去年成立した「気候変動適応法」に基づく「気候変動適応計画」

また台風が、今度はダブルでやってきます。完全に上陸するのは一つで、上陸時は熱帯低気圧になるようですが、台風19号の被災地をはじめ、大雨には警戒が必要です。以前のブログで、さすがに今年の台風は19号で終わりだろうと呑気なことを書いてしまい、反省しています。

地球温暖化が台風に与える影響については、台風の発生頻度は減るが、猛烈な台風はより猛烈になる、と言われています。これも本ブログで書いてきたことですが、防災対策は、これまでの最大規模の災害に基づいて考えるのではなく、温暖化予測に基づいて最大限の被害を想定した対策を作るべきです。

digital.asahi.com

地球の平均気温、2度上昇なら日本の洪水確率2倍、4度なら4倍:治水対策は、過去の降雨量でなく、温暖化予測に基づいて行うべき - 日本の改革

こうした地球温暖化に適応するための、国・自治体・企業・国民の責務等を定める法律として、昨年の通常国会で、気候変動適応法が成立しました。温暖化という気候変動問題に対し、温室効果ガスの排出削減という「緩和策」と同時に、気候変動による被害の回避・削減という「適応策」が必要なので、国全体の政策の基礎となる法律として作られたものです。

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出所:環境省

http://www.env.go.jp/earth/tekiou/tekiouhou_gaiyou.pdf

この法律が作られたことで、国の政策が進んでいる面もあります。以前、本ブログで消化した、国土交通省の検討会が出した「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」は、この法案が昨年2月に閣議決定を受けたこともあり、去年の4月から検討会で議論されてきた成果です。この報告書は、先に述べたような、過去の実績でなく将来の温暖化予測に基づいた治水計画を提言しており、今後、国と自治体はこの提言に沿った政策を進めるべきです。

(なお、以前のブログでは、7月に行われた最後の検討会で示された提言案を取り上げましたが、3日前の10月18日、国土交通省の提言として正式に発表されました。)

www3.nhk.or.jp

https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/pdf/02_honbun.pdf

https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai01kai/dai01kai_siryou2.pdf

このように、気候変動適応法の成立は、温暖化対策を着実に進めているのは確かです。

気候変動適応計画は、指標をはじめ、見直しを!

一方で、この法律によって作られた「気候変動適応計画」には問題があるので、見直すべきです。気候変動適応計画は、国が、農業・防災等の各分野の温暖化対策を推進するための計画で、気候変動適応法の目玉となるものです。

計画を見ると、各分野ごとに、各省庁がとるべき政策が列挙されており、その内容は、おおむねまともなものが多いのですが、問題は、個々の政策の効果を図るために採用している「指標」です。この指標に基づいて、PDCAサイクルを回していきます、ということになっています。

たとえば、先に挙げた治水対策は、「自然災害・沿岸域」という分野の政策になっていますが、その分野ではなんと、大規模氾濫減災協議会という協議会を、各地方にいくつ作ったか、が指標、目標の例として挙げられています。

治水対策なら、指標は当然、人的・物的被害をどれくらい減らせたか、ということのはずなのが、単に組織を作ったかどうか、が指標になっているのでは意味がありません。

その他の分野での指標の例は、以下の通りです。農林水産分野では、中身の当否はともかく、具体的に農林水産業に資するであろう指標に見えます。が、他の分野では、「水環境・水資源」では、関連分野の論文の数、「健康」では、熱中症対策でのアンケートの回答数等、国民の福祉とは直接関係ない、極めて間接的な影響しかない、お役所仕事をやったかどうかという指標が数多く並んでいます。

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出所:環境省

http://www.env.go.jp/earth/tekiou/tekioukeikaku.pdf

http://www.env.go.jp/earth/gaiyou_r.pdf

これについて、計画の中に、言い訳が書いてあります。

それぞれの政策の効果を定量的に把握・評価するのは難しいから、まずは、「評価する手法を開発すること」を目指すことにするので、何か参考になりそうな情報がちょっとでも得られれば、論文の数やアンケート結果でもいいんだ、と書いてあります(計画14頁)。

要するに、計画では色々と政策を列挙して、出来そうな政策はやるけれども、その効果が出たかどうかを直接数字で測って管理することはしない、やるのは政策を「評価する手法を開発する」ための進捗状況チェックだけだ、という開き直りです。

これでは、せっかくの各省の温暖化対策がどの程度効果的だったのか、国民には全く分かりません。第一、協議会をいくつ作ったかなんて、手法の開発にさえ役立ないでしょう。現状では、気候変動適応計画は、計画の名に値しないものになっています。

分野は違いますが、安倍政権は他にも、国民の福祉と直接関係ない指標を計画目標として掲げて、しかもその目標も全く達成できないという大失敗をやっています。地方創生総合戦略です。一番重要な指標として、地方・東京圏の転出入をゼロにする、というものを掲げて、5年たって10万人の東京への超過流入という悲惨な大失敗となりました。

地方創生政策については、このブログでも批判してきました。

東京だけで子どもが増える理由は、仕事での女性差別が地方より少ないから。政府は、まず地方に男女平等を徹底させ、地方創生政策は中止を! - 日本の改革

日経の懺悔「下らない地方創生事業を紙面で紹介してゴメンナサイ」:地方創生は来年度で終了を! - 日本の改革

地方創生総合戦略の失敗の一番深刻な点は、そもそも地方・東京圏の転出入の数などという指標は、国民全体はもとより、各自治体の住民の幸せさ加減とは、ほとんど何の関係もないことです。地方創生で達成すべき目標、掲げるべき指標は、各地域の県民所得等、直接その地域の住民の生活を豊かにする指標にすべきでした。

気候変動適応計画では、掲げている指標は、更に意味のないものになっています。政策の効果を図る手法の開発のためにしか数値目標を掲げないなどと言うのですから、各政策の効果があったかどうか自体、当面は考えるつもりがない、と最初から言っているのですから。

要するに、気候変動について、政府全体で本気で取り組むつもりが乏しいことを如実に表しています。こんな認識で法律を作ったのが去年の6月でした。しかし、その後、去年の夏に西日本豪雨や関西圏等を襲った台風21号が大きな被害を出して、立て続けに上陸した今年の台風19号は、昨年の西日本豪雨を上回る被害を出しています。そのうえ、10月下旬になってまた二つの台風が日本に近づいています。

日本国民はとうとう、地球温暖化がいかに深刻な問題かを、身をもって実感し、その被害を本当に不安に思っています。政府が各省の政策の指針となる気候変動適応法を作ったのは大変良いことですし、国交省の治水計画の提言のような成果も出ています。それらがどれくらい国民生活にプラスだったのか、きちんとチェックして、毎年改善していく仕組みが必要です。気候変動適応計画は、計画の指標も、指標の位置づけも変えて、政策の効果それ自体を検証できるようにして、この計画自体の政府での優先順位も上げて、もっと本気で取り組むべきです。