日本の改革

日本の改革に関するブログです。あるべき改革や政策等について考えていきます。

地球の平均気温、2度上昇なら日本の洪水確率2倍、4度なら4倍:治水対策は、過去の降雨量でなく、温暖化予測に基づいて行うべき

台風19号の被害を踏まえ、政府・自治体は、国土交通省の「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」の方向で、これまでの降雨実績に基づく治水対策から、科学的な温暖化予測による治水対策に、早急に転換すべきです。

「過去に経験のない」台風から学ぶべきこと

毎日新聞によると、14日午後3時時点で、台風19号による死者は11県で50人、行方不明者は6県で18人です。まだ増える可能性があり、悲惨な被害が出ています。

mainichi.jp

今回上陸した台風19号は、日本の治水対策の見直しを迫っています。これまでのような、災害の前例に基づいてハード、ソフトの準備をするのでは足りません。地球温暖化という科学的事実に正面から向き合い、これまでに例のない大規模な降雨・洪水等に備える治水対策を、科学的予測に基づいて行うべきです。

気象庁は、今回の台風による豪雨につき、「これまでに経験したことのないような大雨」と表現しました。今回の台風だけでなく、これからは、過去に例のないような台風や大雨が増えるはずで、それに備える必要があります。

http://www.jma.go.jp/jma/press/1910/12a/201910121630.html

NHKによると、千曲川の堤防が決壊して、多くの家屋が浸水した長野市によると、決壊した堤防は、5年前に強度を高める工事を終えたばかりでした。NHKのウェブサイトから、市長の声を引用します。

加藤久雄市長は「工事を終えたばかりの堤防で大丈夫だと思っていたので、これほどの被害が出るとは思っていなかった。市民生活を取り戻すため、1日も早く堤防の復旧作業を終えたい」と述べました。

また、加藤市長は、今回と同じような記録的な大雨が再び降った際にも耐えられる堤防をつくれるよう、専門家と相談し、国に要望したいという考えを示しました。

www3.nhk.or.jp

市長は、わずか5年前に強化したはずの堤防が決壊したのを踏まえ、「今回と同じような記録的な大雨が再び降った際にも耐えられる」堤防を、国に要望すると言います。現在の国のスタンスからすれば、それはやむを得ないことです。「科学的に予測されるような、今回よりもひどい大雨にも耐えられる」堤防をつくりたいです、と言っても、通らないからです。

国土交通省「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」の提言

しかし、今年の夏になって、こうした国の姿勢に、変化が出てきました。

国土交通省の検討会が、今年7月31日に、「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」を発表し、治水計画で、過去データより将来予測を重視することを訴えました。概要は、以下です。

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出所:国土交通省

http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai05kai/06_dai5kai_teigenan-gaiyou.pdf

毎日新聞は、これを、「過去の豪雨に基づく対策から、温暖化の影響予測を活用する対策へと治水の大転換になる」としています。

mainichi.jp

中身を具体的に見ると、世界の平均気温が(パリ協定が義務付ける)産業革命時から2度上昇した場合につき、全国を15地域に分けて降雨量の変化を予測しています。結果として、北海道と九州北西部の降雨量は現在の想定の1.15倍、他の地域は1.1倍、全国平均で1.1倍になるとして、それに応じて治水計画を見直すべきだ、としています。

また、実際にはパリ協定通りの対策が進んでいないことを踏まえ、地球の平均気温が4度上昇した場合についても予測し、北海道と九州北西部の降雨量は現在の想定の1.4倍、その他の地域は1.2倍、全国平均で1.3倍だとしています。

提言(15頁)では更に、平均気温が2度上がって、降雨量が1.1倍になると、洪水確率は2倍になり、平均気温が4度上がって、降雨量が1.3倍になると、洪水確率は4倍になる、としています。

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出所:国土交通省(2019)「気候変動を踏まえた治水計画のあり方提言」

http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/dai05kai/07_dai5kai_teigenan.pdf

インフラ整備で想定の見直し必要:過去の実績から科学的予測へ

先に引用した毎日新聞の記事によると、国交省河川計画課は、実現に必要な河川砂防技術基準の見直しなどを今後検討する、としていますが、私は、この提言は、是非、政府全体の方針として採用すべきだと思います。

今回の提言の弱点は、提言を出したのが治水対策の予算要求を行う官庁である国土交通省なので、その意味で中立性には疑問符がつくことです。ただ、この提言自体、先に挙げた数値予測は今後見直しがありうることは、当然、前提としているようですし、必要ならば、同種の予測を、内閣府なりで行えばよいことです。

重要なのは、過去の災害時の降雨量等に基づいた治水対策では、もう国民の命を守れない、ということです。そして、地球温暖化による科学的知見、予測は、もはや否定することができない確実さを持ってきましたし、日本国民も温暖化の影響を現に実感しはじめています。しっかりした予測に基づく予算措置であれば、国民の理解も十分得られるでしょう。

もちろん、温暖化を理由に、無駄な公共事業が増えたり、ましてや既得権化したりすることがあってはいけません。国土交通省は来年度予算案では防災対策を理由に来年度予算案の概算要求を2割増しにしていますが、中身については精査が必要です。

公共事業費、2割増の6.2兆円 国交省概算要求 防災対策に重点 :日本経済新聞

財務省財政制度等審議会は、防災対策については、、国から地方に「防災・安全交付金」という形で一括して渡しているのを、メリハリをつけるために個別補助金に戻すべきだ、という議論をしています。交付金と個別補助金とどちらが良いかは一長一短ですが、個別補助金の形なら、地球温暖化のために治水への支出をいくら増やすのか明確にしやすいので、財政運営のうえでも、国民への説明責任のうえでも、より望ましいでしょう。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia301016/04.pdf

財政制度分科会(平成30年10月16日開催)議事録 : 財務省

今回の台風の被害について、反省して今後に生かすべきことは他にも色々ありますが、まずはハード面について、現在進行形の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」では、間に合わなかった、あるいは、不十分であったことを率直に認めて、地球温暖化に関する科学的予測を治水対策に生かすようにすべきです。